狼少年と守護霊様

nagi

episode.1(脚本)

狼少年と守護霊様

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〇昔ながらの一軒家
  僕は嘘をついたことがない。
  厳密にいえば、ついてしまった嘘が本当になるのだ。
  それは、「まだ生きてる」という僕が始めてついた嘘から始まった。

〇大きな箪笥のある和室
律「ただいまぁ!」
母「あら、おかえりなさい。りっちゃん」
律「えへへー」
母「なんだか今日はとっても嬉しそうね」
母「素敵なことでも起こったのかしら?」
律「じつはー・・・」
律「じゃーん!!」
母「あらっ!満点だなんてすごいじゃない」
律「えっへへー」
律「すごいでしょ?」
母「すごいわよ! ねぇ、あなた見てよこれ!」
父「すごいじゃないか律、満点なんて中々にできないことだぞ」
律「お父さんとお母さんが喜んでくれると思って頑張ったんだ」
父「じゃあ今日はお祝いしなくちゃな」
律「僕ケーキ食べたい!」
母「それじゃあ、一緒にお買いものにいきましょうか」
律「やったぁ! 僕ね、ショートケーキが食べたいなぁ」
母「ふふふ、ショートケーキね。 りっちゃん大好きだもんね」
律「うん!とびっきり大きいイチゴの買うんだぁ」

〇飾りの多い玄関
律「・・・あっ」
おばさん「また・・・此処にきていたのね」
律「おばさん・・・」
おばさん「寂しい気持ちは分かるけどね、いい加減現実に向き合うことも必要よ」
律「でも、まだ此処にいるもん」
おばさん「また変なこと言って・・・」
律「変じゃないもん!本当だよ!」
おばさん「まったく。あなたのご両親はどんな育て方をしたのかしらね」
おばさん「いいから、もう夜も遅いんだし、おうちに帰るわよ」
律「・・・」
律「お母さん・・・」
母「りっちゃん、ケーキはまた今度。明日またおいでね」
律「・・・うん」

〇おしゃれな住宅街
律(僕の家はあそこなのにどうして居たらいけないんだろう)
律(家に近づくと、おばさんもおじさんも恐い顔になるし)

〇シックな玄関
おじさん「ようやく見つかったか」
おばさん「この子ったら、またあの家にいたのよ」
おじさん「あそこにはもう近づくなと行っているだろう?」
律「ごめんなさい。 でもまだ僕の家にはお母さんとお父さんがいるんだ」
おじさん「僕の家? いいか、お前の家はもう此処なんだ」
おじさん「律くんにとっては厳しい言葉になるが、君のご両親は事故で行方不明のままなんだ。あの家にいるはずはないんだよ」
おじさん「もう戻ることもない。この意味、わかるよね?」
律「はい・・・」
おばさん「はぁ・・・。 もう夜も遅いんだから、早く夕飯食べちゃいなさい」
律「・・・はい」

〇綺麗な部屋
律「なんでみんな信じてくれないんだよ」
おじさん「律くん、入るよ?」
おじさん「・・・さっきは厳しい言葉をかけてしまってすまなかった」
おじさん「私はね、君に一日でも早く立ち直ってもらいたんだよ」
おじさん「楽しい気持ちで過ごしてこそ、前を向ける一歩に繋がるんだよ」
律「・・・」
おじさん「学校の方はどうだい?楽しいかい?」
律「今日はテストが返されたよ」
おじさん「そうだったか。どれ、見してみなさい」
律「あっ・・・」

〇大きな箪笥のある和室
母「あなた、見てよこれ!」
父「すごいじゃないか律、満点なんて中々にできないことだぞ」

〇綺麗な部屋
律(そうだった。 テスト用紙・・・僕の家に忘れてきちゃった)
律「ごめんなさい。今は無理・・・」
おじさん「なんだぁ?見せられないほどのひどい点数なのか」
律「ちがうよ。忘れてきちゃったんだ。だから明日見せるね」
おじさん「疑いたくはないが、破いて証拠隠滅なんてするじゃないぞ?」
律「わかってるよ」

