ハチ公(様)前よりお送りいたします!!(脚本)
〇ハチ公前
──某日、ハチ公前──
一人の遠距離恋愛中の大学生が、ハチ公前に現れた
・・・久方ぶりの、彼女との再会を待ちわびて・・・
遠恋中の大学生(・・・・・・)
遠恋中の大学生(・・・いる・・・)
遠恋中の大学生(これは確実に・・・)
ハチ公「うえ~~~い!!」
ハチ公「待ち合わせのアイドル、ゴーストハチ公様、見参!!!!」
遠恋中の大学生(なんか、すンげえ やべぇやつ、キターーー!!)
──確かに・・・
どうやら、少しばかりねじの外れた、ハチ公(様)の幽霊(※自称)のようだ・・・
遠恋中の大学生(・・・視えなかったフリしよ・・・)
ハチ公「・・・おイ」
ハチ公「若造、俺のこと見えてンだろ」
遠恋中の大学生(・・・バレてら・・・)
ハチ公「無視しようたって、そうはさせねぇンだからなァァ!!」
──ハチ公(様)の 絡みひどめである──
遠恋中の大学生「はいはい、聞こえるし視えてますよ」
ハチ公「「はい」は1回だ」
ハチ公「ってか、俺様、幽霊なんだから、もう少し驚け!」
遠恋中の大学生「うち、実家が寺なんで・・・」
ハチ公「幽霊慣れしてるってワケか・・・」
遠恋中の大学生「・・・ええ、まぁ・・・」
遠恋中の大学生「なんか、すみません」
ハチ公「・・・謝られると、逆に傷つくわ」
──意外と繊細な、ハチ公(様)である──
ハチ公「まあ、だから俺様のことが視えるンだろうな」
遠恋中の大学生「そうかもしれませんね」
遠恋中の大学生「・・・あの、ところで・・・」
遠恋中の大学生「人と待ち合わせてるんですが・・・」
遠恋中の大学生「『ハチ公前』って、ここで合ってます?」
ハチ公「・・・オマエ、さっきから、俺様のハナシを完全に聞き流してたな・・・」
──ハチ公様もハチ公様だが、この大学生も大学生である・・・
ハチ公「合ってる合ってる」
ハチ公「俺様が、その『ハチ公様』だ」
遠恋中の大学生「幽霊様、すんません」
遠恋中の大学生「オレ、結構、方向音痴で・・・」
ハチ公「・・・周りを見てみろ」
〇ハチ公前
「──お待たせぇぇ~~!!」
待ち合わせに現れた女子高生「っはぁ~~~!! 遅刻しちゃったよ!!」
待ち合わせ中の女子高生「ふふ・・・」
待ち合わせ中の女子高生「思ったより、早かったね」
待ち合わせに現れた女子高生「ごっめん、遅れて!!」
待ち合わせ中の女子高生「大丈夫」
待ち合わせ中の女子高生「さ、行こ」
待ち合わせに現れた女子高生「うん!!」
〇ハチ公前
「お待たせしましたかな」
「坊ちゃま」
待ち合わせ中の青年「・・・爺や」
待ち合わせ中の青年「そんなに待ってないよ」
待ち合わせに現れた執事「それでは参りましょうか」
待ち合わせ中の青年「ああ」
〇ハチ公前
「・・・奴はまだか」
「すまない、待たせたな」
待ち合わせ中の異世界転生人「まったくだ」
待ち合わせ中の異世界転生人「転生に時間をかけやがって」
待ち合わせに現れた異世界転生人「・・・すまないな・・・」
待ち合わせ中の異世界転生人「まあ、おかげで時間が出来たから、土地勘がついたがな」
待ち合わせに現れた異世界転生人「分かりやすい待ち合わせ場所の指定、感謝する」
待ち合わせ中の異世界転生人「おうよ! 行くぜ!!」
待ち合わせに現れた異世界転生人「・・・ああ」
〇ハチ公前
ハチ公「な!!」
ハチ公「ここが、日本一有名な待ち合わせ場所」
ハチ公「『ハチ公様』前だ!!」
