読切(脚本)
〇島
初音島(ういねじま)
〇海辺
作業員「う、うう・・・」
島民「おい!あんた、しっかりしろ!」
尾尻(おじり)「・・・連続するSSの地雷化事件、メアリー・スーの増加・・・」
尾尻(おじり)「その原因はここ初音島近辺にあるのは間違いない・・・!」
谷根(たにね)「だが、それを引き起こしているのは何なのか・・・」
谷根(たにね)「今の時代、そういった要素は書き手が避けるものだが・・・」
古参オタク「・・・・・・・・・」
古参オタク「・・・これはきっと”ニジラ”様に違いねえ」
若い腐女子「また爺様の”ニジラ”か!今時そんなキャラいるもんかよ!令和やぞ?」
古参オタク「・・・おい!!言葉を慎めよ」
古参オタク「あまり昔の美少女バカにしてっと、今にお前らの推しのイケメンにふんどし履かせて変態化しなきゃなんねえぞ!?」
尾尻(おじり)(ニジラ・・・・・・?)
〇先住民の村
尾尻(おじり)「ごめんください」
永吉(よきち)「アナタは東京の・・・」
尾尻(おじり)「失礼、君のおじいさんに会いたいんだ」
古参オタク「はいはい、なんですかな?」
尾尻(おじり)「さっき話していた”ニジラ”とは何なんです?」
古参オタク「・・・」
古参オタク「永吉、部屋に戻っていなさい」
永吉(よきち)「・・・はーい」
尾尻(おじり)「?」
古参オタク「すいませんね、あまり子供の前で離したくはないもので・・・」
古参オタク「・・・ニジラというのは、この島に古くから伝わる美少女キャラクターです」
尾尻(おじり)「古くから・・・萌えおこしですか?」
古参オタク「いや、もっと前・・・まだオタクが迫害されていた頃から”いた”とされています」
古参オタク「ニジラが現れると、周囲に学園ラブコメ展開が発生し、また人物のデッサンが崩れるとされています」
古参オタク「わかりやすく言うと・・・ゼロ年代の美少女アニメのようになるのです」
尾尻(おじり)「随分と具体的な・・・」
古参オタク「勿論、伝承の存在ですが・・・あんな事ができるのは、ニジラ様しか思いつきません」
尾尻(おじり)「なんだ!?」
古参オタク「じ、地雷要素発見を知らせる鐘の音じゃ・・・」
古参オタク「・・・ニジラが来たんだ!!」
〇山中の坂道
「ニジラだ!!ニジラが出たぞ!!」
「東京から来た博士が出くわしたってよ!!」
谷根(たにね)「・・・・・・・・・!!!!」
尾尻(おじり)「博士!?」
谷根(たにね)「・・・・・・尾尻くん」
谷根(たにね)「私は見た・・・確かにあれは、平成の美少女キャラだ・・・!!」
尾尻(おじり)「やはりニジラ・・・!!」
谷根(たにね)「ニジラ!?それがヤツの名か!?」
谷根(たにね)「!!!!!!」
尾尻(おじり)「やっ、山の向こうに・・・!!」
谷根(たにね)「────────!!!!」
谷根(たにね)「異様に大きな目、乳袋、令和ではあり得ないキャラ造形・・・!!」
尾尻(おじり)「・・・・・・あれがニジラか!!」
〇東京全景
東京
〇大会議室
谷根(たにね)「・・・我々が初音島で発見した美少女キャラクター」
谷根(たにね)「島の伝説に基づき、これを”ニジラ”と命名します」
谷根(たにね)「デッサンの崩れた体型や、耳に響く高い声など、特徴はゼロ年代・・・30年ほど前に生息していた美少女と一致します」
「デッサン崩れてるのは作者の絵が下手だからじゃないかー?」
谷根(たにね)「うっさい!!!!」
谷根(たにね)「えー・・・・このニジラが何故今になって令和の世に現れたのか?」
谷根(たにね)「恐らくTwitterの規約改定により・・・」
「X!」
谷根(たにね)「やかましい!!!!」
谷根(たにね)「・・・えー、並びに界隈の意識のアップデートにより居場所の無くなったニジラは、住処を追い出されて」
谷根(たにね)「この地上に姿を現した、と考察されます」
「先生、ニジラはこのTapNovelに現れるのでしょうか?」
谷根(たにね)「可能性としては十分あります」
谷根(たにね)「・・・ここは、ニジラのような美少女キャラクターが生存できる好条件が揃っていますからね」
谷根(たにね)「創作者にとっては天国のような場所であるTapNovelですが、同時にニジラにとっても格好の住処なんです」
〇電車の中
