第1破綻(脚本)
〇アパートのダイニング
この物語は、破綻し続ける世界で、
それを阻止すべく暗躍する、父子家庭の物語である。
父「るM*w!%%&あm+t!」
娘「はぁ・・・」
娘「平日の朝から、父親のセリフが」
娘「なんか、文字化けみたいになってる」
娘「朝っぱらから言語体系が破綻とか、やめてほしい・・・」
父「・・・」
父「どうなることかと思ったよ」
父「もう二度と、話せないものかと」
娘「感謝してよね、お父さん」
娘「そろそろ私に、最強の座を譲ってくれてもいいのよ?」
父「そんな肩書き、元から俺は望んでない」
娘「あっそ。でも、朝からなんかおかしい」
娘「ま、いっか。昼ごはん作るね?」
父「昼・・・?今は朝・・・」
娘「ぎゃあ!」
父「料理をしようとしたら、唐突に冷蔵庫の卵が鶏になったわけだ」
娘「読者への説明みたいなセリフはやめてよっ!」
父「お前は昔からホントに、動物が苦手なんだな」
父「むんっ!」
娘「感謝してよね、お父さん」
娘「そろそろわた・・・」
父「朝食はやめよう。どうやら今日も、破綻が始まっているようだ」
娘「あ、ちょっと・・・、朝から勝手に、時間を巻き戻すのやめてよっ」
娘「ちゃんと未来の私に、許可とったんでしょうねえ!?」
父「今日は休みだったか?街へ出よう」
娘「う、うん。わかった」
娘(今日って休みだったっけ?)
〇地球
娘「・・・」
娘「ま、街へ出るんじゃなかった?」
父「いいんだ」
父「この世界で目的地に辿り着こうという、その考え方が間違いだ」
娘「そ、そうなの?」
父「そういうもんだ」
娘「わ、私たち、どうして宇宙空間で生きていられているわけ?」
父「そうか。お前は、まだ慣れていないんだな」
父「まあ、仕方ないか」
父「疑問に思ったら、負けだ」
娘「お父さんが疑問に思ったから、ここにいるわけなのだけれど」
父「じゃあ、俺たちの勝ちだ」
娘「・・・」
娘「わかった」
娘「言語能力だけじゃなく、」
娘「コミュニケーション能力自体が破綻しているということね」
父「やめろやめろ!俺は正常だ!」
〇センター街
怪人「・・・」
怪人「え?」
怪人「俺様の登場って、」
怪人「もうちょっと後じゃない?」
父「なんかいた!いま、なんかいたよ!?」
娘「いや、展開が早いって言われた気がして・・・」
娘「つい・・・」
父「展開!?展開って何!?」
娘「お父さんは気にしないでよ」
娘「ねえ?作者のメガネもそう思うでしょ?」
あ、はい。そうですね。
父「な、なんか聞こえたよ!?」
父「天からなにか聞こえた!!か、神?神様っ!?」
娘「いいから。お父さんはしゃべらなくていいから」
父「む、むぐっ・・・」
こっちに話しかけてくるのは、勘弁してください。
前にも言ったじゃないですか。
娘「いいじゃん。海外ドラマで緑色の女の人もやってたよ?」
娘「弁護士の、緑の大きい人」
賛否両論っていうか、ほぼ炎上したやつじゃないですか。
作者の私も、登場人物が画面の向こうに話しかけるのは、
ちょっとサムいよなって、常々思ってる派ですから。
いや、ドラマは面白かったですけど。
娘「聞いてもないことを、べらべら話さないでよ」
え・・・
娘「ちなみに、この話って、どういうふうに展開させるつもりなの?」
だから話しかけないで下さいって。お父さん、窒息しちゃいますよ?
娘「登場人物が死ぬかどうかなんて、作者の構成と意志次第じゃない」
娘「火拳のお兄さんが死んだこと、いまだに私は許してないからね」
ちょ、なんですか?だ、誰ですかね?わ、分からないんですけど。
娘「で、どんな話なわけ?」
そうですね。この世界は破綻してるんですよ。
設定とか、時系列とか、伏線とか、
フラグとか、セリフもたまに破綻します。
突飛な展開もありますし、場面転換でもしようものなら、
登場人物の思い通りになることは、皆無でしょう。
お二人には、それを防いでいただきたいな、と思っている次第です。
娘「パス。荷が重い」
!?
娘「そもそも、意味が分からない」
そうですよね。自分でも、意味が分からないことしてんなぁ、と思ってますから。
でも、こちとらトンデモないこと書けって言われてるんですよ。
もともと、現実世界のすべてが、トンデモないと思っている私だというのに。
ていうか、素人が書いた文章なんて、トンデモないわけ、ないと思いません?
娘「話しかけるな、って言ってるわりに」
娘「めっちゃ、しゃべるじゃん」
あ。
娘「分かるよ」
娘「作中でホントは、こういうことが言いたいんだー!とか、あるんだよね?」
娘「おそらく、大部分が大多数に伝わってないよ?」
ぐっ・・・
娘「もっと、みんなが面白いと思うようなヤツ書きなよ」
・・・
もう黙ります。話しかけないでください。探さないでください。
娘「ちょ、ちょっと・・・」
・・・
娘「ボソッ<あと残り何文字?」
半分くらいです(小声)。
娘「へへ、了解っ!」
娘「よしっ!」
娘「俺たちの戦いは、ここからだっ!」
○○先生の次回作に、ご期待ください!
