訳アリ家族、はじめます。

樹木義記

訳アリ家族のはじまり(脚本)

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〇SNSの画面
  家族を募集します。
  ぼくは11歳の堀田カイです。
  5歳の妹、ココナと2人で一軒家に住んでいます。
  父と母がいないので、募集します。
  期間はぼくが成人するまで。
  こちらの事情を聞かない人がいいです。

〇SNSの画面
  訳アリSNSにこんな告知を出したのが1週間前。
  無事に父と母が決まり、今日からぼくたちは仲良し家族ごっこを始める。

〇綺麗なダイニング
ココナ「おにいちゃん。おとうさんとおかあさん、ココにやさしいかな?」
カイ「家族ごっこするんだから、優しくて当たり前だろ」
  上目遣いで見つめてくる妹に、ぼくは思わず顔を引きつらせる。
カイ(何かワザとらしいんだよな・・・)
カイ(あざとカワイイを目指しているというか、5歳を演じていると言うか・・・)
カイ(父と母がどんな人たちか気にはなるけれど、お互いに詮索しないことが条件だ)
カイ(もちろん、妹とぼくもそんな関係だ)

〇飾りの多い玄関
  ピンポーン
  そんなことを考えていると、玄関のチャイムが鳴った。
ヒナコ「やっほ~!今日からよろしくね!」
  とにかく明るい母役のヒナコ。
ユウシ「そこで会ったから一緒に来たんだ」
  そう言いながらぼくとココナの頭をガシガシなでてくるのが、父役のユウシだ。
  2人とも社交的で、人に言えない事情があるとは到底思えなかった。
ユウシ「さぁ、じゃあまずは、細かい内容を決めていこうか?」
  ユウシに言われ、全員でリビングに移動した。

〇綺麗なダイニング
ユウシ「まず言っておく」
ユウシ「オレは仕事も収入もない」
ユウシ「アテもない」
ユウシ「ついでに言うなら、常識もあまりないかもしれない」
  父とは思えない言葉を堂々と言い放つユウシ。

〇魔物の巣窟
  男は、異世界から来た元・勇者だった。
  魔王を倒した後も永遠に勇者として扱われる世界に居心地の悪さを感じ、異世界に転移してきたばかりなのだ。
  そのため、この世界の勝手がわからない。
  何せ今までは魔物を倒して世界を平和に導いていたのだから・・・。

〇綺麗なダイニング
  ユウシの言葉に驚くこともなく、ヒナコが口を開く。
ヒナコ「お金なら、わたし稼げるから大丈夫!」
ヒナコ「ただ、家事とか子育てはできないし、長期で出張にいくこともよくあると思う」

〇手術室
  女は、闇医者だ。
  正規の医者にかかれないような人の治療を、高額な治療費と引き換えに行う。
  その腕は確かだが、常に裏社会にいることに気分が落ちこんでいた。
  何か、表社会で過ごせるような隠れ蓑になるような場所が欲しかった。

〇綺麗なダイニング
レイ「家のことはわたしがやってあげるから大丈夫よ」
カイ「うんうん、おばあちゃんがそう言ってくれるなら・・・」
カイ「え!おばあちゃん?! ダレ?!」
  突然現れた優しそうなおばあさんに全員が飛び上がった。
レイ「わたしはレイだよ」
レイ「おばあちゃん役」
レイ「家事も育児もベテランよ」
カイ「いやいやいやいや」
カイ「おばあちゃん役募集してないし!」
カイ「どこからいつ入ったの?!」
レイ「細かい事情はお互いに詮索しない約束でしょう?」
  穏やかに微笑むレイを前に、ぼくは口をつぐむしかなかった。

〇屋根の上
  レイは、たまたま通りがかった幽霊だった。
  専業主婦として4人の子どもを育て上げ、10人の孫育てもした超ベテラン主婦。
  ウッカリ夫より先に旅立ってしまったため、心配であの世に行けずにこの世を徘徊しているところだった。

〇綺麗なダイニング
ココナ「いいじゃん」
ココナ「ココもおにいちゃんもおりょうりできないし、おとうさんもムリだよね?」
  視界の端でユウシがウンウンとうなづいている。
ココナ「おかあさんもできないし、おばあちゃんがしてくれるなら、いいじゃん!」
  言われてみればその通りだ。
  家族ごっこと言えど、食事は欲しい。
カイ「でも、おばあちゃん用の部屋ないよ」
  家では全員にそれぞれ個室が割り当てられていた。
  余分な部屋などない。
ココナ「だいじょうぶ!」
ココナ「いまつくる・・・」
ココナ「じゃなくて、おくにもう1こあった」

〇魔法陣2
  妹は魔女であった。
  齢は500歳を軽く超えている。
  色々やりつくしてヒマを持て余していたところに、たまたまカイが迷い込んできた。
  異空間に存在するこの家は、本来なら普通の人間が入れるはずがない。
  それなのに、カイは当たり前に侵入してきた。
  それなら、どうせヒマだし普通の世界でしばらくヒマつぶしでもしようか・・・
  そう考え、魔女は幼女のフリをしてカイに家族ごっこを提案したのだった。

〇和室
カイ「ほんとだ・・・」
カイ「こんなところに部屋なんてあったっけ・・・?」
  ココナが言う場所をみんなで見に来ると、そこにはしっかり部屋があった。
レイ「これで決まりね」
  レイがそう言った瞬間、外から叫び声が聞こえた。

〇住宅街の道
  急いで向かうと、家の前の道で小さな男の子が膝から血を流して泣き叫んでいた。
ユウシ「大丈夫か?」
  すかさずユウシが膝に手を当てる。
  ポウッと光ったかと思うと、傷はキレイになくなっていた。
カイ「・・・・・・・・・え!!!」
カイ「なになに、何がおきた?」
  ぼくは驚いて声を上げた。
  ユウシはしまったと言わんばかりの顔をしながらあさっての方向を見ながら口笛を吹き始める。
  明らかに何かをごまかそうとしている。
  ヒナコはヒナコで、呆然とする男の子の腕を動かしたり、目を覗き込んだりしている。
ヒナコ「ほかは特に大丈夫そうだね!」
ヒナコ「今回は特別にタダでいいから、もう帰っていいよ!」
カイ「・・・・・・・・・医者みたい」
  ボソリとそう呟くと、ヒナコもあさっての方向を見ながら口笛を吹きはじめた。
レイ「二軒目の家の横の道を曲がったところでお母さんが探してるよ」
  レイが男の子にそう告げると、男の子は急いで走り出した。
カイ「二軒先って、そんなところどうやってわかるんだよ?」
  疑いの目を向けると、レイはふふふ、と笑ってフワリと家の中に入っていく。
カイ「ちぇっ!」
カイ「なんだか、ぼくだけ平凡なヤツって感じの家族になっちゃったな」
  ため息をつきながら家に向かう。
  振り向くと、ココナが静かに微笑んでいた。
ココナ(そんなことないよ)
ココナ(このわたしの結界を簡単に破って、家に入ってきたんだからさ)
ココナ(ねぇ?凄腕の怪盗さん・・・)

コメント

  • 訳アリ家族、それぞれ事情を抱えているのだろうと思いながら読み進めていると、予想を超える訳アリ具合で驚きです!この面々でどんな「家族」ドラマを繰り広げていくのか気になります。

  • 訳アリの「わけ」がそれぞれぶっ飛びすぎててすごい。最後までカイの正体が気になっていたら、そういうことか・・・。何やらすごい展開になりそうな家族ですね。お互いの正体を明かしてチームを組んだら最強のアベンジャーズになりそう。

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