古典的なRPGの進め方

譲原

エピソード1(脚本)

古典的なRPGの進め方

譲原

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〇寂れた村
ルーク(・・・もうすぐだ)

〇寂れた村

〇華やかな広場

〇ヨーロッパの街並み

〇坑道

〇武骨な扉

〇時計台の中


〇寂れた村
ルーク(・・・・・・もうすぐ終わる)
  ルークは己の手のひらをじっと見つめた。
  なんの変哲もない、少年の未発達な手。
  しかしルークには、己の手には無数の皺と傷が刻まれているような錯覚をしていた。
ルーク(・・・なんでもいい。 結末はどうでもいいから、早く終わらせて・・・)
  早く、解放を。

〇寂れた村
「────なぁにを・・・」
「辛気くせえ顔してんだ!!」
ルーク「・・・ってえな・・・」
ルーク「お前はもう少し、加減ってものを覚えてくれ バカコーン」
コーン「わりーわりー」
コーン「はじまりの日だってのに、あんまりにもしけたツラしてっからよー。 気合い分けてやろうと思って」
ルーク「また適当こきやがって・・・」
ルーク「というかお前、あいつはどうした。 まさか置いてきたんじゃ・・・」
「・・・あぁもう!! 重い!! 一人でなんて物持たせるのよ!! バカコーン!!」
ルーク「・・・言わんこっちゃない・・・ リオ! 大丈夫か!」

〇寂れた村
リオノーラ「三人分の荷物を置いていくなんて・・・! どれだけ重いとっ、思って・・・っ!!」
ルーク「リオ、持つよ」
ルーク「悪いな。オレがどうぐ袋を持ってたからだ」
コーン「あっ、それ! いつの間に受け取ってたんだー?」
コーン「オレも城からの使者が見たくて、待ってたのによー」
ルーク「父さんの行商帰りに、そのままな。 知らせるの忘れてたんだ」
リオノーラ「別に誰が受け取ったっていいわよ。 ありがと、ルーク。 早くどうぐ袋に接続して、荷物をしまっちゃいましょう」
コーン「おー! リオ、頼むわ!」
リオノーラ「はいはい」
リオノーラ「これで良し、と。 荷物は各々で持ってよね」
ルーク「・・・いよいよだな」
  言葉とは裏腹に、陰鬱そうにルークは呟く。
  そんなルークの様子を気にする風もなく、数歩先に出たコーンが満面の笑みで伸びをした。
コーン「晴れて良かったじゃん。 空もオレたちを祝福してるってやつ?」

〇空

〇寂れた村
リオノーラ「あら、創世記の引用? コーンにしては気の利いたことを言うわね」
  次いでリオノーラが、水色の髪を追うようにして一歩進み出た。
リオノーラ「『木々は朝露を浴びて煌めき、大地は強くたくましくどこまでも続く。  この果てに何があるのか、人間は旅立つことを決意した』」
リオノーラ「『淀み一つない蒼穹は、今生まれたばかりの旅人を祝福していた』 ・・・だったかしら。抽象的な場面だけど、悪くないわよね」
コーン「そーそー! 創世記みたいな今日がはじまりなら、上手くいくに決まってんだろ!」
  二人から数歩引いた場所で、ルークは二人の背中を見つめた。
  そよ風に吹かれた木々が、ルークの足下で木陰を揺らす。
ルーク「・・・けどきっと、これからは楽しいことばかりじゃなくなる。 歓迎されないことだってあるだろう」
コーン「──だからこそ、行くんだろ?」
コーン「拒絶されない楽な道だけ行きたきゃ、この村から出なきゃいいんだよ。 オレたち全員、何となく進む道が示されてんじゃん」
コーン「あ、リオは知らねーけど」
リオノーラ「ちょっと! 私だって木こりや教師としての道があるわよ!」
リオノーラ「・・・でも、そうね」
リオノーラ「コーンの言う通りだわ。 苦しい事を畏れていては、私達は世界を知らないままだもの」
リオノーラ「死よりも恐ろしいことが待ち受けているかもしれない。 いくつもの辛酸をなめるかもしれない」
リオノーラ「だけど何も知ろうとしない自分自身を抱えていくには、この先の未来は長すぎるわ。 同じおそろしさなら、私は旅立つ方を選びたい」
  あなたはどう? ルーク。
  問いかけるようにリオノーラは視線を投げる。
  数歩先にいるコーンとリオノーラの間には、一人分の空間がぽっかりと空いていた。
  たった一人、その隙間に気付く者を待つように。
  日射しの眩しさに目をすがめて、ルークはゆるく拳を固めた。
ルーク「・・・変わらないな。 本当に、二人とも・・・」
リオノーラ「なぁに? 何か言った?」
ルーク「・・・勇敢過ぎて心配だよって言ったんだ!」
  大きく一歩、足を動かして。
  ルークは二人の間に飛び込んだ。
ルーク「さあ、そろそろ出発するんだろ? 言っとくが、森で夜を明かすのはごめんだからな」
リオノーラ「何よ。急に張り切っちゃって・・・」
コーン「おっし! 勇者(候補)パーティ、出発だ!!」
コーン「ここから伝説が始まるのだ・・・なーんてな!」
  この時のコーンが、何も知らなかったのは間違いない。
  それでも、的確に真実を言い当てる幼馴染に、ルークは感心せざるを得なかった。
  先を行く幼馴染の背中を、ルークはもう一度眺める。
  最後の時まで、この光景を忘れないために。
  そうして、呪われた3つの魂は、100度目の旅路を歩み始めたのだった。

コメント

  • パーティーの構成メンバーが幼馴染みの少年二人と少女一人というだけでもうドラマティックな展開の予感だな、とか、思慮深いルークとムードメーカーのコーンとしっかり者のリオノーラの道中が楽しみだな、とか思っていたら、なんと100度目!全てが最後の一文までの長いフリだったなんて。RPGの世界、恐るべし。

  • 登場人物達がとても純粋で魅力的な三人だと思いました。三人分の知恵や直感でこれから起こることへ勇気をもって立ち向ってほしいですね!

  • これからどんな展開が待っているのでしょうか。
    そして何が終わるのでしょうか…。凄く気になります。
    そしてどうぐ袋というなんとも羨ましい魔法たちも気になります!

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