って、連載終了さすなよ。
父?「ぜはぁっ!っぜぇ・・・ぜぇ・・・」
父?「はぁー!死ぬかと思ったぜ」
父?「なあ、誰としゃべってたんだ?」
父?「楽しそうにさ」
娘「いやいやいや、誰ぇっ!?」
父?「ごるぁ・・・」
娘「・・・ご、ごる、あ?」
父?「本日付けで、本社営業部配属となりました、」
娘「いいかげんにして」
父?「自己紹介も終わってないのに・・・」
父「娘よ」
娘「あ、やっと戻った」
父「父さんな、この戦いが終わったら・・・」
父「再婚するんだ」
娘「勝手にしてろよ」
父「えー!相手とか気にならないの!?」
父「新しいお母さんだよ?」
娘「新しい顔を持ってきたパン屋さんみたいに言わないで」
娘「・・・」
娘「お父さんが選んだ相手なら、きっと大丈夫だって、」
娘「きっと、良い人だろうって、信じてるよ?」
父「・・・そうか」
父「・・・」
父「本音は?」
娘「正直、どうでもいい」
娘「私の人生に干渉しない限り、心底どうでもいい」
父「そ、そっかぁ・・・」
娘「お父さん、当初の目的を忘れないで?」
父「ん?ああ、そうだな」
父「じゃあ、街を荒らす怪人を倒そっか?」
娘「そんな目的だったっけ?」
怪人「ゲッゲッゲ・・・」
父「あ、都合よく怪人だ」
怪人「・・・か、かい、じん?」
怪人「・・・」
怪人「あのぉ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
父「え?あ・・・、はい」
娘「お父さん!相手のペースに乗っちゃダメ!」
怪人「貴方がいま言った『怪人』という言葉ですが、」
怪人「大多数の普通の人間と比較しての、私を表した言葉、ということでしょうか?」
父「え?・・・いや、まあ、そうなる、かな?」
怪人「では、普通の人間から見て、異質な存在であり、」
怪人「おそらく、少数しかいないであろう、我々を見て、」
怪人「それを称して『怪人』と、貴方はおっしゃったということですね?」
父「ん、まあ、そうなる、か?」
怪人「・・・」
怪人「それって、差別ですよね?」
父「え?」
娘「なんか、大型掲示板の創設者みたいに、問い詰めてきたんだけど」
怪人「貴方はそうやって、マイノリティである私を、排除しようというのですね?」
怪人「とんだ正義の味方だ」
怪人「そうやって『自分の正義』を振りかざして、自分とは異質な存在を、」
怪人「理解しようとも、認めようともするでなく、」
怪人「存在を抹消する」
怪人「そんなのは、もはやホロコーストと言っても過言じゃないっ!」
父「ほ、ホロコ・・・、なに?」
民衆①「そうだそうだ!」
民衆②「この鬼!ひとでなし!」
民衆③「正義の味方は、すっこんでろー!」
父「えええ・・・」
怪人「ひっひっひ。どうやら勝負、あったようだなぁ?」
怪人「大衆が騙されやすくて、助かったぜぇ」
娘「お父さんっ!諦めないで!」
娘「民衆のみなさん!これは全て、怪人が流したデマよ!フェイクニュースよ!」
娘「信じちゃダメっ!」
父「え、そうなのか?」
娘「知らないわよっ!」
父「そ、そうか・・・」
民衆①「そっか、デマかー」
民衆②「信じて損した」
民衆③「やっぱ怪人って、気持ち悪いよね」
怪人「し、しまった。アイツら、騙されやすい上に、流されやすいのかっ!」
怪人「なんで皆、もっと自分で考えようとしないんだっ!」
怪人「くそぅ、かくなる上は・・・」
父「うぐっ・・・、暴力反対ぃ」
娘「ああ!お父さん!」
娘「この戦いが終わったら、再婚するとか言うからっ!」
倒れた父「油断した・・・」
怪人「正義の味方役が油断するとはな」
倒れた父「返す言葉もない」
倒れた父「論理的に解決するタイプの怪人だと思ってたから・・・」
娘「お父さん!お父さぁんっ!」
倒れた父「しかし!時空間を操る俺の能力で、時を遡るっ!」
怪人「それって、差別で・・・」
父「お父さんジェノサイドぱんちっ!!」
怪人「ぎゃああああああ!」
娘「お父さん、さすが!これで街の平和は保たれたわね!」
こうして父娘は、今日も物語の破綻と、日夜戦い続けるのであった。
勢いだけでお贈りしていただいた物語だそうですが、勢いが強すぎてどっかにすっ飛んでしまったようです。でも、あからさまなメタフィクションがクセになる語り口で楽しかったです。世界が破綻していく中でこの父娘関係だけは破綻とは無縁の盤石さで全米のお父さんが泣いた、みたいなハートフルコメディと言えなくもないですね。
作者様の言葉選びがおもしろかったです(^^)
まず作品説明の文章でクスッと笑ってしまったし
作品内での登場人物とのやり取りもおもしろかったです😂
怪人も憎めないキャラだったし、父と娘の掛け合いも楽しかったし、面白い作品でした!
中々カオスな物語ですね笑
でもちゃんと話がつながっていて、且つわかりやすくもありとても面白かったです!
娘のツッコミがなかったらそれこそ破綻しそうです笑