逆星人のアリサは愛しくて殺したい

スヒロン

エピソード1 『逆』(脚本)

逆星人のアリサは愛しくて殺したい

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〇幻想空間
アリサ「さあ、目標の地球・・・貧困に困っている人をガンガン痛めつけましょう!」
アリサ「えー。地球のみなさん、聞こえますね? うるさくないですか?」
アリサ「(この日のために、地球言語を学んできた)」
アリサ「(かなり子供っぽい文字の教科書だったけど、きっと大丈夫ね)」
アリサ「私たちは、逆星人・・・地球のみなさんを滅ぼし、絶滅させるためにきました。 抵抗してもムダです」
アリサ「怒りと憎しみたっぷり弁当を沢山持ってきましたので、貧困家庭に配っていきますから、安心してくださいね」
アリサ「(ふう・・・地球の人たちが、喜んでくれればいいけど・・・)」
姫子「お姉ちゃん、この教科書『逆に読む日本語』という本だけど、本当に合ってるのよね・・・? それに、この服は?」
アリサ「地球で常に流行っているという、体操服とセーラー服よ。きっと、私たちの思いは伝わるわ!」
姫子「何か軍が出動しているけど、大丈夫なのよね・・・?」
姫子「ウチの逆星は『逆に読む』シリーズの教科書しか置いてないけど、不安だわ・・・」
アリサ「何を言うの、私たちは飢餓や戦争に苦しむ地球人を・・・絶滅させにきたのよ? 喜ぶに決まってるわ」
アリサ「それに冬月くんにも、会えるかもしれない・・・」

〇海底都市
軍人A「いいか、一斉射撃だ! 地球の命運がかかってる! こちらワシントンDC,国防のために全軍出動!」
テリー「ジャックさん、なんか普通の女子高生みたいですが・・・」
軍人A「何を言っとる? 『絶滅させる』とはっきり言ってるじゃないか! あんなバカでかいUFOで!」
アリサ「さあ、地球のみなさん”怒りと憎しみたっぷり弁当”です。さあさあ、どんどん滅んでください」
テリー「ホームレスに炊き出しをしているのでは・・・?」
軍人A「ううむ、そうか! 優生思想で、ホームレスから始末する気だな?」
アリサ「さあ、怒りと憎しみたっぷり弁当です。まだまだありますよ」
貧しい子供「わーい、おいしー ありがとう、お姉ちゃん!」
アリサ「フフ、可愛いわね。冬月くんを思い出すわ・・・」
軍人A「ようし、子供が去ったら撃て! あれはエイリアンだ! 毒で地球を滅ぼす気だぞ?」
貧しい子供「ええ? これ、毒なんか入ってないよ!?」
軍人A「”怒りと毒たっぷり”と言ってるじゃないか! ようし、みんな撃て!」
姫子「危ないわ! バリアー!」
アリサ「あらら? どうして・・・? 私たちは地球を絶滅させようと・・・」
軍人A「やはり、絶滅させる気だ! そうはさせるか!」

〇海底都市
アリサ「地球はどうしてしまったの? どうして、滅ぼそうとする私たちを攻撃してくるの?」
アリサ「妹ともハグレてしまった・・・ ともかく身を隠さないと」
冬月 勇夫「キミ、大丈夫かい!? 随分と走っているようだけど」
アリサ「あ、冬月くん・・・? 私はアリスです!」
冬月 勇夫「アリサちゃん・・・? 覚えてるよ! いきなり失踪した・・・」
アリサ「お願いがあるの・・・」
アリサ「私をぶって! 痛めつけてちょうだい!」
冬月 勇夫「ええ!?」
アリサ「敵が迫っているわ・・・このままでは救出されてしまう!」
アリサ「お願い、私をぶって!!」
  ザワザワと人々が言う。
町人「イヤだわ。最近の子は、そういうシュミなのねえ」
アリサ「さあ、早く私を痛めつけて!」
冬月 勇夫「アリサちゃん、人聞きの悪い!」
冬月 勇夫「ともかく、ウチのアパートへ!」

〇アパートのダイニング
冬月 勇夫「さあ、ボロアパートだけど」
アリサ「うわあ、豪勢なマンションね!」
冬月 勇夫「まさか、極貧だよ!」
アリサ「・・・お腹が空いてるの?」
アリサ「ハイ、”怒りと憎しみたっぷり弁当”よ。 地球の貧困を滅ぼすために、頑張って作ったの!」
冬月 勇夫「怒りと憎しみ!? そんなの、死んじゃうよ!」
アリサ「ええ、死ぬほど美味しいわよ、さあどうぞ」
冬月 勇夫「一口食べてみようか」
冬月 勇夫「ンまい! 旨いよ!」
アリサ「もちろん、私たち逆星人で腕によりをかけて作ったからね。このステーキの”肉しみ”が美味しいのよ!」
冬月 勇夫「肉汁がとろけるようだよ!」
アリサ「きっと地球を滅ぼしてみせるわ!」
冬月 勇夫「滅ぼすなんて、ダメだよ!」
アリサ「??? どうして、滅ぼすのが駄目なの?」
冬月 勇夫「駄目に決まってるじゃんか!」
軍人A「こちらは国防軍! エイリアンはいませんか!?」
冬月 勇夫「ええ、エイリアン!?」
軍人A「ホームレスの人らに毒入り弁当を配っている恐ろしいエイリアンです!」
冬月 勇夫「いえ・・・そんな人はいません」
軍人A「そうですか。エイリアンを見かけたら、通報してください。女子の体操服を着た恐ろしいエイリアンです」
冬月 勇夫「行ったみたいだよ」
アリサ「どうして、私のことを黙っていてくれたんです?」
冬月 勇夫「だって・・・アリサちゃんが、そんな危険なはずがないよ!」

