借リスマス(脚本)
〇町の電気屋
店員「歳末セール!本日はクリスマス大特価ですよ!」
女子学生「あの・・・ドライヤーを探してるんですが」
店員「はい、各メーカー取り揃えております!」
女子学生「じゃあ、1つお借りしますね!」
店員「はい!お借り上げ、ありがとうござい・・・」
店員「ちょっと待ったぁああ!」
店員「今、借りるって言いました?」
女子学生「は・・・はい」
店員「商品はご購入いただかないと!」
女子学生「え、でも。借り物競争してるんで!」
店員「なるほど、借り物競争ね。それなら、今回は特別に・・・」
店員「とか、言うはずないでしょうが!!」
女子学生「で、ですよねえ・・・」
店員「学生のお遊びに付き合うほど、暇じゃないんで。他をあたってください!」
女子学生「すみませんでした・・・」
店員「ったく、最近の学生は!」
サンタ「もし、お尋ねしたいんじゃが・・・」
店員「え?」
サンタ「ドライ何とかは置いておらんかの」
店員「あ・・・ドライヤーですか?」
サンタ「そう、ドライヤーじゃ。では、いただくとするかの」
店員「ちょっと待ったぁあああ!」
サンタ「何か?」
店員「もちろん、お代は払ってもらえるんでしょうね?」
サンタ「サンタから金をとる気かね」
店員「はあ?何言ってんだ、おっさん。サンタに化ければタダになるとでも思ってるのか?」
サンタ「失敬な。わしは列記としたサンタじゃ」
店員「金が無けりゃ、列記とした万引き犯だろ!」
サンタ「承知した。金があれば良いのじゃな」
店員「え?ちょっと、おっさん! まあ、何も取ってないならいいけど・・・」
〇町の電気屋
店員「売り上げ、上々! そろそろ店じまいするか・・・」
サンタ「こんばんは」
店員「出た!!ドライヤー泥棒!」
サンタ「何を言う。ちゃーんと、代金を支払うわい」
店員「まいどありー!」
サンタ「現金なやつじゃて」
店員「どのドライヤーにいたしますか?」
サンタ「全部じゃ!」
店員「ぜ、ぜんぶーーーーっ!!」
店員「ま・・・毎度あり~」
店員「在庫がすっからかんだ。あれだけのドライヤー、マンモスの毛でも乾かすつもりか?」
女子学生「あ、あの!!まだ開いてますか?」
店員「ん?君は、昼間の借り物ガール?」
女子学生「先ほどは失礼しました。 売り物を借りたいだなんて」
店員「こちらも、そっけない対応で反省してます。ドライヤー、何とかなりましたか?」
女子学生「近所のおばあさんが、貸してくださいました。でも・・・」
店員「でも?」
女子学生「返しに行く途中につまずいて、壊してしまって・・・おばあさんは弁償はいらないって言うんですが、気になってしまって」
店員「ああ、あいにくですが、ドライヤーは在庫切れでして・・・」
女子学生「ええっ!!1個も無いんですか?」
店員「申し訳ない」
女子学生「どの電気屋も閉まってて、最後の希望だったのに・・・」
店員「明日の朝、出直しては?」
女子学生「だめです! おばあさんがお風呂上がりに、髪が濡れたままだと思うと・・・」
店員「確かに。風邪をひいちゃ気の毒だ」
女子学生「ついてないです。今日はクリスマスなのに・・・」
店員「クリスマスの奇跡、信じてみないか?」
女子学生「え?」
店員「やるんだよ、本気の、借り物競争。 おばあさんにドライヤーを貸してくれる家を一緒に探そう」
女子学生「一緒に・・・いいんですか?」
店員「クリスマスは、みんなが幸せにならなくちゃな」
女子学生「あ・・・」
女子学生「ありがとうございます!!」
〇住宅街
「ドライヤーを貸してください!!」
家の人「これからお風呂。ごめんね」
家の人「悪いな。ドライヤーは使わない主義だ!」
家にいた人「拙者の家ではないので、勝手に貸すわけには・・・すまぬ・・・」
店員「なかなか貸してもらえそうにないな・・・」
女子学生「こうしてる間にも、おばあさんは・・・」
店員「あ、あれは!!」
女子学生「サンタさん?」
店員「ドライヤーを買い占めた客だ! 1つ買い戻せないか交渉してみよう」
女子学生「そんなこと、できませんよ・・・!」
〇街中の公園
サンタ「ふう、遅くなったわい」
女子学生「わわっ!公園にトナカイがいますよ!」
店員「しっ!袋の中から何か取り出した・・・」
サンタ「ほっほっほ。ソリのネジも締められたことじゃし、一件落着じゃて」
店員「ちょっと待ったぁあああ!」
店員「それ、ドライヤーじゃなくて、ドライバーじゃないか?」
サンタ「ほっほっほ。道具の名前が思い出せんくての。苦労して、何とか見つけたのじゃよ」
店員「じゃあ、買い占めたドライヤーは?」
サンタ「質屋に入っとる」
店員「な・・・質屋だとぉおお!」
サンタ「借りた金を返さんといかんじゃろ。不必要な物は、全部、換金したわい」
店員「行動に無駄がありすぎるだろ!てか、借金してたのかよ、おっさん!」
サンタ「おっさんではない。わしは、サンタじゃ」
女子学生「あの、サンタさんなら、わたしのお願い、聞いてもらえますか」
店員「こんなやつの言うことを真に受けるな。質屋に行こう!」
女子学生「でも、トナカイもソリもあるし・・・」
店員「なりきってんだよ!きっとこのトナカイもソリも、借金してまでレンタルしてるんだろうよ!」
サンタ「おばあさんなら、大丈夫じゃよ」
女子学生「え・・・?」
サンタ「では、さらば!!」
〇キラキラ
「メリークリスマス!!」
〇街中の公園
女子学生「クリスマスの・・・奇跡」
店員「し・・・信じられん」
おばあさん「おや、あなたは昼間の女の子かい」
女子学生「え?おばあさん!」
おばあさん「新しいドライヤーを玄関に置いてくれたのは、あんたかね」
女子学生「いえ、私じゃないです・・・それ、きっとサンタさんが・・・」
おばあさん「遠慮してんのかい?不法侵入くらい目をつむるよ。むしろ礼を言わせておくれ。ありがとう、お嬢さん。素敵なプレゼントじゃったよ」
女子学生「こんなことになるなんて・・・」
店員「みんなが幸せになる、さすがクリスマスの奇跡だったな」
女子学生「あの、ありがとうございました!付き合ってもらって」
店員「とんでもない、こちらも最高の体験をさせてもらいましたよ。さ、帰りましょうか、送りますよ」
女子学生「いえ、自分で帰れます!!では!」
店員「まあ、仕方ないよな」
店員「メリークリスマス!!」
1年後ーーー
〇シックなバー
バーテンダー「いらっしゃい」
サンタ「何とかバーは、知らんかの?」
サンタさんが少しボケてるところがナイスでした。物の名前を覚えてなくて、少しだけ違った名前の物になってしまったところが最高です。
サンタさんお金持ち!と思ったら借金を抱えているとは!笑
お店の人が勢いよくて好きです。
なんだかんだで面倒見がいい人だなぁと思いました。
会話のテンポよくておもしろかったです。
お婆さんの健康を気遣うためにの借リスマス。いいですね、人が人を心配して、動くって調和がとれていて優しくなれますよね。いいストーリーだと思いました。