禁欲生活

市丸あや

禁欲生活(脚本)

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〇花模様3
  ・・・初めて子供が出来た。
  晩婚やし、半ば諦めてた矢先のおめでたに最初は舞い上がっとったけど、意外な落とし穴があった訳で・・・

〇個別オフィス
棗藤次「・・・あかん。 また禁断症状来た・・・」
京極佐保子「はい?」
  ・・・今日も今日とて忙しない、京都地検棗藤次検事室。
  3人目の聴取を終えて片付けをしていたら、机に突っ伏していた上司が奇妙な言葉を口走ったので、佐保子は瞬く。
棗藤次「・・・京極ちゃん、ワシ、さっきの聴取でちょお気になる事見つけたよし、現場行って良い?」
京極佐保子「ああはい。 なら、同行・・・」
棗藤次「え、ええわ! 1人で十分。 ざ、雑務頼むわ。 ほな・・・」
  そうしてそそくさと部屋を後にする上司を見送って、佐保子はポツリと呟く。
京極佐保子「・・・最近、やけに現場現場って外行くけど、珍しく仕事熱心ね。 その内雪でも降るのかしら・・・」
  窓から覗く晴れ渡った青空を見つめながら、佐保子は藤次に命じられた通り、雑務に勤しんだ。

〇居酒屋の座敷席
楢山賢太郎「妊娠中にセックスしてたかぁ?!!!」
棗藤次「シーーーッッッ!! 声大きい!!! 誰かに聞かれたらどないするんや!!」
  別の日の、京都地検から程近い個室居酒屋。
  奢るから久しぶりに飲もうと、同期の腐れ縁に無理やり連れてこられた賢太郎は、いきなり手の平合わせて来た藤次の発言に驚く。
楢山賢太郎「シラフで言えわけないだろ!! そんなプライベートな話・・・アホかっ!!」
棗藤次「せやから飲みに誘ったんやないかい! なあ、後生や。やり方教えてぇな先輩! やないとワシ、子供産まれる前に気ぃ狂ってまう!」
楢山賢太郎「知るかアホ。 大体、そうゆう性欲、自分で処理するもんだろ!」
棗藤次「そんなん既にヤッとるわ!!」
楢山賢太郎「なんだ。 なら問題ないじゃないか」
棗藤次「阿呆! 全然ようない!! もう・・・職務中までムラムラして、吐き出すために聴き込み言うて外に出てはシとる始末や!」
楢山賢太郎「お前・・・その有り余る性欲エネルギーを、もっと別のことに活かせよ・・・」
棗藤次「せやけど、公園のトイレとかじゃなんか落ちつかんし、かと言って満喫の個室にこもっとったら職務怠慢て誤解されそやし、せやから」
楢山賢太郎「お前なぁ〜」
  ほとほと呆れながらも、賢太郎はスマホを取り出して、何かを操作する。
棗藤次「な、なんね。 まさか思うけど、ヤッとるトコ撮っとんか?」
楢山賢太郎「アホもここまで来ると一層清々しいな。 俺をお前みたいな変態と一緒にするな。 一般論調べてやってんだ。ちょっと待ってろ」
棗藤次「な、成る程! 確かにネット漁れば、体験談ぎょうさんあるか・・・」
楢山賢太郎「そう言うわけだ。 少しは考えろアホ。 ・・・ほら」
棗藤次「んん?」
  差し出されたスマホの画面を見て、藤次はそこに書いてあることを読み上げる。
棗藤次「してええのは3ヶ月目位から。 コンドームして体位工夫して、乳頭を刺激しすぎない・・・か」
楢山賢太郎「今、何ヶ月なんだ?」
棗藤次「えっ?! えっと・・・確か2ヶ月と、半分」
楢山賢太郎「でも、女性は悪阻とかで体調不安定だし、赤ちゃんの事考えるとしたくなくなるらしいから、嫌だと言われたら素直に引き下がれよ」
棗藤次「う、うん・・・」
楢山賢太郎「こういうデリケートな時期に拗らせると、産んだ後もしてくれなくなるって言うし、ホント気をつけろよ?アホ」
棗藤次「そ、それは困る! 分かった!! 忠告、しっかり肝に命じるわ」

〇本棚のある部屋
  ・・・そうして、妊娠4ヶ月と少しが経ったある夜。
  コンドームの箱を目の前に置いて、藤次は絢音をベッドに向かい合わせに座らせて、深々と土下座する。
棗絢音「と、藤次さん?!」
棗藤次「嫌がる事も乱暴にもせん。 約束する。 せやから抱かせてくれ。 後生や・・・」
棗絢音「で、でも、今は妊娠・・・赤ちゃんいるのよ?!」
棗藤次「これ・・・」
棗絢音「?」
  差し出されたスマホの画面と、これまでの事を洗いざらい告白すると、絢音も賢太郎同様呆れ顔になるので、藤次は益々萎縮する
棗絢音「そんなに我慢できないの?」
棗藤次「う、うん・・・」
棗絢音「そう・・・」
  はあと、盛大なため息が聞こえたので、無理かと引き下がろうとしたら、絢音の手が肩に触れる。
棗絢音「顔あげて」
棗藤次「い、いやでも・・・」

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コメント

  • これはリアルな会話であまり聞いたことがないくらいデリケートなテーマだと思います。ネットで調べるとかしないでいきなり同僚に相談するなんて、いかにも藤次さんらしいですね。

  • 2人の信頼関係が素晴らしいです。読みながら本当に胸が熱くなりました。妻が妊娠中に浮気をしてしまう男性の気持ちも、この物語を読むとなんだか同情すらしてしまいます。大事なことはしっかりパートナーに打ち明け、解決することでより良い関係が保てるというモデルのようなストーリーだと思います。

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