不器用な彼(脚本)
〇教室
今日は私の高校の卒業式。
3年間通った高校や友達とも今日でお別れ。
私は夢だった獣医になるため春から北海道の大学に進学する。
そんな私には一つ心残りがある・・・。
それは彼──小田のことだ。
小田「なぁ!なぁ! 俺にも卒アルの寄書き書かせてよ!」
友人「小田!もちろんいいけどよ・・・。 ちゃんと綺麗に書けよな!」
小田「まかせろって! ええと・・・俺たちずっと友達・・・と!」
友人「っておい! めっちゃ字がキタネーじゃねぇか! はみ出すぎだし!」
友人「お前って本当に不器用だよなぁ。 その見た目で・・・。 スポーツも全然ダメだったし」
友人「まさに「残念なイケメン」って感じだったよな!」
小田「ひっでー! 傷ついちゃうぜ!」
友人「また小田が馬鹿やってる! あいつの不器用さってほんと神がかってるよねぇ!」
久保「そ、そうね。 ホントおかしいよねぇ」
久保「・・・。 またやってしまった」
小田「あ、あのさぁ久保・・・。 ちょっとこの後時間いいかな? 2人きりで話したいことがあって」
久保「え、いいけど・・・」
小田「ありがとう。 じゃあ先に行ってるから、また後で・・・」
久保「話したいことって・・・」
久保「もしかして・・・」
〇教室の外
小田「・・・悪いな。 卒業式の日にこんなところ呼び出したりして・・・」
久保「ううん、全然大丈夫・・・。 話って?」
小田「あ、あのさぁ! 大学!合格おめでとう!」
久保「えっ!?」
小田「久保とは長い付き合いだったのに、まだ言えてなかったと思って・・・」
久保「あ、ありがとう」
小田「でさ!4月から北海道で暮らす久保に渡したいものがあって・・・」
小田「コレ! 受け取ってくれないか!?」
久保「え!? マフラー!?」
久保「ってコレ・・・」
そのマフラーは太さが不揃いで、
一目で既製品ではないことがわかる手編みのマフラーだった。
久保「コ、コレ!? もしかして小田が・・・作ったの!?」
小田「あ、ああ・・・。 不恰好で申し訳ねーけど」
小田「久保が北海道に行ってしまう前にさ。 なんか渡したいなと思って」
小田「安直だなって自分でも思ったんだけど、こんなことしか思いつかなくて・・・」
小田「ほら!俺って不器用だろ・・・。 本当は合格がわかったタイミングで渡したかったんだけどさ」
小田「なかなか完成しなくて遅くなっちまった」
小田「・・・久保!?」
──私は溢れる涙をおさえられなかった。
私は知っているから。
小田の過去を──。
〇走行する車内
中学生の時
小田は交通事故に遭った
命に別状は無かったが、
頭を強く打ったことが原因で、
脳神経を損傷。
結果、自分の意志通り身体を動かすことが困難になる後遺症を抱えることになった。
でも、小田は辛いリハビリに耐えて、
今は、周りから不器用なだけだと思われる程度まで回復した。
そのことはこの高校では私だけしか知らない──。
〇教室の外
小田「お、おい!? そんな泣くなよ」
知らない人が見たら不器用な人が編んだ無骨なマフラーに見えるかもしれない。
でも、こんなマフラーでも今の小田が作るのは簡単ではないことを私は分かっている。
涙が──止まらない。
久保「ご、ごめん・・・。 マフラーありがとう! 大事にするね!」
私はもらったマフラーを首に巻いた。
まだ冬の寒さが残る夕暮れに、優しい暖かさを感じた。
──私は心残りだったあの事を打ち明けることにした。
久保「私さ・・・ホントは小田に不快に思われてるんじゃないかってずっと不安だったの・・・」
久保「私だけは小田の体の事情を知っているのに」
久保「みんなの小田への不器用イジりも止めなかった・・・」
久保「ずっと謝りたいと思ってて・・・。 ごめんなさい」
小田「そんなこと全然気にしてねぇよ!」
小田「俺は不器用レベルまで回復したんだって思えるからイジられても全然平気だしな」
小田「それに俺はわかってるよ! 久保は中学時代みたいに俺が孤立しないよう気をつかって何も言わなかったんだろ」
小田「みんな俺を腫物触るみたいによそよそしかったもんな・・・。 アレは正直ちょっと辛かった」
小田「むしろありがたかったんだ!! だから泣くなよ!!」
久保「う、うん」
小田「そもそもさ、俺が中学生の時にリハビリ頑張れたのだって久保のおかげなんだぜ!」
久保「えっ!?」
小田「あの頃俺も塞ぎこんでたし、友達もよそよそしくなってく一方だったけど、」
小田「久保だけは、俺に事故前と変わらずに話しかけてくれたから・・・」
小田「いつまでもくよくよしてられねぇなって思ってさ!」
小田「俺は久保に・・・救われてたんだ」
小田「ありがとう・・・」
久保「小田・・・」
小田「あ、あとさ! いや、あとってのもおかしいけど、てか、ホントは最初に言うべきだったんだろうけど・・・」
小田「俺、久保の事が好きだ!」
小田「ずっと・・・ずっと好きだったんだ!!」
小田「離れ離れになるってわかってから辛くて、俺、久保がすごく大事なんだ!!」
小田「気の利いた言葉とか全然言えなくてゴメン! でもこれが俺の率直な気持ちなんだ!!」
小田「俺と付き合って欲しい」
久保「もうなによその告白・・・。 急すぎるよ・・・」
久保「ホント・・・小田って・・・」
久保「不器用なんだから・・・」
久保さん、ちょっと退いてくれ……
俺が小田キュンを抱き締めるから……!
彼の不器用さに、理由がありそれがキャラクターに深みを持たせているなと感じました!これから、遠距離になる二人ですが、幸せになってもらいたいです!
ぶきっちょな小田君が可愛い!!ずっと見てられる!続編っ!続編をください!