マッドサイコロジスト

こーた

マッドサイコロジスト(脚本)

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〇銀行
陽太「──やったぞ!!」
  俺は通帳を見て思わず声を上げた。
陽太(2億。これで俺は億万長者だ!!)
陽太(誰にもバレないうちに早く家に帰ろう──)
謎の男「随分とご機嫌だね」
陽太「──!?」
謎の男「宝くじで2億円を当てたくらい喜んでるじゃないか」
陽太「なんでそれをっ──あんた誰だ!?」
  俺は狼狽えた。確かに、先日宝くじで2億円を当てた。だが、このことを他言したことはなかったからだ。
謎の男「私は君が通う大学の心理学部で教授をしているものなんだけどね」
陽太「なんで俺が宝くじを当てたこと知ってんだ!?」
謎の男「そんなことはどうでもいいじゃないか。それよりも君──」
謎の男「心理学の実験に協力してくれないかな?」
陽太「は?」
謎の男「私はね、人間がどれだけ秘密を守れる生き物なのか知りたいんだ」
謎の男「一ヶ月。君の行動を監視する。その間に、誰かに”2億”の秘密を言うのか言わないのか、それを検証したい」
陽太「そんなの許すわけないだろ!それになぁ、言われなくたって誰にも言わねえよ。俺は誰も信用してないからな!」
  俺はここ最近起きた出来事を思いだした。

〇説明会場
  俺はそれなりに楽しい大学生活を送っていた。
  しかしある日を境に俺の人生は変わった。
  それは──俺がゲイであるという秘密を周囲に明かした日からだ。
  友人を信頼した俺が馬鹿だった。翌日には、学校中に噂は広がった。
陽太(もう誰も信用しない。俺は一人で生きてやる──)
  その後ヤケクソになって買った宝くじで2億円を当てたのだから、人生というものはわからない。

〇銀行
謎の男「ますます気に入った!!」
謎の男「ぜひとも協力してもらおう」
陽太「だから嫌だって・・・」
陽太(もう関わらない方がいいな・・・)
  俺がその場から離れようとした時だった。
  男は、俺の耳にピアスのようなものをつけたのだ。
陽太「なんだよこれ!」
謎の男「私が開発した特殊なチップだ。秘密を言おうとすると、耳の神経から脳に特殊な電磁波が流れる」
謎の男「そして、その秘密に関する一切の記憶を失うんだ。私が操作しない限り取れることはない。それじゃ、一ヶ月よろしくー」
陽太「あっ、ちょっと待て──」
  男は俺の前から姿を消した。

〇アパートのダイニング
  耳につけられたチップは、どんなことをしても取れることはなかった。
  不気味ではあったが、俺は気にしないことにした。どうせ、一ヶ月秘密を誰にも言わなかったら何も起こらないから。
  そんなことよりも、2億円の使い道を考えることで頭がいっぱいだ。

〇カジノ
  俺はひたすらに豪遊生活を楽しんだ。
  あの男のことも耳のチップもどうでも良くなるほど、金を惜しみなく使った。
陽太(最高の毎日だ・・・!!)

〇テーブル席
  大学にも行かずそんな生活を続けていたある日。
陽太「──よう」
なぎさ「久しぶり──」
  俺は、大学の同級生である『なぎさ』に呼び出された。
なぎさ「なんか変わったね」
陽太「・・・今更俺になんか用か?」
なぎさ「・・・」
  なぎさは、入学した時から仲が良かった。でもあの事件をきっかけに、微妙な距離ができていた。
なぎさ「あのね、私・・・」
なぎさ「陽太のこと好きだったの!」
陽太「・・・は?」
  突然のことに俺は驚く。
なぎさ「でもね、陽太が男の人が好きって聞いて。私じゃ駄目なんだなって気づいて、ちょっとギクシャクしちゃってた。ごめんね」
陽太「それじゃ・・・俺が気持ち悪くて距離を置いてたんじゃないのか?」
なぎさ「そんなわけないじゃん!」
陽太「でもみんな、俺から離れていったし・・・」
なぎさ「そんな人たちと私を一緒にしないでよ!!今日はね、彼女になれなくてもまた友達に戻りたいと思って・・・」
陽太「・・・」
陽太「ありがとう。勇気を出して言ってくれて。そして今まで気づかなくてごめん」
陽太「こっちこそ、また友達になってくれるか?」
なぎさ「うん・・・もちろん」
  俺たちは固い握手を交わした。とても幸せだった。たとえ、恋人にはなれなくても。

〇テーブル席
なぎさ「ところでさ、学校にも来ないで何やってたの?」
なぎさ「服とかアクセサリーも高級品ばっかだし」
陽太「そうか?」
なぎさ「とぼけないでよ。私たち親友になったんだから隠し事はなしでしょ」
陽太「ははっ、わりぃ。なぎさだってあけすけに話してくれたもんな。それじゃ、教えて差し上げよう。驚くなよ──」
なぎさ「なに?」
陽太「実はな、宝くじで二億円が──」
  その時だった。頭にとてつもない痛みが走ったのだ。
陽太「うぅ・・・」
なぎさ「ちょっと!急にどうしたの!」
  脳裏に男の言っていたことが微かによぎる。
陽太「う・・・」
なぎさ「落ち着いた?」
  やがて頭痛が治まってくる。
陽太「あれ? 俺、何やってたっけ──」
なぎさ「はぁ?」
陽太「あぁ、そうだった・・・なぎさと仲直りして──ってあれ?」
  俺は自分の体を隅々まで確認した。身に覚えのない高級品を身につけている。
なぎさ「ねぇ、なにふざけてんの?さっきの宝くじって何?」
陽太「宝くじ?なんのことだ?」
なぎさ「さっきそう言わなかった?」
陽太「宝くじ当たってたら割り勘なんかしないよ。ってことで、そろそろお会計」
  俺たちは店を出た。ふと、店のガラスに自分の姿が映る。
陽太(なんだこのピアス・・・こんなん買ったっけ?)
  俺は、耳からピアスを外すと道端に放り捨てた。
  何か忘れているような気がしたが、俺は気にせず歩き出した。

〇街中の道路
「ふむ・・・」
謎の男「結局こうなったか。やはり、相手に心を開かれるとこちらも開きたくなるものだ」
謎の男「なかなか良い実験サンプルだった」
謎の男「それに、」
謎の男「金も手に入ったしね。家のセキュリティが甘すぎるよ、全く。これは次回の実験の資金にでもしようかな」
謎の男「さて」
謎の男「今度はどんな心理実験をしようかなぁ」

コメント

  • ふたりの友情復活までの会話の進み方がとてもリアルで、読みながら会話の世界にひきこまれ、私もピアスのことを忘れていました。これでは大金を手にしても、彼と同じくすぐに失ってしまいそうです。

  • とっても楽しいストーリーでした、人の心理のお話しって深いですよね。最後の展開が、まさかで笑ってしまいました。人の考え方を改めて考えさせて頂きました。

  • お金を失っても友情を取り戻せてよかったですね! もしあのピアスをはめられてなかったら、どういう結末だったのか考えるところです。心理分析ってとても興味深いテーマでした。

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