SASAME家の双子はヒーローになりたい

レクト

事件の匂いは甘いお菓子(脚本)

SASAME家の双子はヒーローになりたい

レクト

今すぐ読む

SASAME家の双子はヒーローになりたい
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ケーキ屋
陽菜「たっだいまー!!」
  洋菓子店『パティスリー・SASAME家』の明るい店内に、負けじと明るい声が響く。
陽菜「小学校終わったし、お店手伝うよー!」
全蔵「はあ・・・・・・」
陽菜「ん? パパ、どうしたの?」
全蔵「陽菜・・・・・・ この前学校で”将来の夢”を書いた時、陽菜は何て提出した・・・・・・?」
陽菜「え〜〜っと、なんだっけ 忘れちゃったかも!」
全蔵「”将来の夢:スーパーヒーロー”って書いただろ! 今日担任の先生から連絡があったぞ!」
陽菜「べ、別に夢なんだから自由でしょ」
全蔵「確かに、夢は自由だ・・・・・・ だが先生は心配していたぞ」
全蔵「もう4年生なんだから、人が心配するようなことを書くんじゃない!」
瑠奈「陽菜は要領が悪いわ 私はもう少し賢くやったのよ」
全蔵「それが・・・・・・ この、”進学(後にヒーローとなる)” か?」
瑠奈「いいでしょう これで先生もパパも、みーんな納得してくれるはずよ」
全蔵「納得する訳ないだろう、双子が揃って”ヒーロー”なんて!」
全蔵「いい加減に・・・」
ゴロン「ニャーン」
陽菜「あ、ゴロン!」
瑠奈「ゴロンが、パパは言い過ぎだって言っているわ」
ゴロン「ニャーン」
全蔵「まあ今回はいい 次からはちゃんと、そういった夢は・・・・・・」
全蔵「心の中で唱えておくんだぞ」
「はーい!!」
  チリーン
  その時、お店のドアが開き、入り口のベルが鳴った
陽菜「あ、お客さん来たみたいだよ!」
全蔵「そうみたいだな」
全蔵「いらっしゃいませ! 『パティスリー・SASAME家』です」

〇ケーキ屋
  夕方になり、ケーキや焼き菓子を買うお客で、店内は賑わいを見せていた。
陽菜「こちらのクッキーは新商品ですよ!」
瑠奈「お買い上げありがとうございます。 お持ち歩きのお時間は、どのくらいですか?」
  双子も、お店の手伝いに精を出していた
  すると──
???「キャー!!!」
陽菜「叫び声・・・・・・! 女の人だ!」
瑠奈「声は大通りからのようね」
陽菜「こうしちゃいられない!! 人々を救うのが、私たちヒーローの役目!」
瑠奈「ええ、行くわよ」
全蔵「待て、二人とも!」
全蔵「・・・・・・行ってしまった」
ゴロン「ニャーン」
全蔵「すまない 様子を見てきてくれないか」
ゴロン「ニャニャッ」
  お客様がいる中で、自分まで店を離れる訳にはいかない。
  全蔵は、二人の後を追いかける黒猫の姿を見送った。

〇商店街の飲食店
女性「ああ、どうしましょう」
瑠奈「何があったんですか?」
女性「あなたたちは?」
陽菜「私たち、正義の味方です!」
瑠奈「困ったことがあれば、力になります!」
女性「あ、ありがとう」
陽菜「何か事件があったんですよね!」
女性「え、ええ 私の携帯が・・・・・・」
瑠奈「携帯?」
陽菜「瑠奈、見て! 誰か逃げて行くよ!」
  陽菜の指差した方角には、何かを抱えて走る男の人がいた。
陽菜「お姉さんの携帯を奪ったんだ!」
瑠奈「ひったくりね すぐに追いかけるわよ」
  二人は男の後を追ったが、曲がり角で見失ってしまった。
陽菜「どうしよう これじゃ、どこに行ったか分からないよ」
瑠奈「安心して、陽菜ちゃん いい方法があるわ」
  瑠奈は徐にポケットからタロットカードを取り出すと、道に並べ始めた。
瑠奈「うん、うん そうね・・・」
陽菜「適当に並べてるように見えるけど、そんなので分かるの?」
瑠奈「もちろん 犯人が逃げた方角は、ズバリ西だわ!」
  瑠奈のポケットから、今度は包囲磁石が登場する。
瑠奈「西は・・・・・・あっちね!」
陽菜「分かった! 早く行こう!」
瑠奈「ええ!」
  占い結果に従い、二人は西に向かって走り出した。

