まほちゃんのおつかい(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
母「まほちゃん、まほちゃーん!」
まほ「なーに、ママ」
母「ちょっと手伝ってくれる?」
まほ「いいよ! 皿たたきでも、肩洗いでも、 何だって叶えてあげる!」
母「それを言うなら、 皿洗いと肩たたきよね・・・」
まほ「だよねー」
母「あのね、まほちゃん。 お願いがあるんだけど・・・」
まほ「なになに! お願い、聞きたい!」
母「それはね・・・ おつかいに行ってほしいの」
まほ「おつかいに行くの! やったあ! 何を買ったらいい?」
母「大根とねぎとロブスターよ」
まほ「ロスブターって何?」
母「ロブスター。 大きなエビさんよ」
まほ「まほより、でっかい?」
母「そんなエビさんいるわけないでしょ」
まほ「もし、いたら?」
母「買わなきゃいいのよ」
まほ「だよねー」
母「カバンにお財布が入っているから、 お金はそこから払ってね。 できる?」
まほ「できるよ。 まほ、もう5歳だよ」
母「困ったときは、警察に言うのよ」
「分かってる!じゃあ、行ってきます!」
母「大丈夫かしら・・・」
〇空き地
まほ「大根、ねぎ、ロスブター。 大根、ねぎ、ロスブター」
お姉さん「あの、お嬢ちゃん」
まほ「何?」
お姉さん「ちょっと、聞いてもいいかな」
まほ「お姉さん、あやしい人?」
お姉さん「ちがうわよ。 昔、この辺に住んでたの」
まほ「昔? そんなに年寄りに見えないけど」
お姉さん「たった15年前よ。 ちょうど、あなたぐらいの年齢のとき。 家の都合で、遠くに引っ越したの」
お姉さん「今日はこの近くに用があって来たの。 そうしたら、すっかり町の様子が変わってしまってて。 この空き地だけは、昔のままね」
まほ「じゃあ、お帰りなさい、だね」
お姉さん「え? そうね。ただいま・・・」
男性の影「おやおや、こんなところにいましたか」
まほ「え?」
お兄さん「困りますね。 勝手な行動は慎んでいただかないと」
お姉さん「まさか、こんなところにまで」
お兄さん「さあ、帰りましょう」
まほ「いや!!」
お兄さん「あん?」
まほ「まほ、まだ、帰らない!」
お兄さん「別に、てめえのことじゃねえよ。 関係ない子は、あっちへ行った、行った」
お姉さん「そんな言い方・・・」
まほ「いや!!」
お兄さん「何だと?聞き分けの悪いガキだ」
まほ「だって、まほ、 おつかいなんだから!」
「ええっ!!」
お兄さん「今、何て言った?」
まほ「まほ、おつかいなの!」
お兄さん「ほ、本当か? 本当に、おまえ・・・」
お姉さん「魔法使いなの?」
まほ「うん、まほ、おつかいなんだよ」
お兄さん「こんなに、ちっさいのに魔法使いだ?」
まほ「もう5歳だよ。 なんだってできるもん。 お母さんのお願い、いつも叶えてるもん」
お姉さん「予言通りだったわ。 まさか、こんなに早く出会えるなんて」
お兄さん「おい、ガキ。名前は?」
まほ「ガキじゃないよ。 まほだってば」
お兄さん「マホーダ・テバ? テバ族の末裔か」
お姉さん「マホーダ様。 こちらへ!」
まほ「ふぇ?」
お兄さん「ああっ!」
お兄さん「・・・王妃!」
〇華やかな広場
まほ「ここは・・・?」
お姉さん「マホーダ様」
まほ「お姉さん!? その恰好は・・・」
セリーヌ王妃「申し遅れました。 わたくしは、ワンゲラ王国の王妃、 セリーヌと申します」
まほ「だよねー。 王妃っぽいもん。 ってことは、ここが宮殿?」
セリーヌ王妃「私たちは城を持たぬ種族。 エイリアという空間を行き来し、生活をしております」
