サンタ遅刻するってよ

要 九十九

最高のクリスマス(脚本)

サンタ遅刻するってよ

要 九十九

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〇海辺の街
  12月31日
  賛他町
  本来なら新年を迎える準備を終え
  ゆっくりと年越しを待つ穏やかな日に
  この町は大変な事になっていた
  その理由はたった1つ
  クリスマスがやってこなかったからだ

〇イルミネーションのある通り
  この町の担当サンタが病に倒れ
  楽しいクリスマスが来なかった
  一部の住民が
  おかしくなってしまった
  そして12月31日
  事後処理に追われている他のサンタに代わって
  手の空いた私がやっと派遣されたのだ
  私はこの町のサンタ補佐と協力して
  おかしくなってしまった住民を元に戻す為に
  奮戦する事になった

〇商店街
サンタ補佐「一人目 ファイルによると」
サンタ補佐「名前は二羽鳥一」
サンタ補佐「クリスマスが来なかった影響で」
サンタ補佐「こうなりました」
サンタ「1ヶ月遭難でもした!?」
サンタ補佐「彼は毎年クリスマスにチキンを腹一杯 食べるのが楽しみだったらしいです」
サンタ補佐「その願いが叶わずに」
サンタ「どれだけチキンが好きだったの!?」
サンタ「はい チキン!」
サンタ「次は?」
サンタ補佐「二人目は」
サンタ補佐「佐藤太郎さん」
サンタ補佐「彼は」
サンタ補佐「こうなりました」
サンタ「核戦争でも起きた!?」
サンタ「明らかに現代の見た目じゃない!」
佐藤太郎「ヒャッハァーー!」
サンタ「中身まで世紀末!?」
サンタ補佐「彼は毎年子どもたちに 演奏を聞かせるのが楽しみだったらしいです」
サンタ補佐「ですが町がこうなって 子どもが集まらず」
サンタ補佐「悲しみの余り」
サンタ「悲しみの方向性見失ってない?」
サンタ「わかった」
サンタ「向こうで演奏する場所作るから 子どもたちに聞かせてあげて」
佐藤太郎「感謝するぜ!」
佐藤太郎「ヒャッハァーー!」
サンタ「うん」
サンタ「子どもたちが怖がるから とりあえずその口調は直そうね」
サンタ補佐「三人目は」
サンタ補佐「口藤古一さん」
サンタ補佐「彼は」
サンタ補佐「こうなりました」
サンタ「毒薬飲まされた!?」
サンタ「これ完全に遊園地で黒っぽい組織の 取引現場目撃したよね!?」
口藤古一「真実はいつも1つか2つ!」
サンタ「やっぱりそうじゃねーか!」
サンタ「完全に寄せてるよね?」
サンタ「サンタ界隈でも見た目は子どもの あのシリーズ大人気だから私知ってるよ?」
サンタ補佐「彼はクリスマスに遊園地で 幼なじみに告白する予定だったのが」
サンタ補佐「この混乱のせいで ままならず」
サンタ「な、なるほど」
サンタ「戻れるかは分からんが」
サンタ「向こうで良さげな演奏始まるから そこで告白してきなさい」
口藤古一「助かったぜ バーロー!」
サンタ「色々とヤバそうだから 君はもう静かにしといて」
  それからも私たちは
  沢山の人の願いを叶えていった

