告白の練習

鍵谷端哉

読切(脚本)

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〇学校の昇降口
真治「ん?なんだ?・・・ 手紙?」
真治「こ、こ、これは ・・・ 来たー!」
彩羽「うっさい!」
真治「痛いっ!な、何をする!」
彩羽「真治、邪魔。下駄箱の前で何やってんのよ」
真治「それより、聞いてくれ、彩羽!ついに俺に春が来たんだ!」
彩羽「頭の中に?」
真治「違う!本当の意味で、春が来たんだ!」
彩羽「ああ。もう、四月だもんね」
真治「あー、いや、そうでもなくてだな。ついに、俺は告白されたんだ!」
彩羽「・・・ そっか。おめでとう」
真治「なんだ、その可哀そうな人を見る目は!」
真治「ホントなんだって!リアルだよ、リアル!リアルで告白されたの!」
彩羽「ふーん。まあ、あんたがそう言うならそうなんじゃない。あんたの中では」
真治「だから!脳内だけの話じゃないって!今回はマジなの!ほら!これが物的証拠だ!」
彩羽「手紙?」
真治「そうだ。靴の中に入ってた」
彩羽「今どき、手紙って・・・ 。手あかがつきすぎて、逆に新鮮ね」
真治「だろ?」
彩羽「どれどれ・・・」
真治「どうだ?ホントだったろ?」
彩羽「はー。こんなことだろうと思った」
真治「な、なんだよ?」
彩羽「これ、告白じゃなくて、決闘かリンチの呼び出しじゃない」
真治「いやいやいや!それはないって!変な読み違いすんなよ」
彩羽「読み違いも何も、一文しか書いてないじゃない」
真治「明日の17時に屋上に来てください。これって、どう見ても告白だろ」
彩羽「どれだけ、頭ハッピーなのよ。どう見ても、お前鼻につくから、明日、ボコってやるよ、って意味よ」
真治「いやいやいや。どんだけだよ。お前の方が妄想激しいって」
彩羽「あのさぁ」
彩羽「バカでアホで間抜けで、勉強できないあんたを相手にしてくれる女の子なんて、世界で一人くらいしかいないんじゃないの?」
真治「なるほど。お前が俺を頭悪いとしか見てないことは分かった」
彩羽「まあ、せいぜい、土下座の練習でもしておくのね」
真治「練習か・・・ なるほど。一理あるな。彩羽、練習に付き合ってくれ」
彩羽「土下座の練習なんて、一人でできるでしょ」
真治「違う!告白を受ける練習だ!」
彩羽「・・・ ・・・ は?」
真治「ほら、告白された時、頭が真っ白になってしどろもどろになったら、格好悪いだろ」
真治「だから、その練習だ」
彩羽「アホくさー。それこそ、脳内で出来るでしょ」
真治「ダメだ!妄想で特訓すると、状況が進み過ぎて、違う特訓になっちまう!」
彩羽「・・・ どうせ、妄想で終わるんだから、それでいいんじゃない?」
真治「頼む、彩羽!付き合ってくれたら、お前の行きたがっていた駅前の店で、いちごパフェを奢るから!」
彩羽「・・・ 奢るって、その分のお金を払うってこと?」
彩羽「一人で行くとか、恥ずかしいんだけど」
真治「・・・ 面倒くさいやつだな。わかった。じゃあ、俺も一緒に行く。これでいいか?」
彩羽「おっけ。交渉成立。仕方ないから付き合ってあげるわ」
真治「よし、じゃあ、屋上に行くぞ」

