誘拐プランナー Catcher in the lie

吉永久

エピソード10(脚本)

誘拐プランナー Catcher in the lie

吉永久

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〇オフィスのフロア
高木誘作「これから会う男は蛭間さんって言うらしい」
高木誘作「どんな男かは知らないが、こいつを利用しない手はない」
市原耕三(ここで話すやめてほしいんだが・・・)
平川盗愛「何をする気?」
高木誘作「いいか。盗愛はまず間違いなく殺される」
高木誘作「ヤクザってのは面子が大事な生き物だ」
高木誘作「まんまと盗みに入られれて、そのままにしておくわけがない」
平川盗愛「それはそうね」
高木誘作「そこで、盗愛には一回死んでもらう」

〇ラーメン屋のカウンター
平川盗愛「誘拐中、乗り込んできた輩と銃撃戦が始まる。私はその最中で死ぬの」
高木誘作「死ぬつもりだったってこと?」
平川盗愛「フリよ。あなたを囮に高飛びするつもりだった」

〇オフィスのフロア
平川盗愛「ああ。そういうこと」
高木誘作「そうそう」

〇地下道
  まずは俺を裏切れ
平川盗愛「お似合いよ、その無様な恰好」
  理由は何だっていい
高木誘作「取引させてくれ、あんたの大将と」
  そしたら俺が、なんとかして蛭間九傑に取り入る
  なるほど。でも、それからどうするつもりなの?
  決まってる、盗愛の案に乗る
  ・・・私の?

〇ラーメン屋のカウンター
平川盗愛「本人に直接売り捌こうかしらね」
高木誘作「大胆だね」

〇おしゃれな居間
樋口郷也「事件屋に約束したのは五千万だ。あんたはいくらでやる?」
高木誘作「四千万で」
  売りつけてやるのさ

〇高層階の部屋(段ボール無し)
平川盗愛「上等」
蛭間九傑「容赦しないんだな」
高木誘作「する必要ある?」
蛭間九傑「・・・ないな」
高木誘作「さ、目的も果たしたし行こうか」
蛭間九傑「ああ」
平川盗愛「・・・・・・」
平川盗愛「もう行ったかしら」
  そしたら、すぐに俺をGPSで追跡するんだ

〇オフィスのフロア
平川盗愛「そうは言うけどあなた、スマホ持ってないじゃない。どうやって?」
高木誘作「イッチ」
市原耕三「聞いてない! 私は何も聞いてないぞ!」
平川盗愛「賢明な判断ね」
高木誘作「そんな賢いイッチなら」
高木誘作「俺にこのまま、このスマホを貸しといたほうがいいこともわかるよね?」
市原耕三「もう好きにしてくれ!」
平川盗愛(少し可哀そうに見えてきたわ)
平川盗愛「それで、追跡してどうするの?」
高木誘作「俺は可能ならば樋口郷也まで接触する」
高木誘作「そうして蛭間さんの仕事を横から掻っ攫うようにしてみる」
高木誘作「当然、蛭間さんから恨みを買われるだろう」
高木誘作「そうでなくとも相手はヤクザだ。実情を知る相手は一人でも少ない方がいい」
高木誘作「そんなわけで俺のことも殺そうとするはずだ」
高木誘作「それが蛭間さん意思か、あるいは樋口郷也の密命かはともかくとしてね」
平川盗愛「そうはならなかったら?」

〇マンションの共用廊下
高木誘作「俺が思うに、初めから蝮田は殺される予定だった」
高木誘作「多分、蛭間さんと親密に・・・というか馴れ馴れし過ぎたんじゃないかな」
高木誘作「そしてやがて金の無心をするようになった、とか?」
高木誘作「それで疎ましく思ったから、殺すついでに最後に利用しようと思った」
高木誘作「口封じもできるし一石二鳥だ」
  俺の方からもそれとなく意識させてみるよ

〇オフィスのフロア
平川盗愛「随分とお膳立てするのね。それから?」
市原耕三(聞いてない。何も聞いてない)
高木誘作「蛭間さんが俺を殺そうとする間際に横槍を入れて欲しい」
平川盗愛「それってつまり後を追えってこと? でも私はその時には死んでるのよ?」
高木誘作「実際に追うのは別の奴だ。盗愛はそいつと連絡を取り合えばいい」
平川盗愛「別の奴って誰よ」
高木誘作「いるじゃないか──」

〇高層階の部屋(段ボール無し)
平川盗愛「さ、動き出したわよ。追いなさい」
???「追いなさいって、相手車じゃないっすか!」
平川盗愛「そうよ? あなたはいったい何で追うつもり?」
???「こちとら自転車っすよ!」
平川盗愛「呆れた。そんなんで追いつく気?」
???「車なら車って、初めから言ってくださいよ!」
平川盗愛「当てがあるの?」
???「・・・ないっす」
平川盗愛「無駄な問答だったわね。さ、つべこべ言わないでさっさと追ってちょうだい」
平川盗愛「あなた、私に借りがあるのよ。わかってる?」

〇タワーマンション
梅下三流「わかりましたよ! わかりました!」
  ──おあつらえ向きの奴が
梅下三流「追えばいいんでしょ!」
平川盗愛「くれぐれもバレないようにね」
梅下三流「クソォォォォォォォ!」