〇川に架かる橋
アリサ「あーあ、夕日が上がっていくね」
冬月「沈むんじゃないの?」
アリサ「冬月くん、私、いつか逆星に戻らないといけない」
アリサ「私、地球の様子を社会勉強にきたの。やっぱり地球にはまだまだ貧しさや紛争があるわ」
冬月「うん、大変だよね」
アリサ「けど、冬月くんみたいな優しい子がいればいつか乱世になるわね。 一緒に乱世を滅ぼしましょう!」
冬月「?? アリサちゃん、たまによく分からないよ」
アリサ「またね、冬月くん! きっと・・・忘れてね・・・」
冬月「アリサちゃーん!」

〇アパートのダイニング
アリサ「優しい冬月くんのままで良かったわ!」
アリサ「ずっと伝えたかったことがあるの・・・」
冬月 勇夫「え・・・?」
アリサ「私ずっとずっと 冬月くんのことが・・・」
アリサ「痛めつけたくてたまらなかった・・・! 殺したい程に!」
冬月 勇夫「ええ?!」
アリサ「こんなにズタズタにしたい気持ちは初めてよ! いつかきっと、殺したいと思っていたの!」
冬月 勇夫「どうして?! 助けてあげたのに・・・」
アリサ「私冬月くんのこと・・・」
アリサ「大キライ! ずっとずっと大嫌いだった・・・!」
冬月 勇夫「ひ、酷いよ! アリサちゃん 僕は十年間、アリサちゃんのことを・・・」
アリサ「私もずっと冬月くんのことを 殺したいほどに・・・!」
アリサ「なんだか、照れちゃうね・・・!」
アリサ「いつか・・・冬月くんのお返事を聞かせてね! それまでは、私この部屋のお掃除に洗濯物にと色んなことをするわ!」
アリサ「毎日、腕によりをかけ、憎しみ、怒り、復讐、絶望のお弁当を作るからね!」
冬月 勇夫「ヒイイ!?」
姫子「あ、お姉ちゃん? 冬月くんと会えたのね?」
冬月 勇夫「あ、姫子ちゃん!? アリサちゃんが、酷いんだよ!」
アリサ「さっき、実は”殺しの告白”をした所なの」
姫子「ええ? お姉ちゃんたら、再会していきなり”殺しの告白”だなんて!」
アリサ「お返事待ってるからね」
冬月 勇夫「ヒイイ!?」
姫子「冬月くん、しっかり考えてお返事してね。 私たち”逆星人”は、基本的にお姉ちゃんに全権を任せているの」
姫子「こう見えても、お姉ちゃんは”逆星人”の支柱・・・地球より遥かに高度な文明を持つ”逆星”の総提督よ」
冬月 勇夫「そんなに凄かったの!?」
姫子「それだけに、怒らせると本当は怖いわ。お姉ちゃんは、そもそも冬月くんに会いに来たんだから」
冬月 勇夫「ワザワザ、嫌いと言うために?」
アリサ「なんだか照れるわ。もちろん、貧しい人を滅ぼすためでもあるけど、やっぱり冬月くんとの”憎悪の思い出”は忘れられない・・・」
冬月 勇夫「僕は、なんかやったっけ!?」
アリサ「さあ、明日ホームレスに配る”怒りと憎しみたっぷり弁当”を作りましょう。きっと、私たちの思いも届くわ」
姫子「怒りの心は、全ての星に共通よね、お姉ちゃんん」
冬月 勇夫「これから、どうなるの・・・?」

コメント

  • ミスコミュニケーションが引き起こす悲劇と喜劇の世界。誤解を解こうとしても、その言葉も全部逆の意味だから、結局永遠にすれ違い…。読者の頭も混乱させる世界観がシュールで面白い。

  • あれ、いつの間にかトンデモ枠飛んでいったけ?と混乱してました😰💦💦💦
    逆の言葉で伝えることが正しいと言うズレ感が面白いです😉😉😉

  • 誤解されたまま終わった(笑)
    いつか誤解は解けるんでしょうか?
    でも、怒らせたら地球は滅ぼされるかもだから、慎重に言葉を選んで…?
    逆さ言葉のアイディアが抜群に面白かったです。

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