un, deux, troisでさようなら(脚本)
〇大樹の下
「──あれ?」
「俺、今まで何してたんだっけ?」
〇黒
〇霧の立ち込める森
〇華やかな裏庭
ミア「・・・はぁ」
ミア「庭で紅茶を飲んでいたら 200年と136日目が終わったわ」
姉様「ミア。 君、まだ生きてる年数を数えてるのかい?」
ミア「だって他にやる事もないんだもの──」
ミア「何の音かしら?」
〇立派な洋館
ミア「姉様、見て! 男の子が倒れているのだわ!」
少年「うぅ・・・ごほごほっ」
姉様「珍しいな、こんな子供が──」
姉様「ま、どうでもいいか。さっさと済ませなよ」
少年「ここ、どこ・・・」
ミア「ここは私の──魔女の館よ」
ミア「この場所へ迷い込んだってことは・・・ 願いがあるのでしょう?」
少年「願い──」
ミア「そう、私はそれを叶えてあげる」
ミア「但し、その代わり──」
ミア「残りの寿命の半分を貰うわ」
少年「ぼく・・・あとどれくらい生きれるの?」
ミア「それは誰にもわからない」
ミア「それでも願いを叶えたい?」
少年「・・・うん」
少年「叶えて。ぼく、の・・・」
ミア「貴方、名前は?」
少年「・・・ルネ」
ミア「ルネ。 この薔薇に手を触れて」
ミア「un, deux, trois──」
ミア「これで契約は結ばれた。 願いが叶った時、貴方の寿命は私に移る」
ミア「さぁ、願いを──」
ミア「って、あら?」
ルネ「・・・」
姉様「気を失ってるみたいだね」
ミア「これじゃあ願いがわからないわ」
ミア「仕方ない、起きるまで家に置いておきましょう」
〇歴史
〇貴族の部屋
???「おはよう、ミア!」
???「俺、今日で18歳になったよ!」
ミア「きゃーー!」
???「痛ぁ!?」
ミア「ちょっと、ルネ!? レディの寝室にいきなり入って来るなんて!」
ルネ「ごめん!早く伝えたくて!」
ルネ「18歳、今日から俺も大人だね!」
ミア「──はぁ」
ミア「208年と136日生きている私にとっては、まだまだ子供よ?」
ルネ「人間の18歳は十分大人だって! これで少しは──」
ミア「それより早く出て行って欲しいのだけれど!」
ミア「起きたばかりで髪はぼさぼさ、お化粧だって──」
ルネ「そんなの全然平気だよ」
ルネ「どんなミアでも綺麗だから」
ミア「!?」
ルネ「痛ぁ!?また!?」
ミア「じょ、冗談言ってないで早く出て行って!」
ルネ「冗談なんかじゃ──」
姉様「そのへんにしといてあげなよ」
姉様「ミアは男に慣れてないんだ」
ミア「姉様!起きていたの?」
姉様「200年以上生きてるっていうのにさ なんと今まで恋の1つも──」
ミア「わーー!」
ルネ「えっ」
ミア「もう、姉様!」
ミア「朝から転移魔法なんて使わせないで欲しいのだわ!」
姉様「あはは〜! それにしても人間の成長は早いねー」
姉様「あれからもう8年か」
ミア「・・・あの子、いつになったら思い出すのかしら」
〇英国風の部屋
ミア「目が覚めたのね」
ミア「貴方、3日も眠っていたのよ」
ミア「早速だけれど、あの時の願いを──」
ルネ「?」
ルネ「それよりここはどこ? お姉さんは?」
〇貴族の部屋
ミア「あれから、全く思い出せないなんて」
ミア「・・・願いがわからなくちゃ、叶えられないのだわ」
姉様「別に問題ないんじゃない、ほら」
ミア「──また、花びらが欠けてる」
姉様「薔薇は望みを可視化したものだろう? 願いが叶い掛けてるんだ」
姉様「君が何もしなくとも そのうち寿命は手に入るさ」
ミア「・・・そうね」
〇屋敷の書斎
ルネ「・・・子供、か──」
ルネ「ごほっ、ごほごほっ」
ルネ「ミア!」
ルネ「さっきは、その──」
ミア「館から出て行きなさい」
ルネ「え?」
ミア「貴方、もう大人なのでしょう?」
ルネ「そんな!」
