第一話 息子の夢(脚本)
〇黒背景
〇商店街
ギャラクシーロード商店街
〇お土産屋
和菓子いわくら
岩倉アラレ「だから」
岩倉アラレ「今の時代SNSでバズるのが重要なの」
岩倉アラレ「だったら作るしかないっしょ」
岩倉アラレ「SNS映えする和スイーツ!」
岩倉ゲンタ「ウチは代々昔ながらの味を引き継いでんだ!」
岩倉ゲンタ「若いヤツらに媚び売った浮ついたモンなんて作れるか!」
岩倉アラレ「頭かたっ!」
岩倉アラレ「これじゃ」
岩倉アラレ「SNSでバズッて」
岩倉アラレ「テレビの取材に看板娘として出演して」
岩倉アラレ「スカウトされて芸能界デビューする」
岩倉アラレ「私の夢はどうなるの!?」
岩倉ケンジ「くっだらねぇ夢!」
岩倉アラレ「だまれ栗饅頭!」
岩倉キヨミ「看板娘にならいつでもなれるわよ」
岩倉キヨミ「暇な時にお店手伝って!」
岩倉アラレ「嫌よ」
岩倉アラレ「ジジババしか来ない店の看板娘なんて!」
名雲ヨシオ「ざーす!」
岩倉ゲンタ「朝生は仕上げたから」
岩倉ゲンタ「商品並べてくれ」
名雲ヨシオ「うす!」
名雲ヨシオ「あっ」
名雲ヨシオ「【朝生 あさなま】っていうのは」
名雲ヨシオ「その日に売る事を目的に朝から作り始める菓子の事で」
名雲ヨシオ「餅菓子や団子、葛菓子などを指すッス!」
岩倉ケンジ「なにブツブツ言ってんすか?」
岩倉ゲンタ「ボサッとすんな!」
岩倉キヨミ「さっ、アンタたちも遅れるわよ」
「いってきまーす!」
〇商店街
〇お土産屋
岩倉ゲンタ「昼にするぞ」
〇古いアパートの居間
岩倉ゲンタ「お目覚めか穀潰しめ」
岩倉ショウタ「いい朝だね」
岩倉キヨミ「昼よ」
名雲ヨシオ「また遅くまでゲームっすか?」
岩倉ショウタ「新作が出ましたからね」
名雲ヨシオ「ショウタ君ゲーム上手いんすから」
名雲ヨシオ「プロゲーマー目指したらどうすか?」
岩倉ショウタ「いや~」
岩倉ショウタ「好きな事を仕事にしちゃうと楽しめなくなっちゃうじゃないですか?」
岩倉ショウタ「アレが嫌なんですよね」
岩倉ゲンタ「そういう事は一度でも働いてから言おうな!」
岩倉キヨミ「いーから」
岩倉キヨミ「まとめてご飯食べちゃってちょーだい」
岩倉ゲンタ「働かざる者食うべからず!」
岩倉ショウタ「やだなぁ」
岩倉ショウタ「僕はこう見えてギルドマスターとしてかなりの働きを──」
岩倉キヨミ「また面倒な言い合いになるから黙って食べて!」
〇お土産屋
岩倉ゲンタ「散歩してくる」
岩倉ゲンタ「しばらく任せた」
名雲ヨシオ「うす!」
〇商店街
岩倉ゲンタ「わらび」
わらび「ワンッ」
〇商店街
岩倉ゲンタ「出すのか?」
岩倉ゲンタ「あ!」
岩倉ゲンタ「待て、わらび」
カレーショップ『ナマステ』
岩倉ゲンタ「場所を変えるぞ引っ込めろ!」
〇商店街
???「ゲンさん」
???「わらびちゃんのお散歩?」
岩倉ゲンタ「あぁ」
???「なら、時間がおありね?」
岩倉ゲンタ「いや」
???「いいじゃない」
???「アナタのアレ」
???「また見せて頂戴」
〇占いの館
「お待たせ」
マダム・マキコ「今日もアナタの運命」
マダム・マキコ「見させてもらうわよ」
岩倉ゲンタ(当たった試しないけどな)
岩倉ゲンタ「今日はどんな?」
マダム・マキコ「これよ」
岩倉ゲンタ「じゃ引きまーす」
岩倉ゲンタ「はい、こんなん出ました」
マダム・マキコ「ちょっ」
マダム・マキコ「ノリ軽っ!」
マダム・マキコ「もう少し雰囲気出してよ!」
岩倉ゲンタ「で、どうなんです?」
マダム・マキコ「も~」
マダム・マキコ「これは」
マダム・マキコ「あまり良くないわ」
岩倉ゲンタ「え?」
マダム・マキコ「これは”チェンソーメン”」
