殺人の衝動-高校生・来栖秀俊の場合-

YO-SUKE

第七話「殺人ファイル3 中山宗助の場合(後編)」(脚本)

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〇車内
  木々が生い茂る田舎道を、
  中山が運転している。
  助手席には来栖。
来栖秀俊(あいつ・・・ こんな遠い場所まで連れて来られたのか)
来栖秀俊(筒井菜々子――もう二度と 関わらないって決めたはずなのに・・・)
来栖秀俊(僕は今、言われるままに 中山の家に向かっている)
中山宗助「もう着くぞ。いよいよお楽しみだ」

〇血しぶき
  第七話
  『殺人ファイル3
     中山宗助の場合(後編)』

〇拷問部屋
  椅子に縛り付けられたまま、
  意識を失っている菜々子。
来栖秀俊「筒井・・・!」
  菜々子の身体中に切り傷がある。
  来栖は菜々子の縄をほどいて抱きしめる。
来栖秀俊「な、なんでこんな──」
中山宗助「こう見えても俺は紳士なんだ」
中山宗助「むやみに女の子を傷つけるのは 好きじゃない。 殺るなら一思いにやるほうだ」
来栖秀俊「ならどうしてこんなこと・・・!」
中山宗助「お前を試してみたくなった」
来栖秀俊「?」
中山宗助「その女が言うんだよ。俺よりも、来栖、 お前のほうがバケモノだって」
中山宗助「でも、お前はまだ 優等生の仮面を被ってるだろ?」
中山宗助「そいつのボロ雑巾みたいな姿を見れば、 お前も本性を見せてくれるかと思ったんだ」
中山宗助「あはは」
来栖秀俊「そんな・・・そんなことのために」
中山宗助「なあ、見せてみろよ。お前が バケモノだというなら、その本性を」
来栖秀俊「くっ・・・僕は──」
中山宗助「どうした? ああ?」
来栖秀俊「僕は・・・僕は普通の人間だ」
中山宗助「はあ?」
来栖秀俊「僕は、この子やあんたが望んでいるようなバケモノなんかじゃないんだ・・・!」
中山宗助「あはは。 まあ所詮、お前なんてそんなもんだ」
中山宗助「いいことを教えてやる。 お前が殺したと思っている 橋本いるだろう?」
中山宗助「あいつを殺したのはお前じゃない。 俺だ」
来栖秀俊「!!!」
中山宗助「お前が橋本を投げ飛ばした後、 俺が介抱する振りをして、 あいつの後頭部に衝撃を与えた」
中山宗助「頭部外傷の繰り返しは致命的な事態を 引き起こしやすい・・・」
中山宗助「つまり、あいつにとどめを刺したのは俺だ」
来栖秀俊「なんで・・・なんでそんなこと」
中山宗助「殺人の衝動に理由なんてない。 だがしいて言うなら、儚く脆い生き物の 命を、瞬時に奪う狩りの楽しみだろうな」
中山宗助「殺しは楽しい。最上の快楽だ」
中山宗助「そんなことは、お前が一番 わかっているんじゃないのか?」
来栖秀俊「わかるはずないだろ!」
来栖秀俊(違う・・・本当は、僕はわかっていた)
来栖秀俊(でもずっと、 自分の本性を認めたくなかった)
来栖秀俊(だから理由を付けて、 自分を正当化してきた)
来栖秀俊(橋本は僕に強い対抗心を持っていたから。 及川は僕をターゲットにしたから)
来栖秀俊(そして生徒会長は 僕の秘密を知ってしまったから・・・)
中山宗助「ふん。まあ大方、 その女に唆されてやったってところか」
中山宗助「お前に比べれば、 そいつのほうがうんとバケモノだろう」
来栖秀俊(・・・確かに、菜々子に唆されていたけど 選んだのはいつも僕だ)
来栖秀俊(僕が僕の意思で殺しを実行してきた)
来栖秀俊(それは・・・僕が理由なく人殺しを楽しむ バケモノだったから)
  来栖は腕の中で眠っている菜々子を見る。
来栖秀俊「筒井・・・」
中山宗助「来栖。そいつを殺せ。お前に譲ってやるよ」
来栖秀俊「・・・やめ、ろ・・・」
中山宗助「お前はまだ偽物だが、素質はある。 そいつを殺して、バケモノになればいい。 俺と同じような」
来栖秀俊「うう・・・あ、あ──」
中山宗助「早くこっち側に来い!」
来栖秀俊「あああァァァァァァ!!!」
  来栖は菜々子の首に手をかける。
  菜々子は目を覚まして苦しみ始める。
筒井菜々子「く、来栖・・・くん!?」
来栖秀俊「死ね死ね死ね!」
  恍惚の表情を浮かべて、
  手に力を込めて行く来栖。
  菜々子がゆっくりと手を伸ばす。
  だがその手で来栖の頬を優しく包む。
筒井菜々子「嬉しい・・・」
来栖秀俊「!」
筒井菜々子「わ、たしの・・・ ファイル、見たんでしょ・・・?」
来栖秀俊「ファイル・・・?」

〇教室
  ファイルの最後のページには、
  筒井菜々子の写真と名前がある。
来栖秀俊「・・・・・・!」

〇拷問部屋
来栖秀俊「そうだ・・・確かにあった。 殺しのターゲットの中に、君の名前が──」
筒井菜々子「一番のクズは私・・・でしょ?」
筒井菜々子「だからずっとね、 来栖くんに殺されたいって・・・ 私、思ってて」
筒井菜々子「私を殺して・・・来栖くんが気持ちよく なってくれるならそれでいい」
来栖秀俊「そんな・・・そんな・・・」
  来栖は菜々子を離し立ち上がってしまう。
中山宗助「あはは。さっさと殺してやれ」
筒井菜々子「そ、そうだよ。殺してよ。 来栖くんにきっかけをあげたくて・・・ あんなバカにわざと捕まったんだから」
中山宗助「なんだと・・・!」

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