「まよえる子羊」(脚本)
〇渋谷の雑踏
「知ってる?深夜まで営業してる古本屋の話」
「知らない!それがどうしたの?」
「深夜0時から2時の間に英語の小説がある本棚で本の頭文字を並べて、ある言葉を作ると、どんな依頼もうけてくれるらしいよ!」
「都市伝説的なやつじゃん!で、その頭文字の言葉って何なの?」
「聞きたい?」
〇古本屋
〇古書店
西木 楓「お母さ〜ん値札はり間違えてるよ!」
西木 琴音「本当だ!500円を5000円にしてるわね!」
西木 冬馬「母さんは、うっかりさんだな!」
西木 琴音「でも、5000円で売れたら儲けよね?」
西木 楓「そういう事じゃないでしょ!」
西木 冬馬「・・・母さんシャッターを閉めてくれ」
西木 琴音「分かったわ!」
西木 冬馬「ご用件は?」
???「TDOで!」
西木 楓「内容は暗殺よ・・」
西木 冬馬「後ろの本棚をみせてくれ。契約の成立に必要なんでね・・・」
〇白
「もったいぶらないでよ!」
「ごめん、その頭文字の言葉はね・・・」
『STRAY』『SEEP』
〇古書店
西木 冬馬「さっそく本題だが、標的は?」
???「・・・」
西木 楓「おっ!久我山大牙!」
西木 冬馬「知ってるのか?」
西木 楓「知らないの?超有名なアイドル声優よ!」
西木 冬馬「こういうのには疎いんだよ・・・」
???「一発で楽にしてくれよ」
西木 冬馬「契約が不成立なら全額返金する」
???「アンタ等がやるんじゃないのか?」
西木 楓「この任務に関わる全員の承諾が必要なのよ」
西木 冬馬「3日以内にアンタに連絡する」
???「・・・了解」
西木 楓「じゃあこれにサインをしてくれる?」
???「分かった」
???「じゃあよろしくたのむぞ!」
西木 冬馬「母さん!シャッターを開けてくれ!」
西木 楓「・・・」
〇部屋の前
「何?」
西木 楓「心翔お仕事よ」
「・・・・・・メールして」
西木 楓「わ、わかった送っとくね・・・」
〇黒
〇簡素な一人部屋
西木 心翔「今回のターゲットはアイドル声優?」
西木 心翔「ふ〜ん、大きな悩みかかえてそう!面白そうじゃん!」
西木 冬馬「どうだ?心翔いけるか?」
西木 心翔「う〜ん、もう少しリサーチさせて、すぐに返事するよ!」
西木 冬馬「分かった・・・」
〇広いベランダ
西木 冬馬「ふぅ〜夜空を見ながらの一杯は最高だな!」
西木 楓「お父さん、ちょっと話いい?」
西木 冬馬「楓の方から話しなんて珍しいな!」
西木 楓「心翔の事・・・」
西木 冬馬「見た事もないし、血も繋がってない・・気になるよな・・分かった、話そう」
あれは、俺が海外で傭兵をやめて殺し屋をしていた頃だった・・
〇港の倉庫
法堂 世名「・・・お前は何を信念に依頼を受ける?」
西木 冬馬「始末する相手に子供がいるなら依頼は受けない」
法堂 世名「・・・もしその信念を守れなかったら?」
西木 冬馬「この仕事を辞める」
法堂 世名「・・・・・・」
西木 冬馬「話しは終わりだ、そろそろヤツが来るぞ」
法堂 世名「今日は嫌な予感がする・・・」
西木 冬馬「そうか?」
「本当にノコノコとやって来やがった!」
西木 冬馬「んっ?」
ロバート「日本人は律儀で助かるぜ!」
法堂 世名「・・・嫌な予感が的中だな」
西木 冬馬「どういう事だ?」
法堂 世名「俺達を殺しにきたんだろ?」
ロバート「おっ?察しがいいな!」
西木 冬馬「・・・そういう事か」
ロバート「お前等が来てから俺達の組織に依頼が来ねぇ!目障りなんだよ!東洋人どもが!」
西木 冬馬「逆恨みかよ、情けねぇ」
ロバート「うるせぇ!ある人からの依頼でもあるんだよ!やってしまえ!お前等!」
ギャング3「すぐ楽にしてやるよ!」
ギャング3「死ねぇぇぇぇ!」
法堂 世名「やれやれだな・・・」
ロバート「そ、そんなバカな!」
