”ぷち超能力”なんて、ビミョーだよ!?

村岡 夜

ママ、今日はお鍋じゃないほうがいいな。(脚本)

”ぷち超能力”なんて、ビミョーだよ!?

村岡 夜

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〇中規模マンション
  私は神在零奈(かみあり れいな)。小学3年生。

〇中規模マンション
  中学2年生の零太(れいた)、小学6年生の零司(れいじ)と3人兄妹。

〇中規模マンション
  あと、パパとママの5人家族。

〇一戸建て
  近くに、おじいちゃんとおばあちゃんも住んでいる。

〇公園の入り口
  どこにでもいる、普通の家族だと思う。

〇幻想空間
  ただ、1つだけ、ちょっと変わってるところがある。

〇黒
  実は、私、ちょっとした特殊能力が使えるの。

〇幻想空間
  いわゆる、超能力ってやつ。

〇黒
  人の考えていることが、話していなくても、頭の中に聞こえてくるの。

〇土手
  嘘だと思うでしょ?
  
  私は、生まれた時からこうだったから、みんなは何も聞こえてこないんだって知って、逆にびっくりした。

〇部屋の扉
  でもね、この不思議能力、お兄ちゃんたち限定。
  
  零太と零司の心の声しか聞こえないの。

〇中規模マンション
  パパとママの声も、

〇一戸建て
  おじいちゃんとおばあちゃんの声も、

〇教室の教壇
  幼稚園からの仲良しの友達のさくらの声も、担任の山口先生の声も、聞こえてこないんだよね。

〇空
  なんでこんなことになっているんだか、ホント謎。
  
  うらやましい?
  
  全然大したことないよ。

〇おしゃれなリビングダイニング
  もう、”ぷち超能力”って感じ。
  
  これがビミョーでさ。
  
  例えば、こんな感じ。

〇おしゃれなリビングダイニング
  もう、日曜日の夕方。
  
  私はママと買い物に行ってきた。私は新しいパーカー、ママは白菜やお豆腐を買ってきた。

〇おしゃれなリビングダイニング
  零太は部活から帰ってきて、お菓子を食べている。
  
  零司はずっとゲームしている。

〇一戸建て
  パパは、おじいちゃんとおばあちゃんの家に行っている。

〇おしゃれなキッチン
  そろそろ、ママが夜ごはんを作る時間。
  
  季節は冬。
  
  そう、あのいつものメニュー、鍋を用意しようとしている。

〇おしゃれなキッチン
  パパもママも、お鍋が好きみたい。

〇おしゃれなキッチン
  私も好きだよ。
  
  ただ、毎週だと飽きるんだって。
  
  今日は、ちょっと違うものが食べたい気分なんだよね。

〇おしゃれなキッチン
零奈「ねえ、ママ、今日もまたお鍋なの?」
ママ「またって何? 1週間ぶりじゃないの?」

〇おしゃれなリビングダイニング
零司「(零奈のヤツ、ママの機嫌損ねやがって。ゲームの時間8時までのばしてもらおうと思ってたのに。言い出しにくくなった)」
零奈「(悪かったなあ。私だって、わざとやったわけじゃないのに)」

〇おしゃれなリビングダイニング
零司「(面倒くさくなってきた。かえちゃおうかな)」
零奈「(あ、零司が、”ぶち超能力”を使おうとしている)」

〇黒背景
  零司の”ぷち超能力”は、いわば『気分転換』。
  
  なんとなく、他のことをしたくなっちゃう。
  
  これ、家族限定。

〇おしゃれなリビングダイニング
ママ「・・・うーん、まあ、毎週お鍋だと飽きちゃうよね。シチューにしようか?」

〇幻想空間
  よしよし。
  
  零司、いい仕事したぞ!

〇おしゃれなリビングダイニング
ママ「あ、でも、パパに『今日はお鍋』ってもう言っちゃったんだよね」

〇黒
  そう。零司の『気分転換』は、絶対じゃない。
  
  ママの気分が、零司の『気分転換』のあとに変わってしまうこともよくある。

〇おしゃれなリビングダイニング
零奈「(ほら、零司。 もう一度やって!)」

〇おしゃれなリビングダイニング
零司「(面倒くさくなってきた。まあ、お鍋でもいいか。ゲームしてよう)」
零奈「(こら、ちょっと、零司! 使えなさすぎるでしょ!)」

〇おしゃれなリビングダイニング
零太「(仕方ない。部活で疲れたけど、『体力回復』して買い物いってくるか)」
零奈「(零太!)」

〇黒
  零太の”ぷち超能力”は『体力回復』。
  瞬時に体力を回復させることができる。
  
  これは、基本的に自分限定っぽい。

〇おしゃれなリビングダイニング
零太「(あ、9時からゲームするから、オンラインで集まる約束だった。やばい、眠くなる・・・)」

〇幻想空間
  ただし、1/10の体力を回復させるごとに、いつもより10分早く眠くなるらしい。
  
  ごめん、零太。
  でも、ありがとう!

〇おしゃれなリビングダイニング
零奈「ねえ、パパには電話しよう!」
ママ「うーん、じゃあ・・・」

〇部屋の扉
  ガチャガチャ。
  
  あ、パパが帰ってきた!

〇おしゃれなリビングダイニング
零奈「おかえりー。 ねえ、パパ。今日の夜ごはん、お鍋じゃなくて、シチューでもいい?」
パパ「え、おばあちゃんからカニもらってきちゃった。はやく食べなきゃ」

〇おしゃれなリビングダイニング
零奈「え?」
ママ「あ、じゃあ、やっぱりお鍋ね。 零奈、シチューはまた今度作るからね。 遅くなっちゃう。 もう作らなくちゃ」

〇おしゃれなリビングダイニング
パパ「そっか、零奈はシチューが好きなのか。 覚えておこう。 今度、どこかにシチュー食べに行こうか?」
零奈「(いや、すごく好きというわけではない。 単に、ママが買ってきた白菜が使えて、お鍋じゃないお料理を私なりに考えただけで)」

〇幻想空間
  ちょっと、零太、零司!
  かわいい妹を助けてよ!

〇おしゃれなリビングダイニング
零司「(おー、今度こそクリアできる!)」
零太「(よーし、10時までゲームできる!)」

〇おしゃれなリビングダイニング
零奈「(おい! 妹よりゲームか!?)」

〇おしゃれなキッチン
ママ「零奈、今のうちに明日の学校の準備しておいたら? 鉛筆削った?」

〇おしゃれなリビングダイニング
零奈「・・・はーい」

〇幻想空間
  ほらね、こんな”ぷち超能力”なんて、ビミョーでしょ?
  
  なんせ、カニにもかなわないんだから。

コメント

  • 兄と弟の気持ちを読んであれこれ画策する零奈ちゃんがすごく可愛かった。零司の「気分転換」も零太の「体力回復」も役に立ちそうで立たないところが絶妙に「ぷち」ですね。これは遺伝っぽいから、お父さんとお母さんにも何らかの「ぷち超能力」があると思う。

  • 人の気持ちがわかる超能力、場合によってはありがたい能力かもしれませんが、私は気にするタイプなので、毎日メンタルが擦り減らされそうです😂
    体力回復の能力が一番うらやましかったです!笑

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