変わらないもの(脚本)
〇住宅街の公園
私が落ち着くのを待って管理人のおじいさんは手紙とあるものを渡してきた
管理人「これも渡しておくよ」
梓「え〜と。手紙はわかるけど、 この鍵って何?優衣、見覚えは?」
優衣「見たことない。 この鍵ってなんですか?」
管理人「ごめん、よくわからないんだ。 ただ手紙と一緒に渡して欲しいって頼まれてね」
梓「とりあえず手紙から読んでみない?」
優衣「そうだね」
『さいごのもんだいです。
わたしのいちばんのたからものと、
であったばしょはどこでしょう?』
優衣「出会った場所?」
梓「作られた場所じゃなくて?」
優衣「お姉ちゃんの宝物ってなに?」
梓「とにかくまた歩き回ってみようよ。 またなにか分かることがあるかも」
管理人「そうするといいよ。 でももうすぐ暗くなるから、あまり遅くなったら駄目だよ」
優衣「はい。ありがとうございました」
私と梓は管理人のおじいさんにお礼を言い公園を出た
〇川沿いの原っぱ
いろいろと歩き回ってはみたけど、手紙に書かれてる場所が分からず気づけば川の辺りまで歩いてきてしまっていた
梓「駄目だ〜。さっぱり分からない!」
優衣「そもそも宝物が何なのかが分からないと探しようが──」
その時後ろの茂みが揺れ、振り向くと──
優衣「あの犬って!!」
〇土手
〇川沿いの原っぱ
優衣「あの時、私の人形を持っていった!」
梓「うわ!!ドロッグだ!!」
優衣「ド、ドロッグ?」
梓「そ!!ドロボーばっかりする犬! ドロボードッグ。略してドロッグ!! ちなみに命名、私!!」
優衣「名前とかどうでもいいよ〜!! なんかあのワンちゃん、怒ってない!?」
昔と変わらないあのワンちゃんは、唸り声をあげて私達を見ていた。
さすがに身の危険を感じた梓が・・・
梓「逃げるよ!!」
優衣「待って!!」
犬「ワン!ワン!ワン!」
私達が逃げるとワンちゃんが追いかけてきた。
後ろを振り返った私は足元の石に気づかずに・・・
優衣「わ!!」
梓「優衣!?」
コケた拍子に人形と持っていた鍵を落としてしまい。人形はワンちゃんが咥えてそのまま走り去り、鍵はなんと川に落としてしまった
優衣「!!人形が!」
梓「あっ!!優衣!?」
私はワンちゃんを全速力で追いかけた!
優衣「あれはお姉ちゃんが取り返してくれた大事な人形! 絶対、取り返さないと!!」
〇土手
優衣「いない!!」
〇住宅街の公園
優衣「ここにも!」
〇市街地の交差点
優衣「ここにも、いない・・・」
〇ボロい駄菓子屋
優衣「どうしよう・・・どこにもいない・・・」
どこを探してもワンちゃんの姿はなかった。
・・・鍵は川に落としてしまい、大事な人形も取られてしまった・・・
勝手に走り出して梓も置き去りにしてしまった。
優衣「梓に・・・謝ろう・・・」
せっかくここまで付き合ってくれた梓に申し訳なく思いながら私はさっきの川へと戻った・・・
〇川沿いの原っぱ
せめて鍵だけは見つけようと、川へと戻ってきた私は飛び込んできた光景に驚いた・・・
優衣「えっ!?」
梓「そっち見つかった?」
「駄目だ。こっちにはねぇよ」
「私の方も・・・。このあたりにはないのかな?」
「もしかしたら流されたのかも! もう少しあっちの方も探してみようか!」
そこには梓の他に人の姿があった。
皆、川の中に入りびしょ濡れになりながら、何かを探していた。
優衣「あれって・・・クラスの・・・」
そう、それは私のクラスメイトだった。
呆然とする私に気づいて梓が駆け寄ってきた。
梓「優衣!帰ってきたのね!」
優衣「梓」
梓「もう!一人で走って行くんだもん!」