法堂 世名「殺せると思ったか?」
ロバート「くっ!くそっ!」
西木 冬馬「追うぞ!」
〇廃墟の倉庫
西木 冬馬「悪あがきはよせ!」
ロバート「近寄るな!コイツの命がないぞ!」
???「ご、ごめんなさい」
法堂 世名「心翔!」
ロバート「お前のガキだ!そこを動いたら殺す!」
法堂 世名「心翔を離せ!」
ロバート「仲間を呼んだ!お前等は終わりだ!」
西木 冬馬「くっ!どこまでも性根が腐ってやがる!」
法堂 世名「・・・・・・西木、頼みがある」
西木 冬馬「・・・聞きたくない」
法堂 世名「鈍感なお前の予感は当たりそうだな」
西木 冬馬「・・・無理だ」
法堂 世名「俺の後ろからロバートを撃て」
西木 冬馬「・・・・・・」
法堂 世名「このままだと全員死ぬ」
西木 冬馬「お、お前はあの子の母親だろ・・・」
法堂 世名「俺が女性だと気づいてたのか、流石だな」
西木 冬馬「だって俺は・・・お前が・・・」
ロバート「何をコソコソしてやがる!」
法堂 世名「冬馬!stray sheep!これは依頼だ!」
西木 冬馬「くっ!」
法堂 世名「俺の口座に金がある!冬馬あの子の父親になってくれ!」
ロバート「おい!聞いてんのか!」
法堂 世名「父親は違えど、俺とお前の子として面倒みてやって欲しい!」
西木 冬馬「・・・分かった──」
法堂 世名「ありがとう!冬馬!」
法堂 世名「ロバート!俺達は抵抗しない!その子だけでも助けてくれ!」
ロバート「へへッどうしようかな〜」
法堂 世名「頼む!ロバート!」
法堂がロバートの前に立ち視界を塞ぐ
法堂の背後から撃たれた弾は体を貫通しロバートに当たる
ロバート「う、嘘だ・・・ろ・・・」
「『お母さぁぁん!』 / 『法堂ぉ!』」
法堂 世名「・・ハァ・心翔」
法堂 心翔「お母さん!」
法堂 世名「心翔・・・生きる為の選択だ・・・」
西木 冬馬「喋るな!」
法堂 世名「立派になれ・・心翔・・冬馬・愛してる──」
法堂 心翔「死なないで!お母さん!」
西木 冬馬「(もう来たか!)心翔!逃げるぞ!」
〇広いベランダ
西木 冬馬「信念を守る事が出来なかった俺は、殺し屋を廃業し、故郷である日本に戻って来た」
西木 楓「悲しい過去ね・・・」
「でも今も似た様な仕事してんじゃん!」
西木 冬馬「心翔!」
西木 楓「えっ!えっ!」
西木 心翔「楓だろ?」
西木 楓「あ、はじめまして!(声も中性的!)」
西木 冬馬「ハハッ!楓は、初めて見るもんな」
西木 心翔「一緒に飲もうよ父さん!」
西木 楓「・・・心翔って、男性?女性?どっち?」
西木 心翔「内緒!」
西木 冬馬「よ〜し!今日は飲もう!」
西木 心翔「そうだ!依頼は4日後のイベント会場で実行するからね」
西木 冬馬「了解だ!」
〇野球場
依頼日当日
西木 冬馬「そろそろリハーサルが始まる。その間、俺達はドクター役だ」
西木 楓「ねぇ?心翔は大丈夫なの?」
西木 冬馬「出口も限られてるし、警備も厳重、アイツ何処から狙うんだろうな!」
西木 楓「何で嬉しそうなのよ」
西木 冬馬「おっ!ターゲットが来たぞ!」
久我山 大牙「よろしくお願いしま〜す!」
久我山 大牙「初めは映画『未確認な雪男』の主題歌から!」
西木 楓「カッコイイわ〜」
西木 冬馬「あんな軟弱そうなヤツはやめておけ!」
西木 楓「・・・お父さん、そういうの嫌われるよ」
西木 冬馬「・・・すまん」
久我山 大牙「今日は雪男さん達を呼んでます!さぁおいで!」
久我山 大牙「純白の白い雪〜♪」
西木 楓「まさか、心翔あの着ぐるみの中?」
西木 冬馬「どうだろうな?」
西木 冬馬「楓!合図だ!配置に着こう」
久我山 大牙「もうそろそろか?」
〇黒
「停電だ!」
「銃声!?」
「はやく電気を復旧させろ!」
〇野球場
マネージャー「大丈夫か!久我山!」
マネージャー「えっ!」
