読切(脚本)
〇華やかな裏庭
森田くんには友達がいない。
高校時代ヤンキーだった彼は、大学に入ってヤンキーを卒業した。大学デビューというやつだ。
そしてかくいう私にも友達がいない。
いわゆるオタクの私は、三次元の人間と仲良くする方法が分からないのだ。
そんな私の唯一の友達が森田くん。
元ヤンの彼は口が悪いけれど、オタクの私にも偏見なく接してくれて、意外と優しい。
森田雄馬「聞いてんのかよ、さゆ」
三好さゆ「なあに?」
森田雄馬「この前すすめたゲーム、やった?」
三好さゆ「やってるよ〜!めちゃくちゃハマってる!」
三好さゆ「見て!これが私の推しくん!」
スマートフォンに表示したのは、アプリの乙女ゲーム、ときめき彼氏。
私の推しはそこに登場する彼、リクくんだ。
三好さゆ「リクくんはね〜、優しげな見た目だけど意外とぐいぐいくるタイプで、強引なとこにきゅんとくるの!」
三好さゆ「それからね、何より声がいいの!大人の色気と少年のあどけなさが絶妙にマッチしててね、しかもすっごく優しい声なの」
三好さゆ「リクくんに囁かれるたびにきゅんきゅんしちゃうんだぁ」
森田雄馬「ふーん、ホントにハマってるんだな」
三好さゆ「私、声優さんは詳しくないけど、思わず調べちゃったもんね。リクくんの声の人」
森田雄馬「・・・どんな奴だった?」
三好さゆ「それがね、デビューしたての新人さんで、顔も分からないの。でも絶対イケメンだよ。だってこんなに優しい声なんだもん!」
三好さゆ「このシーンとか見て!」
〇綺麗な部屋
リク「おはよう、まだちょっと眠そうだね」
リク「起こしてあげようか?」
リク「チュッ」
リク「ほら、目がぱっちり。顔も真っ赤だね」
〇中庭
リク「俺を選んでよ。君が望むなら、何にだってなってみせる。王子様でもナイトでも悪魔でも、何だって」
リク「キス、していい?そしたら元気が出るかも」
〇華やかな裏庭
三好さゆ「あー!何回聞いてもきゅんきゅんするっ!」
森田雄馬「・・・・・・君が望むなら何にだってなってみせる、ねぇ」
森田くんが低い声で呟く。
三好さゆ「どうしたの?」
森田雄馬「いや、女の子はそういうセリフ言ってもらいたいのかと思ってさ」
三好さゆ「そりゃあそうだよ〜!この声優さん、新人さんとは思えないほど上手だよね!」
三好さゆ「雨宮雄馬くんっていうんだって!推しになっちゃいそう!」
森田雄馬「・・・俺、用事あるから帰るわ」
三好さゆ「えっ?そうなの?用事って?」
森田雄馬「養成所」
三好さゆ「森田くんお笑い芸人になるの?」
森田雄馬「ちげーよ!声優の!」
三好さゆ「えええ!何それ初耳だよ!?なんで!?声優になりたかったの?」
森田雄馬「・・・誰かさんが」
森田雄馬「二次元にしか興味ないから、俺が二次元に近づくしかないだろ」
三好さゆ「それって・・・」
森田雄馬「ちなみに俺の名前は?」
三好さゆ「森田雄馬」
森田雄馬「さゆの推しになりそうなリクの声優の名前は?」
三好さゆ「・・・雨宮雄馬。・・・・・・えっ、もしかして、」
森田雄馬「そう、そのもしかしてだよ」
三好さゆ「ええええ!全然声が違うじゃん!」
森田雄馬「そりゃあそうだろ。まだ新人とはいえ、声優だぞ」
三好さゆ「た、試しに何か囁いてみてよ・・・!お金払うから!」
森田雄馬「金はいらねぇけど、そうだなぁ」
森田雄馬「・・・・・・彼氏にするか、推しにするか。今なら選ばせてやるよ」
三好さゆ「きゃあああ!本物のリクくんの声!」
三好さゆ「すごい!かっこいい!」
三好さゆ「思わずきゅんとしちゃったよ!すごいね森田くん・・・!」
森田雄馬「・・・いや、今のはマジで言ったんだけど」
三好さゆ「えっ?」
森田雄馬「ちゃんと考えろよ、真剣に告白してるんだから」
三好さゆ「っええええ!森田くんの好きな女の子って私だったの!?」
ってことはつまり、私のために声優養成所に通い出して、本当に役を掴むまでになったってこと!?
森田くん、私のこと、好きすぎない!?
三好さゆ「・・・どっちか選ばないとだめ?」
森田雄馬「ん?どっちかって?」
三好さゆ「彼氏と推し、両方になってくれると、嬉しいんだけど」
三好さゆ「だめですか?雄馬くん」
森田雄馬と雨宮雄馬。二人同時に問いかけると、雄馬くんは少しだけ照れた顔をして言った。
森田雄馬「・・・さゆならどっちも選んでもいいけど?」
森田雄馬「そのかわり、推し変は許さないからな」
三好さゆ「もう、これ以上きゅんとさせないで・・・!」
元ヤンの同級生が、彼氏兼推しになりました。
思わず、選べねぇ!!という声をあげてしまいました!森田くんのヒロインちゃんへの愛と行動力がすごいなと思いました!推しで、彼氏何てすごく贅沢ですね!素敵な作品ありがとうございました!
遅ればせながら、読ませていただきました!
これは...!贅沢な悩みで脳みそパンクしそうだ...!絶対選べないっ!
文章が上手くて、すらすら読み進められました!
好きな女の子のためにここまでするのは、世の中の男性も見習うべきですね笑