優衣「ごめんね・・・でも、あの・・・これっていったい?」
梓「あの後クラスの皆に電話で事情を話したら、皆二つ返事ですぐに来てくれて、いま川に落ちた鍵を探してるの!!」
優衣「えっ!?」
梓「ちなみに今ここにいない人たちは・・・」
〇商店街
「こちらはドロッグの姿は確認できません!そっちは?」
〇見晴らしのいい公園
「こっちも駄目だ!!くそ!!ドロッグのやろう!余計な時には現れるくせに、探してる時は見つからねぇ!!!!」
〇学校脇の道
「ドロッグ発見!! 学校から商店街の方に歩いて行ってる!! 人形もちゃんとあるぞ!!」
〇商店街
「よし!!このままはさみ撃ちよ!!」
〇川沿いの原っぱ
梓「と、いうわけよ。 すぐに人形も戻ってくるわ!!」
優衣「な、なんで!?だって皆私の事、嫌ってたんじゃ!!」
梓「そんなわけないでしょ!!」
優衣「!!!」
梓「優衣がそう思い込んでただけ! 皆、私も優衣の事を嫌ってなんかいないよ!」
梓「たしかに優衣に話しかけづらそうにはしてたよ? それは・・・お姉さんを亡くして悲しい思いをしている優衣にどう接していいのか」
梓「どうすればいいのか分からなかっただけ・・・皆、優衣の事好きなんだよ」
梓「だって私たちみんな、小学校からずっと一緒に過ごしてきた友達でしょ?」
梓の言葉に胸が痛くなって涙が出そうになったとき──
「あったぞー!!!」
「よっしゃー!!!でかした!!」
「蓮也くん、ずっこけたかいがあったね!!」
「あんたも偶には役に立つことがあるのね!!恐れ入ったわ!!」
「どういう意味だ!!」
皆が笑っていると、遠くから自転車に乗った他のクラスメイトが人形を掲げながら猛スピードで向かってきた
「取り返したぞ!!」
「いや〜激しい死闘だったよ」
「いや、小池くんはドロッグが落とした人形を拾っただけじゃん!」
「そうだぜ!俺なんか見ろ!怪我までして・・・」
「拾ったあと安全な場所まで運んだじゃんか!」
「真っ先に逃げたとも言うわよ」
「・・・あの、せめて聞いてくれない?」
梓「ハイハイ!ちゃんと分かったから!!」
「まったく・・・えっと、西島これ・・・」
私は差し出された人形と鍵を受け取りながら涙が込み上げてきた。
「その、ごめんな。いままでちゃんと話をしようとしなくて・・・」
「私達、優衣ちゃんにどう接していいのか分からなくて・・・ずっと話しかけられずにいて・・・」
「でも、ちゃんと西島さんと話して、西島さんが抱えてるものを分かってあげれたら良かったんだ。ごめん」
優衣「・・・ちがう・・・ちがうよ! 私の方こそ、皆の気持ちも知らずに嫌われてるって勝手に思い込んでた!」
優衣「一人でずっと勝手に! 皆はなにも変わってないのに、私だけいつまでも立ち直れなくて!」
梓「そんなの当たり前だよ。 一番大好きだったお姉さんを亡くして、すぐに立ち直れないなんて当たり前なんだよ」
梓「お姉さんの事、優衣のせいじゃないって部外者の私達が言っても優衣のは自分を責め続けるのかもしれない。でも、信じて?」
梓「私達が変わってないように、絶対に変わってないものがある」
優衣「変わってないもの?」
梓「優衣のお母さんやお父さん、 なにより美穂さんが、いまでもずっと──」
梓「優衣のこと、大好きだってこと!!」
優衣「・・・あずさ・・・」
梓「だから優衣。 私達の間でごめんは無しにしよ?」
梓の言葉で私の中のナニかが解けていった気がした。
私は何年もまともに見ていなかった友達の顔を見渡した。
涙が流れてきたけど、それを拭い。
そして昔のような笑顔で・・・
優衣「みんな・・・」
優衣「ありがとう!!!」