読切(脚本)
〇空
兄妹が買い物帰りに工事現場の下を歩いていた時に鉄骨がふってきた。
「お兄ちゃん、危ないっっっ!!」
美羽は咄嗟に兄を突き飛ばして庇いその場にうずくまった。
―――――――――
(・・・・・・・・・・・・ん??)
夢かと思ったが、そうではないらしい。
天使のような女神「おはようございます。気分はどうですか?」
牛山 礼二(天使)「・・・・・・・・・・・・おはようございます?」
俺は目をこすりながら挨拶を返した。
牛山 礼二(天使)「ここはどこだっ!美羽は?妹の美羽は無事なのか!?俺を庇って突き飛ばそうとして来た美羽を救うために・・・・・・」
牛山 礼二(天使)「その場に踏ん張ってとどまり、美羽を抱き締めて覆い被さったはずだが・・・・・・!?」
俺の頭の中は混乱していた。
天使のような女神「えっとね、まずここは天界だよ。あなたは妹さんを助けようとして鉄骨から守ろうして下敷きになったんだよ。覚えてるかなぁ?」
天使のお姉さんが言った。
牛山 礼二(天使)「ああ、なんとなく・・・・・・」
天使のような女神「そして私は女神なんだけど・・・あなたの妹の美羽ちゃんだけど、奇跡的に命は別状はないわ。でもまだ意識不明で寝ている状態よ」
牛山 礼二(天使)「そっかぁ~良かった」
俺は心底ホッとした。
天使のような女神「でもね、あなたの方は残念だけど死んでしまったの」
牛山 礼二(天使)「やっぱりそうか。だが美羽が無事なら俺はそれでもいい」
天使のような女神「ごめんなさい。私達も力不足で・・・本来なら死なずにすんだはずなのに・・・。貴方達の住む世界では人間一人を助ける為に」
天使のような女神「他人を犠牲にする事はあり得ないでしょう?だから助ける優先順位をつけないといけないの。本当に申し訳なかったと思っているわ」
女神さまは深々と頭を下げた。
牛山 礼二(天使)「いえ、気にしないで下さい。俺は満足していますから」
天使のような女神「ありがとう。あなたは優しい子ね。お詫びと言う訳ではないんだけど、別の世界に転生させてあげる。どう?異世界とか興味ある?」
牛山 礼二(天使)「はい。妹の美羽がいる所でお願いします」
天使のような女神「そうよね。男の子だもんね。それじゃあ、どんな能力が良いかなぁ?剣や魔法の才能とかもあるし・・・・・・あっ!そうだ!」
女神さまは何事かを思いついたようだ。
天使のような女神「あなた、ゲームとか好きだったわよね?」
牛山 礼二(天使)「はい。結構やりますよ」
天使のような女神「その世界で最強の剣士になれる才能をあげる。それと魔物を退治したり素材を集めたりする冒険者ギルドがあるんだけど・・・・・・」
天使のような女神「そこで一番ランクの高いS級の冒険者に認定してあげるわ。それから・・・・・・」
女神さまは次々と俺に与えてくれるチート能力を列挙していった。
天使のような女神「あとはねぇ~、これなんかどうかしら?」
と言って、何枚かの絵を見せてくれた。そこにはイケメンの男性達が描かれていた。
牛山 礼二(天使)「この人達は誰ですか?」
天使のような女神「これはねぇ、いわゆる乙女ゲーの世界なんだけど、その中の攻略対象のキャラクター達よ」
天使のような女神「ちなみにどのキャラを選んでも良いように全員分のシナリオを用意しておいたからね」
男キャラに囲まれて俺が旅をするのか?
