読切(脚本)
〇開けた交差点
冬麻 奏「好きです!付き合ってください!」
女性「ごめん!私、好きな人がいるの」
〇公園のベンチ
冬麻 奏「好きです!付き合ってください!」
女性「ごめん、無理だわ」
〇一人部屋
冬麻 奏「またフラれた・・・」
恋の死神・アモ「お前も懲りないやつだな」
冬麻 奏「誰のせいだと思ってるんだよ!」
俺は、恋の死神に取り憑かれている。
この死神に取り憑かれたら、恋愛成就することができない。
つまり、フラれ続けるということだ。
冬麻 奏「お前、また俺の恋の炎を消しただろ!」
恋の死神・アモ「炎が消える瞬間は、何度見てもたまんないね」
恋の死神は、右手に恋の炎を持っている。
この炎を消すことで、人間を失恋させるのだ。
冬麻 奏「嬉しそうだな」
恋の死神・アモ「お前が失恋すればするほど、アタシの力は強くなるからな」
冬麻 奏「くそっ!」
恋の死神・アモ「早く魂をよこせ。そうすれば自由に恋愛できるぞ」
冬麻 奏「魂をあげたら、お前に支配されるんだろ」
恋の死神・アモ「それが魂の契約だ」
冬麻 奏「断る!」
恋の死神・アモ「いいのか?アタシが憑いてる限り、お前の恋は叶わない」
恋の死神・アモ「このまま一生、彼女がいない人生を送るつもりか?」
冬麻 奏「それはイヤだー!」
冬麻 奏「俺は彼女とキャッキャうふふしたいんだ!」
恋の死神・アモ「何だそれ」
冬麻 奏「愛だよ、愛!」
冬麻 奏「ま、死神にはわかんねーよな」
恋の死神・アモ「ふん!女と付き合ったことないくせに」
冬麻 奏「お前のせいだろ!」
恋の死神・アモ「アタシが憑く前から彼女いたことないだろ」
冬麻 奏「ぐっ・・・」
恋の死神・アモ「それは単に、お前がモテないからだ」
冬麻 奏「死神が正論を言うなよ」
恋の死神・アモ「安心しろ。アタシがそばにいてやる」
冬麻 奏「それじゃ彼女できないんだよ!」
冬麻 奏「見てろ!俺は愛の力で、必ず彼女を作ってみせる!」
恋の死神・アモ「まあ、せいぜい頑張れ」
〇駅前広場
冬麻 奏「今日は楽しかったな」
久城 恵「うん!私もすごく楽しかった」
久城 恵「あのね・・・」
冬麻 奏「何?」
久城 恵「好きです!付き合ってください!」
冬麻 奏「え!」
冬麻 奏「俺も好きだよ!」
久城 恵「ほんと?嬉しい!」
恋の死神・アモ「・・・」
冬麻 奏(あれ?あいつ、邪魔してこない)
冬麻 奏(ついに俺の愛が勝ったのか!?)
〇遊園地の広場
〇渋谷のスクランブル交差点
〇女の子の一人部屋
〇川沿いの公園
冬麻 奏「今日もデート!幸せだなあ〜!」
恋の死神・アモ「・・・」
冬麻 奏「拗ねてるのか?」
冬麻 奏「死神も、愛には勝てなかったってことだ」
冬麻 奏「ん?何だ」
冬麻 奏「もしもし・・・」
冬麻 奏「え?病院!?」
〇手術室
医者「久城さんは交通事故に遭い、意識不明の重体です」
医者「最善を尽くしますが、今夜が峠です」
〇病院の待合室
冬麻 奏「お前・・・こうなること知ってたんだな」
冬麻 奏「だから邪魔しなかったんだろ?」
恋の死神・アモ「あの女は、あと数時間で死ぬ」
冬麻 奏「なっ・・・!」
恋の死神・アモ「お前があの女と出会った時から、そういう運命だった」
恋の死神・アモ「この数ヶ月、十分楽しんだだろ?」
冬麻 奏「そんな・・・」
冬麻 奏「なあ、頼むよ。助けてやってくれ!」
恋の死神・アモ「諦めろ。遅かれ早かれ、人間はみな死ぬ」
恋の死神・アモ「それに、アタシは死神だぞ?」
恋の死神・アモ「死神は命を奪っても、助けたりはしない」
冬麻 奏「じゃあ・・・」
冬麻 奏「俺の命をやる。だから、代わりに恵を助けてくれ」
恋の死神・アモ「なっ・・・」
恋の死神・アモ「自分が何を言ってるのかわかってるのか?」
冬麻 奏「このままだと、恵は死ぬんだろ?」
恋の死神・アモ「ああ、そうだ」
冬麻 奏「だったら、俺が代わりになる」
恋の死神・アモ「なぜそこまでする?」
冬麻 奏「決まってるだろ?好きだからだよ」
冬麻 奏「好きな人には、生きててほしいんだ」
恋の死神・アモ「自分の命を犠牲にしても、か?」
