第1話 発進!ファミリシオン(脚本)
〇黒
〇公園のベンチ
真壁ノリオ「さて」
真壁ノリオ「いただき──」
〇銀座
本部から入電
ビジターの出現を確認
〇公園のベンチ
担当地区パイロットは即刻帰宅せよ
〇開けた交差点
〇広い改札
〇駅のホーム
〇走る列車
〇通学路
〇綺麗な一戸建て
「ただいまー!」
〇飾りの多い玄関
〇おしゃれなリビングダイニング
〇部屋の扉
〇清潔なトイレ
真壁ノリオ「システム起動」
〇電脳空間
真壁ノリオ「コントロール正常!」
真壁ノリオ「メインモニター起動!」
真壁ノリオ「モ、モニター異常なし!」
真壁ノリオ「変形型戦闘用住宅ファミリシオン」
真壁ノリオ「発進!」
真壁ノリオ「・・」
〇綺麗な一戸建て
〇電脳空間
真壁ノリオ「・・」
〇綺麗な一戸建て
〇街の全景
〇地球
「申し訳ございませんでしたーーーっ!」
〇個人の仕事部屋
地球防衛機関NAIJO
近藤隊長「困るよ真壁さん!」
近藤隊長「あの地区に配備されてる変形型戦闘用住宅はお宅だけなんだから!」
真壁ノリオ「はい」
藤村ケイゴ「まぁまぁ」
藤村ケイゴ「今回は私の活躍で事なきを得たわけですから」
真壁ノリオ「藤村くん」
近藤隊長「いつも他所の地区からの応援が間に合うとは限らないんだから」
近藤隊長「これが続くようなら退去してもらうよ!」
真壁ノリオ「そんな!」
真壁ノリオ「まだローンが!」
真壁ノリオ「退去だけはご勘弁を~!」
近藤隊長「結果で示してください!」
藤村ケイゴ「はははっ」
藤村ケイゴ「かつてのエースパイロットが見る影もない!」
藤村ケイゴ「せいぜい退去させられないよう頑張って」
春日井ツナグ「後輩にあんな事言われて悔しくないんですか?」
真壁ノリオ「春日井さん」
真壁ノリオ「私が不甲斐ないのは事実ですし」
真壁ノリオ「藤村くんには実績もありますから」
春日井ツナグ「・・」
春日井ツナグ「その藤村さんですが」
春日井ツナグ「ファミリシオンの動力となる家族とのキズナメーターの平均値は」
春日井ツナグ「90%です」
真壁ノリオ「90%!?」
真壁ノリオ「藤村くん」
真壁ノリオ「君は普段、どんな家族サービスをしているというんだ!?」
春日井ツナグ「対して真壁さんの平均値は」
春日井ツナグ「24%」
真壁ノリオ「低っ!」
春日井ツナグ「稼働ギリギリレベル」
春日井ツナグ「家族サービス以前の問題です」
春日井ツナグ「ハッキリ言って」
春日井ツナグ「真壁さんはご家族から嫌われています」
真壁ノリオ「ハッキリ言い過ぎでは!?」
春日井ツナグ「この際ハッキリ自覚していただかないと」
春日井ツナグ「強制退去ですよ?」
真壁ノリオ「ぐっ」
春日井ツナグ「エースパイロットの実力」
春日井ツナグ「拝見するのを楽しみにしていたんですけどね」
真壁ノリオ「私にもどうしようもないんですよ」
〇おしゃれなリビングダイニング
妻とは結婚25年
私たちは倦怠期という出口の見えないトンネルの中にいます
私の渾身のギャグも
妻の心の柔らかい部分を照らす事は叶わない
〇白いバスルーム
娘のヒバリは高校一年生
あの人のと一緒に洗濯しないで、服が腐る──
私は娘の反抗期を独り占め
〇教室
ユウタは小学5年生
思春期真っ只中の息子は
授業参観で私と他人のフリをしていました
〇綺麗な一戸建て
飼い犬のチャチャ
まるで私が見えていないかのように遠くを見つめます
手からエサを食べてくれた事はありません
〇水玉2
昔は違った──
皆も私も笑ってた──
「一部、記憶の改竄がひどいですね」
〇個人の仕事部屋
真壁ノリオ「──今ではこのザマです」
真壁ノリオ「中年の危機を迎えて現場を去るパイロットは多いです」
真壁ノリオ「潮時、なのかも」
春日井ツナグ「つまり職務怠慢ですね」
真壁ノリオ「えぇ、その通り──」
真壁ノリオ「って、えぇ!?」
真壁ノリオ「話聞いてました春日井さん!?」