戦隊ヒーロー「やだねえ、大失格だのユアストーリーだの・・・その上今度はニジラときたもんだ」
戦隊ヒーロー「もしTapNovelに転がり込んできたら、どうなるってんだよ?」
日常アニメの美少女「あなたなんか真っ先に狙われるわよ?」
なろう系の転生者「冗談じゃないよ!」
なろう系の転生者「せっかく異世界オ○ガから逃げてきた大事な作品だもの・・・潰されてなるもんか」
〇広い和室
新聞記者「・・・先生、どうにかニジラを倒す手段はないんですか?」
谷根(たにね)「とんでもない!令和の価値観をもってしても根絶できないニジラを、どうやって倒すというのです?」
谷根(たにね)「私も今対策を練っています、何か分かればすぐに知らせます」
新聞記者「では、我々はこれで・・・」
谷根(たにね)「・・・・・・・・・・・・」
尾尻(おじり)「先生・・・」
谷根(たにね)「・・・・・皆、ニジラを倒す事ばかり考えている」
谷根(たにね)「何故みんな、ニジラのコンテンツ力の謎について解明しようとしないんだ?」
谷根(たにね)「令和の価値観の中でも、あの絵柄で生存を保っているんだぞ?それなのに・・・」
尾尻(おじり)「・・・」
永吉(よきち)「先生、どうしたんだろう・・・」
尾尻(おじり)「・・・先生は古いオタクだから、ニジラを殺したくないんだよ」
尾尻(おじり)「なんだ!?」
谷根(たにね)「み、みんな大変だ!!」
谷根(たにね)「ニジラが東京湾に!!!!」
〇沖合
ニジラ「がおー!!!!」
〇川沿いの公園
兵士「あれがニジラか・・・!!」
兵士「デッサンが崩れすぎている、まるで奇形だ・・・!!」
兵士「それなのに二本足で立って歩いてくる・・・あんなバケモノに勝てるのか!?」
兵士「問題ない!なんせこっちには・・・」
兵士「アクション洋画から取り寄せた戦車があるんだ!萌え豚の喜ぶ美少女が肉密度120%の洋画に勝てるわけがねぇ!」
兵士「ブッ殺せ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
〇沖合
〇川沿いの公園
兵士「効いてない・・・・・・!?」
兵士「ウソだろ!?制作費810兆の洋画から引っ張ってきたのに!?」
〇沖合
ニジラ「うにゃ〜!」
〇川沿いの公園
兵士「う、うわあああ〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!」
〇東京全景
〇施設の展望台
リポーター「信じられません・・・みなさん、全く信じられません!!」
リポーター「ご覧ください!TapNovelの投稿作品がまるで昔の電○文庫のようなラインナップに!」
リポーター「なんという時代錯誤!これにはず○だもんも怒りの辛口レビューです!」
〇大企業のオフィスビル
ニジラ「・・・・・・・・・」
〇施設の展望台
リポーター「にっ、ニジラがおっぱいでビルを挟みました!すごい乳圧です!」
リポーター「いよいよ最後!みなさん、さようなら!さようなら・・・・・・」
〇東京全景
・・・・・・・・・・・・
ニジラは、TapNovelを破壊し、蹂躙した後に、東京湾に姿を消した・・・
〇荒廃した街
尾尻(おじり)「ま、街が・・・・・・・・・!!」
谷根(たにね)「・・・・・これが、ニジラの力か」
谷根(たにね)「いくら蔑もうとも、アレもまた時代を乗り越えた作品の一つ。それが本気で暴れれば、令和の作品など・・・」
尾尻(おじり)「・・・・・・」
谷根(たにね)「んっ?電話・・・もしもし・・・」
谷根(たにね)「・・・・・・・・・・・・」
谷根(たにね)「・・・わかった、伝えておくよ」
尾尻(おじり)「博士?」
谷根(たにね)「・・・・・・尾尻くん、芹川(せりかわ)くんから連絡があった」
尾尻(おじり)「先輩から?」
谷根(たにね)「見せたいものがあるそうだ、君一人で来るようにと・・・」
尾尻(おじり)「・・・・・・・・・」
〇廃工場
芹川博士の研究所
〇古生物の研究室
芹川(せりかわ)「やあやあハツカネズミくん!!大学以来じゃあないか」
芹川(せりかわ)「私はこの通り廃ガレージを買っての底辺研究者だが、研究所を地下シェルターに作った為なんとか助かったよ」
尾尻(おじり)「・・・そのハツカネズミくんっていうのどうにかなりません?」
