帰る場所には君がいる

文月 廿香

ただいまー!(脚本)

帰る場所には君がいる

文月 廿香

今すぐ読む

帰る場所には君がいる
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇川に架かる橋
(・・・・・・)

〇オフィスのフロア
部長「・・・というわけで、ね」
部長「エリアマネージャーへの昇進、おめでとう」
部長「まぁ・・・多少、残業やら出張やら」
部長「今よりも増えると思いますけど、ね」
部長「それも経験、ということで、ね」
部長「君の活躍を、期待してますよ。えぇ」

〇中規模マンション
(エリアマネージャー・・・か)
(憧れてた仕事なんだけど・・・)
(今でさえ家に居られない時間が多いのに)
(同棲してる彼氏がフリーライターだからって、頼ってばっかで)
(大丈夫なのかな・・・)
(さらに時間が削られちゃったら──)
「寂しいし──申し訳ない・・・」

〇マンションの共用廊下
(嬉しさと同じかそれ以上に、不安とためらいが・・・)
「なんて話そう・・・」
(ってこんな顔して帰ったら心配かける!)
(しっかりしないと!)

〇玄関内
「ただいまー!」
???「あっ──!」
彼氏くん「おかえり!」
彼氏くん「すげーいいタイミング!」
彼氏くん「ちょうど夕飯出来たとこなんだ」
彼氏くん「今日のはけっこー自信作」
彼氏くん「絶対うまいと思うんだよな」
彼氏くん「その名も・・・」
彼氏くん「魚介の旨みとブイヨンスープをたっぷり吸わせた黄色に輝くサフランライスに──」
彼氏くん「スペインの風を添えたパエリア!」
彼氏くん「どぉよ?」
彼氏くん「あー、いま」
彼氏くん「「それ、普通のパエリアじゃん」って思っただろー?」
彼氏くん「まぁ・・・」
彼氏くん「そのとーりなんだけどな」
彼氏くん「今日スーパー行ったら、地中海フェアしててさ」
彼氏くん「すげー食べたくなっちゃって」
彼氏くん「作ってみました!」
彼氏くん「ってことで、早く食べようぜ」
彼氏くん「・・・って──」
彼氏くん「なんか、あった?」
彼氏くん「・・・いや、なんでって言うか・・・」
彼氏くん「なんとなく、元気ない・・・ように見えて」
彼氏くん「あー・・・俺の勘違いだったらごめん」
彼氏くん「「なんでもない」、か。そっか」
彼氏くん「いや、ごめん!」
彼氏くん「じゃあほら、早く荷物置いて」
彼氏くん「ご飯にしようぜ?」

〇おしゃれなリビングダイニング
彼氏くん「はい、おまたせー」
彼氏くん「あ、スプーンと飲み物、サンキュ」
彼氏くん「よし! じゃあ──」
彼氏くん「いただきます!」

〇おしゃれなリビングダイニング
彼氏くん「はぁ〜・・・」
彼氏くん「食った〜。そして──」
彼氏くん「うまかった!」
彼氏くん「ほらな?」
彼氏くん「自信作〜って言った通りだろ?」
彼氏くん「ま、つっても」
彼氏くん「“簡単パエリアのもと”のおかげだけど」
彼氏くん「──さて、と」
彼氏くん「今夜の片付けはどうする?」
彼氏くん「順番でいくと、作った俺が休憩だけど・・・」
彼氏くん「交代して欲しければ──」
彼氏くん「いつも通り、じゃんけん、受けて立つぜ?」
彼氏くん「ま、負ける気はねーけどな〜」
彼氏くん「・・・・・・」
彼氏くん「え、今夜はやるからジャンケンしなくていい、って──」
彼氏くん「いつもは絶対乗ってくるのに・・・」
彼氏くん「いや、やってもらえるのは」
彼氏くん「まぁ、嬉しいけど・・・」
彼氏くん「ごめん、ちょっと待って」
彼氏くん「今日、やっぱりなんかあったな?」
彼氏くん「帰ってきた時もぎこちない顔してて」
彼氏くん「どこがって・・・なんか考えてる顔してるし・・・」
彼氏くん「俺の気のせいってだけじゃないでしょ」
彼氏くん「・・・・・・」
彼氏くん「気づいてないかもだけど、」
彼氏くん「帰ってきてから全然目が合わない気がするんだ」
彼氏くん「そんなことない──って」
彼氏くん「そんなことなくない」
彼氏くん「俺のこと、見て」
彼氏くん「それに・・・ほら、それ」
彼氏くん「無理してる時にする笑い、今もしてる」
彼氏くん「俺には、話せないこと?」
彼氏くん「仕事・・・とか?」
彼氏くん「帰り道でなんか巻き込まれたとかじゃないよな!?」
彼氏くん「それとも・・・」
彼氏くん「俺が・・・」
彼氏くん「なんかしちゃった、とか?」
彼氏くん「・・・そうじゃない、って」
彼氏くん「だったら・・・」
彼氏くん「もし、俺に話せることなら、話してくれないかな」
彼氏くん「いやまぁ、俺の方が年下で経験も少なくて」
彼氏くん「全然頼りないのは、わかってんだけど・・・」
彼氏くん「だからこそ何か出来る時は絶対、」
彼氏くん「力になりたいっていうか・・・」
彼氏くん「大切な人は──」
彼氏くん「好きな人は、」
彼氏くん「俺が支えてあげたいって思うからさ」
彼氏くん「だから、もし話せることなら」
彼氏くん「話してくれないかな?」

