小悪魔メガネに、逆襲

水野 七緒

小悪魔メガネに、逆襲(脚本)

小悪魔メガネに、逆襲

水野 七緒

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〇高い屋上
アユ「ねえ、桂木ってさぁ」
アユ「アユのこと、好きでしょ」
桂木「・・・は!?」
アユ「好きなんでしょ、アユのこと」
桂木「・・・・・・いやぁ」
桂木「そういうの 言ってて恥ずかしくないですか?」
アユ「えっ!?」
桂木「高校生にもなって 自分のこと「アユ」って」
アユ(なんだ、そっち・・・)
アユ「別に恥ずかしくなんかないよ」
アユ「アユは特別だもん!」
アユ「選ばれた人間だもん!」
桂木「はぁ・・・」
アユ「で、どうなの?」
アユ「もちろん認めるよね? アユのこと、好きって」
桂木「いやーーーないっすね、それは」
アユ「はぁっ!?」
桂木「別に好きじゃないです アユ先輩のこと」
アユ「うそうそ! そんなのあり得ない!」
アユ「アユ、ちゃーんと わかってるんだから!」
アユ「アユ、昔から めちゃくちゃ鋭いんだから!」
桂木「いやぁ、むしろ鈍いっすね」
桂木「しかも、鈍いだけじゃなく 面倒くさすぎます」
アユ「ちょっ・・・ アユ、面倒じゃないし!」
アユ「桂木のくせに生意気! アユに口答えするなんて」
桂木「はぁ、たしかに・・・」
桂木「俺が、先輩に口答えしたの これが初めてかもしれないっすね」
桂木「では、生意気ついでに 言わせてもらいますけど」
桂木「俺、マジでアユ先輩のこと 好きでもなんでもないっす」
桂木「そもそも興味すらないっす」
アユ「・・・・・・嘘」
アユ「そんなの・・・信じられない」
桂木「えっ、ちょっと!」
桂木「そんなよろめくほど ショックでしたか?」
アユ「だって、アユだよ?」
アユ「某動画サイトで フォロワー5万人越えの 「小悪魔メガネ・アユちゃん」だよ?」
アユ「こんなアユのこと 好きにならない男子なんて いるわけない!」
桂木「いえ、いますね。ここに」
桂木「そもそも俺、動画サイトとか ほとんど観ないですし」
アユ「うっ・・・」
桂木「というか 話はそれだけですか?」
桂木「だったら、そろそろ 帰らせてもらいますね」
桂木「俺、こんな茶番に 付き合っていられるほど ヒマじゃないんで」
アユ「あっ、待っ・・・」
アユ「待って──!」
桂木「痛っ・・・」
桂木「なにするんですか! いきなり頭突きって・・・」
アユ「じゃあ、誰!?」
アユ「誰のことが好きなの!?」
桂木「──それ、答える必要あります?」
アユ「ある! 知りたい!」
アユ「アユは、桂木の 好きな人が知りたいの!」
桂木「俺は、教えたくないですけど」
アユ「・・・っ」
桂木「交渉不成立ですね では・・・」
アユ「待って! だったら、これだけ!」
桂木「・・・はぁ」
アユ「桂木は、その・・・今・・・」
アユ「好きな人って、いるの?」
桂木「──いますね」
アユ「誰!?」
アユ「やっぱりアユでしょ!?」
桂木「いや、違いますって」
桂木「さっきから 何度もそう言ってるでしょ」
アユ「じゃあ、誰?」
アユ「アユよりも素敵な人?」
桂木「素敵ですね」
アユ「アユよりも・・・可愛い?」
桂木「可愛いです」
アユ「──どんな人?」
桂木「そうですね 俺の好きな人は・・・」
桂木「すごく可愛くて素敵で 魅力的な人なのに」
桂木「自分に自信がないのか 引っ込み思案な印象です」
アユ「──ふーん、なんか意外」
アユ「いわゆる地味女ってこと?」
桂木「まあ、そうですね」
アユ「そんな人のどこがいいの?」
桂木「そうですね、まあ・・・」
桂木「その人、普段はとても 控えめですけど」
桂木「困ってる人には そっと手をさしのべてくれる 優しい一面があって」
桂木「俺も、彼女には 何度も助けられたので」
桂木「そういうところ ほんと、大好きですね」
アユ「・・・ふーん」
アユ(じゃあ、本当に アユのことは好きじゃないの?)
アユ(絶対、アユが本命だと 思ってたのに・・・)
桂木「ただ、もちろん人間なので 欠点もあってですね」
桂木「その人、自分に 自信がなさすぎるのか」
桂木「たまにへんな方向に 暴走するんですよ」
アユ「──暴走?」
桂木「ええ、たとえば──」
桂木「慣れないメガネをかけて 双子の妹のふりをするとか」
アユ「ふえっ!?」
桂木「それで、俺に 誰のことが好きなのか 聞いてくるとか」
アユ「ままま、待って・・・」
桂木「もっとはっきり言ってしまえば・・・」
桂木「今、アユ先輩のふりをしている とても面倒くさい人のことが 俺は好きだって話なんですけど」
アユ「ひっ・・・」
桂木「あとですね」
アユ「あっ、ちょっ・・・」
アユ「ああっ」
桂木「──ほら、可愛い」
桂木「俺、メガネなしのほうが 絶対いいと思ってるんですけど」
桂木「そのあたりについて どう思います? アイ先輩?」
アイ「ふ・・・ふぇぇ・・・」
アイ「と、とりあえず・・・」
アイ「メガネ返してぇぇ・・・」

コメント

  • 桂木くんの好みが小悪魔メガネだと思って精一杯アユを演じてたのかな。そんな芝居も桂木くんは全てお見通しだったんですね。「メガネをとったほうがかわいい」は反則のセリフ。まさに胸キュンな王道少女漫画の世界でした。

  • 人の本心なんてわからないものですよね。
    特に恋となると、どんな手段を使ってもその人の気持ちが知りたいものです…。うーん、甘酸っぱい!

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