猫を探して(脚本)
〇開けた交差点
アカネ「ちょっと、待ちなさいよ!!」
私の声に耳を貸すことはない。
待ちゆく人々だけがこちらを振り返る。
それでも、私は走り続ける。
きっとそうしなければいけなかった。
〇低層ビルの屋上
アカネ「待ちなさいっていってるでしょ!!」
屋上へとたどり着くと
そこには先客がいた。
女性「あら、こんにちは。いい夜ね」
アカネ「こ、こんにちは・・・」
黒猫「にゃーん」
猫は女性へとすり寄っていく。
女性「うふふ、いい子ね」
アカネ「・・・・・・」
女性「あら、どうかした?」
アカネ「えっと、その猫ってお姉さんの猫なんですか?」
女性「ある意味ではそうかもしれないわね」
女性「この子がどうしたの?」
アカネ「えっと・・・なんでもないです・・・」
女性「あなたにとって大切な猫だった?」
アカネ「違います・・・」
女性「あら、そうなの?」
女性「ずいぶん真剣だったから てっきりそうかと思ったのだけれど」
アカネ「えっと、私じゃなくて・・・ 友人から頼まれた猫なんです」
女性「なるほど、なにか事情がありそうね」
女性「いいわ、この子はあなたに譲ってあげる」
アカネ「本当ですか!?!!」
女性「ええ、ただしあなたが 課題をクリアできたらね」
アカネ「え?」
女性「うふふ、それじゃあ行きましょうか」
〇学校脇の道
アカネ「え? ここって・・・」
女性「数時間前にあなたがいた場所よ」
アカネ「お姉さん、何者なんですか?」
女性「魔女とでも言っておきましょうか」
女性「もちろん、信じるか信じないかは あなた次第だけどね」
アカネ「まあ、信じます・・・一応・・・」
女性「そう、嬉しいわ」
女性「それで、これからあなたには あの子を探してもらうわ」
アカネ「あの猫をですか?」
女性「ええ。私たちが出会った時間までに 連れて帰ってこれればあなたに譲るわ」
女性「もちろん、見つけられなくても なにもしないから安心してね」
女性「きっとそれもひとつの答えだから」
アカネ「・・・・・・」
女性「うふふ、頑張ってね」
猫の居場所はわかっていた。
きっとあの場所へと現れる。
「アカネちゃーん」
ミホ「ごめんね、待った?」
アカネ「ミホ・・・」
ミホ「あれ、どうしたの?」
アカネ「・・・なんでもない」
そして、彼女を失うんだ。
〇街中の道路
ミホ「それでね、その時お母さんと一緒に入ったお店がね!」
アカネ「うん・・・」
ミホ「どうしたの? さっきから様子がおかしいよ?」
アカネ「なんでもない・・・」
ミホ「でも・・・」
アカネ「なんでもないから・・・」
ミホ「そっか・・・わかった」
ミホ「でも、私に力になれることがあるなら なんでも言ってね」
私は彼女の言葉に頷く。
その間にもただ時間だけが迫っていく。
私はこれからどうするべきか
答えを見つけられてはいなかった。
〇街中の道路
ミホ「楽しかったねー」
アカネ「そうだね・・・」
そろそろだ・・・・・・
私はごくりと唾を飲み込む。
ミホ「今のってクロちゃん?」
ミホが飼い猫の名を呼んだ瞬間
嫌な記憶がフラッシュバックした。
ミホ「追いかけなきゃ!」
アカネ「待って!」
ミホ「え?」
私は思わずミホの腕を掴んでいた。
アカネ「えっと、あの猫なら私が探しておくから」
アカネ「だから、今日は帰ろう?」
ミホ「でも・・・」
アカネ「お願い・・・」
ミホ「う、うん。わかったよ」
それから、私はミホと別れた後
街を歩き続けていた。
〇低層ビルの屋上
女性「タイムリミットね」
アカネ「はい、見つけられませんでした」
女性「あなたならばすぐに見つけられると 思ったのだけれど」
アカネ「これから私はどうなるんですか?」
女性「もちろん、猫を探し続けてもらうわ」
女性「また、はじめからね」
アカネ「そう・・・ですか」
女性「ねえ、あなたは運命は変えられると思う?」
アカネ「わかりません・・・」
女性「そう。でも、今はまだそれでいいのかもね」
女性「その答えはきっといつかでるのだから」
女性「その時が楽しみね」
それからも、私は同じ時間を繰り返している。
答えはまだ見つからない。
私は今日もこの永遠の時の中で
猫を探し続けている。
アカネは猫が出てくる場所は分かっているから捕まえようとすれば捕まえられるけど、そうするとミホが事故に遭って死んでしまうから、猫を逃さなくてはいけない、そしてまた探し続ける、のループなのかな?魔女の目的がわからないだけに不気味な余韻の残るお話でした。
このお姉さんはきっと本当に魔女なんだと思えました。彼女の行動を試しているようで、実は何かの導きをしているのではと想像しました。