読切(脚本)
〇黒
サンタクロースは
忘れられた
クリスマスは サンタの代わりに
ゾンビがうろついていた
その正体は・・・
〇ダイニング(食事なし)
望海 慧(のぞみ さとし)「あっ ママ?」
望海 晴香(のぞみ はるか)「お留守番 大丈夫?」
望海 慧(のぞみ さとし)「もう! 大丈夫だって お仕事がんばって」
望海 晴香(のぞみ はるか)「クリスマスはゾンビがうろついてるから 絶対 家から出ちゃダメよ」
望海 慧(のぞみ さとし)「そんなのウソだよ! 子供に留守番させるための」
望海 慧(のぞみ さとし)「クリスマスって つまらないな・・・」
望海 晴香(のぞみ はるか)「そう? ママが子供の頃は楽しかったわ」
望海 晴香(のぞみ はるか)「昔はサンタクロースが プレゼントを持ってきてくれたの」
望海 慧(のぞみ さとし)「親が買うんじゃないの?」
望海 晴香(のぞみ はるか)「昔はサンタさんが 世界中の子供に配ったのよ!」
望海 慧(のぞみ さとし)「ゾンビよりサンタがいいなぁ サンタに会いたい!!」
望海 慧(のぞみ さとし)「プレゼントは音楽プレイヤー!」
望海 晴香(のぞみ はるか)「じゃあ誕生日にね」
望海 慧(のぞみ さとし)「チェ そんな先か・・・」
望海 晴香(のぞみ はるか)「だって 今はサンタが居ないから」
望海 慧(のぞみ さとし)「つまんないの・・・」
〇一戸建ての庭先
〇アパートの台所
開いたドアから 侵入するゾンビ
〇シックなリビング
ゲームに夢中で 物音に気づかない
望海 慧(のぞみ さとし)「お風呂入んなきゃ ママに叱られる」
〇白いバスルーム
望海 慧(のぞみ さとし)「でも・・・ いいか ママもいないし」
望海 慧(のぞみ さとし)「ゲーム ゲーム!!」
浴槽には ゾンビが待ち構えていた
良い子だったら 襲われていただろう
〇シックなリビング
望海 慧(のぞみ さとし)「キャッキャッ! アハハハハ!」
背後に迫るゾンビ 無防備な慧
望海 慧(のぞみ さとし)「なんだ? 2階かな?」
駆けていく慧
カーテン側のゾンビには気づかない
〇可愛らしい部屋
望海 慧(のぞみ さとし)「泥棒 ママの部屋で何してる」
サンタ「近頃の子供は サンタクロースを知らないんだな・・・」
望海 慧(のぞみ さとし)「サンタ? 本当にサンタ!?」
サンタ「おお 珍しい ワシを知ってるのか?」
望海 慧(のぞみ さとし)「僕 あなたのファンだよ!」
望海 慧(のぞみ さとし)「会いたかったんだ」
サンタ「ホーホーホー!(サンタ笑い)」
〇アパレルショップ
藤野 恵子(ふじの けいこ)「望海さんも ご主人亡くして大変ね まだローン 残ってるんでしょ?」
望海 晴香(のぞみ はるか)「ええ 立派な家を残してくれて でも ローンも立派で・・・」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「クリスマスも ガンガン稼がなきゃね」
望海 晴香(のぞみ はるか)「そういえば いつからサンタ居なくなったのでしょう?」
望海 晴香(のぞみ はるか)「私たちの子供の頃は 居ましたよね」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「その頃にさ サンタ姿の泥棒が流行ったじゃない」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「間違って サンタ姿の店員が捕まったり 紛らわしくて」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「だから サンタの扮装が禁止になって」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「一時的に クリスマスを自粛してるうちに・・・」
