世界最後の前日に。

みの。

読切(脚本)

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〇見晴らしのいい公園
雪絵「ねぇ詩乃。 明日もし世界が終わるとしたら、詩乃は何をしたい?」
詩乃「えぇ、そんなこと言われたってわかんないよ。 世界なんてそんな簡単に終わらないよぉ」
雪絵「そうねぇ・・・世界が終わる、だと規模が大きいものね。 じゃあ、明日から誰とも会えなくなるとしたら、詩乃はどうする?」
詩乃「そんなの絶対に嫌! お母さんにも会えなくなるんでしょ?! お父さんだって! ・・・考えたくも無い!」
雪絵「でもね、どうしようもないことで、お母さんにも止められない事なのよ・・・。 世界が終わるのは、誰にも止められないの」
詩乃「本当に世界終わるの・・・?明日・・・?」
雪絵「・・・・・・冗談よ! ほら、家に帰りましょう。お父さんが待ってるわ」

〇豪華なベッドルーム
詩乃「はぁはぁ・・・。 嫌な夢を見た・・・」
詩乃「ううん、夢じゃ無い・・・。 過去の私とお母さんだ・・・」
詩乃「・・・」
詩乃「どうして私のことを置いて行っちゃったの・・・?」
詩乃「・・・」
詩乃「違う、あれは誰にも止められ無かったことなんだ。 お母さんのせいじゃ無い・・・・・・」
詩乃「お母さんのせいじゃ・・・・・、」
詩乃「私の、私のせいだから・・・・・・」

〇シックなリビング
歌月「お母さんが死んだのはお前のせいだ、詩乃!」
  お母さんが謎の言葉を放った翌日の朝、母は自ら帰らぬ人となった。
  警察が来るまでの間に父と話していた。昨日のこと・・・
  それから・・・・・・
  お母さんの病気のこと。
詩乃「私・・・・・・私は・・・・・・」
歌月「お前が産まれてこなかったら、お母さんの病気は悪化しなかった!お前が生まれてきたから・・・お母さんは苦しんで・・・」
歌月「お母さんは・・・・・・雪絵は・・・・・・」
歌月「その痛みに耐えきれずに・・・死ぬことを選んだんだ・・・」
詩乃「私が・・・・・・私が産まれてきたせいで・・・!」
歌月「・・・・・・。 すまない、お前に当たっても雪絵は帰ってこない」
歌月「雪絵が病気なのは、わかっていたのに・・・放置し続けた父さんの方が・・・」

〇豪華なベッドルーム
詩乃「違うよ、お父さん。やっぱり悪いのは私だったよ・・・」
詩乃「私がいたせいだもんね。 苦しませてごめんね、お母さん」
雪絵「・・・」
  母が死んで5年も経ってもなお、実感がずっと持てなかった。
  だって私にはずっと見えてたから。そこにいるお母さんが。
雪絵「約・・束・・」
詩乃「わかってるよ、お母さん。 約束は守るよ」
詩乃「明日、私は死ぬ。 約束通り、大人になる前に・・・20歳の誕生日の前日に死ぬよ」
雪絵「・・・・」
詩乃「大丈夫、すぐそっちにいくからね、お母さん」

  私とお母さんの約束。
  1.幸せにならないこと
  2.人を好きにならないこと
  3.大人にならないこと
  この約束は・・・いや、見えてるお母さん自体、私の妄想なのかもしれないけれど・・・。
  約束は守るよ。
  お母さんを苦しめた私が、幸せになっちゃいけないから。
  大きくなっちゃいけないから。
  お父さんから大事な人を奪ったのに、誰かを好きになるなんて出来ないから。
  明日、また会おう、お母さん。

〇豪華なベッドルーム
  『コンコンっ』
  お父さんかな・・・?
歌月「お前に、誕生日になる前に見せておきたいものがある」
詩乃「(誕生日は迎えないんだけどなぁ)」
詩乃「何?お父さん」
歌月「雪絵の・・・お母さんの、日記だ」
詩乃「そんなのあったの・・・・・・?」
歌月「ずっと見せようか、見せまいか悩んでいた。 ・・・見て辛くなることもあるからな・・・」
詩乃「・・・・・・」
詩乃「見たい。 見せて」
  父はスッとノートを取り出し、あるページを開いた。
歌月「あの日の・・・死んだ日の前日の日記だ」
  『今日は最後の日。
  私の世界は、明日終わる。
  やっとこの痛みから解放されるんだわ。』
  『苦い薬も飲まなくていい、病院にも行かなくていい。
  これでお金もかからない・・・。』
  『あぁ、でも』
  『お父さんは大丈夫かしら。怒りっぽいから・・・詩乃と仲良くやれるかしら。』
  『詩乃はまだ子供だから・・・私が、お母さんがいなくなっても大丈夫かしら。』
  『まだまだ小さいけれど、大きくなれるかしら。
  ご飯はちゃんとたべれるようになるかしら。』
  『泣き虫だけど、独りで抱え込んだりしないかしら。
  あぁ、本当はもっともっと』
  『一緒に居たかった。』
  『病気であんまり遊んであげれなくてごめんね、詩乃。
  負担いっぱいかけちゃってごめんなさい、お父さん・・いえ、歌月さん。』
  『もっといっぱい』
歌月「この先はお母さんの涙で滲んでて読めないんだ。 なんて書いてたんだろうな・・・」
歌月「・・・詩乃? どこ見て・・・」
雪絵「もっといっぱい、”お母さん”をしたかった」
詩乃「もっといっぱい・・・お母さんを・・・」
歌月「あ、あぁ、たしかにそうかもしれない・・・・・・ よく読めたな、詩乃」
詩乃「憎んでなかったの・・・?お母さんは・・・私たちのこと・・・」
雪絵「当たり前じゃない」
歌月「詩乃・・・・・・?どうしたんだ・・・?」
  お父さんには、お母さんが見えないんだ・・・。
詩乃「でも約束は・・・」
雪絵「バカね、全部逆よ。 幸せになって、人を愛して、大人になって・・・。 できることなら、子供を作って、幸せな家庭を・・・」
  お母さんがぼやけていく。
  少しずつ、少しずつ・・・・・・。

〇幻想空間
雪絵「詩乃、もう1人で大丈夫よね」
  そのままお母さんは消えて、二度と見えることは無くなった。
  私の最後の日は、最後じゃなくなった。
  20はすぐそこだった。

コメント

  • それが親の言うことかなぁ…と思ってたら、やっぱり幸せを望んでいて安心しました。
    今までのお母さんは、彼女の罪の意識から生まれたものなのかと思いました。
    彼女が自分の幸せを考えることができるようになってよかったです。

  • いつも、どんなときでも親は子どもの幸せを望んでる。姿は見えなくても、ずっと傍で…
    成長するのを見守り続けていたのでしょうね。

  • 自分の子供に幸せになってほしくないなんて思う親は親ではない!
    寧ろ自分の代わりに幸せになってほしいって思う人の方が多いのではないでしょうか…。

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