ツッコミフレーズ

くろべー

ツッコミフレーズ(脚本)

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〇シックな玄関
さくら「ただいまー。 連れてきたよ」
母さん「あらあら、はいはい」
伊達マサトシ「お邪魔します! 初めまして、伊達マサトシと申します」
伊達マサトシ「おじょ、お嬢様、いえ、お嬢さんと、お付き合いして──」
伊達マサトシ「させていただいて、おりまして──」
さくら「もー、マーくん緊張しすぎー。 お母さん相手に噛みまくりじゃーん」
伊達マサトシ「あ、ごめん。いえ、失礼しました、その──」
母さん「あらあら、いいのよ、そんな緊張しなくても。 うちはそんな、大した家じゃありませんから」
さくら「そーだよ、もう。 私もそう言ったのに、勝手に緊張しちゃって」
伊達マサトシ「いや、違うって!」
伊達マサトシ「緊張っていうか、ご両親にご挨拶、みたいなのは、きちんと──」
さくら「噛んじゃってたら、きちんとできてないし!」
母さん「あとね、実はお父さん、まだ帰ってないのよ。 だから、「ご両親」ってほどのもんじゃないの。どうぞお気楽にね」
さくら「あ、お父さんいないの?」
母さん「そうなのよー。 なんか、撮影が押してるみたい」
さくら「よかったー、とりあえず一安心」
母さん「そんなこと言わないの!」
母さん「でもほんと、伊達さんも気楽になさってね。 うちの人・・・基本的にはいい人ですから。 ちょっと変わってますけど」
母さん「固くなるより、なるべく自然に、ね」
さくら「あのねお母さん、その「自然に」ってダメ出しって、逆効果なんだよ。 自然にしようとすると、人は不自然になっちゃうの」
さくら「マーくんはお父さんにツッコミ入れてやるくらいの気持ちでいいって」
母さん「そうそう、伊達さん、漫才をやってらっしゃるんですって?」
伊達マサトシ「はい、あの、まだ駆け出しでして・・・」
伊達マサトシ「松方さんのような演技派の俳優さんの前で、芸人などと名乗るのもおこがましくあり・・・」
さくら「ほら、また固くなって言葉が変になってる!」
母さん「あらあら、そんなに言ったら、伊達さんも余計に固くなっちゃうわよねえ。 「固くなるな」も、「自然に」っていうのとおんなじよ」
さくら「あ、そっか・・・」
母さん「そうそう、いいこと思いついた」
母さん「たとえば今のさくらみたいな言い方に伊達さんがツッコむとしたら、どんなツッコミになるの?」
伊達マサトシ「えっ・・・」
さくら「面白そう。マー君、ツッコんでみてよ。 怒んないからw」
伊達マサトシ「えーと・・・解説ツッコミなら、「固くなるなって言うから固くなっちゃうんだよ!」ですかね」
伊達マサトシ「「そうそう、固くならんように、固くならんように・・・」って言いつつ身を縮めて、「よけい固くなるよ!」ってノリツッコミとか」
伊達マサトシ「いけそうな空気だったら、「うるさいよ!」ってドツキツッコミも面白そうですね」
さくら「え、そんなこと思ってたんだ・・・」
さくら「なんかショック~・・・」
伊達マサトシ「いや、怒んないって言ったじゃーん! ・・・って、これは泣き言ツッコミですね」
母さん「あはは、そこにもツッコむのねー。 そうよ、今のはさくらが悪いわよー」
さくら「そうかも・・・」
伊達マサトシ「いえいえ、今のはツッコミどころを作ってくれたんですよ。 さくらさん、根はやさしいですから」
母さん「あらあら、フォローツッコミもお上手ねー」
母さん「・・・って言い方で、合ってるかしら?」
伊達マサトシ「はい、合ってます。 ・・・っていうか、フォローツッコミって呼び方、いいですね。使っちゃおうかな」
母さん「ツッコミにもいろんな名前があるのねえ」
伊達マサトシ「正式名称とかはないですから、自分たちで呼び分けてるんですよ。 ツッコミに名前があればネタ作りの時とかに便利ですから」
母さん「あらー、そういうとこが本職ねぇ。 専門用語、って感じだわー」
伊達マサトシ「いえいえ、今は素人のうちから使ったりしますよ。お笑いの養成所でも習いますから」
さくら「あ、今のマーくんのは「訂正ツッコミ」だね」
伊達マサトシ「まあ、そうかな・・・ でも、笑いに繋げるのがツッコミの役割だから、普通の会話から意識しすぎるとつらいかも」
さくら「そっかー。マーくんも普段はツッコまれるタイプだもんね」
母さん「さ、立ち話も何ですから、上がってくださいな。 お茶でも飲んでる間に、お父さんも帰ってくるでしょうから」
伊達マサトシ「はい、あらためて、お邪魔しまーす」