〇住宅街
サンタ「おかしいな」
サンタ補佐「どうしました?」
サンタ「町がここまで酷い状態なら」
サンタ「サンタ玉にこの事態の沈静化をお願いしようと思ったんじゃが」
サンタ「反応がなくて」
  説明しよう
  サンタ玉とは
  サンタが持っている
  白い袋の中に入っている不思議な玉だ
  これを掴んで誰かの欲しい物や
  願い事を思い浮かべれば
  欲しい物が出てきたり
  願いごとに関係した出来事が起きる
  という優れもの
  ただこれで出した物の取り消しは
  サンタではなく
  願いを叶えて貰った本人が
  サンタ玉に触れないと出来ないので
  願う時には要注意だ
サンタ「チキン出した時とかは 反応したんだがなぁ」
サンタ補佐「・・・・・・」
サンタ「とりあえず次の方」
サンタ補佐「は、はい」
サンタ補佐「名前は伊転世界さん」
サンタ補佐「彼は」
サンタ補佐「こうなりました」
サンタ「異世界転移かな?」
サンタ「間違いなく ファンタジー世界から来たよね?」
サンタ補佐「彼はクリスマスに 買う予定だったゲームが」
サンタ補佐「町の混乱で買えずに」
サンタ「買えないとこうなるの!?」
伊転世界「また俺何かやっちゃいました?」
サンタ「何もやってないよ!」
サンタ「はい ゲーム!」
  それからも住民を助け
  いよいよ
サンタ「次で最後か」
サンタ補佐「はい」
サンタ補佐「最後の方は 医務数等さん」
サンタ補佐「彼は」
サンタ補佐「こうなりました」
サンタ「悪の組織に改造された!?」
サンタ「人型ですらなくなってるけど」
サンタ補佐「彼は町の混乱に乗じた」
サンタ補佐「マッドサイエンティストに捕まって」
サンタ「マジじゃねーか!」
サンタ「この人だけクリスマスがどうとか 以前の問題だよね?」
医務数等「・・・ケテ」
サンタ「うん?」
医務数等「タス・・・ケテ・・・」
サンタ「直ぐに戻すから待ってて!」

〇イルミネーションのある通り
サンタ「かなり時間はかかったけど」
サンタ「これで一通り終わったか」
サンタ補佐「そう・・・ですね・・・」
サンタ「ねぇ 補佐くん」
サンタ補佐「はい?」
サンタ「君ずっと元気がないみたいだけど」
サンタ「何かあった?」
サンタ補佐「・・・」
サンタ補佐「サンタさん」
サンタ補佐「私の懺悔」
サンタ補佐「聴いて貰えますか?」
サンタ「喜んで」
  彼女が語った事実はこうだった
  誰かが楽しく暮らせてるって事は
  裏で頑張ってくれている誰かがいる
  それすら理解せずに
  楽しいクリスマスが来るのが
  当たり前だと
  何もしないで浮かれる
  ここの住民を見て
  この町のクリスマスの為に
  直前まで頑張って働いていた彼女は
  サンタ玉に願ってしまったのだ
  クリスマスなんて来なければいいと
  その結果サンタの病気や
  この町の惨状に繋がったのだと
サンタ「私は君の考えを 否定も肯定も出来ない」
サンタ「でも今日見て分かっただろう?」
サンタ「みんな頑張ってくれている誰かを 蔑ろにしている訳じゃない」
サンタ「誰もがクリスマスを 素敵な1日にしたいってだけなんだ」
サンタ「その気持ちに正しいも間違いもない」
サンタ「だから・・・」
サンタ補佐「・・・・・・」
サンタ補佐「はい」

〇海辺の街
  かくして
  この町を騒がせた彼女の願いは
  無事にキャンセルされ
  この町に平和が訪れた
  新年まで後少し
  しかし私には
  まだやる事があった

〇商店街
  私が何をしたかって?
  そんなの決まってる
  彼女を連れて
  迷惑をかけたここのサンタや
  住民たちに謝りに行く事にした

〇住宅街
  全ては来年
  彼女や町の住民が
  最高のクリスマスをおくれるように

〇朝日
  住民全員に謝り終わる頃には
  新年をとっくに迎えていた
サンタ補佐「サンタさん」
サンタ「うん?」
サンタ補佐「私がやった事は 謝っても許されない事です」
サンタ補佐「でも」
サンタ補佐「ありがとうございました」
サンタ「サンタとして 当然の事じゃよ」
サンタ「じゃあ 改めて」
サンタ「メリークリスマス!」
サンタ「そして」
サンタ「新年明けましておめでとう」
サンタ補佐「はい!」
  おしまい

コメント

  • あれこれ散りばめられたパロディが楽しかったです。
    サンタさんのツッコミが冴え渡っていました。笑
    読んでる人まで笑顔にさせる、凄腕サンタさんです!

  • お願い事が叶うサンタ玉は,勿論サンタクロースしか持っていないのですよね?!私もサンタクロースに会って願いを叶えて欲しいなぁと思いました☆彡

  • 前半は誰か出る度にいちいちワァー!?と言ってしまいました。楽しかったです。後半は静かに心が温まりました。今回はみんなからクリスマスを遠ざける側になってしまいましたが、陰で支える人に目がいく彼女のことを、私は魅力的に思います。世界にそういう人もいるというのがいいですね。いい街だなと思いました。

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