ゲーム×ファミリー

才波津奈

エピソード1:家族×ゾンビゲーム(脚本)

ゲーム×ファミリー

才波津奈

今すぐ読む

ゲーム×ファミリー
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

  これは、
  ゲーム実況に奮闘する、
  ある家族の物語。

〇ダイニング
  相沢家の食卓
  次女:ユミナ(7)、小学生
ユミナ(お父さん元気ないな・・・)
  父:トシノリ(43)、会社員
トシノリ「うーん・・・」
  母:カズエ(41)、専業主婦
カズエ「あなたどうしたの、難しい顔して」
トシノリ「いやー、アップしたゲーム実況動画が、」
トシノリ「思ったより、回らんのだよ」
  動画が回らない=
   アップした動画の再生数が伸びない
  長女:アケミ(17)、高校生
アケミ「そりゃそうよ」
アケミ「普通の家族が、ただゲームしてるだけの動画なんて」
アケミ「いったい誰が見るのよ」
  長男:トオル(14)、中学生、引きこもり中・・・
トオル(まあ、うちの家族は普通じゃないけど・・・)
カズエ「あらあら困ったわね」
カズエ「でもそういう時こそ、元気を出して、あなた」
カズエ「特別に、今日の晩酌は、発泡酒じゃなくてビールにしましょう」
トシノリ「おー、ありがたい。本物のビールは何日ぶりだろうな」
アケミ(ビールがご馳走・・・相沢家の将来は、大丈夫かしら)
トシノリ「しかし、やはり動画を回すには、強いのが必要だな」
トシノリ「刺激が強いのが・・・」
アケミ「どうゆうこと?」
トシノリ「ゲームの内容だよ」
トシノリ「やはり人気あるの動画は、刺激的なゲームを扱ってることが多いんだ」
アケミ「例えば?」
トシノリ「ゾンビサバイバル系のゲームとかね」
カズエ「あら、お母さんそれ知ってるわ!」
カズエ「パズルを解きながらゾンビから逃げるゲームでしょ?」
トシノリ「わはは、かあさん、それじゃないよ」
トシノリ「それに、あのゲームは広告の中にしか存在しない幻のゲームなんだよ」
カズエ「あらそうなの、色々難しいのね」
トオル(お父さん、そんなことまで知ってるのか・・・)
トシノリ「私が言ってるのは、「セブン・ナイト・ゾンビ」だよ」
トシノリ「夜になると襲ってくるゾンビから、身を守りながら生き残るゲームさ」
アケミ「なんかハードそうね。ユミナはまだ小学生よ」
ユミナ「ユミナは平気だよ。ゾンビ怖くないよ」
ユミナ「たーくさん、ニンニク持っていくから」
「えーと・・・」
トオル(ダメだ、かわいくてツッコめない・・・)
トオル(てか、家族全員でプレイする必要って・・・?)
  その後も、家族での白熱した議論は続いた。
  そして、ユミナの強い希望もあり、結局家族全員でそのゾンビゲームに挑戦することになった。

〇荒地
  ゲームプレイ当日・・・
ゾンビ「ウゲー」
「キャー!」
トシノリ「落ち着け!大丈夫だ!」
トシノリ「昼間のゾンビは凶暴じゃないし、動きも鈍い」
トシノリ「ヤツにかまわずクエストを進めよう!」
トシノリ「まず、石を集めて、石斧を作るんだ!」
トシノリ「その石斧で草を刈ると、刈った草から寝袋が作れる」
トシノリ「それができれば、クエスト1は完了だ」
トシノリ「トレーダー(商人)の所へ行けば、クエスト報酬で自転車が貰える」
トオル(いつになく、とうさんが頼りになるな・・・)
トオル(てか、今のは声に出して伝えるべきだったな・・・)
トシノリ「よし、お父さんとトオル、ユミナで防衛用の拠点を作っておくから、」
トシノリ「アケミとかあさんは、向こうにあるトレーダーハウスへ行って自転車を貰ってきてくれないか?」
トシノリ「その自転車で食料や水を集めてきてほしいんだ」
アケミ「女だけで行かせるの?」
トシノリ「大丈夫、さっきも言ったろ」
トシノリ「ゾンビを見かけても、近づかなければ問題ない」
アケミ「・・・わかったわよ」
トオル「あの・・・」
トオル「気をつけて・・・」
アケミ「トオル!?」
アケミ「あんたの声、久しぶりに聞いたわ」
アケミ「でも、ありがと」
アケミ「いってくる!」