まほ「エイリア?」
セリーヌ王妃「ここもエイリアの一つですが、 王妃であるわたくしにのみ許された 特別なエイリアです」
まほ「まほ、スーパーに行きたいんだけど」
セリーヌ王妃「マホーダ様。 お忙しいのは、充分、承知しております。 しかし、あなたの力が必要なのです」
まほ「まほの、力が?」
セリーヌ王妃「どうか、わたくしたちのため、 ワンゲラ王国の民を救うために、 お力をお貸し願えませんか」
まほ「まほ、お母さんと約束しちゃったからな。 セリーヌ王妃さん、だっけ。 困ってるの?」
セリーヌ王妃「ええ、とっても」
まほ「困ったときは、警察に言うんだよ」
セリーヌ王妃「警察には話せません。 わたくしたちの存在や王国のことは、 すべて秘密なのですから」
まほ「警察に言えないってこと?」
セリーヌ王妃「はい。 王国は何百年も、エイリアを隠しながら存続してきました。部外者がエイリアを悪用しないようにするためです」
セリーヌ王妃「ですが、近ごろ、王国の民の中に、エイリアを部外者に開放する者が現れました。部外者から、その見返りを得るためにです」
セリーヌ王妃「部外者は、破壊や開発を繰り返し、国民が守ってきたエイリアを壊し始めています。これは、ワンゲラ王国の危機です!」
セリーヌ王妃「どうか、マホーダ様の力で、部外者たちをエイリアから追放し、ワンゲラ王国を元の世界に戻していただけないでしょうか」
まほ「・・・」
まほ「いいよ!」
セリーヌ王妃「ほ、本当ですか?」
まほ「うん。 そのかわり、スーパーで大根買ってきて」
セリーヌ王妃「大根?」
まほ「それから、 ねぎとロスブターも買ってね」
セリーヌ王妃「わ、分かりました。 マホーダ様、よろしくお願いします!」
まほ「まっかせなさーい!」
〇おしゃれなリビングダイニング
まほ「ただいまー!」
母「お帰りなさい! 遅くて心配したわ」
まほ「ごめんごめん。 はい、これ。ご注文の品です」
母「ありがとう・・・」
母「あら? 大根はいいんだけど、 ネギトロ巻、酢豚・・・?」
まほ「うん、それしかなかったみたい」
母「どういうこと?」
まほ「えっと・・・」
まほ「ひ・み・つ!」
〇電脳空間
セリーヌ王妃「時の魔導士。 世話になりました」
時の魔導士「王妃の仰せとあらば喜んで! 今回は早かったようですね」
セリーヌ王妃「この時期はこれで十分。 しかし、肯定的な返事は初めてです。 未来は変わるかもしれません」
時の魔導士「彼女は10年後、ワンゲラ王国にセリーヌ王妃として召される。その覚悟が芽生えたというわけですね」
セリーヌ王妃「そう願います。 少なくとも取り乱して、国民の信用を失墜させなければ・・・」
時の魔導士「ご自分を責めないでください 王妃は自ら時を遡り、ここまでされているのですから」
セリーヌ王妃「二人だけの、秘密ですよ?」
時の魔導士「あ、はい」
セリーヌ王妃「全ては・・・」
〇荒廃した街
「知られざる世界のために!」
名前と言葉で生まれた勘違い…笑ってしまいました!笑
ロブスターをおつかいでお願いする人も初めて見ましたが…。
マホーダ様はこれからもそっちの世界の人たちと通ずることになるのかな?
まほちゃん、かわいいです!色々な発言に払いながら最後まで読ませていただきました。違うバージョンでも読んでみたい気がします。
皿たたきと肩洗いで笑いましたが、こんなにスケールが大きい話とは!
まほちゃんの日常かと思って読んでました。
しかしいい感じに裏切られながら、最後までぐっと読める作品でした。
独特の話の流れが面白かったです!