ルネ「そうだ、まだ願いが──」
ミア「叶い掛けてるのよ、貴方の願い」
ルネ「──本当?」
ミア「私は貴方の願いを知らない」
ミア「でも何故か、今にも薔薇は枯れそうだわ」
ミア「願いが叶った後、貴方が何年 生きられるのかわからないけど」
ミア「残りの人生をこんな館で──」
ルネ「──ミア」
ミア「!?」
ミア「は、離しなさいっ レディに、だ、抱きつくなんて・・・」
ルネ「離さない」
ミア「っ・・・」
ルネ「だって俺の願い、叶い掛けてるんでしょ?」
ミア「そ、それと何の関係が──」
ルネ「ごめん。ずっと嘘ついてた」
ルネ「本当はとっくに思い出してたんだ」
ルネ「俺の願いは──」
〇黒
〇屋敷の書斎
ミア「ルネ!」
姉様「願いが叶ったんだ」
姉様「薔薇が急に枯れたから、何事かと思ったよ」
ミア「嘘、それじゃあ・・・」
ルネ「あはは・・・」
ルネ「まさか自分の寿命が こんなに短かったなんて・・・」
ミア「そんな、そんな! 貴方の願いって──」
ルネ「本気で愛した人に、心から愛されること」
ルネ「それがあの時── 親に捨てられ、孤独だった俺が望んだ願い」
ミア「ルネ・・・」
ルネ「好きだよ、ミア」
ミア「・・・!」
ルネ「好きになるに、決まってる」
ルネ「偶然だとしても、あの日俺を拾ってくれて」
ルネ「本当に・・・救われたんだ」
ミア「ルネ、私──」
ルネ「嬉しいよ」
ルネ「だって願いが叶い掛けてるってことはさ──」
ルネ「・・・」
ミア「ルネ!ルネ!!」
〇黒
ミア「・・・まだ、息がある」
ミア「だったら──」
〇屋敷の書斎
姉様「魔導書なんて持ち出して、まさか──」
ミア「契約を取り消す。 ルネに寿命を返却するわ」
姉様「それは魔女の禁忌の1つだ! わかってるだろう!?」
姉様「そんな事をしたら 魔女じゃいられなくなるぞ!」
姉様「君も目の前で見ていたじゃないか!」
姉様「──僕が、この姿に変わっていくのを」
ミア「姉様・・・」
姉様「猫ならまだマシさ」
姉様「魔女じゃなくなった君が、何になるかはわからない」
ミア「覚悟の上よ」
姉様「ルネだって正気じゃいられないさ! 愛した女性が目の前で──」
ミア「心配ないわ」
ミア「・・・すぐに彼の記憶を消すもの」
ミア「私の事は綺麗さっぱり忘れて 普通の人生を歩むのよ」
姉様「どうしてそこまで・・・」
ミア「理由なんて単純よ」
ミア「私は、私の初恋を叶えたいだけ」
ミア「他には何も、要らないのだわ」
〇黒
ミア「un, deux, trois──」
ミア「契約、消去」
〇屋敷の書斎
姉様「馬鹿だな、君は。本当に・・・」
ミア「ごめんね、姉様」
姉様「ほら、急がないとだろ?」
姉様「おい、ルネ! さっさと起きろ!」
ルネ「うぅ・・・」
ミア「ルネ!」
ルネ「うわっ」
ミア「よかった!よかったわ!」
ルネ「う、嬉しいけど、ミアから抱き付かれるのは!心の準備が!」
ルネ「ていうか俺、死んだはずじゃ──」
ミア「ルネ! 悪いけど、時間がないの!」
ミア「だから1つだけ聞いてちょうだい」
ミア「──ふぅ」
ミア「私、わたし、ね・・・」
ミア「──貴方が好きよ」
〇黒
なるほど、冒頭のシーンは……二人の想いが通じ合ったのは、本当に「刹那」だったのですね😭
よく練られた構成と丁寧な演出で、物語に引き込まれました✨
姉様が猫な理由など、描き切らない余韻も見事でした
208年と136日分の重みが集約された刹那の幸福、美しかったです😌
美しいッスー!
台詞に無駄がなく、スチルはこの上なく美しく……
美しい作品でした。
世界観も、映画のフィルムのようなスチルもピッタリとハマっていますね。
鳥の羽ばたきが印象的で、禁忌を破ったミアが鳥になってしまったのかと思ったのですが、深読みしすぎでしょうか?