秘密の男

佐々波さんご

秘密の男(脚本)

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〇寂れた村
私「ここは、山奥の小さな村 この村に、ひとりの男が引っ越してきた」
  その男は人相が悪く、さらに村人とろくに挨拶を交わさない
  この男は、何か秘密を隠しているのではないか
  村のみんなが、そう話していた
村人の女性B「若い頃に、人を殺したって聞いたわよ」
村人の女性A「えぇ、何でも、都会にいた頃はヤクザに入っていたそうじゃない」
  いや、はたまた、この村に来た理由も何か悪事を働くためなのではないか。
  さまざまな噂が飛び交った。
  その男は、自分のことを噂されていると知りながらも、何も言い返してこない
  村人に、不安が募った

〇寂れた村
  そんなある夜、男は背後から近づく何者かに殴られた
男「ぐはぁっ!」
  そして男は複数人に囲まれ、何度も何度も殴りつけられた
  彼らは男と言葉を交わすと、怒り狂ったように立ち去った
私「大丈夫ですか?」
  僕が駆けつけた頃には、男は血まみれで倒れていた
  顔や体のいたるところが、赤く腫れていた
私「何が・・・あったんですか?」
男「わからない・・・ 何者かが、急に俺を殴り飛ばしてきたんだ」
私「それは・・・」
私「あなたが隠している秘密と関係があるのではないですか?」
男「秘密・・・」
男「秘密なんて何もない! 俺はただ、のんびりとした田舎暮らしに憧れて、それで引っ越してきただけだ!」
男「それなのに・・・」
男「訳のわからない男たちが、隠し財産のありかを教えろって、俺を袋叩きにしてきたんだ」
私「あぁ、なるほど」
男「なるほどって・・・」
私「あなたが隠していた秘密が何なのか それがようやくわかりました」
男「だから・・・ 俺には秘密なんて何もないって言っただろ!」
私「それですよ」
男「えっ・・・」
私「秘密なんて何もない それこそが、あなたが隠していた秘密です」
私「小さな村ですから、村のみんなは隠し事なんて何もしないんですよ」
私「それなのにあなたは、自分のことを噂されてると知りながら、自分には秘密がないことを秘密にしていた」
男「一体どういうことなんだ・・・!!」
男「はぁ、何で俺がこんな目に・・・」
  男の顔色は、だんだんと青白くなった
  浅く、早い呼吸を繰り返している
男「俺は、このまま死ぬのか・・・?」
私「僕が助けを呼ばなければ、あなたは死ぬでしょうね」
男「っ・・・助けて、くれ!」
私「それはできません 僕があなたを助ければ、今度は僕が危険に晒されるかもしれませんから」
私「ただ一つだけ、秘密にしておきますよ」
私「あなたには秘密なんて何もなかった それだけは誰にも言いません」
私「僕とあなた、2人だけの秘密です」
  男は間も無く、息を引き取った。

〇寂れた村
  そして翌日
村人の女性B「あの男の人、交通事故で亡くなったそうよ」
村人の女性A「あら、そうなの 結局あの人は秘密だらけで、何もわからずじまいね」
村人の女性B「あなたは、何か知ってるの?」
私「いいえ、何にも」
私「・・・」
私「僕とアナタ、2人だけの秘密ですから・・・」

コメント

  • こういう形の秘密もあるのですね…。何が疑惑を呼んで、どんな災いをもたらしてくるのか、分からないものですね。恐怖の火種の範囲がぐっと広がって、「私」の笑顔とのどかな村の絵とは裏腹に、背筋が寒くなりました。

  • 田舎だと引越してきた人の噂話とか好きですよね。
    それにしても、「秘密がないのが秘密」とは。
    秘密の共有がお互いの信頼を深めるって言うのはわかる気がします。
    怖かったですが、楽しく読めました。

  • 無いことは無いのに・・「悪魔の証明」ですね。財宝のありかを知りたいという理由で殴り殺されるより、「本当になにもない秘密」を知りたがる人間たちという理由で暴行を受ける方がテーマに合っていたように思います。主人公の男が、謎の男を助けなかったわけも、もう少し分かりやすく描写してもらった方が主人公のサイコパス的な怖さが引き立つように感じました。冒頭は全てが謎だらけでどんなお話なのだろうと引き込まれました。

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