春日井ツナグ「藤村さんも中年です」
春日井ツナグ「同じ中年の危機にありながら」
春日井ツナグ「しっかり家族との絆を育んでいます」
春日井ツナグ「外面は最悪でも家面は良い」
春日井ツナグ「パイロットに求められる資質のひとつです」
真壁ノリオ「彼はきっと」
真壁ノリオ「違法な地球外精力増強剤を使用して奥さんを悦ばせ」
真壁ノリオ「子供たちをお小遣いで抱き込んでいるに違いありません!」
真壁ノリオ「これは内部規定に抵触しています!」
真壁ノリオ「ただちに調査すべきです!」
春日井ツナグ「先程の回想から考察するに」
春日井ツナグ「いちいち鼻につく言い回しや」
春日井ツナグ「抑え切れないエゴイズム」
春日井ツナグ「そして根拠なき誹謗中傷」
春日井ツナグ「追いつめられると保身のために何でもやる」
春日井ツナグ「真壁さんには人として改善すべき点が多いようです」
春日井ツナグ「それをこれから私が指導します」
真壁ノリオ「え!?」
春日井ツナグ「リモートで24時間」
春日井ツナグ「徹底管理するのでそのつもりで」
真壁ノリオ「ほぇっ!?」
〇綺麗な一戸建て
〇飾りの多い玄関
「真壁さん聞こえますか?」
真壁ノリオ「え、えぇ」
〇諜報機関
春日井ツナグ「そちらの様子は」
春日井ツナグ「ここからモニタリングします」
春日井ツナグ「適宜、指示を出しますので」
春日井ツナグ「イヤモニは付けたままで」
〇飾りの多い玄関
真壁ノリオ「モニタリングって」
「ご自宅にはカメラを設置しました」
真壁ノリオ「え!」
「共有スペースだけなのでご安心を」
真壁ノリオ(もう風呂上りに素っ裸で歩き回れないな)
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ノリオ「ただいま」
真壁アキコ「あら」
真壁アキコ「今日は早いのね」
真壁ノリオ「うん」
真壁アキコ「・・」
真壁ノリオ「どうかした?」
真壁アキコ「何か気付かない?」
真壁ノリオ「え?」
〇諜報機関
春日井ツナグ「・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ノリオ「う~ん」
真壁ノリオ「部屋の模様替え──」
真壁ノリオ「でもないし」
真壁ノリオ「う~ん」
〇諜報機関
春日井ツナグ「もしかして」
春日井ツナグ(奥様の今日の行動記録)
午後3時21分 美容室「マダムーチョ」
春日井ツナグ「やっぱり!」
春日井ツナグ「真壁さん、髪です!」
春日井ツナグ「奥様の髪型を褒めて!」
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ノリオ「髪型!?」
真壁アキコ「うそ、気付いたの!?」
真壁アキコ「白髪を染めて、長さも1センチ短くしたのっ」
真壁ノリオ「い、1センチィ~ッ!?」
真壁アキコ「ふふっ、今晩はアナタの好きなチンゲン菜よ!」
〇諜報機関
春日井ツナグ「ふぅ」
春日井ツナグ「細かい違いに気付けて良かった」
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ノリオ「細かすぎるでしょ!」
真壁ノリオ「1センチですよ1センチ!」
〇諜報機関
春日井ツナグ「でも」
春日井ツナグ「キズナメーターは溜まりましたよ」
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ノリオ「こんなの普通気付けませんて!」
真壁ノリオ「間違い探しじゃあるまいし!」
「間違い探し・・」
「そうか!」
真壁ノリオ「はい?」
真壁ノリオ「誰!?」
真壁ノリオ「ふごっ!」
真壁ノリオ「ヴヴヴッ!」
〇黒背景
〇拷問部屋
真壁ノリオ「ぶはっ!」
真壁ノリオ「ここは?」
真壁ノリオ「椅子に固定されてる」
真壁ノリオ「ひぃっ!」
「気が付きましたか?」
真壁ノリオ「春日井さん、これは!?」
