座敷童子の家族

いりうわ

タケル(脚本)

座敷童子の家族

いりうわ

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〇屋敷の門
園児「ねえ」
園児「あなた、このお屋敷の子?」
園児のママ「まりちゃん、誰と話しているの?」
園児のママ「早く来なさい、帰るわよ!」
園児「は~い」
園児「バイバーイ」
園児のママ「まりちゃん!」
園児のママ「きゃあー!!」
「おい、子どもが車に轢かれたぞ!」
園児「うぇーん」
園児のママ「まりちゃん!!」
園児のママ「ケガはない?」
園児「うん、平気」
園児のママ「奇跡だわ」
水上儀介「蝶子!」
水上儀介「そこにいるのか?」
水上儀介「あまり余計な力を使うな」
水上儀介「娘たちが揃ったから、お前も早く来なさい」
「・・・」

〇広い和室
水上儀介「皆揃っているな?」
水上夕夏「全てのお仕事を断って参りました」
水上晴香「私も早退してきました」
水上朝香「朝香は爺やのお車で今着いたの~」
水上夕夏「余計な者も混じっているようですけど」
速水タケル「お久しぶりです、夕夏様」
水上夕夏「ふん!」
水上儀介「先立って伝えてある通り、今日は私が死んでから後」
水上儀介「つまり、相続についての話だ」
水上儀介「タケルにも権利がある だから呼んだのだ」
水上晴香「お父様!」
水上晴香「この間も申し上げた通り、相続の話なんてまだ早すぎます」
水上儀介「それがそうでもないのだ」
水上晴香「どういうことです?」
水上朝香「パパ、死んじゃうの~?」
水上儀介「そうだ!」
水上儀介「もうじき私は死ぬ」
水上儀介「これは、蝶子との約束なのだ」

〇古びた神社
若き日の儀介「水上商事の危機を救いたまえ」
若き日の儀介「ん?君は何だ」
  おらが見えるのか?
  なら、三吉鬼に見つからぬようにおらを連れ出しておくれ
  さすれば、お前は大きな富を得られよう
若き日の儀介「本当か! あなたは神か?」
  おらはチョウピラコ
  ただし、富が続くのはお前の子すべてが13の年を迎えるまで
  おらが去った後は、それまでの反動でお前は命を失うだろう
若き日の儀介「それでも構わん!」
若き日の儀介「チョウピラコよ どうか水上家のもとへ」

〇広い和室
水上儀介「以来、水上家は莫大な富を築きあげることができた」
水上儀介「だが、今や3女の朝香は13歳 蝶子との約束の刻となった」
水上儀介「たとえ我が命尽きようとも、蝶子を水上家から出してはならん!」
水上儀介「この中の誰かが蝶子を受け継げば、水上家の栄華は続く」
水上夕夏(座敷童子がそばにいれば、富は思うがまま)
水上朝香「蝶子ちゃんとずっと遊びたーい」
水上晴香「でも、お父様」
水上晴香「座敷童子は自分の意志で家に住まい、去っていくと聞きます」
水上晴香「お父様が亡くなった後も、蝶子を留め置くことができるでしょうか」
水上儀介「その通り」
水上儀介「蝶子を留めるには、ある手段を講じねばならん」
水上晴香「手段?」
水上儀介「蝶子が最も欲するものを与えよ!」
水上儀介「私は昔、三吉という鬼の監視を逃れたいと欲する蝶子に『自由』を与えた」
水上儀介「お前たちもそれに倣い 蝶子を我がものとせよ」

〇広い和室
水上儀介「長年、蝶子の恩恵にあずかり、欲深くなった今の私には」
水上儀介「もう蝶子が見えん」
水上儀介「確認する!」
水上儀介「お前たちには蝶子の姿が見えているのだな?」
水上夕夏「もちろんです」
水上晴香「見えますわ、はっきりと」
水上朝香「見える~」
速水タケル「・・・」
水上儀介「タケルはどうだ?」
速水タケル「俺は・・・」
速水タケル「俺には見えません」
水上夕夏「あはは」
水上夕夏「蝶子にもわかっているのよ」
水上夕夏「妾の子なんて付いていくに値しないってね」
水上晴香「ちょっと、姉さん! 言い過ぎよ」
水上儀介「ならば仕方ない」
水上儀介「見える者で、蝶子の欲するものを見つけ出すのだ」
水上儀介「先に蝶子を得たものを、水上家の実質的な跡取りとする!」

〇黒
「おい」
「おい!!」

〇広い和室
速水タケル(うっ)
蝶子「お前、見えているのだろう?」
蝶子「なぜ、嘘をつく?」
速水タケル「旦那様!」
水上儀介「ん?どうした」
速水タケル「蝶子が見えぬ者はもはや不要 これでお暇致します」
水上儀介「せっかく来たのだ そう急がずともよいだろう」
水上儀介「今日は泊っていきなさい 後でゆっくり話そう」
速水タケル「・・・」
速水タケル「わかりました」

