2つの森の境(脚本)
〇大樹の下
この穏やかな空気が漂う場所には一つだけ不気味な場所がある。
〇古い洋館
それはニンゲンが住むと言われる西の森と東の森の境にある家だ。
〇地下室
館に向かったきり帰って来ない酔狂な友人を探しに僕達は館を訪れていた。
東の森の東の方に住む猫「なんだか気味が悪い所だ」
東の森の西の方に住む猫「そうかもしれない。だけど、ここにはもう怪物はいないらしいよ」
東の森の東の方に住む猫「本当なの?」
東の森の西の方に住む猫「たぶんね」
東の森の東の方に住む猫「ふーん。じゃあ怖がることないのか」
東の森の西の方に住む猫「そうそう。早く僕らの友を探し出そう」
東の森の東の方に住む猫「そうだね」
〇屋敷の書斎
東の森の東の方に住む猫「ここは何だ?」
東の森の西の方に住む猫「ここは図書室じゃないかな。これが本だし」
東の森の東の方に住む猫「図書室か・・・。つまらない感じの所だなぁ。本もまずそうだし。どこかに美味しいもの落ちてないかな」
東の森の西の方に住む猫「それならキッチンか食堂にあると思うよ」
東の森の東の方に住む猫「そうなのか!で、食堂って何?」
〇城の会議室
東の森の東の方に住む猫「これが食堂なのか・・・。美味そうな匂いがする。おや、この匂いは・・・」
東の森の西の方に住む猫「僕達の友を探し出したようだね」
東の森の北の方に住む猫「むしゃむしゃ。むしゃむしゃ」
東の森の東の方に住む猫「おーい」
東の森の西の方に住む猫「何してんのさ。美味しいものでもあった?」
東の森の北の方に住む猫「むしゃむしゃ。むしゃむしゃ」
東の森の東の方に住む猫「おーい」
東の森の西の方に住む猫「やれやれ。食べるのに夢中か・・・」
東の森の北の方に住む猫「むしゃむしゃ。むしゃむしゃ」
東の森の東の方に住む猫「おーい・・・」
東の森の西の方に住む猫「おかしいなぁ・・・」
東の森の北の方に住む猫「むしゃむしゃ。むしゃむしゃ」
東の森の東の方に住む猫「返事がない・・・。ちょっと、様子が変だし無理矢理にでも連れて帰る?」
東の森の西の方に住む猫「そうしよう」
僕達は僕達の友を抑えて僕達が住む東の森まで帰ることにした。
〇大樹の下
僕達は自分達が住む東の森に帰ってから、また、平和な日々を送るようになった。
僕達の友が食べていたものは怪物のエサだったような気もしたし、怪物が作った黒魔法の食べ物だったような気もする。
僕達は前のように遊んだ。だが、僕達の友は時々、あの館の方をじっと眺めているのだった。
(終)