〇おしゃれなリビングダイニング
「・・・・・・」
彼氏くん「えーっと、つまり」
彼氏くん「昇進することになって」
彼氏くん「今まで以上に仕事が忙しくなりそうで」
彼氏くん「俺に負担がかかると思って悩んでた・・・」
彼氏くん「ってこと?」
彼氏くん「・・・はぁぁぁ〜、なんだよそれ」
彼氏くん「すっげーいいニュースじゃん!」
彼氏くん「てかそれって、前に無理だと思うけど憧れてるって言ってたポジションだろ?」
彼氏くん「やったな!」
彼氏くん「なんか、俺まで嬉しい!」
彼氏くん「忙しくても仕事頑張ってる姿を見てるの、俺は好きだよ」
彼氏くん「輝いててかっこいいし、尊敬してる」
彼氏くん「幸い、俺はフリーライターだから仕事場はほぼ家だし」
彼氏くん「家事とかそーゆーのは、ひとまず気にすんな」
彼氏くん「帰りが遅くなりそうなら夕飯も少し遅くすればいいし、」
彼氏くん「朝は今まで通り一緒に過ごせる」
彼氏くん「俺が行ってらっしゃいって送り出して、」
彼氏くん「帰ってきたらおかえりって迎えるから」
彼氏くん「だから、そんなに心配しなくていいし申し訳ないとか思うなよ」
彼氏くん「せっかくのチャンスじゃん」
彼氏くん「やりたかった仕事なんだからなおさら、もう思いっきり飛び込むしかねーだろ!」
彼氏くん「大丈夫。俺が応援してるし、」
彼氏くん「寂しくなんてさせてやんねーから」
彼氏くん「あっでも・・・」
彼氏くん「俺もますます頑張らねーとだな」
彼氏くん「なんかモチベ上がってきた!」
彼氏くん「すっげーいい記事ばんばん書いてみせるから、見てろ〜!」
彼氏くん「はぁぁぁ、よかった」
彼氏くん「一緒に解決できる問題で」
彼氏くん「今回はまぁ、結果的にいいニュースだったけど」
彼氏くん「そうじゃなくても、できればちゃんと話して欲しい」
彼氏くん「俺がどうにも出来ないこともきっとあると思う」
彼氏くん「でも・・・」
彼氏くん「それでも、一緒に」
彼氏くん「悲しいことも、辛いことも、」
彼氏くん「嬉しいことも、楽しいことも、」
彼氏くん「全部二人で、一緒に経験して、時を重ねたいって」
彼氏くん「俺は思ってるよ」
彼氏くん「なんでそんなにって──」
彼氏くん「そんなの、大好きで大切だからに決まってるじゃん」
彼氏くん「これまでも、これからも」
彼氏くん「それだけは変わらねーから」
彼氏くん「・・・って、ごめん、話し込んでたら遅くなったな」
彼氏くん「なぁ、今夜の片付けは一緒にやろーぜ」
彼氏くん「その方が、一緒に居れるからさ!」

コメント

  • 全肯定彼氏くん、とてもいいですね。自分なりに出来る事を提案していく姿が良いなと思いました!素敵な作品ありがとうございました。

  • テンポ良く、楽しく読ませていただきました!
    個人的にパエリアの調理解説シーンがお気に入りです!お腹すいた!

  • まず、こんな彼氏が欲しい〜、もうすべてにおいてなんて理想的なんでしょう。女性の昇進を心から喜んでくれて、お互い一緒にいきていこうとサポートしてくれるこんな彼がいたら、毎日幸せですね。

コメントをもっと見る(6件)

ページTOPへ