マダム・マキコ「大切な人との関係の断絶を暗示するカード」
マダム・マキコ「それに」
マダム・マキコ「何だか不穏な匂いがするの」
岩倉ゲンタ「えっ」
マダム・マキコ「あら、本当に匂うわ」
マダム・マキコ「とにかく気を付けてね」
「何かしら」
「本当に匂う、ってか臭いわね」
〇商店街
岩倉ゲンタ「ふぅ」
岩倉ゲンタ「一息つくか」
〇大衆居酒屋
大将「らっしゃい!」
大将「いつメン来てるよ!」
岩倉ゲンタ「おう」
大将「わらび元気かぁ?」
大将「刺身の余り食うか?」
「ワンッ」
〇大衆居酒屋
本屋「おーい」
岩倉ゲンタ「昼間っから飲みやがって」
酒屋「お互い様よ」
〇大衆居酒屋
本屋「聞いたかい?」
本屋「また肉屋と魚屋のセガレが揉めたって」
酒屋「あそこは小さい時からの仲だから」
酒屋「店も向かい合わせで何かと張り合いたがる」
岩倉ゲンタ「今回の原因は?」
本屋「どっちの店のクリスマスツリーが立派か!」
岩倉ゲンタ「なんだそりゃ」
本屋「でも」
本屋「跡取りがいるだけいいよな」
酒屋「そうさなぁ」
酒屋「その点ゲンちゃんの所は3人もいてイイな」
岩倉ゲンタ「いやいや」
〇パチパチ
不愛想
不器用
不気味
〇大衆居酒屋
岩倉ゲンタ「──の3Bだぞ」
本屋「ケンジ君なんて向いてないかい?」
岩倉ゲンタ「一番職人気質ではあるが」
岩倉ゲンタ(ケンジを跡取りに)
酒屋「それよか問題は」
酒屋「あの大型店舗よ!」
岩倉ゲンタ「それは今に始まった事じゃねぇしなぁ」
本屋「のらりくらりやってこうや」
〇商店街
岩倉ケンジ「ゲッ!」
岩倉ケンジ「鉢合わせする所だったぜ」
〇商店街
〇古いアパートの居間
岩倉ケンジ「ただいま」
岩倉キヨミ「遅かったわね」
岩倉キヨミ「早くしないと無くなるわよ」
岩倉キヨミ「唐揚げ」
岩倉アラレ「あーっ!」
岩倉アラレ「勝手にレモンかけないでよ!」
岩倉ゲンタ「馬鹿!」
岩倉ゲンタ「唐揚げにはレモンって法律で決まってんだよ!」
岩倉アラレ「馬鹿はそっちでしょ!」
名雲ヨシオ「自分はどっちでもいいっすけどね」
岩倉ショウタ「ヨシオさん食べ過ぎ」
岩倉アラレ「そうよ!」
岩倉アラレ「なんで従業員が一番食べてるのよ!」
岩倉ゲンタ「そんな事より親に馬鹿とはなんだ!?」
岩倉キヨミ「アンタたち」
岩倉キヨミ「ご飯は楽しく食べましょう」
岩倉ゲンタ「うん、馬鹿は俺でした、楽しく食べよう、な」
名雲ヨシオ「自分、あとはキャベツの千切りだけでいいっす」
〇商店街
〇商店街
〇商店街
岩倉ケンジ(よし)
岩倉ケンジ(オヤジはいないな)
〇店の入口
〇ケーキ屋
岩倉ケンジ「雰囲気も明るくて最高のバイトだぜ」
岩倉ケンジ(家の奴らにバレないようにしないとな)
岩倉ケンジ(絶対からかわれるし)
岩倉ケンジ(特にオヤジは洋菓子を敵視してるからな)
岩倉ケンジ「俺はココで──」
〇店の入口
〇ケーキ屋
岩倉ケンジ「ちょっと待ったー!」
〇商店街
岩倉ケンジ「ちょ待てよ!」
〇川に架かる橋
岩倉ケンジ「待てったら!」
〇公園の入り口
〇広い公園
岩倉ケンジ「な、何で逃げるんすか?」
名雲ヨシオ「昔ヤンチャしてた時のクセで」
名雲ヨシオ「「待て」って言われるとつい」
〇広い公園
名雲ヨシオ「分かってるっす」
名雲ヨシオ「自分も父親に反発して実家の和菓子屋を飛び出した身っすから」
名雲ヨシオ「見返し方は人それぞれ」
名雲ヨシオ「親と同じ道を辿る必要はないっすよ」
岩倉ケンジ「あのっ──」
名雲ヨシオ「大丈夫っす!」
名雲ヨシオ「自分、黙ってますから!」
岩倉ケンジ「あ、ありがと」
〇公園の入り口
〇商店街
翌日