西木 冬馬「どいて!どいて!」
西木 冬馬「息がない!胸を撃たれてるぞ!はやく、救急車の手配を!」
西木 楓「手配完了です!出口まで運びましょう!」
西木 冬馬「道をあけて!一刻を争う!」
〇球場の入口
マネージャー「久我山は大丈夫ですか?」
西木 冬馬「はやく処置しないと!」
西木 楓「先生!行きますよ!」
西木 冬馬「後は任せて!」
マネージャー「は、はい」
マネージャー「・・・・あれっ?何処の病院だっけ?」
〇古書店
「んっ?」
久我山 大牙「おわっ!」
西木 冬馬「お目覚めか?」
久我山 大牙「俺、撃たれたよな?」
西木 楓「麻酔銃よ・・貴方が依頼者よね?」
久我山 大牙「・・・」
西木 冬馬「心翔に言われるまで気付かなかったよ」
久我山 大牙「心翔?」
西木 心翔「どうも!久我山さん!来店した時の映像を見返してピンと来たんだ」
久我山 大牙「映像?」
西木 冬馬「あそこにカメラがあるだろ?依頼主の解析は心翔にしてもらっている」
久我山 大牙「・・・何だ、バレてたのか」
西木 心翔「声は普段と全然違ったから、驚いたよ!」
久我山 大牙「なぜ殺さなかったんですか?」
西木 心翔「死って連鎖するからね、アンタ大勢のファンがいるだろ?」
久我山 大牙「・・・」
西木 心翔「小さい時から今まで歌の練習や、劇団での演技をして、本当の自分が分からなくなったんじゃない?」
西木 冬馬「そうなのか?」
久我山 大牙「はい。ある時は悪役、ある時は正義の味方、劇でもそう、繰り返してる内に心が疲れてしまって、あんなに楽しかったはずなのに」
西木 心翔「わかるよ、アンタの気持ち」
久我山 大牙「自分って何者なのかなって?好きだった物とか、嫌いだった物とか分からなくなってしまって・・・」
西木 心翔「でも、今からアンタは自由だ!思い通り生きたらいい!その過程で自分が何者かわかるさ!」
西木 冬馬「もうニュースでは失踪した事になってるしな」
久我山 大牙「・・・感謝します」
西木 心翔「第二の人生の幕開けさ!」
〇広いベランダ
西木 楓「そういえば、心翔って会場の何処にいたの?」
西木 冬馬「俺も気になるな、もしかして着ぐるみの中か?」
西木 心翔「天井だよ!」
「えっ!」
西木 心翔「朝からずっと張り付いてたんだ」
西木 冬馬「マジか!」
西木 心翔「結構埃だらけで汚かったよ」
西木 楓「じゃあ停電は誰の仕業?」
「それは私よ」
西木 楓「お母さん!」
西木 琴音「元スパイだったの!電気系統の事やハッキングは任せて!」
西木 楓「サラッと恐ろしい事言ったような」
西木 楓「そういえばさ、依頼時のTDOって何の意味なの?実は意味知らないのよ」
西木 琴音「あら!そうだったのね?」
西木 心翔「その意味はね、「とてもダメな(男/女)」僕が作ったジェンダーレス用語さ!」
西木 楓「あっ!今!僕って言った!心翔って男?」
西木 心翔「え?言ったかな?へ、部屋に戻るよ!」
西木 楓「あっ!逃げた!」
西木 冬馬「どっちでもいいじゃないか」
西木 楓「お父さん!教えてよ!」
西木 冬馬「そういえば、値札の張り替えの仕事終わって無かったな」
西木 琴音「逃げ足の速さは似てるわね」
西木 楓「そうね」
〇簡素な一人部屋
西木 心翔「母さんと父さんを殺そうとした依頼主が何処かにいるはず、そいつにいつか復讐してやる」
西木 心翔「はぁ〜可愛いなぁ〜猫!ポチッちゃお!」
面白いです😊冬馬が殺し屋を廃業した理由が切なくていいですね!そういう感じて信念が守れなかったのかと思いました。心翔も男なのか女なのか分からない所にドキッとしました!
現代版必殺仕事人のようなお話で楽しめました。この一家は罪もない人間をホイホイ殺さないはずだと思ったらやっぱりそうでしたか。心翔君がジェンダーレスであることを活用した暗殺方法なんかも見てみたいです。