遠恋中の大学生(・・・なんか、変なのもいた気がするけど・・・)
遠恋中の大学生「とりあえず、合ってることは分かりました」
ハチ公「オマエの待ち人は、どんなヤツなんだ?」
遠恋中の大学生「今年から、都内の美大に通うようになった、彼女なんです」
ハチ公「・・・ほぉ~~! 芸術家の卵、とな」
ハチ公「感受性が豊かなら、そやつも、おれ様のことに気が付くかもな!」
遠恋中の大学生「・・・ちなみに、ハチ公サマは、ずっとここに?」
ハチ公「そうそう!」
ハチ公「まあ、100年近くはいるかな」
遠恋中の大学生「え!?」
遠恋中の大学生「そんなに!?!?」
ハチ公「おうよ!」
ハチ公「オレ様の主人が亡くなって、おれ様が死んで、ここに建てられて以来だからな」
遠恋中の大学生「・・・そっかぁ」
遠恋中の大学生「飼い主のこと、亡くなってからも、ずっと待ってたんですもんね」
ハチ公「おうよ!」
ハチ公「オレ様ぁ、日本一の『忠犬』だからな!!」
遠恋中の大学生「・・・」
ハチ公「オイオイ」
ハチ公「なんで、オマエが落ち込ンでんだ?」
遠恋中の大学生「・・・いや、だって」
遠恋中の大学生「ちゃんとハチ公様の話を聞いたら、結構、切ないじゃないですか」
遠恋中の大学生「100年経って、飼い主がここに来ないことも分かってるのに、ずっとここにいるんでしょ?」
ハチ公「うひゃひゃひゃひゃ!!」
遠恋中の大学生「ええ!? そこ、笑うとこ!?」
ハチ公「まあ、確かにそうなンだが」
ハチ公「ここに留まってンのも、悪いことばかりじゃねえからだヨ」
遠恋中の大学生「・・・それは、どういう・・・?」
「──あ~~~!!!」
「いたいた!!!!」
「おいでなすったようだぜ」
遠恋中の大学生(ハチ公様、隠れたな)
遠恋中の大学生「久しぶり!!」
都内の美大生「や~~~!! 良かった、迷子になってなくて」
遠恋中の大学生「あははははは」
遠恋中の大学生「助けてくれたヒトがいたからね」
遠恋中の大学生(・・・って、『ヒト』じゃないけどね)
都内の美大生「そう思って、ここを待ち合わせにしたのよ」
都内の美大生「とにかく、合えて良かったわ」
遠恋中の大学生「うん! ほんとに!!」
都内の美大生「・・・じゃ、久々のデートと行きましょうか!」
遠恋中の大学生「・・・ああ!!」
〇ハチ公前
遠恋中の大学生(・・・そういえば、ハチ公様の言ってた『悪いことじゃない』って、どういうことだろ?)
都内の美大生「・・・・・・」
都内の美大生「(あ り が と う)」
ハチ公「!!」
ハチ公「・・・ふふん。 カノジョのが、恋愛も霊力も、一枚上手みたいだナ」
ハチ公「・・・・・・」
〇ハチ公前
──確かにオレ様は、ご主人様と再会することは叶わなかった・・・
・・・けどな、この場所にいれば、たくさん見られるンだぜ・・・
〇ソーダ
───たくさんの 『再会』 を、な────
俺様キャラのハチ公に最初は驚きました。でも,読み進めていく内に,それは情の深さの表れだったということに気が付きました。ご主人に会うことは叶わなかったけれど,その分,情の深さが垣間見れて,ほっこりしました。
一癖あるも心優しいハチ公様、とても愛らしいですね。待ち合わせや再開がひっきりなしに起こるこのスポット、ハチ公様にとっては最高の場所ですね。
待ち合わせの異世界…のあたりで笑ってしまったんですが!
まじめな話を明るく書けるってすごいと思います!
ハチ公も楽しみながらそこにいるっていいですね。