きよしとこの夜(脚本)
〇男の子の一人部屋
聖史「ええと・・・」
聖史「これで映ってるかな?」
友美(ふふ・・・)
聖史「あ、ちゃんと 映ってるっぽいな!」
聖史「よし、それじゃ・・・」
聖史「友美〜、メリクリ〜!」
友美(メリークリスマス・・・)
聖史「ごめんな、今年も そっちに帰れなくて」
聖史「だから、せめて ビデオメッセージだけでも って思って・・・」
聖史「今年 初チャレンジでーす!」
聖史「って、やっぱ ひとりでしゃべるの 恥ずかしいな」
聖史「誰も見てないよな?」
聖史「見られてたら マジでハズいんだけど・・・」
友美(ふふ・・・)
聖史「ええと、こっちは すごい大雪です」
聖史「ぶっちゃけヤバイよな! 今年の降雪量」
聖史「でも、これ!」
聖史「友美から もらったマフラー!」
聖史「これ巻いて 元気に過ごしてまーす!」
聖史「ちなみに、今日は 皆でケーキを食う予定」
聖史「あ、もちろん 男ばっかりの クリスマスだからな!」
聖史「そこんとこ 心配しなくていいから!」
友美(・・・本当に?)
聖史「って、友美なら そんな心配しないか」
聖史「俺のこと、誰よりも 信じてくれているもんな! うん・・・」
聖史「・・・」
聖史「ああ、くそ・・・ 緊張するな・・・」
聖史「ってヤバ・・・ い、今の、入ってないよな?」
聖史「大丈夫だよな? うん・・・うん・・・」
聖史「・・・よし!」
聖史「あのさ、友美!」
聖史「その・・・俺たちってさ、 付き合って、もう9年・・・」
聖史「来年には 10年になるだろ?」
聖史「それでさ、その・・・ 俺なりに考えた クリスマスプレゼントっつーか」
聖史「今年は、このビデオレターが プレゼントのつもりなんだけど・・・」
聖史「来年さ、お前のことを 迎えに行く」
聖史「来年の今日、こっちで ふたりで過ごせるように 絶対迎えに行くから!」
聖史「だからさ、その・・・ ちょっと気が早いけど・・・」
聖史「来年のクリスマス 予約させてください! よろしく!」
聖史「・・・よし、言えた!」
友美(・・・)
聖史「じゃあ、ええと また電話するな!」
聖史「来年のクリスマスの件 マジでよろしく!」
聖史「それじゃ メリクリ〜!」
〇黒
──プツッ・・・
〇綺麗な病室
職員1「・・・ねえ 『メリクリ』ってなに?」
職員2「『メリークリスマス』の 略じゃない?」
職員1「じゃあ、『電話』って?」
職員2「えっ、学校で習ったでしょ! 昔の通信機器だって・・・」
友美「あの・・・」
職員2「ああ、友美さん? いつものビデオレター 観終わりました?」
職員1「それじゃ、ごはん食べます? 今日は、クリスマスの 特別メニューなんですよ」
友美「はい、じゃあ・・・」
職員1「では、ここに運びますね」
友美「ありがとうございます・・・」
友美「・・・ふう」
職員さんたちが出ていき
私は、ぼんやりと窓辺を見た。
友美「あら、雪・・・」
〇男の子の一人部屋
ねえ、聖史(きよし)くん・・・
今年のクリスマスは
こっちも雪だよ
もうずっとずっと・・・
クリスマスの予約
入れたままなのに・・・
〇綺麗な病室
いつになったら
あなたは、迎えに来てくれるの?
最初はあったかいなカップルのやりとりかな?と思って読んでいましたが、最後のオチには少し怖さを感じました…。
ずーっと待ち続けるのも過酷ですが、彼の方は約束を覚えているのでしょうか…。そもそも生きているのか…。
切ないラブストーリーのような、でもかなり長いですよね(笑)彼の、セリフがとても優しくて温かい気持ちになりました。いいストーリーでした。
現代のお話ではなかったんですね…。いなくなった理由は書かれていませんが、その分友美さんの想いに集中できてよかったです。寂しいけれど、こうして静かに一生愛せる人がいるのは素敵だなと思いました。電話は私もびっくりしました。