俺は美羽に会いたいだけなんだ。
俺は女神様に抗議しようとしたその時―
牛山 礼二(天使)「それにしても、なんでこんなにいっぱいイケメンがいるんですか?」
俺は疑問を口に出した。
天使のような女神「それはね、今人気の乙女ゲームなんだけど、全ルートクリアすると隠しキャラが現れる仕組みになってるの」
天使のような女神「つまり全てのキャラを攻略しないと真のハッピーエンドにならないようになっているわけよ」
牛山 礼二(天使)「なんじゃそりゃ!?そんなの面倒くさくてやってられないぞ!!」
俺は思わず叫んでいた。
天使のような女神「うん?何か言った?」
牛山 礼二(天使)「いえ、なんでもないです・・・・・・」
俺はしぶしぶ引き下がった。
天使のような女神「まぁいいや。もうすぐ時間切れみたいだし、あなたを新しい世界に送ってあげるわ」
と女神様が言うと、目の前に大きな扉が現れた。
天使のような女神「この扉の向こうが異世界よ。貴方をこれから送る場所は、地球でいう所の中世の文化レベルね。言葉については心配しないで大丈夫よ」
天使のような女神「向こうに行ってすぐに話せるようになるから。それからあなたに与える能力は、既に私の方で選んであるから安心して」
天使のような女神「あと最後に一つ言い忘れていた事があるんだけど、あなたが行く世界には魔王がいて人類を脅かしているの」
天使のような女神「でも勇者も存在するから、いずれ出会う事になると思うわ」
天使のような女神「それと、もし困ったことがあったら、いつでも相談に乗ってあげられる様にしておくから、気軽に連絡してね。それじゃ頑張ってね~」
と一方的に言うと、女神様は消えてしまった。
牛山 礼二(天使)(おいおい、マジかよ。俺が異世界で乙女ゲーのイケメン共に囲まれて冒険の旅に出なきゃいけないのか?)
俺は途方に暮れながら、恐る恐る扉を開けてみた。
そこは雲の上のようなフワフワした空間で、そこにポツンと置かれた椅子に腰掛けている自分の姿が見えた。
どうやらあの世ではないらしい。
俺は意を決して一歩踏み出してみると、次の瞬間には見知らぬ場所にいた。
牛山 礼二(天使)「ここはどこだろう?」
見渡す限りの草原が広がっていた。
遠くには森らしきものも見える。
俺はとりあえず歩くことにした。
しばらく歩いていると、前方に大きな街が見えてきた。
門の前には行列ができていて、検問を受けているようだ。
並んでいる人達は身分証のようなものを提示している。
牛山 礼二(天使)「あれは冒険者カードか?」
俺は自分の服装を確認した。
宗教画でよく見掛ける一枚布を巻き付けて腰で縛った天使の白服の姿のままだ。靴は革製のブーツだ。
牛山 礼二(天使)「武器とか持ってないし、このままだと怪しまれるかもしれないな・・・・・・」
そう思った俺は一旦引き返し、女神さまにもらった絵を参考にしながら服と装備を整えた。
準備ができたところで改めて門に向かう
牛山礼二「この街に入りたいのですが、入れてもらえませんでしょうか?」
俺は順番待ちをしている人達に聞いてみた。
検問にいる人「ああ、構わないよ。この水晶玉に手を乗せてくれ」
牛山礼二「こうですか?」
検問にいる人「うむ、犯罪歴はないな。通行料は一人小銅貨5枚だ」
俺はお金を持っていない事を伝えた。
牛山礼二「すまない。今は持ち合わせがないんだ。後で必ず払うから、何とかならないだろうか?」