〇おしゃれな居間
「ただいまー」
さくら「あ、帰ってきた!」
母さん「お帰りなさーい!」
さくら「じゃ、マーくんと廊下でお出迎えしよっか」
母さん「しっかりね!」
伊達マサトシ「は、初めまして! お邪魔させていただいてます、伊達マサトシと、申しま・・・」
さくら「ちょっと・・・何、その格好・・・」
父さん「ん? 変かな?」
さくら「変かな、じゃないでしょ! 変に決まってるじゃない!」
父さん「撮影が押して、約束の時間を過ぎちゃったからな。 メイクも落とさず、急いで帰ってきたんだよ」
さくら「衣装だってそのままじゃない」
父さん「大事なお客を待たせて着替えなんかしてる場合じゃないだろう。 ・・・やあ、伊達くんといったかな。 ようこそ、いらっしゃい」
伊達マサトシ「は、初めまして、伊達マサトシと、申しまして、あの・・・」
父さん「まあまあ、そう固くならずに。 話は聞いてるよ。漫才師なんだって?」
伊達マサトシ「あ、はい、ツッコミをやらせてもらって、いえ、まだ駆け出しで、その・・・」
父さん「そうか、ツッコミ役なのか。 しかし、それにしちゃあ、ツッコミがないね」
伊達マサトシ「・・・は?」
父さん「せっかく、こんな姿で帰ってきたんだ。 ツッコんでくれるのが娘だけじゃあ寂しいよ」
母さん「ごめんなさいね、伊達さん。 こういう人なんですよ。 いたずら好きというか、いじられたがりというか・・・」
伊達マサトシ「は、はぁ・・・」
母さん「・・・娘が彼氏を連れてくる、って聞いて、「どんな顔して会ったもんかな」なんて言ってたの。 出した答えが、これみたい」
母さん「どうぞ、ツッコんであげて」
父さん「遠慮はいらないよ。 どうぞ、思う存分ツッコんでくれ」
伊達マサトシ「はい、それじゃあ・・・」
伊達マサトシ「何ですか、その格好は! ・・・とか、ですかね」
父さん「ふむ。・・・それだけかい?」
伊達マサトシ「は?」
父さん「他にどんなツッコミがあるのかと思ってね。 漫才だって役者と同じで、どれだけ演技パターンを持ってて使いこなせるか、だろう?」
伊達マサトシ「あ! 分かりました、ありがとうございます! では・・・」
伊達マサトシ「何だそりゃあ! 妖怪かよ! ていうかタキシード着て、とこの紳士だよ! いや、むしろドラキュラかよ!」
伊達マサトシ「・・・って感じでは、どうでしょう?」
父さん「うん、悪くないね。 しかし・・・それだけってことは、ないよな?」
伊達マサトシ「それでは・・・」
父さん「その、前置きはいらないな」
伊達マサトシ「はい・・・ ドラキュラって、吸血鬼かよ! 俺、血ぃ吸われるの?」
父さん「ふむ・・・」
伊達マサトシ「ちょっと待った! 血ぃ吸われたら、俺も吸血鬼になっちゃうの? バンパイアの仲間入り?」
父さん「いいねえ。先の展開を導くようなツッコミだ・・・」
伊達マサトシ「ありがとうございます!」
父さん「いや、そこは礼を言うとこじゃなくて・・・」
伊達マサトシ「あ、そうか」
伊達マサトシ「なんでドラキュラ姿でダメ出ししてるんですか! 言うこと聞いたら聞いたで仲間にされそうで怖いっす!」
伊達マサトシ「いえ、バンパイアの手下は困るけど・・・芸能界の大先輩たる方の手下なら、むしろ光栄! いやツッコミになってないか!」
伊達マサトシ「・・・って感じで、サクラさんのお父さんが有名俳優ってだけでツッコみにくいです! なのにそんなツッコミどころ満載の姿って!」
伊達マサトシ「てことは・・・もしかして、少しでもツッコミ入れやすいように、そんな格好で? ・・・んなわけないか!」
伊達マサトシ「・・・もしそうだったら、気をつかっていただいて、どーもすいません!」
父さん「・・・いいねえ。 君とは、仲良くなれそうな気がするよ」

〇おしゃれな居間
母さん「あ、やっとメイク落としたのね。 お風呂、ぬるくなかった?」
父さん「いい湯加減だったよ。 彼も・・・なかなか、いい青年だったじゃないか」
母さん「あの口うるさいさくらが好きになった人だもの」
父さん「まあ彼なら、私もこれから気楽に接していけそうだ」
母さん「でも、初対面であんな格好しちゃった以上、あなたもこれから大変よ?」
父さん「どうしてだい?」
母さん「だって、初対面でドラキュラでしょう? 次からは、もっとインパクトのある格好じゃないとツッコんでもらえないわよ?」
母さん「次は一体、どんな格好で会うつもり?」
父さん「──次は、狼男なんてどうかな?」
母さん「・・・じゃ、次に会うのは満月の夜にしなくちゃね」
母さん「狼男には、伊達さんは何てツッコむのかしらね?」
父さん「・・・今から楽しみだよ」

コメント

  • 娘の彼氏が挨拶に来るというシチュエーションはシリアスにもコメディにもなる題材ですが、現実離れしすぎないちょっとコミカルな雰囲気がちょうどいい塩梅で微笑ましかったです。自分の照れ隠しも兼ねてコスプレやメイクまでしてきてくれるお父さんはきっと真面目で娘思いの人ですね。

  • 正直なところ、こんな緊張やハードルが高い挨拶行きたくないですね笑
    乗り越えていかなきゃいけない壁なのか…、見てるこっちが少し恥ずかしくなりました笑

  • 娘の彼氏の挨拶、って定番の枠組みの中で、これでもかってくらい楽しい要素を詰め込んでますね。マサトシさんは素顔のお父さんと話す機会が来るのか、この先を想像して楽しくなります。

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