芹川(せりかわ)「何を言うんだい、大学の頃は私の実験によく協力してくれたじゃあないか」
尾尻(おじり)「・・・騙して実験台にしたの間違いじゃないですか」
芹川(せりかわ)「言い方が気に入らないかい? だったらモルモッ・・・」
尾尻(おじり)「それはだめです!各方面に怒られます!」
芹川(せりかわ)「はっはっは!!冗談だよ、科学者ジョークさ」
芹川(せりかわ)「・・・久々の再会だ、茶でも入れよう」
芹川(せりかわ)「アイスティーしかないけど、いいかな?」
尾尻(おじり)「・・・いただきます」
〇古生物の研究室
芹川(せりかわ)「・・・懐かしいね」
芹川(せりかわ)「昔はよくこうしてアイスティーをしばいたものだ、密かに私の作った新薬を混ぜて」
尾尻(おじり)「・・・昔話をするためだけに呼んだんじゃないでしょう」
尾尻(おじり)「何なんです、見せたいものって」
芹川(せりかわ)「・・・・・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・・・ハツカネズミくん、今から君に見せるものについてだが」
芹川(せりかわ)「私はこれを、まだ世間に公開すべきではないと考えている」
芹川(せりかわ)「君を散々実験台にした私のような人間が言うんだ、その意味はわかるだろう?」
芹川(せりかわ)「だから・・・ここで見たことは誰にも言わないでほしい」
尾尻(おじり)「・・・・・・・・・」
尾尻(おじり)「言いませんよ。先輩がそこまで言うなら、相当まずいでしょうし」
芹川(せりかわ)「ありがとう、そういう真面目な所は大好きだよ」
芹川(せりかわ)「・・・こっちだ、ついてきてくれ」
〇魔法陣のある研究室
尾尻(おじり)「先輩、これは・・・」
芹川(せりかわ)「見ての通り、異世界ファンタジー物のお姫様だ。ここに・・・」
芹川(せりかわ)「これを投入する」
尾尻(おじり)「これは?」
芹川(せりかわ)「・・・・・・」
尾尻(おじり)「・・・・・・・・・なっ!?!?」
尾尻(おじり)「う・・・うわああああああああっ!!!!!!!!」
〇古生物の研究室
芹川(せりかわ)「・・・・・・落ち着いたかい?」
尾尻(おじり)「・・・・・・・・・」
芹川(せりかわ)「すまない、あんな物を見せてしまって」
尾尻(おじり)「・・・何なんですか、あれ」
尾尻(おじり)「あのカワイイお姫様が、一瞬で小太りのおばさんに・・・!!」
芹川(せりかわ)「・・・・・・」
芹川(せりかわ)「私は空気に関した研究をしていたんだ。酸素の方じゃなくて────」
芹川(せりかわ)「───界隈や場に存在する方の”空気”さ。我々二次元のキャラクターにとっても重要なものだからね」
芹川(せりかわ)「そしてアレは・・・その研究の過程で偶然見つけたものだ」
芹川(せりかわ)「場の空気を一瞬にしてアップデートし尽くし、あらゆる価値観を覚醒、つまりはポリコレ化してしまう、和製コンテンツ破壊物質」
芹川(せりかわ)「・・・私はこれに”ポリコレンデストロイヤー”という名前をつけた」
尾尻(おじり)「何故こんな恐ろしいものを!?」
芹川(せりかわ)「私だって好きで作ったわけじゃない、言っただろう?偶然見つけてしまったと」
芹川(せりかわ)「それに私も、これをそのまま世にだそうだなんて思っちゃいない。あくまで目標は平和利用さ・・・」
芹川(せりかわ)「・・・でも、そんな事も言ってられなくなった。わかるだろう?」
尾尻(おじり)「・・・・・ニジラですか」
芹川(せりかわ)「ニジラはいわば、純度1000%の萌えと古い価値観の化身。どれだけコンテンツ力があろうと、ポリコレは最大の弱点だ」
芹川(せりかわ)「ポリコレンデストロイヤーを使えばニジラは確実に倒せる・・・・・が、怖いのはその後だよ」
尾尻(おじり)「その後・・・?」
芹川(せりかわ)「・・・ハツカネズミ君、もしも一旦このポリコレンデストロイヤーを使ってしまったが最後。世界のアフィカスが黙ってないだろう」
芹川(せりかわ)「売上対売上、視聴率対視聴率、その上さらにこの恐怖の武器を加えることは、二次元の民として許すことはできない!そうだろう?」
尾尻(おじり)「先輩・・・」
芹川(せりかわ)「・・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・少し、外に出たい。一緒に来てほしい」