「手荒な真似をしてすみません」
「事態は一刻を争うもので」
真壁ノリオ「とにかく、これを解いて!」
「それは出来ません」
真壁ノリオ「なっ!?」
真壁ノリオ「そうか分かったぞ!」
真壁ノリオ「アンタ、デスゲームの主催者だな!」
真壁ノリオ「私をどうする気だ!?」
真壁ノリオ「ゲームに失敗する度、大事な毛を一本一本引き千切る気か!?」
「落ち着いてください」
「先程、おっしゃいましたよね?」
真壁ノリオ「え?」
「間違い探し、と」
「家族の些細な変化に気付く事」
「これはキズナを獲得するためにとても重要な能力です」
「これから、その能力の増幅処置を行います」
「目の前にモニターがありますね」
真壁ノリオ「私に何をさせる気だ!?」
「だから」
「間違い探しですよ」
真壁ノリオ「ぎゃああああ!」
〇黒
〇綺麗な一戸建て
真壁ノリオ「はっ!」
〇諜報機関
春日井ツナグ「48時間に渡る研修お疲れ様でした!」
〇綺麗な一戸建て
真壁ノリオ「研修!?」
真壁ノリオ「拉致監禁拷問の間違いだろ!?」
「ふふ、すっかり間違いに敏感になっていますね」
真壁ノリオ「なに笑ってんだ!」
〇飾りの多い玄関
真壁アキコ「アナタ!」
真壁アキコ「二日もどこに行ってたの!?」
真壁ノリオ「ちょっと研修に──」
真壁ノリオ「ムッ!?」
真壁ノリオ「頬ならび、バスト・ヒップアップ」
真壁ノリオ「二の腕ならび、ウェスト・太もものスリム化を確認!」
真壁アキコ「え、分かるの!?」
真壁アキコ「思い切って高級エステに行った甲斐があったわ!」
真壁ノリオ「高級エステ!?」
真壁アキコ「綺麗になったご褒美に新しい服買わなくちゃ!」
真壁ノリオ「何で!?」
「さっそく研修の成果が出ましたね!」
〇諜報機関
春日井ツナグ「でも」
春日井ツナグ(変化がない)
〇飾りの多い玄関
「真壁さん」
「次はユウタくんとのキズナを高めましょう」
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ノリオ「何してる?」
真壁ユウタ「ゲーム」
真壁ユウタ「見れば分かるでしょ?」
真壁ノリオ「だな」
「後は任せてください」
真壁ノリオ「本当に大丈夫な──」
真壁ノリオ「・・」
真壁ノリオ「ユウタ、父さんと一緒にやろう」
真壁ユウタ「は?」
真壁ユウタ「FPS、出来るの?」
真壁ノリオ「大丈夫」
〇荒廃した市街地
真壁ユウタ「敵だ!」
真壁ノリオ「・・」
真壁ユウタ「一発で!?」
真壁ユウタ「しまった後ろを!」
真壁ユウタ「一瞬で!」
真壁ノリオ「クリアリングを怠るな」
真壁ユウタ「は、はい!」
〇諜報機関
春日井ツナグ「真壁さんの脳波を遠隔で操作」
春日井ツナグ「AIが最適解の行動を導き出す」
春日井ツナグ「プロゲーマー並の腕前ね!」
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ユウタ「父さん凄いよ!」
真壁ノリオ「ぐはっ!」
真壁ノリオ「はぁ、はぁ、はぁ」
真壁ノリオ「一体なにが」
真壁ノリオ「頭が割れるように痛い」
〇諜報機関
春日井ツナグ「ちょっとやり過ぎたかしら」
春日井ツナグ「でも!」
〇綺麗な一戸建て
「次はチャチャです」
真壁ノリオ「何をすれば?」
「簡単です」
「明確に自分の方が上だと分からせましょう!」
〇ホテルの部屋
〇綺麗な一戸建て
真壁ノリオ「うぅ」
真壁ノリオ「向こうが上なのか・・」
〇諜報機関
〇綺麗な一戸建て
〇おしゃれなリビングダイニング
「正念場ですね」
〇チェック
「ヒバリさん」
「真壁さんに対する嫌悪感は相当です」
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ノリオ「それ以上聞きたくない!」
真壁ノリオ「こんな時間からどこへ?」
〇通学路
「ますます嫌われますよ?」
