あの人に見つけてもらいたくて(脚本)
〇大樹の下
これは今から少し前に交わした「約束」
今は僕が忘れてしまった大切な「約束」──
女の子「・・・ねぇ、君の好きなものってあんまり可愛くないよね
電車とかバイクとか、
ロボットとか銃とか・・・」
男の子「君こそ、僕と好きなものが全然違うんだね
お菓子とかお裁縫とか、
お化粧とかお花とか」
女の子「別に全部が好きってわけじゃないよ」
男の子「え?」
女の子「お母様に言われているの
可愛く、愛されるようにありなさいって
だから、そういうものが周りにあるの」
男の子「ふーん、
じゃあ本当に好きなのは何なの?」
女の子「ほんとに好きなのはね・・・
内緒!」
男の子「え!?どうして?」
女の子「私のこと、もっと知ってほしいの!
だから私からは教えない」
男の子「じゃあ、僕はどうしたらいいの?」
女の子「もっと仲良くなって、
私が本当に好きなものを見つけて!
もし見つけてくれたら、
君と結婚してあげる!!」
男の子「え!?
別にそこまではいいんだけど・・・」
女の子「なによ、イヤなの?
じゃあ、もう明日から会わないから!」
男の子「えーそんなぁ・・・
わかったよ、じゃあ約束しようよ」
女の子「約束?」
男の子「うん
僕は君の好きなもの、
君は僕の好きなものを見つけるんだよ」
女の子「君は好きなもの、
もう見つけてるでしょ?」
男の子「僕もああいうのが好きってわけじゃないよ
周りに合わせてる感じかな
だから、一緒に見つけてよ」
女の子「いいよ
見つけてあげる!」
男の子「僕も見つけてみせる!」
男の子・女の子「「約束だよ」」
その後、2人は突然の別れにより、しばらく離れ離れになってしまう
これは、「約束」の続きを綴る物語──
〇立派な洋館
「四条院 久音「娘達よ、広間に集まりなさい!」」
〇豪華な部屋
四条院 久音「では、これより2回目の四条家跡取り認定品評会を始めますよ」
彼女の名前は四条院 久音(しじょういん くおん)
この四条院家の当主にして、半年前に両親を亡くした僕の後見人になってくれた人だ
ちなみに若々しく見えるが、
4人の娘を持つ母親でもある
四条院家は旧財閥筋の名家であり、現在の日本の金融・不動産、製造などあらゆる分野を支える四条院グループを支える一族だ
まぁ平たく言うと、
すごくお金持ちということだ
四条院 久音「坊や、冬姫がまだ来ていませんね 呼んできてくださる?」
月上 詩綺「かしこまりました」
僕は月上 詩綺(つきがみ しき)
半年前に両親を失い、この家に執事見習いとして引き取られた16歳だ
四条院 冬姫「お母様! 今日でこの茶番を終わらせますわ」
この人は四条院 冬姫(ふゆき)さん
四条院家の長女で年齢は25歳
4年制大学在学中に司法試験に合格し、
卒業から弁護士として活躍している才女だ
四条院 久音「終わらせたいなら、前回のような変なものは持ち込まないことね」
四条院 冬姫「なっ!? センスがないですって・・・!?」
月上 詩綺(冬姫さんは前回の”気になる異性への初めてのプレゼント”で自分の趣味のモデルガンを渡そうとしたんだよなぁ・・・)
四条院 冬姫「あれは詩綺がストレス発散に良いかもしれませんねって言ったから選んだのよ」
月上 詩綺「えぇ!?」
四条院 久音「他人のせいにしない! だいたい冬姫の趣味自体、 全く可愛らしくありませんわ」
四条院 久音「四条院家の娘なら、皆に愛されるように可愛らしく振る舞わないといけませんわ」
四条院 秋穂「ママ 私は前回ので合格じゃないの?」
この人は四条院 秋穂(あきほ)さん
四条院家の次女で20歳の大学2回生
工学専攻のいわゆる理系女子だ
四条院 久音「前回のアレで合格なわけないでしょ・・・」
月上 詩綺(秋穂さんは前回のプレゼント企画で、 自作の変形ロボットを持ち出したんだったよな)
四条院 秋穂「あれにはコイツも喜んでいたでしょ ねぇ?」