〇教室
  翌日
律(学校が終わったら、お母さんからテスト用紙返してもらわなきゃ)
???「よう、律!」
七瀬「今日もあのお化け屋敷に帰るのかぁ?」
海翔「あっ、嘘つき律くんだ」
海翔「こいつと話すと嘘つきがうつるぞ」
七瀬「ぎゃはははっ!」
律「僕は嘘なんてついたことないよ」
七瀬「何いってんだよ。家族いるって嘘つきまくってるじゃん」
律「みんなが見えてないだけだ。 昨日だってケーキ食べる約束もしたし」
海翔「幽霊がケーキ? なんかの冗談だろ?」
七瀬「そうだ! 今日の放課後お前の家に行ってやるからよ、こっくりさんやろうぜ」
七瀬「そこで現れたら信じてやるよ」
海翔「すごい名案じゃん!」
律「・・・受けてたつよ」

〇学校の校舎
  放課後

〇昔ながらの一軒家
七瀬「お前んち、相変わらず薄気味わりぃな」
海翔「まさに心霊スポットって感じ」
律(失礼な奴等だな。目にもの見せてやる)

〇大きな箪笥のある和室
律「ただいま」
七瀬「ただいまだってよ! 誰もいねぇのにいってやんの」
海翔「さっそく降ろしてみせてよ」
律「・・・君たちこっくりさんを分かってる?」
七瀬「10円ならあるぜ?」
律「あれには、専用の用紙が必要なんだ」
七瀬「じゃあ早く準備しろよ」
律「そっちがやろうって言ってきたんじゃないか!」
海翔「あっ!丁度良いのがあったよ。 これに書いてあげるよ」
律「そ、それはっ・・・!」
七瀬「なんだよ文句あんのか? 書いてやるから別にいいだろぉ?」
律(くそぉ・・・!)
海翔「ふんっ、満点とか生意気だな」
海翔「ほらっ、できたよ」
七瀬「早くやってみせろよ」
律「わ、わかったよ」

〇大きな箪笥のある和室
  全員が10円玉の上に指をのせた。
律「こっくりさん、こっくりさん。いらっしゃいましたらおいでください」
律「こっくりさん、こっくりさん・・・」
律「・・・あれっ」
  何回ためしてみても、10円玉はびくともしない。
七瀬「なんだよ、ちっとも動かねーじゃん」
海翔「やっぱり、嘘だったんだ」
律(どうしてだよ・・・いつもは出迎えてくれるのに)
海翔「嘘が証明された訳だし、これはもういらないね」
律「あぁっ・・・!!」
律「なんてことすんだっ!」
海翔「こっくりさんは終わったら破かないといけないってどこかで聞いたんだ」
海翔「これも儀式のうちだよ」
七瀬「ちぇっ、つまんなかったんな。帰ろーぜ」

〇飾りの多い玄関
七瀬「なんだ?」
海翔「様子がおかしい」
海翔「まさか、な・・・」
「うわぁっ!?」
律「お母さんだよ! きっとケーキを買ってきてくれたんだ」
七瀬「な、なにいってんだよお前・・・」
海翔「幽霊が買い物だなんてできっこないだろ」
律「ほらっ!入りたがってるんだ。 早くドアを開けてあげなよ」
七瀬「ぐっ・・・」
律「それに、もう帰るんじゃなかったの?」
海翔「そんなまさかっ・・・ありえる訳ないさ」

  扉の先には、一つの袋を下げた人物が暗闇にまぎれ佇んでいた。
???「ケーキ、買ってきたわよ」

「うわあああーー!!」

〇飾りの多い玄関
律「あいつら、姿もろくに見ずにびびり散らして逃げてった・・・」
律「ざまーみろ!」
おばさん「今のはお友だち?」
律「なぁんだ。おばさんかぁ」
おじさん「ほらっ、一緒にケーキ食べるぞ」
おばさん「満点だなんてすごいわ。昨日のお祝いしなくちゃね」
律「なんで知って・・・もしかして、お母さんとお父さん?」
おばさん「ええ。ちょっと、体借りるのに手間取っちゃってね」
おじさん「さっきのお友だちもケーキくらい食べていけばよかったのにな」

