ばいばいする女

長月紅葉

ばいばい。私の初めての恋(脚本)

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〇フェンスに囲われた屋上
星歌「あ!やっと見つけたっ!」
星歌「えっ、どうしたの?って・・・貴方のこと探してたんですよ」
星歌「卒業したら言いたいことあるって、昨日言ったじゃん」
星歌「もしかして、忘れてました?」
星歌「あははははは」
星歌「そんな慌てなくても大丈夫ですよ」
星歌「貴方は約束を忘れてないの知ってますから」
星歌「もしかして・・・ほんとに忘れてました?」
星歌「そんな必死に否定しちゃって。面白い」
星歌「あっ、そうそう。言いたいことがありまして」
星歌「まぁけど、貴方ならもう予想できてるよね?」
星歌「なにその反応。そんな顔しないでくださいよ」
星歌「分かってるのに何で言うのかって・・・」
星歌「好きだからですよっ」
星歌「春に授業で初めて会った時から」
星歌「夏の放課後に愚痴を聞いてくれて」
星歌「秋に文化祭を一緒に回ってくれて」
星歌「冬に受験を応援してくれて」
星歌「私は・・・」
星歌「先生のことが好きです」
星歌「心の底から大好き」
星歌「誰よりも愛しています」
星歌「人生で初めて人を好きになりました」
星歌「そんな顔しないで。大丈夫だから」
星歌「私ちゃんと分かっていますから」
星歌「先生には彼女さんがいるし、この恋は叶わないのは知っていますから」
星歌「むしろごめんね」
星歌「彼女がいる人にこんなことを伝えて」
星歌「だから、そんな顔しないでくださいよっ」
星歌「先生は悪くありませんから」
星歌「卒業の日くらい笑顔を見せてください」
星歌「そうそう。それが私が好きな笑顔です」
星歌「じゃあ返事してください」
星歌「何の返事って・・・私、告白したんですよ?」
星歌「先生は乙女の一世一代の告白をスルーするんですか?」
星歌「大丈夫ですから」
星歌「先生がどんなことを言っても」
星歌「しっかりと受け入れますから」
星歌「星歌の気持ちには応えられない・・・か」
星歌「・・・知ってる」
星歌「あー、1年かけても落とせなかったかー」
星歌「またそんな顔して」
星歌「何で先生の方が悲しそうなんですか」
星歌「私にも悲しませてよ」
星歌「先生は悪くないです」
星歌「先生のおかげで前に進めますから」
星歌「先生、ありがとう」
星歌「こんな私に恋をさせてくれて」
星歌「こんな私に優しくしてくれて」
星歌「こんな私と1年間仲良くしてくれて」
星歌「ありがとう」
星歌「こちらこそありがとうって、私は先生に何もしてないですよ」
星歌「星歌のおかげで楽しかったって・・・」
星歌「なんか照れますな」
星歌「じゃあ、そろそろ帰りますね」
星歌「卒業したし髪染めるんですよ」
星歌「気が向いたら自撮りでも送りますよ」
星歌「うん。いってきます」
星歌「先生、じゃあね」
星歌「えっ、どうしたんですか?」
星歌「卒業おめでとうって・・・もう何回も聞きましたよ」
星歌「先生も1年間おつかれさま!」
星歌「これからも頑張ってくださいねっ」
星歌「ばいばいっ!」

コメント

  • 青春の一コマ、笑顔で話す健気な彼女に悲しくもほっこりさせていただきました。
    彼女、お家でたくさん泣いてるんだろうなぁ。先生は彼女の気持ちを分かってて、それで彼女の呼び出しに応じたのでしょうね。優しい先生……。いつかこの告白が、懐かしい思い出にできる日が彼女に来ますように😊

  • 今はまさに、こういう青春のワンシーンが心に染みる卒業の季節ですね。星歌ちゃんの表情が一人語りのセリフとともに細かく変化していて、わざと明るく振る舞う健気な気持ちが伝わってくるようで切なかったです。

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