地球人(家族)になれない

G・A・ラルチ

プロローグ -やはり馴染めない-(脚本)

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〇謎の施設の中枢
  日本の某所に隠していた円盤型飛行艇の船内にて──
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「久しぶり・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「ああ、1ヵ月ぶりだな・・・・・・。進捗の方はどうだ」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「ぼちぼちといったところ・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「こちらもだ。・・・・・・似たようなものか。どうも地球人の『家族』とやらになかなか馴染めなくてだな・・・・・・」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「同じ・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「・・・・・・・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「しかしだ、改めて不愉快だが・・・・・・いくら任務のためとはいえ、なぜ我々がこんな辺境の星に派遣されなければならないのか」
XIAU-WIM(中山斗真)「こんな・・・・・・未だに人類が男女の性別に分かれたままの知的生命レベルの低い星などに・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「しかも『家族』などという原始的共同形態で暮らしながら、互いに支え合わねば生活が成り立たないときている。天然記念物ものだよ」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「確かに屈辱的ではある・・・・・・」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「ツラい・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「このような下等生物の家族の一員に擬態して紛れ込み、地球人の生態を観察・報告せよとは・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「惑星指導部も我らに一体何をさせようとしているのか・・・・・・」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「ねっ」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「地球を侵略したいのであれば、気象兵器で大洪水を引き起こし、天変地異で地球人類を一掃してしまえば済む話なのに・・・・・・」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「そうそう・・・・・・」
  実は指導部はこの3人に対して、本来の調査目的を隠したまま、地球へ派遣させていたのだった。
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「それに・・・・・・我が今まとっているこの『女』という古い人種形態の肉体がまた、いろいろ生活し辛くてだな・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「我も同じだ。『男』に擬態化してから股間の泌尿器が時々いきなり膨張して、えらく邪魔になる。特に寝起きの時などに・・・・・・」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「性別があるとはなんとも厄介だな・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「どうだろう。その胸の膨らみ・・・・・・邪魔そうだから取ってしまえばいいのでは?」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「ダメだ。我が擬態している『戸枝佐那』の胸を平らにしてしまえば『らしさ』が失われて家族の者に疑われる危険がある・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「ふーむ、そうか。この胸がなぁ・・・・・・」
  と言いつつ、無表情のままNAXIU-UINの胸を突然揉みしだき始めたXIAU-WIM。
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「あ・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「・・・・・・どうした?」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「よ、よせ・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「よせ? ・・・・・・何がだ?」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「んん・・・・・・や、やだ・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「やだ・・・・・・? おい、なぜ我の手を払う。それに変な声を出して。おや? 顔も赤いぞ?」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「わ、わからない・・・・・・。でも、そうされると、なぜか我、たまらなく恥ずかしくなるのだ・・・・・・」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「ううっ・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「どうしたXXIAU! 貴様まで急に顔を両手で覆って」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「わかんない。でも・・・・・・でも、我もなぜか恥ずかしさみたいなものが急にこみ上げてきて──」
XIAU-WIM(中山斗真)「貴様はただ我がNAXIUの胸を揉むのを見ていただけではないか」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「そうだけど、『子供は見ちゃダメ』って謎の背徳感が湧き上がってきて、何か変な気持ちに・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「貴様はすでに352歳の大人だろうが……」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「そうだった・・・・・・」
  だが、実はXIAUもさっき胸を揉んだ時、得体の知れない高揚感を覚えて、恥ずかしいくらいに股間をムズムズさせていた。
