ユウコの野望(脚本)
〇森の中
勇者ユウコ「ちっがーーーう!!」
賢者エンゼル「ひ、ひぃいいー!!」
勇者ユウコ「何度言ったらわかるの!炎魔法の時はもっと杖を高く上げて!」
勇者ユウコ「客席から炎がよく見えるように!ポーズが命だって言ったでしょ!」
賢者エンゼル「は、はい~~~!!」
勇者ユウコ「ほら!魔法の名前を叫ぶのも忘れないで!」
賢者エンゼル「ふぁ、ふぁいや~ぼ~る・・・」
勇者ユウコ「違う!もっと可愛らしく!」
賢者エンゼル「えぇっと・・・」
勇者ユウコ「ちょっと見てなさい!」
〇ハート
勇者ユウコ「ファ・イ・ヤー・ボール♪」
〇森の中
勇者ユウコ「やってみて!さん!はい!」
〇ハート
賢者エンゼル「ふぁ、ふぁ・い・や~・ぼ~るぅ♪」
〇森の中
僧侶ローズ「・・・」
盗賊ディード「またやってるんですか?」
僧侶ローズ「うん、何時も通り」
盗賊ディード「まったく、良く飽きないですね」
僧侶ローズ「飽きてくれると良いんだけど・・・」
盗賊ディード「飽きないんでしょうね」
僧侶ローズ「だろうな」
勇者ユウコ「ちょっと!そこの二人!」
勇者ユウコ「朝だからってダラダラしないの!どこでファンが見てるかわからないでしょ!」
勇者ユウコ「アイドルとしての自覚を持ちなさい!」
僧侶ローズ「何だよアイドルの自覚って・・・」
盗賊ディード「こんな森の中じゃ誰も見てませんよ」
盗賊ディード「そもそも私達にファンなんているんですか?」
勇者ユウコ「ふふん♪コレを見なさい!」
盗賊ディード「えっと何々・・・」
盗賊ディード「『美少女パーティー、Bランクダンジョンを制覇』」
僧侶ローズ「コレ、私達の事?」
勇者ユウコ「そうよ!たかだかBランクのダンジョンを制覇しただけで記事になったの!」
勇者ユウコ「私達の記事は需要がある!つまりファンがいるって事!」
勇者ユウコ「史上初の美少女アイドル勇者パーティー、UUN(勇者ユウコと仲間達)の爆誕よ!」
僧侶ローズ「色者扱いされてるだけじゃない?」
勇者ユウコ「最初は色者でも何でも目立てば良いの!いずれ皆が私達の虜になるわ!」
盗賊ディード「ファンが居るのは結構な事ですけど・・・」
盗賊ディード「町中で歌ったり踊ったり、防御力無視の奇抜な防具を着させたり」
盗賊ディード「少し露骨過ぎではないですか?」
僧侶ローズ「そうそう、私の衣装なんて完全に戒律違反なんだから」
僧侶ローズ「こんな格好じゃ教会にも帰れやしない」
賢者エンゼル「そうですよ~」
賢者エンゼル「私、有翼人じゃないのに、何で翼をつけなきゃいけないんですか~」
勇者ユウコ「何言ってんの!そのルックスでエンゼルなんて名前なら天使になる以外ないでしょうが!」
賢者エンゼル「どういう理屈なんですか~」
盗賊ディード「それを言ったら、僕なんて美「少女」ですらないんですけどね」
勇者ユウコ「良いのよ!今は男の娘だってアイドルになれるんだから!」
盗賊ディード「そもそもアイドルを目指すつもりが無いんですが・・・」
僧侶ローズ「そうそう、私達の目的は魔王を倒す事だろ」
僧侶ローズ「なんでアイドルなんだよ」
勇者ユウコ「・・・」
勇者ユウコ「仕方ないのよ・・・」
〇謁見の間
勇者ユウコ「5代前の勇者が、世界平和のために血族は多い方が良いなんて言い出して」
勇者ユウコ「産めよ増やせよで、いまや勇者の血族は100人以上・・・」
勇者ユウコ「人混みに石を投げれば勇者に当たる、そんな時代なの」
〇森の中
勇者ユウコ「ただ戦って魔王を倒すだけじゃ歴史に名を刻めないのよ!」
僧侶ローズ「いや、充分だろ」
勇者ユウコ「私は、勇者の中でも更にスペシャルな存在になりたいの!」
賢者エンゼル「だからってアイドルってどうなんですか~」
勇者ユウコ「勇者が強いなんて当たり前の事、それ以外の所でアピールしないと!」
盗賊ディード「何か間違ってる気がしますね」