望海 晴香(のぞみ はるか)「それで下火になったのですか?」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「みんな用心して クリスマスは閉じ籠るようになって」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「子供にも外出しないよう ゾンビ出るからって」
望海 晴香(のぞみ はるか)「子供たち可哀想 夢がなくなりましたね」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「今の時代は 夢より安全よ!」
藤野 佳苗(ふじの かなえ)「ママ お仕事いつ終わるの?」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「アラ 危ないじゃない! 外はゾンビが・・・」
藤野 佳苗(ふじの かなえ)「ハイハイ そんなの過保護なウソでしょ」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「しょうがないわね・・・ もう少しだから」
望海 晴香(のぞみ はるか)「佳苗ちゃん 今晩は」
藤野 佳苗(ふじの かなえ)「慧くんのママ メリークリスマス!!」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「そんな呪文どこで覚えたの? 近頃 誰も言わないのに」
藤野 佳苗(ふじの かなえ)「へへへ 昔のドラマ見たの サンタって居たんでしょ?」
望海 晴香(のぞみ はるか)「そうね 本物のサンタさんは 何してるのかしら?」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「そんなの 元々居ないわよ! サンタこそウソっぱち 今頃きっと──」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「生きる屍ね!!」
藤野 佳苗(ふじの かなえ)「それじゃあ 丸でゾンビじゃん」
〇可愛らしい部屋
サンタ「それも取ってくれ 中々 立派な金杯だ」
望海 慧(のぞみ さとし)「でも これウチのだよ・・・」
サンタ「昔な ワシがクリスマスの日に プレゼントした金杯だよ」
望海 慧(のぞみ さとし)「そうなの!? ママが買ったのじゃないんだ」
サンタ「ホーホーホー プレゼントじゃよ!! もっと良いプレゼントに交換したいから 一旦預かるね」
望海 慧(のぞみ さとし)「嬉しいな ハイ!!」
サンタ「その置物も 見事な品だゾウ」
望海 慧(のぞみ さとし)「これもサンタさんが くれた物?」
サンタ「もちろんじゃ!! もっと良い物に交換するぞ 一旦預かるね」
望海 慧(のぞみ さとし)「きっと ママ喜ぶね!!」
サンタ「えーと・・・次はママの宝石箱を たくさん交換したい宝石があるなぁ」
サンタ「ホーホーホー!!」
望海 慧(のぞみ さとし)「キャー」
ゾンビが サンタに襲いかかる
サンタ「コイツ 恨みでもあるのか!!」
望海 慧(のぞみ さとし)「サンタさんに 何するんだ」
バットで ゾンビを追い払う慧
悲しげに引き下がるゾンビ
サンタ「助かった 勇敢な子だね」
望海 慧(のぞみ さとし)「エヘン エヘン あいつ弱虫だよ」
サンタ(いや・・・子供には 牙を剥かなかった)
サンタ(俺には しつこく絡んできたのに 俺に恨みでも?)
サンタ「坊や 他の家のプレゼントも 交換したいんだ 手伝ってくれるかい?」
望海 慧(のぞみ さとし)「うん いいよ!!」
サンタ(いざとなったら このガキを誘拐して 身代金って手もあるな ヒヒヒ)
〇埋立地
ゾンビ「うううう」
捨てられたゴミを
抱きしめるゾンビ
〇クリスマスツリーのある広場
いつからだろう
俺が忘れられたのは・・・
子供たちの記憶から
俺の存在が消えるたび
だんだん体は腐り 醜い姿に・・・
〇埋立地
そして 今ではすっかり──
ゾンビ(どこかの子供が 一人でもいい 俺に気づいてくれたら)
ゾンビ(元の姿に戻れるかも・・・)
ゾンビ(にしても 憎たらしいあの野郎!)
ゾンビ(あいつだ あいつのせいで人々は俺を忘れたのだ!!)
ゾンビ(ぶっ殺す!!!)