〇店の入口
〇ケーキ屋
岩倉ケンジ「昨日は焦ったぁ」
岩倉ケンジ「さ、今日も頑張る──」
〇店の入口
〇ケーキ屋
〇店の入口
〇商店街
〇商店街
〇古いアパートの居間
岩倉ケンジ「ただいま」
岩倉アラレ「ギャハハ!」
岩倉アラレ「見て見て」
岩倉アラレ「栗饅頭がケーキ屋さんでバイトしてる」
岩倉ショウタ「ヨシオさんの口の軽さは知ってたろ?」
岩倉ケンジ「あぁ」
岩倉キヨミ「お父さんには内緒にしてるから」
岩倉アラレ「アンタ」
岩倉アラレ「ケーキ屋さんでバイトしてパティシエでも目指してるわけ?」
岩倉ケンジ「う、うるせー!」
岩倉ケンジ「ほっとけよ!」
岩倉ショウタ「あの反応」
岩倉キヨミ「まさか、ね?」
岩倉アラレ「そういえばアイツ最近」
〇商店街
〇古いアパートの居間
岩倉ショウタ「毎朝走り込みを?」
岩倉アラレ「パティシエって」
岩倉アラレ「仕事中は立ちっぱなしだし」
岩倉アラレ「重い食材とか器材を運んだりするから体力勝負だよね?」
岩倉ショウタ「言われてみれば僕も」
〇一階の廊下
〇部屋の扉
〇清潔なトイレ
〇古いアパートの居間
岩倉アラレ「フランス語入門?」
岩倉ショウタ「洋菓子作りの本場といえばフランスだし」
岩倉アラレ「留学を考えてるって事?」
岩倉ショウタ「母さんは何かある?」
岩倉キヨミ「も、もちろん!」
岩倉キヨミ「えーっと」
岩倉キヨミ「ほらあの」
〇古いアパートの居間
〇古いアパートの居間
岩倉アラレ「部屋着の配色がフランスの国旗?」
岩倉ショウタ「それは関係なくない?」
岩倉アラレ「ないなら無理に出さなくていいよ」
岩倉アラレ「とにかく」
岩倉アラレ「お父さんには絶対秘密だね」
岩倉ショウタ「極端に洋菓子をライバル視してるからなぁ」
〇商店街
〇部屋の扉
〇清潔なトイレ
〇古いアパートの居間
〇ケーキ屋
〇店の入口
〇商店街
〇古いアパートの居間
岩倉アラレ「うま!」
岩倉キヨミ「人気店の味ねぇ」
岩倉ケンジ(いつの間に)
岩倉キヨミ「あなた!」
岩倉キヨミ「商店街の寄り合いは!?」
岩倉ゲンタ「肉屋と魚屋のセガレが揉めて」
岩倉ゲンタ「お開きになっちまったよ」
岩倉ゲンタ「それは?」
岩倉アラレ「ケーキだけど?」
岩倉ゲンタ「何でそんなくだらないもんがココに?」
岩倉アラレ「いいじゃない」
岩倉アラレ「和菓子屋がケーキ食べても」
岩倉ゲンタ「なんだと!」
岩倉アラレ「美味しいものは美味しいの!」
岩倉アラレ「いつまでも伝統とか和の心とか」
岩倉アラレ「頭かたいのよ!」
岩倉ゲンタ「お前はそのおかげでここまで大きくなったんだろうが!」
岩倉アラレ「恩着せがまし!」
岩倉ゲンタ「なに~!」
岩倉ケンジ「やめろって!」
岩倉ゲンタ「引っ込んでろ!」
岩倉ケンジ「オヤジ」
岩倉ケンジ「このケーキは浮ついてたりくだらなくなんてないよ」
岩倉ケンジ「オヤジが和菓子を作るのと同じくらい」
岩倉ケンジ「丹精込められてるんだ」
岩倉ゲンタ「何でお前に分かる!?」
岩倉ケンジ「俺」
岩倉ケンジ「このケーキを作った店でバイトしてるんだ」
岩倉ゲンタ「何だと!?」
岩倉ケンジ「隠してて悪かったけど」
岩倉ケンジ「これは譲れない」
岩倉ゲンタ「ケーキ屋でバイト?」
岩倉ゲンタ「よりによって」
岩倉ゲンタ「出てけ!」
岩倉ゲンタ「二度と顔見せるな!」
岩倉ケンジ「分かったよ」
岩倉ケンジ「やっぱ頭のかたいクソオヤジだ!」
岩倉ショウタ「話は聞かせてもらいました」
岩倉ショウタ「呆れたよ父さん」
岩倉ショウタ「この多様性の時代に一つの価値観しか認めないとは」
岩倉ショウタ「色んな生き方があっていい」
岩倉ショウタ「例えば」