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「太古の昔に男女の性別を超越して雌雄一体となった我ら惑星XEUIOQ人だが・・・・・・」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「こうして地球人という劣等種族に擬態化している事で、我らも中身まで地球人レベルに低下してきているのかもしれない・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「危険な兆候だ。愚かな地球人に染まり過ぎては我々のアイデンティティーまで崩壊し、どこまでも落ちて行きかねない」
XIAU-WIM(中山斗真)「速やかに地球人の生態調査任務を完了し、元の崇高なる我らの肉体に戻らなければ・・・・・・」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「うんうん・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「では、そろそろ各自任務に戻るとするか」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「そうだな・・・・・・。では、我は再び『戸枝佐那ママ』に──」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「我、小学4年生の『羽山莉緒たん』に・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「そして我は『中山斗真パパ』に。・・・・・・と、その前に──」
XIAU-WIM(中山斗真)「そういえば・・・・・・地球上空の母船でコールドスリープさせている我らの元の肉体に異常はないか?」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「ん? どういう意味だ? むしろ何か問題があれば母船のスタッフの方から報告がくると思うが・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「そ、そうか。実は我、別の肉体に意識を移植される擬態化が今回初めてで、どうも自分の元の体が心配になってしまって・・・・・・」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「なるほど、そういう事か。その気持ちわかる。我は今回2度目だが、初めの時は我もちょっと気になってた・・・・・・」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「我、5回目・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「それから、アブダクション(誘拐)した地球人についてだが──」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「そちらも大丈夫だ。3人とも母船で仮死状態のまま保存されている。心配には及ばない・・・・・・」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「寝てた・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「あ、いや・・・・・・そうではなく、貴様らはちゃんと誘拐した地球人に成りすまして、代わりの家族の一員になり切れているのか?」
XXIAU-ONC(羽山莉緒)「出来てる」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「・・・・・・・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「どうしたNAXIU。何か問題でも?」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「あ、ああ・・・・・・出来ている。ただ最近、家族に少し疑われるようになってしまっているが・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「理由は?」
NAXIU-UIN(戸枝佐那)「いつも以上に元気がない・・・・・・とかで・・・・・・」
XIAU-WIM(中山斗真)「(こやつ、やはり感情希薄症候群の症状がだいぶ進行して、早くも任務に支障が・・・・・・)」
  その時XIAUは、感情希薄症候群の重症者によく見られる異常な瞳孔の拡散が、NAXIUにも一瞬現れたのを見逃さなかった。
XIAU-WIM(中山斗真)「では、改めて・・・・・・一同解散!」
  そして互いの近況報告を終えた3人は、それぞれ潜入中の日本の各家庭へと戻って行ったのだった・・・・・・。
  惑星XEUIOQ――。
  かつてその星の科学者たちは、人類が罪を犯し続ける原因の根幹を感情の暴走によるものと捉えていた。
  そこで徹底した感情の抑制と、これまで以上の知性・理性の開拓によって人類は罪を克服し、新たな進化を迎えられると結論付けた。
  すると時の皇帝IXOUは、科学者の進言を受け、それまで比較的自由にさせていたXEUIOQの民を一転して恐怖支配し始めた。
  民衆全体を知性と理性に長けた優良民とそれ以外に選別し、優良民を社会的に優遇し、劣等民を差別化あるいは排除する為だった。
  この試みは大成功を収め、優良民のみで構成された社会はその秩序を高め、高い知性の集まりは、より高度な文明を作る英知となった
  一方、差別化された劣等民たちはクーデターを目論んで何度か民衆蜂起を企むも、事前に皇国警察隊に計画を察知されて悉く失敗。
  惑星XEUIOQに、一世紀近くに渡る粛清の嵐が吹き荒れた。
  それから四世紀の後――。
  皇帝IXOU亡き後に皇帝制度は廃され、現在の国家体制も帝国ではなく、一つの国家となっていた。
  だが、そんな惑星XEUIOQにおいて、この星では今、一つの大きな問題を抱えるようになっていた。
  それは人類の感情希薄の顕著化――。
  知性と理性の発達ばかりに固執してきたXEUIOQ人類の進化の図り方は、やがて人々の意識に大きなアンバランスを生じさせた。
  この事態を深刻に受け止めた惑星指導部は、早急な打開策を模索するようになっていた。
  そして指導部は3人の者を辺境の星・地球へ派遣させ、とある家族に紛れ込ませる事にした。
  XEUIOQ人類が失いつつある感情を、未だ豊かに持つ地球人の生態を調査し、感情回復の研究材料とする為に・・・・・・。

コメント

  • この物語では高度な文明を有する惑星人の意見として描かれている下等生物としての地球人像は、そのまま未来の地球人から見た現在の地球人像でもあるような気がしました。AIだのロボット工学だのと知性と理性ばかり発達し、将来的に地球人も男女差の無い感情のバランスが欠如した人類になってしまうのでは、という暗示にも受け取れました。

  • とても面白かったです!3人が潜伏して、少しずつ心変わりしていく様子や気付きを引き続き見てみたいと思いました!ちょっとエッチなやり取りも期待してます!笑

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