真壁ノリオ「黙っててください」
真壁ノリオ「悪い虫だったら払い除けねば!」
「やれやれ」
〇テラス席
真壁ノリオ「ここで待ち合わせか」
「悪い虫じゃなかったですね」
真壁ノリオ「いえ、まだ油断はできません」
〇テラス席
ヒバリの友達「さっきからあのオジサン何?」
真壁ヒバリ「え?」
真壁ヒバリ「何してるの?」
真壁ノリオ「チャ、チャチャの散歩さ!」
真壁ヒバリ「ウソ」
真壁ヒバリ「チャチャは自分より格下とは散歩しないわ」
真壁ヒバリ「コソコソ見張るなんて」
真壁ヒバリ「最低!」
〇通学路
「懲りないですね」
真壁ノリオ「変質者が出たらどうするんですか」
お巡りさん「ちょっといいですか?」
真壁ノリオ「え?」
〇通学路
真壁ノリオ「ですから」
真壁ノリオ「私は何も!」
お巡りさん「ずっと女性をつけてたでしょう!」
お巡りさん「いいから来なさい!」
真壁ノリオ「それはそうなんですけど違うんですーっ!」
真壁ヒバリ「あーもうっ」
真壁ヒバリ「お巡りさん」
真壁ヒバリ「その不審者、父なんです」
お巡りさん「え!?」
真壁ヒバリ「迎えに来てくれたみたいで」
真壁ヒバリ「ね、パパ?」
真壁ノリオ「そ、そうそう!」
お巡りさん「そ、そうでしたか」
お巡りさん「これは失礼を」
真壁ヒバリ「いえ」
真壁ヒバリ「行こっ、パパ」
〇通学路
真壁ノリオ「すまん」
真壁ヒバリ「ホント馬鹿!」
真壁ヒバリ「・・」
真壁ヒバリ「ふふ」
真壁ヒバリ「あはははっ」
真壁ヒバリ「もうっ」
真壁ヒバリ「ホントしょーもない」
真壁ノリオ「面目ない」
真壁ヒバリ「また職質されると困るから」
真壁ヒバリ「そっちが前歩いて」
真壁ノリオ「はい」
真壁ヒバリ(ありがと)
〇諜報機関
〇綺麗な一戸建て
数日後
〇飾りの多い玄関
真壁ノリオ「ただいまー」
〇おしゃれなリビングダイニング
〇おしゃれなリビングダイニング
「お誕生日おめでとう!」
真壁ノリオ「あうっ」
真壁ヒバリ「泣いてんの?」
真壁アキコ「あなた座って」
〇諜報機関
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ノリオ「好物のポテサラだぁ」
真壁アキコ「ユウタが一生懸命作ったの」
真壁ユウタ「食べて食べて!」
真壁ノリオ「よ~し」
〇諜報機関
春日井ツナグ「真壁さん、いけない!」
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ヒバリ「一口も食べずにいきなり」
真壁アキコ「アナタって人は」
真壁ユウタ「一生懸命作ったのに」
〇諜報機関
春日井ツナグ「いやあぁぁぁ」
〇綺麗な一戸建て
〇綺麗な一戸建て
〇おしゃれなリビングダイニング
真壁ノリオ「じゃ行ってきます」
「・・」
〇綺麗な一戸建て
「自業自得です」
真壁ノリオ「いいでしょ別に」
真壁ノリオ「ケチャップかけたって!」
〇諜報機関
春日井ツナグ「やはりアナタには」
春日井ツナグ「イチから教育が必要なようです」
〇綺麗な一戸建て
真壁ノリオ「そんな」
真壁ノリオ「考え直して春日井さん!」
「ツナグ、でいいですよ」
〇諜報機関
春日井ツナグ「真壁ノリオさん」
春日井ツナグ「アナタとは長い付き合いになりそうです」
〇綺麗な一戸建て
〇地球
「そんなぁーーーっ!!」
中年お父さんの悲哀に溢れた物語ですね。ラストには家族円満で大団円、、、、をぶち壊すケチャドバ、爆笑です!中年お父さんとは何と手の焼けるイキモノなのでしょうかねw
演出がたくみですね
出だしから引き込まれました
家族との絆でゲージがたまるアイディアというのが話の展開に影響しているのが奇抜でした
あんなに家族のためにがんばってるのに…ひどい扱いです笑
外見と周りの扱いから漂う哀愁感が何とも言えません…
でも、うまくいくと話が終わってしまいそうなので、このパターンが続くのでしょうか…