〇ラブホテルの受付
  トレーダーハウス
トレーダーのジョン「なんだいあんた達?」
アケミ「クエスト報酬を貰いにきたわ」
トレーダーのジョン「なんだ、新参プレイヤーか」
トレーダーのジョン「で、何がほしいんだ?」
アケミ「自転車よ」
トレーダーのジョン「ほらよ、持ってきな」
トレーダーのジョン「まあ、夜を無事に越せるのか、お手並み拝見させてもらうぜ」
カズエ「ちょっとあなた、なんなの?さっきからその口の利き方、失礼ね」
トレーダーのジョン「あ?なんだって?」
カズエ「あと、この自転車、電動アシスト付きに替えてもらえないかしら」
トレーダーのジョン「あ?なんだって?」
アケミ「お母さん、言っても無駄よ!あと、電動アシストとかないから、この世界」
アケミ「もう行きましょう」

〇荒地
カズエ「まったくもう。話のわからない人でいやぁね、お母さん悲しいわ」
アケミ「もー、ゲームキャラに無茶言わないでよ」

  その後、二人が食料や水を集めて戻ると防衛拠点となる小屋が完成していた。

〇森の中の小屋
  拠点小屋

〇森の中の小屋
アケミ「即席にしては随分立派ね」
トシノリ「ああ、お父さん、建築ガチ勢の動画見て勉強してきたからな」

〇村に続くトンネル
ユミナ「ちゃんと道も作ったよ」
カズエ「でもこの道、なんか途中で穴が空いてるわよ?」
トシノリ「ループ(回る)拠点にしたんだよ」
トシノリ「この穴からゾンビが落ちて下の道に戻る」
トシノリ「そうすることでゾンビをループさせて、拠点に近づけないようにする仕掛けだ」
ユミナ「やっぱり、お父さんすごいね」
トシノリ「ははは、ありがとう、ユミナ」
トオル(・・・)
トオル(次こそ、僕も伝えよう・・・)
トシノリ「さあ、今のうちに周囲の林で木を刈って、」
トシノリ「夜までに十分な弓矢を用意しておこう」

〇山の中
ユミナ「お母さん、こっちに沢山木が生えてるよ!」
カズエ「ユミナ、一人で先に行かないで」
兵士ゾンビ「ウ~」
ユミナ「あ、兵隊さん!」
兵士ゾンビ「ア~・・・」
ユミナ「お怪我してるの?」
カズエ「あら、本当。それに顔色も悪いわね」
カズエ「あなた、この救急キットお使いなさい」
カズエ「中にお薬も入ってますからね」
???「お母さん、ユミナ、離れて!そいつゾンビよ」
アケミ「早く逃げて!」
ユミナ「えー!」
カズエ「あら、そうなの?」
カズエ「ちゃんと服着てるからお母さん、わからなかったわ」
アケミ「もー緊張感ないなー」
アケミ「とにかく、拠点に戻りましょ」
兵士ゾンビ「あ・・・お・・・」
  小さな危機はありながらも着々と準備を整え、夜に備えるのであった

〇森の中の小屋
  そして夜がやってきた

〇山の中
ゾンビ「ウォー」

〇ボロい山小屋
  拠点小屋、内部
トシノリ「きたぞ!」
トシノリ「私とアケミ、トオルは、屋根に上がって弓矢で迎撃だ」
トシノリ「お母さんはユミナと、この部屋に隠れていてくれ」

〇山の中
ゾンビ「ウォー」
女ゾンビ「アー」
男ゾンビ「グォー」
  ゾンビの襲撃は絶え間なく続き、苛烈を極めた。
  しかし、ループトラップが機能して、小屋にまで辿り着くゾンビはほぼいなかった。