〇橋の上
梅下三流「ぜぇ・・・はぁ・・・」
平川盗愛「停まったわ。そろそろ頼むわよ」
梅下三流「はぁ・・・はぁ・・・」
梅下三流「人使いの荒い・・・」
平川盗愛「いいからさっさとやる!」
梅下三流「はいはい」
蛭間九傑「・・・最後まで人をこけにしやがって」
蛭間九傑「クソッ、サツか」
蛭間九傑「このタイミングで」
高木誘作「盗愛が殺されたの、もうバレたのかもね」
蛭間九傑「いくら何でも早すぎだろ!」
高木誘作「こんな朝っぱらに銃声。さすがにみんな飛び起きるよね」
高木誘作「とてもいい目覚めとは言えないだろうな」
蛭間九傑「クソ! 余裕こきやがって!」
高木誘作「うおっ!」
  蛭間さんは叩けば埃しか出ない体だ。警察は大の苦手
蛭間九傑「じゃあな」
  当然、逃げ出す
高木誘作「なっ!」
高木誘作「行っちゃった・・・」
高木誘作「あぶなっ!」
高木誘作(置き土産に撃ってくるとは思わなかった・・・)
梅下三流「大丈夫っすか?」
高木誘作「え、ああ、まぁ」
梅下三流「それにしても、運転しながらの片手撃ちなんて当たるわけないっすよね。馬鹿だなぁ」
高木誘作「いや、あれは警察をひきつけるためだろ」
梅下三流「どういうことっすか?」
高木誘作「銃声がしたら警察は確実に足を止める」
高木誘作「俺を囮にするつもりだったんだろ。咄嗟にしてはいい判断だ」
高木誘作「尤も、俺も逃げる気はなかったけどね」
梅下三流「ふーん、そういうもんですか」
高木誘作「それにしても」
高木誘作「よくあれで追いつけたね」
梅下三流「こう見ても自分、中学高校と野球部だったんで」
高木誘作「へぇ」
高木誘作(本当に運動部だったのか・・・)

〇おしゃれな居間
  だが叩けば埃が出るのは俺も一緒だ。警察に捕まれば実刑は免れない
  まず間違いなく懲役をくらったと高を括った蛭間さんは──
樋口郷也「事が片付いたらしいな」
蛭間九傑「おかげさまで」
  ──悠々と樋口郷也のもとを訪れる
樋口郷也「そうか・・・」
樋口郷也「なら」
樋口郷也「後はお前だけだな」
  おそらく蛭間さんもただじゃ済まないだろうが、きっと交渉するはずだ
蛭間九傑「高木誘作の殺害。それを本来貰うはずだった一千万で請け負いましょう」
  俺が娑婆に出て来られないことをいいことにね
  その根拠は?

〇マンションの共用廊下
高木誘作「決まってる」
高木誘作「樋口郷也を出し抜く方法さ」
蛭間九傑「樋口郷也を出し抜く?」
蛭間九傑「笑わせる」
高木誘作「俺は本気だよ」
蛭間九傑「策があるのか?」
高木誘作「もちろん。じゃなきゃ言わないよ」
高木誘作「聞くだけ聞いてよ。損はさせない」
蛭間九傑「詐欺師の口ぶりだな」
蛭間九傑「だが、聞いてやろう」
高木誘作「そう来なくっちゃ」
高木誘作「やり方は簡単さ」
高木誘作「平川盗愛を殺したうえで、殺していないことにする」
蛭間九傑「・・・なんだって?」
高木誘作「つまりさ、盗愛を殺す直前で逃げられたことにするんだよ」
高木誘作「だけど、何とか大事な拳銃は取り戻せた」
高木誘作「それを樋口郷也のもとに届けたうえでさ、とりあえず半額だけ頂くのさ」
蛭間九傑「無理だろ、そんなこと」
高木誘作「それは交渉次第じゃないかな。優先順位は拳銃の方が上だ」
高木誘作「それに平川盗愛を殺すという仕事を残しておけば、樋口郷也はまだ俺たちを処分はしないでおくはずだ」
蛭間九傑「それで?」
高木誘作「その二千万を持って高飛び」
高木誘作「しばらくして殺したことを電話か何かで伝えて、残りの金を届けさせる」
高木誘作「これで俺たちは生き残ったうえで、金も手に入る。万々歳だ」
  俺があらかじめ仕込んでおくのさ
  どうやら蛭間さんは、人の作戦をパクる傾向にあるみたいだからね

〇開けた交差点
  ヤクザってのは口座が持てない。やり取りは常に現金だ
  蛭間さんが樋口郷也から受け取ったその帰り道で──
  俺たちの出番ってわけ
蛭間九傑「な、なんで。それにお前・・・」
平川盗愛「どうしたの? 死人でも見たみたいな顔して」
高木誘作「なんでってそりゃ決まってるでしょ」
高木誘作「俺は誘拐プランナー、高木誘作」
高木誘作「蛭間さん、あんたを誘拐しにきたんだよ」

〇廃ビルのフロア
蛭間九傑「この縄を解けよ!」
蛭間九傑「言っておくがこんなことしても無駄だぞ」
蛭間九傑「俺のために身代金を払うような奴なんかいないからな!」
平川盗愛「それ、自分で言ってて虚しくならない?」
蛭間九傑「ぐぬぬ・・・」
平川盗愛「あの腰巾着のハゲは?」

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コメント

  • 早速読んで頂き、誠にありがとうございました‼🙇
    伏線回収がお見事で、配られたカードが綺麗にひっくり返っていくような快感を感じますね‼
    やはりコンゲーム物ってユーモアと共に、綿密なプロットが必要なんですね。感心いたしました🫡
    1枚も2枚も上手な主人公が、カッコイイですね。

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