〇高級一戸建て
泥棒サンタ「ここのプレゼントを回収しよう」
望海 慧(のぞみ さとし)「家の人に見つかるよ サンタって こっそり入るんでしょ?」
泥棒サンタ「ホーホーホー ちゃんと下調べしてある」
泥棒サンタ「コイツらは 海外にバカンス中だ」
豪邸に侵入するサンタと慧
あとをつけるゾンビ
〇豪華な部屋
泥棒サンタ「回収しなきゃいけない物ばかりだ これは忙しいぞ!!」
袋の中に高級品を詰め込み
荒稼ぎする泥棒サンタ
泥棒サンタ「これだからサンタはやめられん」
泥棒サンタ「もっとも クリスマスが寂れてから サンタ効果も薄れたがな」
〇おしゃれな居間
望海 慧(のぞみ さとし)「大きなお家」
望海 慧(のぞみ さとし)「これは!」
望海 慧(のぞみ さとし)「音楽プレイヤー!!」
望海 慧(のぞみ さとし)「欲しいなぁ・・・」
望海 慧(のぞみ さとし)「聞くだけなら・・・」
耳にはめて 曲を再生する
流れてきた曲は──
〇豪華な部屋
泥棒サンタ「しつこいやつ!!」
大事に抱えた
スノードームを落とすゾンビ
泥棒サンタ「これはサンタクロースの? お前は サンタの味方か?」
泥棒サンタ「だから俺を憎んでるのか?」
ゾンビ「うううう・・・」
泥棒サンタ「だが それはお門違いだぜ」
泥棒サンタ「人々がサンタを忘れたのは」
泥棒サンタ「俺のせいで 評判が落ちたからじゃない」
泥棒サンタ「みんな夢がキライなんだよ」
ゾンビ「??」
泥棒サンタ「夢を見ても 苦しいだけだ 夢を追っても 辛いだけだ」
泥棒サンタ「みんな大人になったら 夢なんか捨てちまうんだ」
泥棒サンタ「夢を語るのは 子供には却って毒だ」
ゾンビ「ぐううう・・・」
泥棒サンタ「サンタは いらない!! 夢なんて もう死んでる」
泥棒サンタ「夢は・・・ゾンビなんだ」
ゾンビ「・・・・・・・・・・・・・」
望海 慧(のぞみ さとし)「どうしたの? アッ ゾンビ!!」
ゾンビ「ウガアアアア」
子供に 怒りをぶつけそうになる
逃げるゾンビ
泥棒サンタ「愉快愉快!」
望海 慧(のぞみ さとし)「泣いてたよ・・・」
泥棒サンタ「鏡を見て 自分の醜さに 泣けてきたのさ」
望海 慧(のぞみ さとし)「これって・・・」
泥棒サンタ「そんなもん 捨てちまえ!」
望海 慧(のぞみ さとし)「どうして? サンタさんの大事なものでしょ?」
スノードームを渡す慧
泥棒サンタ「こんなもんを 大事に抱えやがって 哀れなやつ ヒヒヒヒ!」
望海 慧(のぞみ さとし)「笑い方が変わった!」
泥棒サンタ「ヒヒヒヒヒ 俺はサンタじゃねぇ!!」
望海 慧(のぞみ さとし)「サンタじゃない? だったら誰?」
泥棒サンタ「お前の仲間さ お前と同じ──」
泥棒サンタ「泥棒だ」
泥棒サンタ「コイ! クソガキ」
スノードームを袋に突っ込み
慧の手を掴む泥棒サンタ
望海 慧(のぞみ さとし)「いやだ」
手を振り払い
駆け出していく慧
泥棒サンタ「まて 小僧」
〇センター街
街で暴れるゾンビ
逃げ惑う人々
〇ラブホテル
ホスト「寒いから温まろう」
女子高生「まだ高校生なのに 困ります・・・」
ホスト「18歳はもう成人! さあ 大人になろうね」
ホスト「メリークリスマス!!」
ゾンビ「ガアアアア」
ゾンビ(クリスマスは そんなんじゃねぇ!!)
〇ホストクラブのVIPルーム
政治家「これでカジノの件は あなた方に」
資本家「ありがとうございます!! お礼に2億ほど」
政治家「尻拭いは税金で 損失は国民に押し付けるだけ」
「めでたいめでたい メリークリスマス!!」
ゾンビ「ガアアアア」
ゾンビ(クリスマスに 悪事を祝うな!!)
〇撮影スタジオのセット
子役「できないできないー!!」
芸能事務所社長「できるよ できるよ 天才子役だろ!」
芸能事務所社長「俺を困らせるな 8歳で業界を干されたいのか?」
芸能事務所社長「早く終わらせて 打上しようぜ メリークリスマス!!」
ゾンビ「ガアアアア」
ゾンビ(クリスマスに 子供で儲けるな!!)
〇ハチ公前
ゾンビ(クリスマスは そんなんじゃねぇ そんなんじゃねぇんだ!!)
