第8話:愛と世界の始まり(脚本)
〇荒廃したショッピングモールの中
鐘星愛(無事に降りてこられたけれど・・・)
ゾンビ「ァァアアァァアアァァッ!」
黒目ゾンビ「ギギシャァァガアアアッ!」
ゾンビ「ァアッ!」
黒目ゾンビ「ギギシャァァガアアアッ!」
1階は地獄だった
無数のゾンビがひしめいていて
近くにある出口を封鎖している
鐘星愛「ミチくん、今の聞こえた?」
鐘星愛「ゾンビの声に混じって、子どもの声が 聞こえたような気がしたんだけれど・・・」
神門ミチ「・・・ゾンビのうなり声しか 聞こえないけど」
鐘星愛「気のせいか・・・それにしてもすごい数」
神門ミチ「・・・アニキの提案に従って もっと早く行動すべきだったんだ」
神門ミチ「オヤジが籠ろうなんて言うから・・・」
神門貴「愚痴をいっても事態は好転しない」
神門貴「どうにかして私を生かせ」
鐘星愛「・・・この状況でどうしろと?」
神門貴「それを考えるのが仕事だ。金はやろう。 ユウキと約束した3億に7億足してやる」
神門ミチ「先生に銃を向けるな」
神門貴「お前まで私に逆らうつもりか?」
神門ミチ「どうして命令するんだ。 みんなで力を合わせればいいじゃないか」
神門貴「支配者たるもの協力などせぬ。 命令あるのみ」
神門ミチ「・・・理解できない」
神門貴「お前もいつか分かる。 支配するものとされる者の違いがな」
神門ミチ「俺には一生わからない。 俺は先生と力を合わせる」
神門貴「情けない・・・勝手にしろ」
神門貴「ここで死ぬならそれだけの人間だった ということ。ユウキと同じだ」
神門貴「死にたくなくば、この状況を打破しろ」
鐘星愛「お金のためでも、脅されてるからでもない」
鐘星愛「先輩が助けてくれた命のため そしてミチくんのためにやる」
神門貴「動機なぞ何でもいい。早く実行しろ」
鐘星愛「・・・ミチくん このショッピングモールに詳しい?」
神門ミチ「何がどこにあるかくらいなら」
鐘星愛「玩具屋か電気屋はある?」
〇荒廃したショッピングモールの中
鐘星愛「準備はいい?」
神門ミチ「オッケー」
鐘星愛「作戦開始」
私は床に設置した打上花火に
点火して回った
ミチくんは試機用のスマホをタップし
アラームをスタートさせる
「シァアアァァアアァァッ!」
私たちは物陰に隠れ、ゾンビたちが
音にひかれて集まるのを見送る
鐘星愛「出口の様子はどう?」
神門ミチ「ダメだ・・・まだ何匹か残ってる」
ゾンビ「シァアアァァアアァァッ!」
黒目ゾンビ「ギギシャァァガアアアッ!」
神門貴「囮になって先を走れ。さらに10億やる」
鐘星愛「私はもうお金では動かない」
神門貴「死にたいのか?」
鐘星愛「・・・撃ったらゾンビが集まってくる。 それでもいいの?」
神門貴「下賤なプロレタリアの脅しに屈するくらいなら死を選ぶ。3秒やる。金か死か選べ」
鐘星愛「私の答えは・・・これよ!」
私は一気に間合いを詰め
ケイシャーダを放つ
鐘星愛(嘘・・・よけられた・・・!)
神門貴「そうくると思ったよ」
神門貴「ブルジョワを肥えた豚と侮るのは誤りだ。何をしてもプロレタリアより上なのだよ」
神門貴「貧乏を悔いて死ね」
銃声が響いた――が、私は無事だった
発砲の瞬間、ミチくんが飛びつき
弾の軌道が反れたのだ
神門貴「くっ、離せ! 邪魔するなミチ!」
神門ミチ「先生、早く逃げて!」
ミチくんと神門貴は銃を奪い合い
床でもつれるように取っ組み合っていた
鐘星愛「早く起きて! ゾンビが来る!」
「ィイァアッィイアアアッ!」
神門貴「くそっ! 助けろっ! 助けろーっ!」
神門ミチ「っ!」
神門貴「があああああああああああっ!」
鐘星愛「ミチくん! こっち!」
神門貴が餌食になるなか
私はミチくんの手を握って走り出した
神門ミチ「・・・俺はいいから・・・!」
鐘星愛「いいから走って!」
神門ミチ「ダメだ! 俺は・・・!」
ミチくんは足を止めると
歯型のついた左手を見せた
神門ミチ「俺はダメだ。先生だけで逃げてくれ」
鐘星愛「嫌よ!」
神門ミチ「どうして!」
鐘星愛「だって、ミチくんはまだ人間だから!」
神門ミチ「・・・人間だからこそだよ!」
神門ミチ「ゾンビになった姿なんて 先生には死んでも見られたくない」
神門ミチ「それにどうせ死ぬなら、せめて 好きな人の役に立って死にたいんだ」
神門ミチ「・・・だせえ告白。自分が嫌になるね」
鐘星愛「ミチくん・・・」
神門ミチ「先生、生きてくれよ!」
ミチくんは私に背を向けて走り出した
神門ミチ「お前ら、こっちだ! こっいに来い!」
「ィイァアッィイアアアッ!」
神門ミチ「そうだ! こっちだ!」
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