検問にいる人「ふーん、それならどこかで働いて稼いでくるんだな」
牛山礼二「そうします。ありがとうございました」
適当にビラ配りのバイトをして、なんとか入市税を支払って街の中に入った。
牛山礼二「さて、まずは冒険者ギルドを探すとするかな」
そう呟きながら、冒険者ギルドを探して歩き始めた。
しばらくすると、剣と盾が描かれた看板を見つけた。
牛山礼二「ここだな」
俺は扉を開けて中に入っていった。
冒険者達が酒を飲みながら談笑している。
受付カウンターは三ヶ所あり、そのうちの一つだけが空いていた。
牛山礼二「すみませ~ん」
俺が声を掛けると、若い女性が振り向いた。
酒場で飲んでるお姉さん「はい、何でしょう?」
牛山礼二「俺は旅の者でして妹の美羽を探しています。小柄で可愛くて天使のような娘です」
酒場で飲んでるお姉さん「天使のようなかわいい外見は貴方でしょう?」
女性はクスッと笑いながら言った。
牛山礼二「いえ、俺は違いますよ。俺は男です」
酒場で飲んでるお姉さん「あら、そうなの?じゃあ美羽さんはここにはいないわよ」
牛山礼二「そうですか。では妹がどこにいるか知りませんか?」
酒場で飲んでるお姉さん「そうねぇ・・・美羽って名前は聞いたことがないけど貴方が探してる可愛い女の子がいるPTだったらあの子達の事じゃないかしら?」
と言って、女性は自分の後ろにある掲示板を指し示した。
そこには依頼書と思われる紙が何枚も貼ってあった。
酒場で飲んでるお姉さん「あの真ん中あたりかしら。『虹色の女神』っていう冒険者のパーティーなんだけど・・・・・・」
と女性が説明してくれた。
俺はお礼を言って、早速その依頼を受けることにした。
冒険者カードを提示すれば、誰でも受注できるタイプのものらしい。
牛山礼二「それではよろしくお願い致します」
俺は一通りの説明を受けて、冒険者ギルドを後にした。
牛山礼二「よし、行くぞ!」
俺は意気揚々と出発した。
牛山礼二「えっと、『虹色の髪の乙女達を探せ!』の依頼内容は、街道付近の草原にゴブリンが出たから退治して欲しいというものだったな」
俺は依頼にあった場所に向かった。
牛山礼二「あれか?いや、違うな。あれでもない。どれだろう?」
なかなか見つからない。
俺は焦っていた。
こんなことならもっと詳しく聞いておくべきだった。
そんな時、
御者の爺さん「ギャー!!」
という悲鳴が聞こえた。
声のする方を見ると、馬車が魔物に襲われていた!
牛山礼二「待っていてください!!今行きます」
俺はすぐに駆け寄ろうとしたが
ゴブリン「ギギーッ」
と叫びながら、ゴブリン達が襲いかかってきた。
牛山礼二「くそっ、邪魔をするな!」
俺は必死で応戦した。
幸いにも数はそれほど多くなく、俺一人でなんとか倒せた。
だが、馬車の方はもうダメだろう。
俺は無力感に打ちひしがれながらも、他に何かできることはないかと考えた。
すると突然、頭の中に声が流れてきた。
《レベルが上がりました》 レベルが上がったようだ。
どうやら俺は、レベルが上がると身体能力が上昇するらしい。
俺は試しにジャンプしてみた。
牛山礼二「おっ凄いな!!」
俺は軽く2メートルくらい跳んでいた。
これはいい。これならいけるかもしれない。もう一度ゴブリンの群れに飛び込んでいった。
牛山礼二「とりゃーっ!!」
ドカッ、バキッ、ボコッ、グシャ 俺は無双していた
ザシュッ!