〇フェンスに囲われた屋上
真治「よし!さっそく始めるぞ。来い!彩羽!」
彩羽「はあー。はいはい。じゃあ、いくわよ」
真治「ごくり・・・」
彩羽「スキデス。ツキアッテクダサイ」
真治「なんだ!その棒読みは!もっと感情を込めろよ!」
彩羽「ええー。面倒くさいわね」
真治「パフェ分の仕事をしろ!」
彩羽「・・・ 言っておくけど、演技だからね?勘違いしないでよ?」
真治「ん?わかってる。練習だろ?」
彩羽「・・・ すーはー。好きです。私と、付き合ってください」
真治「おお!それそれ!そんな感じ!」
彩羽「・・・ ・・・」
真治「けどよぉ。いきなり、ストレートに来るもんか?もうちょっと、こう、前置きとか言わないか、普通?」
彩羽「あんた、ホントに面倒くさいわね」
真治「本番に近い感じじゃないと練習にならないだろ」
彩羽「はいはい・・・ 。えっと。今日は来てくれて、ありがとうございます」
真治「あ、ああ。用事ってなに?」
彩羽「真治って・・・ 真治くんって、今、付き合ってる人、いますか?」
真治「いや・・・ い、いないよ」
彩羽「それじゃ・・・ 好きな子は?気になってる子とか、います?」
真治「えっと・・・、い、いや。いないよ」
彩羽「それじゃ、その・・・ 私と ・・・ 付き合ってくれませんか?」
真治「ああ・・・ えと、う、うん ・・・ その、わかった」
彩羽「はい、終わり!これで満足?」
真治「あー、すまん。もう一回!今の、ちょっとキョドってカッコ悪かった」
彩羽「ええー・・・」
真治「格好良く言えるようになるまで特訓だ!」
彩羽「・・・ はあ」

〇フェンスに囲われた屋上
真治「ごめん、待たせちゃったかな」
美弥「今日は来てくれて、ありがとうございます」
真治「いや、暇だったし、気にしないでよ。で、用事ってなにかな?」
美弥「真治くんって、今、付き合ってる人、いますか?」
真治「いや。残念ながらいないよ」
美弥「それじゃ・・・ 好きな子は?気になってる子とか、います?」
真治「今はいないかな。恋ってやつに興味はあるけどね」
美弥「それじゃ・・・」
真治「ごくり・・・」
美弥「彩羽ちゃんと付き合ってあげてください!」
真治「ああ。いいよ・・・ って、え?」
美弥「彩羽ちゃん、可愛いですし、ああ見えて、尽くすタイプですし、一途なんです!」
真治「いやいやいや!なんで、彩羽?」
美弥「・・・ はあ。噂通り、鈍感ですね。やっぱり気づいてませんか」
美弥「あんまりグズグズしてたら、他の男子に取られちゃいますよ」
美弥「彩羽ちゃん、男子に人気なんですから」
真治「え?え?え?全然、話が見えないんだけど・・・」
美弥「私が言いたいことはそれだけです。それじゃ、失礼します」
真治「・・・ え?」

〇学校の廊下
彩羽「あはははは。その様子だと、やっぱり告白じゃなかったみたいね!」
真治「ああ。全然違った・・・」
彩羽「うんうん。そうでしょ、そうでしょ。ま、一瞬でもいい夢見られたんだから、良かったじゃない」
真治「・・・ ・・・」
彩羽「な、なによ、人の顔ジッと見て・・・」
真治「確かに、お前、可愛いよな」
彩羽「はあああああ!?急に、なななな何言ってるのよ!」
真治「近くにい過ぎるとわからなくなるもんだな」
彩羽「あんた、熱でもあるんじゃないの?」
真治「なあ、彩羽」
彩羽「なに?」
真治「あー、やっぱ、言えないな」
彩羽「なになに?なんの話?」
真治「なあ、彩羽。また特訓付き合ってくれないか?」
彩羽「なに?また、告白受ける練習?」
真治「いや、今度は告白する練習」
  終わり。

コメント

  • 読みながら最後の方、こちらがにやけてしまうくらい甘酸っぱさが伝わってきました。灯台もと暗しってことですね。気の許せる友人が可愛いって彼はラッキーですね。

  • 最高にニヤニヤしてしまいました笑
    お互い鈍いですねぇ。でもそれがいいのか!
    周りから見てたら早くしろよ!ってなりそうですが!
    青春…いいなぁ(遠い目)

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