冬麻 奏「これが正しいかどうかはわかんない」
冬麻 奏「でも、このまま何もしなかったら、きっと一生後悔する」
恋の死神・アモ「くだらん偽善だな」
恋の死神・アモ「お前が死んだ後、あの女は他の男と付き合うかもしれないぞ」
恋の死神・アモ「お前のことなんか忘れてな」
冬麻 奏「それでもいいんだ」
恋の死神・アモ「何!?」
冬麻 奏「恵が生きて幸せなら、それでいい」
冬麻 奏「短い間だったけど、俺はいっぱい幸せもらったからさ」
冬麻 奏「一緒にいられなくても、相手の幸せを願うことが愛だと思うんだ」
恋の死神・アモ「・・・バカだな、お前」
冬麻 奏「そうかもな」
恋の死神・アモ「本当にいいんだな?」
冬麻 奏「ああ。だから、必ず恵を助けてくれよ」
冬麻 奏「あ!これでお前ともお別れか」
恋の死神・アモ「・・・そうだな」
冬麻 奏「せいせいするぜ!でも・・・」
冬麻 奏「今までありがとな」
恋の死神・アモ「っ・・・」
恋の死神・アモ「なぜ礼を言う?」
恋の死神・アモ「アタシはお前の恋を邪魔してたんだぞ」
冬麻 奏「まあ、そうなんだけどさ」
冬麻 奏「お前と一緒にいるのも、それなりに楽しかったからな」
恋の死神・アモ「まったく・・・」
恋の死神・アモ「本当にバカだな」
恋の死神・アモ「でも、お前のそういうところが・・・」
冬麻 奏「え?今なんて・・・」
〇幻想空間
〇川沿いの公園
冬麻 奏「あれ?病院にいたのに・・・」
久城 恵「お待たせ!ごめん、待った?」
冬麻 奏「恵!?どうして・・・!」
久城 恵「え?今日、約束してたでしょ?」
冬麻 奏「だって、交通事故で・・・」
久城 恵「交通事故!?何のこと?」
冬麻は、自分の頬をつねってみた。
冬麻 奏「いてっ!夢じゃ・・・ない」
久城 恵「何やってんの?」
冬麻 奏「よかった・・・!」
久城 恵「ちょっと!どうしたの?」
冬麻 奏「嬉しいんだ、生きててくれて」
久城 恵「何それ。大げさだなあ!」
冬麻 奏(あれ?あいつがいない・・・)
〇魔界
死神「そういえば、あいつどうなった?」
死神「あいつ?」
死神「恋の死神だよ」
死神「人間の男に恋したっていう変なやつ」
〇魔界
恋の死神・アモ「人間と魂の契約をすれば、そいつとずっと一緒にいられるんだよな?」
死神「ああ、そうだ」
恋の死神・アモ「決めた!ちょっと人間界に行ってくる」
死神「何をする気だ?」
恋の死神・アモ「好きな男ができた」
死神「まさか人間か・・・!?」
恋の死神・アモ「うん!だから、これから会いに行く」
恋の死神・アモ「そいつの魂をもらえば、ずっと一緒にいられるもんな」
恋の死神・アモ「じゃあな」
死神「おい!ちょっと待て!」
〇魔界
死神「掟を破って、人間を助けたらしい」
死神「え!?まじかよ!」
死神「それじゃあ、まさか・・・」
死神「わかってるだろ。死神が人間を助けたらどうなるか」
死神「まあ、仕方ない」
死神「人間なんかに恋するから、そういうことになるんだ」
死神「バカなやつ!死神失格だな」
死神「・・・」
死神「どうした?」
死神「アモが最後に言ってたんだ」
死神「なんて?」
死神「一緒にいられなくても、相手の幸せを願うことが愛なんだって」
死神「・・・どういう意味だ?」
死神「わからない」
死神「でも、あいつ笑ってた」
死神「あんな幸せそうな顔、初めて見たよ」
〇川沿いの公園
久城 恵「どうしたの?」
冬麻 奏「何でもないよ」
久城 恵「早くご飯食べに行こ!」
冬麻 奏「そうだな」
冬麻 奏「・・・」
冬麻は、タバコに火をつけた。
冬麻 奏「ありがとな、アモ」
すると、風が吹いて、火がふっと消えた。
冬麻 奏「っ・・・!」
魂を欲する理由が恋をしていたからというのは素敵でした。
自分を犠牲にしてまで相手を想う気持ちは、人間も死神も変わらなかったことで、ラストを一層切ないものにしていました。
こんばんは!
限られた字数制限で大満足の読了感がありました!
死神キャラも立ち絵とマッチしていてまさにヒロインでした!
すごく切なくて素敵なお話でした…!
恋の死神、イメージぴったりですね✨