〇広い和室
水上朝香「蝶子ちゃーん 食べる―?」
水上朝香「欲しくないのかな~?」
水上晴香「蝶子、蝶子ー」
水上晴香「可愛い靴が欲しいんだよねー」
水上晴香「・・・」
水上夕夏(一体何が欲しいのよ)

〇風流な庭園
速水タケル「やはり来るんじゃなかった」
速水タケル「いて!」
速水タケル「これは!」

〇風流な庭園
蝶子「何をして遊ぶのじゃ?」
タケル少年「サッカーやろうよ」
蝶子「なんじゃそれは?」
タケル少年「これさ」
タケル少年「いっくぞー!」
蝶子「これまて」
タケル少年「あっははは」
蝶子「ふふふ」

〇広い和室
蝶子「行くのか?」
タケル少年「うん」
タケル少年「僕は元々この家の子供じゃないからね」
蝶子「また 会えるかの?」
タケル少年「きっと会えるよ また一緒にサッカーしよう」
蝶子「約束破ったら針千本ではすまぬぞ」

〇風流な庭園
蝶子「あの時の小僧が大きゅうなったものじゃ」
速水タケル「蝶子・・・」
蝶子「約束をちゃんと守ってくれたの」
速水タケル「ああ」
「タケル!」
速水タケル「晴香様」
水上晴香「久しぶりに会えて嬉しいわ」
速水タケル「ええ」
水上晴香「ねぇ、私に手を貸してくれない?」
速水タケル「なんです?」
水上晴香「私、知ってるの」
水上晴香「タケルが昔から蝶子と仲が良かったこと」
速水タケル「それは・・・」
水上晴香「いいのよ、隠さなくて」
水上晴香「それでね」
水上晴香「蝶子に「お前は何が欲しいの」って直接聞いてほしいのよ」
速水タケル「え!?」
速水タケル「ですが、それは今からお嬢様方が、それぞれ挑まれることでは」
水上晴香「あははは」
水上晴香「無理無理」
速水タケル「!?」
水上晴香「この家の誰一人として、もう蝶子が見える者なんていないわ」
水上晴香「私を含めてね」
「タケルお兄ちゃーん」
水上晴香「じゃ、そういうことだから また後で」
速水タケル「あ、晴香様」
水上朝香「タケルお兄ちゃん! 朝香探しちゃったよ~」
速水タケル「朝香様 お久しぶりです」
水上朝香「ねぇ」
水上朝香「お兄ちゃんは蝶子が欲しいものって何かわかる?」
速水タケル「俺には見当もつきません」
水上朝香「そっか~」
水上朝香「じゃ、何か思い出したら朝香に教えて」
水上朝香「お兄ちゃんは朝香の味方だよね?」
速水タケル「ええ」
水上朝香「えへへ 良かった~」
水上夕夏「タケルさん」
速水タケル「夕夏様」
水上夕夏「蝶子の件 私に協力してくれない?」
速水タケル「え?」
水上夕夏「私、あなたが出て行ってしまったこと ずっと後悔していたのよ」
水上夕夏「私が蝶子を得た暁には、またこの家に戻ってきてもらおうと思っているの」
水上夕夏「考えておいてね」
蝶子「まったく、呆れた姉妹じゃな」

〇空

〇広い玄関(絵画無し)
蝶子「やれやれ」
蝶子「お勝手から黙って帰る気か」
速水タケル「蝶子」
速水タケル「俺はここにいる必要はないからね」
蝶子「そうじゃな」
速水タケル「蝶子は本当にこの家を去るの?」
蝶子「ああ」
蝶子「とてもあの三姉妹と暮らす気にはなれん」
速水タケル「水上家は身寄りのない俺を世話してくれた」
速水タケル「悪い人たちじゃないよ」
蝶子「・・・」
速水タケル「いつここを去るつもり?」
蝶子「今じゃ」

〇屋敷の大広間
水上夕夏「お父様!」
水上晴香「しっかりしてください!」
水上朝香「パパ~!」
水上儀介「蝶子よ とうとう水上家を去るか」
  長年、世話になったの
水上儀介「悔いはない わが命尽きようとも娘がいる」
  残念じゃが、お主1人の命では足りぬじゃろうな
水上儀介「何? どういうことだ!」
  水上家は少し得過ぎたの
水上儀介「待ってくれ!」
水上儀介「私はどうなってもいいが、娘には手を出さんでくれ」
  勘違いするでない
  おらは死神ではないぞ
  おらは何もせん
  この家が元の姿に戻るだけじゃよ
水上晴香「うっ! 何これ、苦し・・・」
水上朝香「朝香、眠くなってきた」
水上夕夏「あ・・・」
水上儀介「やめてくれ!」
  さらばじゃ
  儀介
水上儀介「待て!ちょう・・・」