牛山礼二「ふうー」
俺は全てのゴブリンを倒し終えた。
牛山礼二「大丈夫ですか?」
俺は襲われていた馬車に近付いて声を掛けた。
御者の爺さん「はい、助かりました。ありがとうございます」
乗っていた人達は皆無事だったようで、ホッとした。
牛山礼二「ところで、どうして護衛をつけずに馬車で移動しているんですか?」
御者の爺さん「実は私達は貧しい行商人でして、仕入れのために街へ帰るところだったのですが、途中で盗賊団に襲われたのです・・・」
牛山礼二「それは大変でしたね。怪我はないですか?」
御者の爺さん「はい、おかげさまで。本当にありがとうございました」
牛山礼二「それにしても、なぜこの街に戻ろうとされたのですか?」
御者の爺さん「この先の村で採れる薬草を買い取ってもらうためですよ」
ライル「なにしろこの辺りには店などありませんからな」
牛山礼二「そうなんですね」
ライル「それで、これからどちらに向かわれる予定だったんでしょうか?」
牛山礼二「俺は妹の美羽を探すために旅をしている」
ライル「そうだったんですね。ちなみに私は、ライルといいます。皆さんは『虹色の髪の乙女達』という冒険者のパーティーなんですよ」
牛山礼二「そうなのか。俺は礼二(レイジ)だ。よろしく」
ライル「こちらこそよろしくお願いします。そうだ、もし良かったら一緒に来ませんか?お礼がしたいです」
とライルに誘われたので同行することにした。
牛山礼二「もちろん構わないよ。でも俺は何もしてないよ?」
ライル「そんなことありませんよ。レイジさんはさっきゴブリンを倒したじゃないですか。あれで荷物を守れたので商品を買うことができます」
牛山礼二「そういうことなら遠慮しない」
こうして俺は、虹色の髪の乙女達と一緒に行動する事になった。
道中、色々な話を聞かせてもらってわかったことがある。
まずは、この世界の名前はアスタイールと言うらしい。
そして、ここが女神さまの言っていた異世界だということがわかった。
何故わかるのかと言えば、魔法があるからだ。
ライルによると、火・水・風・土・光・闇といった6種類の属性があり、それぞれ初級、中級、上級とランク付けされている。
さらに、生活に役立つ便利なものから戦闘に使うものまで様々な種類が存在する。
例えば、ライルは風の属性を持っていて、手品のように指先に小さな竜巻を作ってみせた。
他にも、火の魔法を使って料理をしたりもできるらしい。
俺は、魔法の練習をしてみる事にした。
イメージとしてはゲームに出てくる呪文のようなものを詠唱すれば良いのだろうか?
俺は試しに唱えてみた。
牛山礼二「・・・・・・ウインドカッター」
すると、ヒュンッと音を立てて木に切れ目が入った。
牛山礼二「おおっ!」
初めて使ったにしてはかなり上出来ではないだろうか? 俺は嬉しくなって何度も繰り返した。
しばらくすると、
ライル「レイジさん、何をしているのですか?」
とライルが話しかけてきた。
牛山礼二「ああ、魔法の練習をしていたんだ」
ライル「ええ!?すごいですね。まさかもう使えるようになっているなんて」
牛山礼二「いや、まだまだだよ」
と言いつつも、俺は少し得意になっていた。
それから数日の間、俺は魔法の練習を続けた。
今ではかなりの威力のものを放つことができるようになっていた。
そんなある日の事、俺達は森の近くを通りかかった。その森には凶悪な魔物が棲んでいるらしく普段は誰も近寄らないのだという。
だが、今回はその魔物を倒して素材を持ち帰れば高値で売れる、という話になり、俺達は森の中に入っていくことになった。
〇森の中
レオン「みんな気を付けろよ」
リーダーのレオンさんの号令のもと、慎重に進んで行く。
すると、早速オークが現れた。
オーク「グオオオーッ」
雄叫びを上げながら襲ってきた。
牛山礼二「うわーっ!!」
恐怖を感じた俺は逃げようとしたが、腰が抜けてしまい動けなくなってしまった。
ライル「レイジ!危ない!」
ライルの声を聞いてハッと我に返った時にはもう遅かった。
ブシュー!っと血を吹き出しながら倒れるレオンさんの姿があった。
