緑の雲

旅猫

交差点の女神(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
かずき「ふぁー。 眠い。 昨日、寝るの遅かったからなぁ」
  渋谷駅前の交差点で、スマホを眺めながら信号待ちをしている。
  朝からなかなかの人混みだ。
  人の波に埋もれながら、さして興味もないSNSをスクロールしていく。
かなこ「おはよう! 眠そうだね」
かずき「あぁ、おはよ。 昨日、動画観てたら止められなくなってうっかり夜ふかししちゃってさ」
  同じ学校の『かなこ』だ。
  彼女は、人懐っこい性格で誰にでも臆する事なく話しかけてくる。
かなこ「どんな動画?」
かずき「なんか、渋谷の交差点に現れる女神の話でさ。 他人の好感度が分かるようになる能力を授けてくれるんだ」
かずき「好感度100%の相手に告白すると絶対に成功するっていう内容の動画だった」
かなこ「へぇぇ、面白いね。 相手の好感度かぁ。 ちょっと怖いけど、興味ある」
かずき「その能力を手に入れると気になる人の頭の上あたりに雲の形のマークが見えるんだ」
かずき「その雲に相手の好感度のパーセンテージが表示されてて、100%になると緑色になるんだ!」
かなこ「それにしても意外。 かずき君てそういうの好きなんだね」
かずき「そういうのって?」
かなこ「恋愛とか興味ないのかと思ってた。 女のコの話、全然しないじゃない」
かずき「やっ、そ、そんなことは・・・」
  興味がない訳ではない。
  何故なら俺は目の前にいるかなこの事が・・・。
  ・・・が、・・・・・・力が・・・欲しいか・・・?
かずき「え? 今、なんか言った?」
かなこ「私? 言ってないよ?」
  力が欲しいか?
かずき「(俺にだけ聞こえるのか?)」
かずき「(力ってなんの事だ? まさか、例の女神なのか? 力、欲しいです!)」
  俺は心の中で女神(?)の質問に答える。
  宜しい、力を授けてやろう。
  これでお前にはこの娘の好感度が分かる能力が備わった。
  好感度アップに励むがいい。
  あ、そうそう。
  言い忘れておったが、24時間以内に相手に告白しないとお前はバッタになるので気をつけるがいい。
かずき「え!バッタ?!! おいっ! ちょっと待てよっ!」
かなこ「バッタがどうしたの?」
  かなこの方を見て絶句する。
  何故なら彼女の頭上には昨日動画で見たのと同じような雲のマークが出ていたからだ。
かずき「(ほ、本当に能力を手に入れてしまったのか。)」
  と、言う事はあの女神(?)が言ったように24時間以内に好感度をあげて告白しないと、俺はバッタになってしまうのか?!
  高校生にしてそんな最後は嫌だー!
かずき「はっ!?」
  俺は気づいてしまった。
  かなこの俺に対する好感度が既に90%もあることを。
かずき「(ま、まさかかなこも俺の事を・・・?)」
かずき「あ、あのさ」
かなこ「うん?」
かずき「さっきの話の続きだけどさ」
かなこ「なんだっけ?」
かずき「俺が恋愛とかに興味ないっていう・・・。 そんな事はないんだなぁ」
かずき「なんなら今凄く気になってる子がいてさ」
かなこ「え!?」
かずき「なんならその子さ、今、俺の目の前に居るんだけど・・・」
かなこ「え? それって・・・?まさか」
かずき「そのまさか、だよ。 俺、君の事がずっと気になってたんだ」
かずき「俺と付き合ってくれないか?」
かなこ「・・・っ、ごめんね。 私、彼氏いるんだ」
かずき「え!?」
かなこ「あ、信号変わったよ。 ごめん、先に行くねっ」
かずき「え、え?! そんなんあり??」
さき「残念であったな」
かずき「いやいやいや。 おかしいでしょ」
かずき「好感度凄い高かったし、ここは成功の流れでしょ!?」
さき「彼女には既に付き合ってる彼氏がいるみたいだな」
さき「それにお前はまだ好感度100%になっていなかったしな」
かずき「90%もあったら相当好きだろう! そりゃ勘違いもするだろう」
さき「彼女はかなりの人好きだからな、大抵の人の好感度があのくらいだ。 ちなみに彼氏はもちろん100%だ」
かずき「聞きたくないわっ!」
かずき「はっ!? 俺ってバッタになっちまうのか?!」
さき「一応、告白はしたからバッタにはならずに済んだようだな。 ちなみに、この能力は告白した時点で消えます」
さき「では、さらばっ! 強く生きよ! 少年」
  こうして俺の恋は一つ幕を閉じた。
  信号はいつの間にかまた赤に変わっていた。

コメント

  • バッタにならなくてよかったね、みたいな。笑
    でも、人好きな人って誰に対しても好感度が高いんですね。
    自分に好意を持ってくれる人には、たいていの人は優しくなれますし、生きやすいのかな?と思いました。

  • 恋愛ゲームのようなこの能力、あれば色々便利かもしれないと思ってしまいましたが、感情を数値化するのは難しいですよね。
    今後のかずき君に幸あらんことを!

  • かなこちゃんのまさかの『彼氏います』に、私は目が点になりました。90%って! 逆にこの子を彼女にした場合、ちょっと心配になりますね。面白いシステムだけど、失敗した時のハンディが怖い!

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