〇大きな箪笥のある和室
おばさん「美味しい?」
律「うん!すっごく!」
律「でも、おばさんとおじさんと一緒に過ごしてるのはちょっと不思議な感じ」
おばさん「この姿じゃダメだった?」
律「全然! お母さんとお父さんってわかれば、どんな姿でも僕は嬉しいよ」
おじさん「ところで、律。 この破けたら用紙はなんだい?」
律「それはぁー・・・なんでもないよ!」
おばさん「これって・・・テスト用紙じゃない?」
律「もういらないと思って、破っちゃったんだ」
おじさん「そんなのもったいないじゃないか。 あとでお父さんがもとに戻してやるからな。とりあえずポケットにしまっておくから」
律「大丈夫だよ。また満点とればいいし!」
おばさん「ねぇ、律。 困ったことがあったら何でも言いなさいよ?」
おばさん「私たちはいつでもあなたの味方だからね」
おじさん「そうだぞ? 困ったことがあったらいつでも駆けつけてやる」
律「大丈夫だよ。 僕はね、お母さんとお父さんとがいれば何でも頑張れる気がするんだ!」
律「だからね、周りがどう言おうと僕はへこたれないよ」
おじさん「そうか・・・律はたくましくなったな」

〇シックな玄関
律「あっ、おかえりなさい」
おばさん「あら? 私に何処に出掛けていたのかしら」
おじさん「言われてみれば確かにそうだな・・・」
律(二人には記憶がないんだ)
おじさん「そういえば律くん。 昨日のテストは見つかったかい?」
律「あるよ!おじさんのポケットの中に!」
おじさん「あれ・・・?どうしてここに?」
おばさん「バラバラじゃない。でも、100点って・・・」
おじさん「すごいじゃないか」
おばさん「お祝いに何かしなくちゃね。ケーキでもどうかしら?」
律「うーん・・・ケーキは、今日はもういいかなぁ」
おじさん「そういえば、私も夕飯はまだなのに胃もたれしてるな」
おばさん「あらっ、偶然。実は私も」
律「おじさん、嘘は駄目だよ」
おばさん「あらっ? あなた、口の端にクリームが・・・」
おじさん「えっ?そんなはずは・・・」
律「いつも僕に言ってるでしょ? 嘘は駄目だって!」
おじさん「あっ、ああ、そうだな・・・。 しかしだなぁ・・・」

〇昔ながらの一軒家
  僕にしか見えないお母さんとお父さんは、明日もきっと僕の帰りを待っている。
  明日はどんなことが起きるだろう。
律「家に帰ったら、今日の出来事をまた明日も話してあげるんだ!」

コメント

  • たとえおじさんとおばさんの体を借りた両親でも、会えて嬉しそうにしていた律君が健気で愛おしいですね。なんとなく律君が大人になるにつれて両親とは会えなくなるような気がしますが、少年期の思い出の中の二人の姿は永遠に心の中に生き続けるのでしょうね。

  • 後書きに書かれていたこととても共感します。大体の事は夫に話をぶつけることができますが、やはり自分にしかわからない事って存在しますよね。律君はこれからも自分にしかみえないものを大切にしていってほしいです。

  • 律くん、まだまだ子供なのに大好きなお父さんお母さんと一緒に暮らせなくて辛いですね。
    まだ一緒に居たい気持ちや寂しい気持ちから、律くんにだけはお父さんとお母さんが見えるのかなあと思いました🥲
    それにしても、海翔と七瀬、悪ガキですね🤨🤨
    もっと怖い思いしたら良いのに!って意地悪な私は思ってしまいました😂

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