〇広い和室
蝶子「・・・」
「待て!」
速水タケル「行くな蝶子!」
蝶子「無駄じゃ」
蝶子「もう去ると決めたのじゃ」
速水タケル「お前の欲しいものをやる!」
蝶子「ほぅ お前にわかるのか?」
速水タケル「俺にはわかる」
速水タケル「他人の家で毎日を過ごす幼い子の気持ち」
蝶子「・・・」
速水タケル「お前が欲しかったもの それは」
速水タケル「『家族』だ」
蝶子「家族?」
速水タケル「お前は早池峰神社を出た後、暖かい家族を探し求めていたんだ」
速水タケル「水上家がお前の家族だよ」
速水タケル「それでいいだろう? このまま留まれ」
蝶子「・・・」
蝶子「だめじゃ」
速水タケル「何!?」
蝶子「それでは足りぬ」
蝶子「もう、この家には飽いたのじゃよ」
蝶子「見るがいい」

〇屋敷の大広間
水上夕夏「火が!」
水上晴香「もう、おしまいだわ」
水上朝香「うえーん」

〇広い和室
蝶子「家が急速に衰えだしておる」
蝶子「もう終わりなんじゃよ、水上家は」
速水タケル「だから、留まってくれ蝶子!」
蝶子「できぬ」
速水タケル「なら、お前の『本当の家族』を与える!」
蝶子「『本当の家族』じゃと?」
速水タケル「つまり、蝶子の父さんと母さんだ!」
蝶子「おとうとおかあ・・・」
速水タケル「座敷童子は口減らしの為に死んだ哀れな子供の妖怪と聞く」
速水タケル「蝶子がここにいる以上、蝶子の家族だってどこかに痕跡が残っているはずだ」
蝶子「家族・・・」
速水タケル「俺が探してやる」
速水タケル「遠野中、いや日本中を駆けずり回って、必ず蝶子の家族を見つけ出してやるから!」
蝶子「・・・」
速水タケル「蝶子!」
蝶子「おらはチョウピラコ」
蝶子「約束を破れば針千本ではすまぬぞ」
速水タケル「ああ、わかってる」

〇黒

〇屋敷の門

〇屋敷の大広間
水上晴香「う~ん」
水上夕夏「悪い夢でも見ていた気分だわ」
水上朝香「ん?おはよ~ちゃん」
水上儀介「うう」
水上晴香「お父様!」
水上儀介「私は生きているのか?」
水上儀介「どういうことだ 蝶子?」
  去るのはやめた
水上儀介「蝶子か!?」
  ただし
  今日この時から水上家はマヨヒガとなる
水上晴香「マヨヒガ?」
  ここへ訪ねて来たものは誰であろうと、例外なく水上家が救え
  これまで受けた幸福の恩恵を、少しずつ他人に譲るのだ
  違えれば、家は崩れるぞ
水上儀介「そ、そうか・・・ とにかく感謝する」
水上晴香「マヨヒガ・・・」
水上晴香「やってやろうじゃない!」
水上晴香「誰が来ようと水上の力で助けて見せるわ!」
水上夕夏「やるしかないわね」
水上朝香「朝香も~」
蝶子「その心がけ、努々忘れるでないぞ」
水上晴香「い、今のって!?」
水上朝香「蝶子ちゃん?」
水上夕夏「初めて見えた」
水上儀介「え?」

〇屋敷の門
蝶子「行くのじゃな?」
速水タケル「ああ」
蝶子「お前の帰りを、ここで待っておるぞ」

〇風流な庭園
水上晴香「さぁ、忙しくなるわ!」
水上朝香「朝香もー!」
水上夕夏「やれやれ」
水上晴香「お客様?」
水上夕夏「こんなに朝早くから誰かしら」
蝶子「早速来たか」
蝶子「まずは最初のマヨヒビト」

コメント

  • 以前に「マヨヒガの家族」も拝読しましたので、キャラクターなどが少しずつ異なるバージョンとしても楽しめました。マヨヒガとしての水上家の今後はもちろんのこと、タケルとの約束の結末も気になるところです。

  • 修正していくとのことで、今どの段階かはわかりませんが、読ませて頂いた段階では、各話というより長編作品のオープニングに近いテイストを感じました。
    座敷わらしも可愛い。普通に続きが読みたいような内容でした。面白かったです。

  • 凄く面白かったです!
    蝶子ちゃんが可愛かったり怖かったり、子供の頃サッカーをしてその約束を覚えているところとか、なんだかウルッときてしまいました。

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