〇空
アケミ「もうすぐ夜明けだわ!」
トオル(あと少し・・・)
トシノリ「いかん、弓が壊れた!」
トシノリ「かあさん、屋根まで新しい弓を持ってきてくれないか?」

〇ボロい山小屋
カズエ「わかったわ、あなた」
???「キャー」
ユミナ「お母さん!」
ユミナ「お父さん、お母さんが外に落ちちゃった!」

〇空
アケミ「大変!」
トオル「お母さん・・・!」
アケミ「助けに行かないと!」
トシノリ「待て、待つんだ!二人とも」
アケミ「なんで?早く行かないと! お母さん一人で、あんなに逃げ回って・・・」
アケミ「ほら見て!」
アケミ「ゾンビと一緒にお母さんまでループしてるじゃない」
トシノリ「ああ、だがあのお母さんのループで、」
トシノリ「この動画も回る(ループする)かもしれない!」
アケミ「ちょっとお父さん何言ってるの?」
トシノリ「アケミ、我々には・・・」
トシノリ「撮れ高も必要なんだ」
トシノリ「今は、見守ろう・・・」

〇山の中
ゾンビ「グェー」
カズエ「キャー」

〇空
アケミ「お母さん!」
トシノリ(すまない!かあさん・・・)

〇山の中
兵士ゾンビ「ぐぅらー」
ゾンビ「ギャー」

〇空
トシノリ「なんだ?どうした?」

〇山の中
兵士ゾンビ「どぅげー」
男ゾンビ「グエー」

〇空
アケミ「なんか、ゾンビ同士が争ってるみたい!」

〇ボロい山小屋
ユミナ「兵隊さんだ!」
ユミナ「兵隊さんが悪いヤツをやっつけてるんだよ」

〇空
トシノリ「そんなバカな・・・」

〇山の中
兵士ゾンビ「おでぇー!」
  その後、何度かおとずれる危機も、兵士ゾンビの活躍で一家はなんとか朝を迎えることができた。

〇空
トシノリ「朝だ!」
アケミ「やったわ!」
トオル(乗り切った・・・)

〇ダイニング
  こうして一家は無事に生還を果たしたのだった。

〇山の中
  その後、編集された動画がアップされると
  今まで、誰も見たことのないゾンビの挙動が映ってると・・・

〇SNSの画面
  SNSで話題になり、再生数も大きく跳ね上がった。
  その後、ゲームの運営より、
  「一部のゾンビにアイテムを与えると、挙動が不安定になる」
  とのバグ報告も出された。

  しかし、あの兵士ゾンビが本当にプレイヤーを守ろうとしたのかは不明のままだった。

〇ダイニング
トシノリ「・・・」
アケミ「どうしたのお父さん、浮かない顔して?」
トシノリ「いや、動画は回ってよかったが、あのゾンビなんだったんだろう・・・」
ユミナ「きっとあの兵隊さん、ユミナたちを助けてくれたんだよ」
カズエ「やっぱり、ゲームキャラでも通じ合えるのね」
カズエ「お母さん、うれしいわ♪」
トシノリ(ありえるだろうか?)
トシノリ(・・・)

〇山の中

〇山の中

〇山の中
兵士ゾンビ「おで・・・悪いゾンビじゃない・ぉ・・」
兵士ゾンビ「ニッ」

〇ダイニング
トシノリ(いやいやいや、ありえんだろ!)
カズエ「そんなことよりあなた!」
カズエ「あの時、私のことより、動画の再生数を優先したこと、」
カズエ「忘れてませんからね!」
トシノリ「いや、かあさん、それは・・・」
カズエ「プンプン。お父さん、当分ビールはおあずけですから!」
トオル(今回のお父さんは、頼りになると思ったんだが・・・)
トオル(今は伝えるのをやめておこう・・・)
  その日以来しばらく、相沢家の食卓にビールがのぼることはなかった。

  ゲーム×ファミリー
  エピソード1
  完

コメント

  • てっきりお母さんがゾンビになるかと思いました 💦 無事生還できてよかったです!!
    お母さんのためにビールで乾杯🍻
    楽しい時間をありがとうございました🖐️

成分キーワード

ページTOPへ