牛山礼二「くそっ!」
俺は怒りに任せてファイアボールを連射して、あっという間に倒してしまった。
虹の乙女団員B「すげぇー」
虹の乙女団員A「何者なんだ?」
虹の乙女団員C「レイジだったかしら?あの子強いわね・・・・・・」
皆が口々に賞賛の言葉を口にする中、ライルだけは複雑な表情を浮かべていた。
牛山礼二「大丈夫ですか?」
俺は慌てて駆け寄り、治癒魔法を使った。
牛山礼二「ケルアンヘカル!!」
レオン「ありがとう、レイジ君。おかげで助かったよ」
レオンさんは命を取り留めたが、右腕を失ってしまった。
牛山礼二「レオンさん!すみません!俺のせいで!!」
レオン「いや、気にしないでくれ。それよりもこれからどうするかを考えないとな・・・・・・」
ライル「それなら、私達の村に来ませんか?腕の良いお医者様がいるんです。 咄嗟に腕を拾って冷却魔法で補完してあるので治せるかも・・」
とライルが提案してくれたので、俺達は村に向かうことにした。
ライル「ただいま戻りました」
村に着くと、ライルが挨拶をして村人が平伏していた。
村人男性1「我らが王子よ!帰還なされたのですね!」
ライル「いえ、違います」
ライルは即座に否定した。
村人男性1「そうですか・・・・・・。まだ旅を続ける気であらせられるか・・・・・・では、そちらの方は?」
ライル「こちらはレイジさんです。ゴブリンに襲われているところを救って頂いたのです」
ライルは、ゴブリンに襲われた時のことを村人に話して聞かせた。
村人男性1「なんですと!?それは真(まこと)ですか?」
ライル「本当ですよ」
村人男性1「なんとお礼を申し上げたらよいか・・・・・・」
牛山礼二「そんなことはいいから、早くレオンさんをお医者様に診せましょう!」
村人男性1「わかり申した。こちらへお越しください」
俺達は村の診療所へと案内された。
村の医者「こりゃあひどい。一体誰がこんな事を?」
ライル「レオンさんは森に巣くっていたオークに不意打ちでやられてしまって・・・・・・」
ライル「この方です」
村の医者「わかった。今すぐレオンの腕を治療しよう」
しばらくして、無事に手術は成功した。
村の医者「これでもう心配はいらんだろう。あとは安静にしていれば元に戻るはずだ」
そう言ってくれたので、俺達はとても喜んだ。
その後、ライルが事情を話してレオンさんが無事だったことを伝えると、村長をはじめ村中の人達が集まって感謝を伝えてくれた
村人男性1「ところでライル王子、オークを倒したというのは本当なのか?」
ライル「はい、レイジが倒しました」
村の医者「おおっ!流石だ!」
村人2「英雄の誕生だ!」
などと盛り上がっている中、面倒ごとに巻き込まれる前に俺はこっそり抜け出して家に帰る事にした。
夜遅くに宿に戻った俺は、ベッドの上に寝転がると女神さまのことを思い出した。
翌日、レイジはライルの村の神官に呼び出された。
村の神官「信託を承りました。はい、女神さまのおっしゃる通り、レイジ殿には勇者として召喚されてもらいました」
牛山礼二「ええ!?俺が勇者!?」
村の神官「ええ、そうです。ただし魔王を倒すのではなく、世界を平和に導くことが条件となりますが・・・・・・」
牛山礼二「そうなんだ。でもどうして俺が選ばれたんだろう?」
村の神官「それは、あなたが選ばれし者だからです」
牛山礼二「え?どういうこと?」
村の神官「詳しい話はまた後日ということで。今日はゆっくり休んで下さい」
こうして、俺は世界を救うべく戦う事になってしまったのだった。
翌朝、ライルが迎えに来てくれた
ライル「おはようございます。レイジさん」
牛山礼二「ああ、おはよう」
ライル「昨日はよく眠れましたか?」
牛山礼二「まあまあかな」
ライル「さすがですね。私は緊張してあまり眠れませんでしたよ」
とライルは苦笑している。
ライル「実は、父上があなたのことを見極めたいと言っています」
牛山礼二「え?それってつまり・・・・・・」
ライル「はい、模擬戦を行うことになりました」
牛山礼二「まじかよ・・・・・・ライルの父親って王様だろ?」