尾尻(おじり)「・・・ええ、いいですよ」
〇荒廃した街
芹川(せりかわ)「・・・酷い有様だね」
尾尻(おじり)「ニジラが通った後は全部こうです、何もかも踏み潰されて・・・」
芹川(せりかわ)「あれは・・・」
若い腐女子「いやあ~〜〜〜っ!私の推しが〜〜〜!」
芹川(せりかわ)「・・・男性キャラクターの変態化、ニジラの影響か」
尾尻(おじり)「ニジラの居た時代は、男性キャラクターなんてギャグキャラ扱いでしたからね」
尾尻(おじり)「ああやって、どんな魅力的なキャラクターもフンドシ姿の変態にされてしまう。それが原作やファンへの冒涜になろうと」
美少女「お兄様・・・どこに行ってしまったの!?一緒に避難していたのに・・・!!」
美少女「私を一人にしないで!うわああ〜〜ん!!」
芹川(せりかわ)「・・・ラブコメ作品からアニメ化の際に主人公を抹消、百合アニメとして世に放つ。これも平成の産物か」
尾尻(おじり)「優しい世界だなんて言われてますが、俺には原作への冒涜にしか見えません」
尾尻(おじり)「昨日までラブコメヒロインやってたのに今日から主人公への想いを忘れて百合をやれ、俺だったらぶん殴ってますよ」
芹川(せりかわ)「・・・・・・・・・」
〇廃工場
〇古生物の研究室
芹川(せりかわ)「・・・・・ハツカネズミくん」
芹川(せりかわ)「私達の平成って、醜くないか?」
尾尻(おじり)「・・・全てがそうとは言いません。しかし、昭和ほどでは無いにしろ”狂った時代”の側面を持つのは確かですしね」
尾尻(おじり)「幸せだったのは確かですが、苦しんだ人間がいるのも確かです」
芹川(せりかわ)「・・・・・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・・・・決めたよ」
芹川(せりかわ)「ポリコレンデストロイヤーを使う」
尾尻(おじり)「な・・・・・・ッ」
芹川(せりかわ)「あんな光景がまだ繰り広げられるのなら、何もしないワケにはいくまい?」
芹川(せりかわ)「なあに、私が公表しなければいい話さ」
尾尻(おじり)「先輩・・・!!」
芹川(せりかわ)「たしか・・・博士が海軍にコネがあったハズだ。船を貸してくれないか、頼んでみてくれないか?」
尾尻(おじり)「はいっ!先輩のためなら喜んで!」
尾尻(おじり)「・・・あ、そうだ」
芹川(せりかわ)「・・・何かあるのかい?」
尾尻(おじり)「事態が終息したら、温泉でも行きませんか?」
芹川(せりかわ)「・・・・・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・いいね、考えておくよ」
尾尻(おじり)「はい!よーし、これから忙しくなるぞ・・・!」
芹川(せりかわ)「・・・・・・・・・」
〇魔法陣のある研究室
「全データ削除、カンリョウ こんぴゅーたヲ、しゃっとだうんシマス」
〇古生物の研究室
芹川(せりかわ)「・・・・・・・・・・・・」
芹川(せりかわ)(・・・資料は全て削除しても、 全ては私の頭の中にある・・・・・・)
芹川(せりかわ)「・・・・・・・・・」
────二日後、海軍と協力してのニジラ撃滅作戦が開始された。
〇飛空戦艦
〇漁船の上
芹川(せりかわ)「・・・・さっきの戦艦と別の船になってないか?」
尾尻(おじり)「しっ!大人の事情です先輩!」
谷根(たにね)「・・・・・・芹川くん、本当にニジラを倒せるのかね?」
芹川(せりかわ)「ポリコレがどれだけのコンテンツをダメにしてきたかはご存知でしょう?確実に仕留められますよ」
芹川(せりかわ)「もっとも、東京湾は作品の芽吹かぬ死の世界になるでしょうが」
谷根(たにね)「・・・・・・」
兵士「ニジラ発見!沖合の海中で眠っています!」
尾尻(おじり)「・・・いよいよですね」
芹川(せりかわ)「・・・・・・うむ、潜水服に着替えよう」
〇沖合
〇水中
芹川(せりかわ)「別に私一人でもよかったんだが・・・」
尾尻(おじり)「バカな、素人のあなた一人を海に放り込めますか?」
尾尻(おじり)「あなたの運動神経の無さはよーく知ってますからね!」
芹川(せりかわ)「厳しいねぇ・・・」
ニジラ「ZZZZZZZZZZZZ・・・・・・」
