キミシニタモウコトナカレ

ツキナミ

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〇シンプルな一人暮らしの部屋
村井和哉「もうやめてくれよ!これ以上僕を追い詰めないでくれ!」
  カズ、一旦落ち着いて話を聞け
村井和哉「うるさぁぁぁい!!」
青山蓮「仕方ない」
青山蓮「大和やれ!」
城戸大和「応!」
村井和哉「いや、ちょっと待・・・」
城戸大和「ふんっ!」
村井和哉「がはっ・・・!」
村井和哉「・・・・・・っ」
城戸大和「・・・・・・ム?」
青山蓮「・・・・・・死んだかな?」
  はぁ・・・
  ことの発端は今からおよそ3時間前、

〇大衆居酒屋
  近所の居酒屋に大学時代からの仲間と飲みに来ていた。
  何やら相談があるとかないとか。
  まぁそれを口実にいつものメンツで集まって騒ごうって感じだ。
  楽しく飲めればと思ったのだけれど・・・。
村井和哉「自殺しようと思うんです」
  ・・・・・・え?
村井和哉「もう死のうと思ってるんです」
  へぇ・・・
  俺ちょっと用事あるんで
青山蓮「帰すか!」
  何だよ、離せよ
青山蓮「ここで俺を一人にすんなよ、人の心が無いのか?」
  家に忘れたから取りに行ってくる
青山蓮「お前の中にちゃんとある。思い出せばいいだけだ」
  はぁ・・・で、カズ。理由くらいは聞かせてくれるんだろうな?
  村井和哉。通称カズ。
  大学の一年後輩。ネガティブが服を着て歩いてるような人間性だったが自殺とか言い出す奴じゃなかった。
村井和哉「・・・・・・」
  無言でケータイの画面を見せてくるカズ。
  そこには・・・
  え?
  『大人気アイドル熱愛発覚!結婚&引退も!?』
  簡潔に言うと、カズの推してるアイドル『倉内フミカ』が商社マンとラブホから出てくるところをパパラッチ。
  当人は交際を認め、結婚も目前という話だ。
  ・・・・・・
  さて
青山蓮「待てよ」
  離せよ、金魚の金八に餌やり忘れたんだよ!
青山蓮「大丈夫だ、金八ならきっと待ってくれる」
  カズもカズだ。アイドルの熱愛くらいで
村井和哉「くらいってなんですか!」
村井和哉「しかも熱愛だけじゃなく引退するかもしれないんですよ?」
村井和哉「フーミンは全オタクを照らしてくれる太陽だった・・・」
村井和哉「でもその太陽はたった一人の方を向いていて、しかも沈むかもしれないなんて・・・」
村井和哉「そんな僕の気持ちが貴方達に分かりますか?」
  分かったよ。お前の気持ちも、お前が気持ち悪いことも分かった
  そういや、大和はまだ来ないのか?
青山蓮「あいつには今しがた、別の指令を与えた」
  指令?
青山蓮「女の傷は女で癒すのが一番。場所を変えるぞ」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
青山蓮「普段の生活に女っ気が無いから、そういう偶像に縋ることになるんだよ」
  一理あるが、セッティングが大和で大丈夫か?筋肉が恋人みたいな男に
青山蓮「確かに頭のスペックはファミコン以下だが、顔は悪くねぇし、やるときゃやる奴だ」
  そりゃ結構。ただ、何で俺の家なんだよ
青山蓮「女性を呼ぶなら一番まともで片付いてる家だからな」
青山蓮「おっ、来たみたいだぞ」

〇玄関内
城戸大和「きたぞー!!」
  声がデカい
城戸大和「修吾、スマン!カズもいるな!?」
村井和哉「ハイ・・・」
城戸大和「カズ!素晴らしいお嬢さん方を連れてきた!二人ともお前に興味津々だそうだ」
村井和哉「え・・・」
城戸大和「さぁ、入ってくれ」
ステキな女性A「こんにちはー」
ステキな女性B「おじゃましまーす♪」
村井和哉「うわぁぁぁぁぁ!」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
  そして冒頭に戻る。
  半狂乱になったカズを、大和が渾身のアックスボンバーで仕留め、女性陣には丁重にお帰りいただいた。
青山蓮「お前な、都内のどこ探したらあんなすげぇのハントしてこれんだよ」
城戸大和「経験値が違うんでね」
青山蓮「流石だな」
  そんなことより、どうすんだよコレ。完全にノビてるぞ
城戸大和「監督からワンプレー目で潰しにいけと、そう言われて仕方なく」
青山蓮「やらなきゃ意味ないよ」
  やってる場合か
青山蓮「仕方ない。カズが目を覚ましたら、全ては摩耗した心が見せた悪夢だったと説明しよう」
  説明つくのか、そんなんで
青山蓮「ウダウダ言い出したら、もう一度お見舞いしてやればいい」
青山蓮「大和、いけるな?」
城戸大和「応!」
  いや、これ以上はカズが耐えられないから
青山蓮「大丈夫だ。生物学的に人間の首は3発までならアックスボンバーに耐えられるって昔聞いた記憶がある」
城戸大和「良かった!」
  良くねーよ、信じるな
青山蓮「とりあえず、今日は解散だな」

〇シンプルな一人暮らしの部屋

〇シンプルな一人暮らしの部屋
  はぁ・・・
  ・・・・・・
  ・・・・・・
青山蓮「やめとけよ」
  ・・・・・・
  いたのかよ
青山蓮「わかるだろ?自分が関わった人間に自殺されると、どれだけ嫌な気持ちになるか」
  ずっと妙な違和感があったが、ようやく合点がいった。
  いつから気づいてた?
青山蓮「この前カズが、飲みもしない睡眠薬を大量に買ってるお前を見つけてな」
  飲むかもしれないだろ
青山蓮「断捨離とか言って部屋のもの大量に捨てたり」
  あー・・・
青山蓮「大和のボディビル大会も来なかったし」
  それは関係ない
青山蓮「・・・」
  どこまで本当だったんだ?
青山蓮「カズの自殺のとこ以外、ほぼノンフィクションだ」
  にしても、アイドルのスキャンダルは無理があるぞ
青山蓮「そのくらいショックを受けてたのは事実だからな。迫真だったろ?」
  まぁな
青山蓮「お前にも事情があるんだろうけどさ、もう一回考えてくれよ」
青山蓮「それまでコレは預かるからな」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
  去年、母親が死んだ。
  母子家庭の一人っ子だった俺は、天涯孤独となったが、気分はむしろスッキリしていた。
  だから余計に考えたのかもしれない。今後の俺に、人生かけて費やす何かがあるのかと。

〇シンプルな一人暮らしの部屋
  考えた末に浮かんだ言葉は「疲れた」だった。
  己の人生に価値を見出せない。
  探す気力もいまだに湧かない。
  ただ・・・
  はぁ・・・どうすっかな
  ちっぽけだが、死ねない理由が出来てしまった。

コメント

  • 人を死にたいと追い込むほどの感情、とてもとても悲しいですよね。自分の本当の気持ちって結局自分しかわからない、、、何だか切ないけど事実ですよね。いい人生がありますように。

  • 読み進めていくにつれて新しい事実が分かり面白かったです。とてもいい友達を持っていて素敵なお話しだなと思いました。楽しい時間ありがとうございました。

  • 本当にいい友達だ!冒頭カズの願いが叶ってしまうのかと警戒しましたがあんな素敵な友達がいればきっとこの先大丈夫と安心しました。

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