正直気が進まなかったが、断れる雰囲気でもない。
仕方なく了承することにした。
────数日後
闘技場に行くと、既にレオンさんがいた。
牛山礼二「レオンさん!大丈夫なんですか?」
レオン「もちろんだとも!腕一本でくよくよしていても仕方がないからね」
レオン「今後のリハビリ次第では動くようになるかもしれないそうだし頑張るさ!」
レオンさんは快活に笑うと、俺に握手を求めてきた。
レオン「よろしく頼むぜ、レイジ」
牛山礼二「こちらこそよろしくお願いします!」
審判「これより、レイジ対レオンの試合を始める。双方、準備は良いな?」
2人は同時にうなずいた
審判「では、はじめっ!!」
試合開始と同時にレオンさんが突っ込んできた。
レオン「うぉーっ!!」
雄叫びを上げながら斬りかかってきた。
俺は落ち着いて剣を構え
「ファイアボール」を放った。
だが、あっさりかわされてしまった。
レオン「甘いわーッ!!」
レオンさんの一撃をなんとか受け止めた。
そのままつば競り合いになった。
レオン「やるなぁ、レイジ」
牛山礼二「そっちこそ」
力比べは互角といったところだろうか。
片腕しか使えなくてもとても強かった。レオンさんは虹色の髪の乙女団の団長だ。
このままじゃ────
レオン「俺に勝てる奴なんてそうそういないぞ」
牛山礼二「へぇ~」
焦っていることを悟られないように精一杯の微笑を俺は浮かべる。
レオン「なんだその目は!俺に勝ったらなんでも言うことを聞いてやろうじゃないか!」
牛山礼二「マジですか?」
レオン「おう!男に二言はない!」
牛山礼二「なら本気で行きますよ」
レオン「こい!」
牛山礼二「アイスソード」
氷でできた長剣で切りかかった。
レオン「無駄だ!」
レオンさんは炎の魔法を使った。
すると、あっという間に溶けてしまった。
牛山礼二「なっ!?」
驚く間もなく、レオンさんは俺の目の前まで迫っていた。
慌てて防御しようとした時、俺の身体は宙を舞った。
牛山礼二(何が起きた?)
レオン「まだ終わらんぞ!」
今度は蹴りが飛んでくる。
俺は咄嵯に飛び退いた。
レオンさんはニヤリと笑って言った。
レオン「今のを避けるとはなかなかやるな。俺に氷魔法は効かんぞ?」
牛山礼二「一体どうやって?」
レオン「さっきの魔法相殺か?簡単なことだ。お前が放った魔法の属性と逆の魔力をぶつけただけだ」
牛山礼二「そんな無茶苦茶な・・・・・・」
レオン「これが本当の戦いってもんだ」
その後もしばらく打ち合ったが結局決着はつかなかった。
審判「そこまで!」
牛山礼二「ありがとうございました」
レオン「いや、こっちこそ楽しかったよ」
こうして、俺達はお互いを認め合うことができたのだ。
ライル「レイジさん、おめでとうございます! あのレオンさんと互角にやりあえるなんてレイジさんは本当に凄いです!」
ライルが祝福してくれた。
ライル「ところでレイジさんは何か欲しいものはありますか?」
牛山礼二「ほしいもの?」
ライル「ええ、なんでもいいですよ」
牛山礼二「そうだな・・・・・・なら金とかかな」
ライル「お金ですか・・・・・・わかりました。用意させましょう」
牛山礼二「いやいやいや!冗談で言って見ただけだ!本気にするな!」
俺は必死に弁解したが、ライルは首を傾げている。
ライル「別に先立つものは必要だし現金を所望しても全然おかしくないですよ?」
牛山礼二「いや、そうか・・・・・・じゃあ、豪華な服とか宝石みたいなものが欲しいなって・・・・・・」
ライル「そうですか!」
牛山礼二「まあ、もらえるもんはもらうけどさ・・・・・・」
ライル「よかったです。早速手配しておきますね」
牛山礼二「頼んだよ」
こうして、俺は旅に必要な物資を手に入れたのだった。
〇洋館の玄関ホール
レオンさんとの戦いの後────
村の神官「レイジ、ちょっといいか? 国王から話があるそうだから玉座の間に来て欲しいそうだ」
レイジはライルの父である国王様に呼び出された。
玉座の間に行くとライルも待っていた。
ライル「レイジ!父上が急に呼び出してすまない」