〇駅前広場
  見失った男を追い続け、十数分後。
  二人は、男の影を捉えた。
瑠奈「いたわ、あの人よ!」
陽菜「すごい! 本当に当たった! 瑠奈はスーパー占い師だね!」
瑠奈「ふふん そうでしょ」
陽菜「よし、後は私に任せて!」
  そう言い残すと、陽菜は男めがけて走り出した。
陽菜「はぁああああああ!!」
男性「?」
陽菜「ヒーローキィィッック!!」
  間一髪──
  陽菜の飛び蹴りを、男性は避けた。
男性「な、何なんだよ!」
陽菜「ちっ! 避けたね 次は外さないよ!」
陽菜「それが嫌だったら、お姉さんの携帯を返しなさい!」
男性「は? 携帯?」
陽菜「とぼけても無駄だよ!」
瑠奈「そうよ、観念なさい!」
男性「何のことか分かんねーよ!」
陽菜「これが証拠だっ!」
  陽菜はその足で、男性の抱えている包みを蹴り上げた。
  空中に舞い上がったそれを見事キャッチし、中身を確認する。
陽菜「さてさて・・・・・・って、あれ?」
陽菜「携帯じゃ・・・・・・ない」
瑠奈「ウソ、どういうこと?」
ゴロン「ニャニャニャッ」
陽菜「ゴロン! どうしてここに?」
ゴロン「ニャーゴッ!」
  ゴロンはしきりに、走ってきた方向へ顎を向けている。
陽菜「元来た方に、何かあるの?」
女性「すみませーん! はぁっ、はぁ・・・・・・」
  息を切らしながら、先程の女性が走って来た。
女性「二人とも、足、早い・・・・・・」
陽菜「お姉さん! どうしたんですか?」
女性「私、携帯取られてなんていないわ だから、大丈夫よ」
女性「心配してくれて、どうもありがとう」
瑠奈「でも、悲鳴が聞こえたから私たちは来たんです」
女性「それはね、自分の携帯を落としちゃって、画面が割れてしまったの」
女性「それでつい大声出しちゃったのよ 紛らわしくて、ごめんね」
陽菜「そ、そうだったんですか・・・・・・」
陽菜「じゃあ、何もかも私たちの勘違いだ」
ゴロン「ニャニャッ!!」
男性「・・・・・・」
男性「まあ、何事もなかったみたいだし、よかったな」
「ご、ごめんなさーい」

〇綺麗なリビング
  『パティスリー・SASAME家』も閉店の時間。
  全蔵が仕事を終えてリビングに戻ると、そこには寝息を立てる双子の姿があった。
「すー、すー」
全蔵「今日も、色々とあったんだろうな」
ゴロン「ナー」
全蔵「ゴロンか いつも二人を見守ってくれて、ありがとう」
ゴロン「儂も拾われた恩があるからのう この子達には、目をかけてやりたいのじゃ」
全蔵「ははっ、そうかい」
  眠ってしまった双子を、全蔵は部屋まで運び、毛布をかけた
全蔵「おやすみ・・・・・・」
全蔵「さて、少しゆっくりしようかな ゴロン、何か飲むか?」
ゴロン「では、儂はバーボンをもらおう」
全蔵「分かった ケーキもあるけど、どうする?」
ゴロン「欲しいニャー!」
  こうして、笹目家の夜はゆっくりと更けていった・・・・・・

コメント

  • ゴロンが正義感強い双子ちゃんのお守り役なんですね。「ニャニャッ」から突然の一人称「儂は」で笑ってしまいました。それにしてもマタタビではなくバーボンとは渋いですね。

  • 双子ちゃんの能力すごい!って思ったけど壮大な勘違いをしてしまってたんですね😂
    ただただ、男性は合コン必勝法の本を持ち歩いてるのがバレてしまったって言う…😂
    おもしろかったです!
    そしてゴロン喋れるんですね☺️可愛いです。
    今ちょうどゴロンそっくりの猫さんがお庭に遊びに来ているので親近感です😄

ページTOPへ