僧侶ローズ「同感だ」
賢者エンゼル「私もです~」
魔王クイン「我もだな」
勇者ユウコ「お、魔王!よく来たね!」
盗賊ディード「魔王さん、どうしてココに?」
魔王クイン「お前らのリーダーに呼び出されたんじゃ、理由なんぞ知らん」
盗賊ディード「ユウコさんに?」
勇者ユウコ「いや~そろそろ新メンバー加入の時期かなと思って」
魔王クイン「は?」
勇者ユウコ「一度戦った敵が仲間になるって熱いじゃん!」
魔王クイン「・・・まさか、お前らの仲間になれとでも言うつもりか?」
勇者ユウコ「ビンゴ!」
魔王クイン「ふざけるな!我は魔王だぞ!そんな事が出来るか!」
勇者ユウコ「そう言わずにさ、ちょっとだけ、ね?」
勇者ユウコ「時期が来たら脱退して良いから」
魔王クイン「くどい!無理なものは無理じゃ!」
勇者ユウコ「・・・へぇ」
勇者ユウコ「良いのかな~そんな事を言って」
勇者ユウコ「アンタのお城、またメチャクチャにしちゃうよ?」
魔王クイン「う・・・」
勇者ユウコ「一度は見逃してあげた恩、忘れてないよね?」
魔王クイン「うぅ・・・」
僧侶ローズ「質の悪い勇者だな」
盗賊ディード「性格に難があるのに、実力は勇者一族の中でもダントツですからね」
賢者エンゼル「魔王さんよりも悪質です~」
勇者ユウコ「てなわけで決定ね♪」
魔王クイン「し、しかし、宿敵である魔王が居なくなったらお前も困るだろう」
勇者ユウコ「だからさ、アンタの親父さん前魔王だっけ?」
勇者ユウコ「親父さんに現役復帰して貰ってよ」
魔王クイン「はぁ!?」
勇者ユウコ「私達がアンタを倒すんだけど、実は親父さんが裏ボスって設定にするの」
勇者ユウコ「正義に目覚めたアンタが悲しみを背負いながら親父さんと袂を分かつ」
勇者ユウコ「そしてアンタは私と肩を並べて実の父親と戦う」
勇者ユウコ「これって最強のシチュエーションじゃない?」
勇者ユウコ「書籍化決定!映画化決定!間違いなし!」
魔王クイン「・・・お前は鬼か」
勇者ユウコ「さ、そうと決まれば新しいフォーメーションの練習をするよ!」
勇者ユウコ「魔王にはライブ用の振り付けも覚えて貰うからね!」
魔王クイン「ま、まて!まさか我に踊れと言うつもりか!」
勇者ユウコ「当然でしょ、歌って踊って萌えて戦えるのがウチラのコンセプトなんだから」
盗賊ディード「「戦う」が最後に来るってどうなんでしょう?」
僧侶ローズ「今更だろ」
賢者エンゼル「ですね~」
勇者ユウコ「さ、今日も張り切ってレッスンしよー!」
魔王クイン「いやじゃー!そんな姿を部下に見られたら我は死ぬー!」
勇者ユウコ「大丈夫!一度人前で踊れば吹っ切れるから!」
魔王クイン「いーやーじゃー!!」
僧侶ローズ「・・・」
僧侶ローズ「しかし何だかんだ、リーダーのお陰で魔王軍が実質機能停止状態なのは事実なんだよなぁ」
盗賊ディード「棚から牡丹餅とでも言えば良いのでしょうか」
賢者エンゼル「私達にとっては不幸中の幸いですかね~」
僧侶ローズ「・・・」
盗賊ディード「・・・」
賢者エンゼル「・・・」
僧侶ローズ「しゃあない、私達もやるか」
盗賊ディード「ですね」
賢者エンゼル「はぁ~い」
こうして勇者ユウコの活躍により、今日も魔王軍による被害はゼロに終わるのだった
魔王の羞恥心を代償にして
魔王クイン「誰かぁー!助けてくれぇー!!」
戦うことがバカバカしくなるほどのバカバカしいアイドル修行。はっ、もしかしてこれこそ史上最強の戦術なのか。まさに「可愛いは正義」ですね。男子バージョンも見てみたいなあ。
これで世界を平和にするなんてなんて合理的で安全なんでしょう😂👍
これからはこんな世界の救い方もありですね!
ただしょうもないことやってるだけだと思ったら、結果魔王による被害がないとは…素晴らしい勇者。
楽しいしメンバー個性的だし、確かにラノベ化、アニメ化ありの作品ですね。