牛山礼二「いや、大丈夫だ」
王様「勇者殿、よく来てくれた」
牛山礼二「いえ、それより話というのは?」
王様「ああ、実は頼みがあってな」
牛山礼二「なんでしょうか?」
王様「魔王を倒してきて欲しいのだ!」
牛山礼二「魔王を?」
王様「ああ、実は魔王軍の動きが活発になっていてな」
王様「これ以上好き勝手にさせるわけにはいかない。そこで勇者殿には魔王を倒してきて貰いたい」
牛山礼二「な、なぜ俺が?他にも強い人はたくさんいるでしょう?例えば騎士団長のレオンさんとかさ」
王様「確かに魔王以外のモンスターならレオンでも倒せるだろう。だが、それでは駄目なのだ・・・・・・」
牛山礼二「どうして?」
王様「魔王を倒すには特別な力を持つ者でなければ勝てないからだ」
牛山礼二「特別な力?」
王様「そうだ。だから君が選ばれた。引き受けてくれるね?」
牛山礼二「嫌だと言ったらどうなります?」
王様「その場合は残念ながら他の者に任せるしかない。生きては帰ってこられんだろうが・・・・・・」
牛山礼二「そうですか・・・・・・」
王様「さぁ、レイジ答えてくれ」
牛山礼二「少し考えさせて下さい・・・・・・」
王様「わかった。明日まで待つとしよう」
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翌日になり、再び王様と謁見した。
王様「決心はついたかね?」
牛山礼二「はい、魔王退治の件、受けようと思います」
王様「本当か!?助かるよ!」
牛山礼二「それで、仲間なんですが、誰か一緒に来てくれないかって考えてまして・・・・・・」
王様「ふむ、なるほど。ではこちらで用意するから安心してくれ」
牛山礼二「ありがとうございます」
王様「では、出発の準備をしておいてくれ」
牛山礼二「了解しました」
そして、ついに旅立ちの時が来た。
レイジの旅について来てくれたのは──
ライル(麓の村出身の王子。金髪エキゾチックイケメン)
レオンさん(虹色の髪の乙女団の頼れる騎士団長)
フンバルトさん(ボサボサ銀髪のフツメン魔術師)
ゲーリーさん(鍛え上げられた肉体に甘いマスクを持つ、深い土色の髪をしたイケメン戦士)
牛山礼二「全員、男なのかよ・・・・・・ (危険な旅だし仕方ないか・・・・・・)」
俺は思わず呟いていた。
レオン「ん?なんか言ったか?」
牛山礼二「いえ、なんでもありません!」
レオン「そうか。気をつけて行くぞ」
牛山礼二「はい!」
こうして、俺達の旅が始まったのだった。
ライルとレオンは同じ騎士団の仲間でよく見知っているが他の二人とは初対面ということで一行は自己紹介から始めることにした。
ライル「皆様初めまして。一国の王子で聖剣の勇者と呼ばれているライル・フォン・ガレットと申します」
ライル「これからレイジと共に旅をしていきますのでどうかよろしくお願いします」
レオン「俺はレオン。レオン・ハーグだ。虹色の髪の乙女団の団長だ」
レオン「魔法も嗜む程度には使える。魔法騎士?魔法剣士?とにかくよろしく!」
ゲーリー「俺の名はゲーリー。ゲーリー・シャバリクソン。レオンと同じ虹色の髪の乙女団の団員だ」
ゲーリー「俺は炎の聖霊と契約した魔法戦士だ。よろしく」
フンバルト「ワイはフンバルトいいます。フルネームはフンバルト・ベンジョリッヒ。レオンと同じく虹色の髪の乙女団の団員や」
フンバルト「ワイは水の聖霊と契約しとる魔術師や。よろしゅう!」
この4人が仲間になるのか・・・・・・
ライルとレオンさんはよく知っているが他の二人は未知数だ・・・うまくやっていけるか?
異世界転生も悪くないなあと思わせられるような展開ですね。この流れで、できるだけ早く妹さんの所へ辿りつけるといいですね。なんとなく、色々な誘惑が彼を待ち受けているような気もしますが!
町に入るのにお金がなくてビラ配りのバイトしたところが急に現実的な展開で笑ってしまいましたが、天使が言うように異世界での登場人物はイケメン揃いでいい雰囲気ですね。礼二がどんどん魔法を習得して無双になっていく過程も面白かったです。