読切(脚本)
〇カウンター席
あなた(今日は、もうお客さん来ないかな・・・。あっ)
あなた「いらっしゃいませ」
女性客「時間、まだ大丈夫ですか?」
あなた「はい、お好きな席にどうぞ」
女性客「ブレンドコーヒーを一つお願いします。砂糖もミルクもいりません」
あなた「ブレンドコーヒーお一つですね。少々お待ちください」
女性客「・・・」
あなた「・・・」
女性客「・・・静かで、素敵な雰囲気のお店ですね」
女性客「前を通るたびに、コーヒーの良い匂いがして、いつか来てみたいなって話していたんです」
あなた「それは、ありがとうございます」
あなた「コーヒーがお好きなんですか?」
女性客「いいえ、実は苦手なんです」
あなた「えっ・・・」
女性客「苦いのがどうしてもダメで」
女性客「でも、匂いは好きだから、時々飲んでみたくなるんですよね」
女性客「よく一口だけ試して、後は彼に飲んでもらってました」
女性客「彼は、コーヒーが好きだったから」
あなた「・・・お待たせしました。ブレンドコーヒーです」
女性客「わあ、良い匂い」
彼女は、カップにそっと口を付けた。
あなた「・・・どうですか?」
女性客「・・・」
女性客「・・・」
あなた「お、お客様・・・!?」
女性客「私にはやっぱり苦いです、涙が出てくるくらい」
女性客「でも・・・飲んで良かった」
女性客「彼と別れてから・・・初めて泣くことができました」
あなた「お客様・・・」
あなた「今日はもう他に人も来ないでしょうし、落ち着くまでゆっくりしていってくださいね」
あなた「それから、これはサービスです」
コーヒーの隣に、生クリームのたっぷり添えられたシフォンケーキを置いた。
女性客「・・・いいんですか?」
もちろん。うちは、ケーキにも自信があるんですよ
女性客「・・・ありがとうございます」
彼女は涙を拭うと、フォークを手に取った。
お店の人間を「あなた」とした作者さんのアイデアがユニークですね。そのせいか、女性客との会話に自然に感情移入できました。それにしてもコーヒーってドラマチックなストーリーに似合う飲み物ですね。
昔流行った歌の歌詞のように、こうして彼女は大人の階段を登っていくんだろうなあと、私もそばで励ましてあげたくなりました。店主の心づかいはきっと忘れることのない思い出になるでしょうね。
切ないお話ですね。
これをきっかけに、少しずつコーヒーが好きになったりするのかな、などと想像しました☺️