人々を襲うゾンビ
目には涙があふれる
理解されない雄叫び
怒りが頂点に達し
ついに 怪物に
怒りの炎が
触れるものを 全て焼きつくす
警官「大人しくしろ 怪物!!」
警官「撃つぞ」
婦警「興奮して ますます暴れてます!!」
泥棒サンタ「面白え 撃たれちまえ!」
慧を追って 騒ぎを知った泥棒サンタ
怪物側も気づいて
怒りの炎をぶつける
泥棒サンタ「アチチ」
襲いくる怪物
倒れたサンタの袋から
スノードームが転げ落ちる
踏み潰して 砕いてしまう怪物
婦警「撃っちゃった どうしよう・・・」
泥棒サンタ「ザマーミロ!!」
警官「よくやった! 全て君の責任だからな」
婦警「ええええ」
警官「ところでアンタ どっかで見た顔だな!?」
泥棒サンタ「いや・・・ただのサンドイッチマンで💦」
警官「サンタの扮装は 禁止のはずだが?」
婦警「コレです コレ!」
婦警「泥棒サンタ!!」
警官「逮捕する!!」
泥棒サンタ「チクショー」
〇黒
怪物はゾンビに戻り
その体も煙となって 消えていった
全てが消えようという時
歌声が
「忘れん坊の サンタクロース♪」
「お化けじゃないよ 泥棒じゃないよ♪」
「思い出して
サンタクロース イズ カミング スーン♪」
望海 慧(のぞみ さとし)「サンタクロース イズ カミング スーン♪」
音楽プレイヤーで聞いた曲だった
藤野 佳苗(ふじの かなえ)「アッ 慧くん! なに その曲!?」
望海 晴香(のぞみ はるか)「懐かしい よく知ってたね!?」
慧を囲み 家族と友人で
サンタの唄を歌う
やがて周囲の人々も
婦人「懐かしいわね その歌」
若い娘「子供の頃 歌ったなぁ~」
少年「一緒に歌いたい!!」
「忘れん坊の サンタクロース~♪」
歌声が広がる
やがて大合唱に
〇ハチ公前
サンタクロースは息を吹き返す
望海 慧(のぞみ さとし)「これが 本物のサンタさん? イメージとちがう!」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「あらやだ めっちゃマッチョ~!!」
サンタは目を逸らした
そこへ 空から──
トナカイは甘えて 鼻をこすりつけた
サンタクロース「長いこと 待たせちまったな」
サンタクロース「坊や お家に帰りな プレゼントを届けるから」
望海 慧(のぞみ さとし)「ホント!? ボクね ボクね・・・」
サンタクロース「音楽プレイヤーだろ 子供の願いは分かるんだ」
望海 慧(のぞみ さとし)「ホンモノだ」
サンタクロース「ホーホーホー!!」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「風邪ひかないかしら?」
望海 晴香(のぞみ はるか)「来年は 服をプレゼントしましょうか?」
藤野 恵子(ふじの けいこ)「いいわね ウチの店のやつで!」
望海 慧(のぞみ さとし)「アッ見て 雪だ!!」
〇ハチ公前
藤野 佳苗(ふじの かなえ)「キレイ!!」
望海 晴香(のぞみ はるか)「素敵なクリスマスね」
〇星
サンタクロース「くしゅん!」
復活したサンタクロースは
大急ぎで世界中を駆け巡ったとさ
メリークリスマス!!
サンタが存在を忘れられてゾンビになるという設定は面白いですね。最初の展開から、ゾンビが敵かと思ってたら、実は・・・なパターンに驚かされました。
悪党有利で進んでどうなるかと思いましたが、因果応報な結末で良かったです。
ラストの緑色サンタは笑いました。ゾンビになる前から緑かよ!
ゾンビサンタも死んで、サンタは永久に消える…というラストになるかと思いましたが、クリスマスの素適な奇跡の物語でした。まあ、みんなクリスマス、バレンタイン、ハロウィン…好き勝手に解釈して自分の都合のいいように使っているのも現実なんですが…。
最初、ゾンビはお父さんかなぁと思い、泥棒サンタを懲らしめて、代わりに本物サンタを担当するのかと予想してました😊
街のウワサでサンタがゾンビになっていたのですね…😱
考えてみたらサンタクロースって都市伝説でしたね😅
噂次第で容姿も性質も変化するという、ある意味では怪異なのかもですね🤔
最後は少年の口遊んだクリスマスソングでサンタも元通り…イケメンサンタでしたか✨面白かったです😆ホーホーホ-