尾尻(おじり)「・・・・・・思い切り寝てますね」
芹川(せりかわ)「よし、ここにポリコレンデストロイヤーをセットする」
芹川(せりかわ)「重要な過程は手作業でやる必要がある。君は先に上がっていてくれたまえ」
尾尻(おじり)「そんな、危険すぎます!もし巻き込まれたら・・・!」
芹川(せりかわ)「私も君を抱えて逃げる自信はないよ!なあに、合図したら引っ張り上げてくれればいい」
尾尻(おじり)「・・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・温泉、行きたいからね」
尾尻(おじり)「では・・・・・・お先です」
芹川(せりかわ)「・・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・・・・さて」
ニジラ「・・・・・・・・・?」
芹川(せりかわ)「・・・・異物は異物同士、仲良く消えようじゃないか。ニジラ」
〇漁船の上
尾尻(おじり)「先輩、遅いな・・・」
兵士「たっ、大変です!尾尻さん!!」
兵士「芹川博士の潜水服、引き上げ用のワイヤーが分離しています!!」
尾尻(おじり)「な・・・なんだって!!!?じゃあ・・・!!」
〇水中
ニジラ「────────────!?!?!?!?」
芹川(せりかわ)「・・・・・・聞こえているか?尾尻くん」
芹川(せりかわ)「実験は成功だ。何のトラブルもない・・・そのワイヤーは、私が切断したんだ」
〇漁船の上
尾尻(おじり)「それじゃ・・・まさか先輩は!?!?」
芹川「御名答、私は最初からこのつもりできた」
〇水中
芹川(せりかわ)「考えてもみたまえ、すべての資料を処分したとしても、こいつの設計図は私の頭の中にある」
芹川(せりかわ)「なら、私ごと葬り去るというのがベストな方法・・・いや、最初からコレしか道はなかった」
芹川(せりかわ)「・・・温泉の件については本当に申し訳がない。私のような女性向けのサブキャラのババアじゃなくて若い女の子を誘うといい」
芹川(せりかわ)「君は男性向けラブコメの主人公として生まれたからね、その方が似合うさ・・・」
芹川(せりかわ)「幸福に暮らせよ、ハツカネズミくん・・・」
芹川(せりかわ)「・・・さようなら!」
〇漁船の上
尾尻(おじり)「なっ、何ですかそれ!?意味わかりませんよ!!先輩!先輩!応答を・・・・・・!!」
兵士「おっ、尾尻さん!!アレを・・・!?」
〇沖合
ニジラ「うにゃあああ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
〇水の中
芹川(せりかわ)「──────ニジラの断末魔か。私の意識も遠くなってきたな」
芹川(せりかわ)「所詮私もニジラも、時代遅れの平成の産物・・・令和には行けず、瞬瞬必生の末に朽ち果てて消える」
芹川(せりかわ)「ましてや・・・尾尻くんは男性向けラブコメの主人公。いつまでもこんなババアに突き合わせちゃ悪い────」
〇温泉旅館
〇教会の控室
〇教会の控室
〇教会の中
〇水の中
芹川(せりかわ)「・・・・・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・・・・可笑しいな、とっくに諦めはついていたハズなのに」
芹川(せりかわ)「なんで・・・なんでこんなに悲しいんだろう・・・・・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・・・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・・・・ハツカネズミくん・・・・・」
芹川(せりかわ)「・・・行きたかったなあ、温泉・・・」
〇漁船の上
尾尻(おじり)「せん・・・ぱい・・・・・・っ」
兵士「・・・・・全軍、敬礼!!」
────こうして、ニジラは倒された。
未来を欲した、一人の女性キャラクターを犠牲にして。
谷根(たにね)「・・・・・・・・・」
谷根(たにね)「・・・・あのニジラが、最後の一作とは思えない」
谷根(たにね)「もし今後、我々の中に古い物を悪として排除する動きが残るのであれば・・・」
谷根(たにね)「またTapNovelのどこかに、第二第三のニジラが現れてこないとは言い切れない・・・」
〇沖合
おわり