岩倉ショウタ「働かないという選択だって尊重されるべきだ!」
岩倉アラレ「子供の夢も応援できないなんて親失格よ!」
岩倉ゲンタ「ゆ、夢?」
岩倉キヨミ「ケンジはパティシエになりたいの!」
岩倉キヨミ「アナタが反対しても無駄」
岩倉キヨミ「あの子の留学資金は長年溜めたヘソクリから出します!」
岩倉ゲンタ「なっ!」
岩倉ゲンタ「何勝手な事をお前ら!」
岩倉アラレ「もういいよ!」
〇公園の入り口
〇広い公園
〇広い公園
岩倉アラレ「ウチの商店街って天の川をイメージしてるんだって」
岩倉アラレ「星のひとつひとつが私たち」
岩倉アラレ「商店街の皆で連なって」
岩倉アラレ「ひとつの家族だって──」
岩倉アラレ「昔お父さんが言ってた」
岩倉アラレ「アンタがどんだけ小さい」
岩倉アラレ「米粒みたいな光の星だとしても」
岩倉アラレ「消えてほしくはないのよ」
岩倉アラレ「夢があるならちゃんと伝えなきゃ」
岩倉ケンジ「あのさっ──」
岩倉アラレ「あっ」
岩倉アラレ「雪!」
〇広い公園
〇商店街
〇古いアパートの居間
岩倉ゲンタ「ケンジ」
岩倉ゲンタ「パティシエになれ」
岩倉ゲンタ「俺も本当は分かってる」
岩倉ゲンタ「アレを作ったヤツが根性入ってるって事くらい」
岩倉ゲンタ「同じ職人だからな」
岩倉ゲンタ「やると決めたら泣き言は無しだ」
岩倉ゲンタ「一人前になるまで帰って来るなよ」
岩倉ケンジ「オヤジ」
岩倉ケンジ「何言ってんだ?」
岩倉ゲンタ「へ?」
岩倉ケンジ「いやだから」
岩倉ケンジ「何?パティシエって」
岩倉ゲンタ「いや、お前の夢」
岩倉ケンジ「何が?」
岩倉ゲンタ「だからパティシエが!」
〇古いアパートの居間
岩倉ケンジ「──何か変だと思ってたんだよなぁ!」
岩倉ケンジ「体作りも」
岩倉ケンジ「フランス語も」
〇ケーキ屋
エマさんのためさ!
〇古いアパートの居間
岩倉ショウタ「え?」
岩倉ショウタ「店の娘さんにお近づきになるためにバイトしてたって事?」
岩倉ケンジ「そっ」
岩倉アラレ「なにそれキモ!」
岩倉ショウタ「腐れ栗饅頭」
岩倉ケンジ「勝手に勘違いしたんだろ!」
岩倉ゲンタ「子供の夢も応援できないなんて親失格だよなぁ」
岩倉アラレ「あ、宿題しなくちゃ!」
岩倉アラレ「忙し忙し!」
岩倉ゲンタ「多様性を認めないなんて呆れるよなぁ」
岩倉ショウタ「そろそろアニメの時間だ」
岩倉ゲンタ「長年溜めこんだヘソクリがあるそうで」
岩倉キヨミ「お通じの予感!」
岩倉キヨミ「失礼~!」
〇商店街
「寝るか」
「う、うん」
〇商店街
〇古いアパートの居間
岩倉ショウタ「アラレのボーイフレンド?」
岩倉キヨミ「しかも」
岩倉ケンジ「あの大型店舗の社長の息子」
神宮寺ナオミチ「商店街って初めて来たっすよ!」
岩倉ゲンタ「そ、そう」
神宮寺ナオミチ「なんか店がバラけてて面倒だなぁって」
神宮寺ナオミチ「あ、でも」
神宮寺ナオミチ「お父さんみたいなお年寄りには運動になってちょうどいいんすかね?」
〇商店街
「出て行けーっ!」
ほのぼのと見れてとても良かったです!
下町の風情ある感じとか、キャラクターも一人一人面白くて
特に特別なことは起こらないけどそれがまた良くって、家族の日常ってこんな感じだな~とホッコリいたしました😌✨
笑いあり感動ありのお話で、とても面白かったです!!✨😊
一人一人のキャラもはっきりしていて、大型商業施設というライバルもハッキリしていて、今後どのように家族で乗り越えていくのか気になりました✨😊
頑固なオヤジさんが改心して息子の背中を押す…完璧な感動の流れがブッ壊されちゃった! お父さんが小さな恨みを覚えているところも面白かったです🤣