月上 詩綺「あ、はい 筒状のやつですよね? ダイアルを合わせると、 お箸とボールペンと耳かきが出てくる・・・」
四条院 秋穂「そうよ そして上部を押し込むと、それらをプロペラにして浮遊するヘリコプターに変形するのよ」
四条院 久音「それなヘンテコなカラクリのどこをカワイイと言えますの?」
四条院 夏実「お、お母さん わ、私もダメなの?」
彼女は四条院 夏実(なつみ)さん
四条院家の3女で高校生3年生
声が小さくて引っ込み思案な人だ
四条院 久音「あなたね・・・ ”あれ”で私がどれだけ驚いたか・・・」
月上 詩綺(“あれ”っていうのは、夏実さんが用意した バイク走行音のASMR音源のことだよなぁ)
四条院 夏実「うん、お母さん何故かとても驚いてた 私はあれを毎日聞いているのに・・・」
四条院 久音「テレビゲームで、でしょ 夜遅くまでやって学校サボり気味なの知ってますよ」
四条院 夏実「え、何で知ってるの?」
四条院 久音「坊やに聞いたのよ」
四条院 夏実「詩綺君・・・ それは内緒の約束・・・」
月上 詩綺「いやぁ、 さすがにそれを内緒にするわけには・・・」
四条院 春香「夏実姉さん あんまり詩綺を困らせないで!」
四条院 春華(はるか)
四条院家の末っ子で僕と同じ高校2年生
学級委員長をやっている程、真面目な人だ
四条院 久音「春華も私を困らせないで欲しいわね」
四条院 春香「え、もしかして前回のことを言ってるの?」
月上 詩綺(春華さんはたしか、自分の好きな鉄道についての自作のクイズ本だったよな)
四条院 春香「4択形式だからわかりやすいって、 詩綺は褒めてくれましたよ!」
四条院 久音「あんなの何の知識も興味もない人が受け取ったら、何も楽しめないわ 写真問題なんて全部同じだったじゃない」
四条院 春香「全然違う車両よ!」
とまぁ、こんな感じで前回の品評会は散々な結果だった
〇豪華な部屋
四条院 久音「娘達よ、常日頃から上に立つものは愛されることが重要だと言ってるでしょ そのためには、可愛らしく振舞うことが大切なのよ」
四条院 久音「あなた達の残念な趣味を全開にしていたら、見放されてしまいますよ」
「!?」
「!?」
月上 詩綺「じゃあ、どういったのが正解だったのですか?」
四条院 久音「あなただったら、どうしますか?」
月上 詩綺「え、僕ですか!?」
月上 詩綺「僕だったら、そうですね・・・ 形が残るものを渡すのは緊張するので、 一緒に甘いお菓子でも食べに行きたいですね」
四条院 冬姫「形に残った方が嬉しくないか?」
月上 詩綺「嬉しいは嬉しいですけど、相手が何好きかわからないかもしれないですし」
四条院 秋穂「それだとあんまり特別感なくないか?」
月上 詩綺「本当は僕も一緒に手作りとかしたいんですけどね」
四条院 夏実「詩綺君はお菓子作りが好きだもんね・・・」
四条院 春香「そう言えば、どうしてお菓子作りが好きなの?」
月上 詩綺「僕の初恋の人が好きだったんですよ だからその人に好かれたくて、 練習したんだと思います」
「!?」
「!?」
月上 詩綺「と言っても、ほとんどその人のこと覚えてないんですけどね・・・」
月上 詩綺「何か大切な”約束”をしたような気もするんですけどねぇ・・・」
???(・・・覚えていてくれたんだ・・・)
四条院 久音「それでは前回の反省会も終わりましたし、 今日も始めますわよ 今回のお題は──」
〇立派な洋館
これはあの日の”約束”の続きの物語──
最初の会話シーンで詩綺が好きなものは電車、バイク、ロボット、銃だったけど、それが四姉妹それぞれの趣味になっていますね。果たして約束の相手がこのうちの誰なのか、その相手と詩綺は結ばれるのか、気になるところです。
しき君の初恋の幼馴染の女の子があの4人の中にいたのですね!4人とも男の子が好きそうなものが趣味だったから、確定はできないけれど。約束の内容は覚えてなくても、習慣として残ってるっていうのがなんだかロマンチックだと思いました。