私を、愛へ、捧げて

春瀬川モモチ

読切(脚本)

私を、愛へ、捧げて

春瀬川モモチ

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〇黒
  削がなきゃ・・・削がなきゃ・・・削がなきゃ・・・
  捧げなきゃ・・・捧げなきゃ・・・捧げなきゃ・・・

〇学校の廊下
生徒A「・・・でね〜 その時・・・」
生徒B「クスクス・・・ あっ!楓ちゃん!」
猫原 楓「イェーイ おはようにゃ〜」
生徒A「楓ちゃ〜ん♡ 今日も猫耳と尻尾がキュート〜♡」
猫原 楓「ちょ、ちょっと! いきなり触るのやめてよ〜」
  私の名前は「猫原 楓(ねこはら かえで)」
  元々白猫だけど、人の姿を借りて学校に通っている。
  はじめは不安だったけど、すぐに打ち解けることができた。人間という生き物は思ったよりもすごく優しい。
「ギャハハハハハ! そんなわけねーだろ!」
猫原 楓「!?」
吉田 幸助「そこまで言うことあるか〜? 大体お前だって・・・」
西村義和「ははは・・・」
生徒A「声でか・・・ 元気だね〜男子は」
猫原 楓「・・・」
猫原 楓(義和くん・・・)
  彼こそ私の想い人「西村 義和(にしむら よしかず)」くん。
  私は猫だというのに、人を好きになってしまったのだ。
猫原 楓(義和くん・・・笑ってる・・・)
生徒B「ね、猫原さん! 足元、足元!」
猫原 楓「え?」
タナベさん「にゃ〜ん」
猫原 楓「わ、タナベさん。 ついてきちゃったんですか」
生徒A「やーんかわいい〜 あ、あっち行っちゃった」
猫原 楓「えっとね、 この猫さんは朝遊んでた私の友達で・・・」
「うぎゃわーーーーー!!」
猫原 楓「!?」
西村義和「ね、猫だあ〜! ち、近寄らないで・・・」
男子生徒「おいおい、猫にそんなビビることねーだろ」
吉田 幸助「もしかしてお前・・・猫苦手?」
西村義和「そうなんだよ〜 子供の頃よく引っ掻かれたのがトラウマで・・・」
西村義和「ちょ・・・こないで・・・」
猫原 楓「・・・」
猫原 楓「ねこ・・・にがて・・・」
生徒A「ど、どうしたの? 猫原ちゃん・・・」
猫原 楓「・・・」
猫原 楓「あっ・・・ な、何でもないよ!」
先生「みんな、おはよう。 号令かけるから席についてください」

〇学校の廊下
吉田 幸助「・・・だから言ってやったんだよ。 お前はマグネタイトか!ってね」
西村義和「あはは! 違いないや!」
猫原 楓「・・・」
猫原 楓「?」
タナベさん「にゃーん」
猫原 楓「タナベさん・・・」
猫原 楓「ごめんね・・・ きっともう、話せなくなっちゃうんだ」
猫原 楓「勝手で・・・ごめんね・・・」
タナベさん「?」

〇黒
  削がなきゃ・・・削がなきゃ・・・削がなきゃ・・・
  捧げなきゃ・・・捧げなきゃ・・・捧げなきゃ・・・

〇学校の廊下
生徒A「・・・でね〜 その時・・・」
生徒B「クスクス・・・ あっ!楓ちゃん!」
篠原 楓「イェーイ おはよう〜」
生徒A「楓ちゃ〜ん♡ 今日も素敵なオーラが出てるね〜♡」
篠原 楓「オーラ? なにそれ〜」
  私の名前は「篠原 楓(しのはら かえで)」
  特に何かあるわけでもない、普通の女子高生。
  それなのに、家族はおろか友達や先生さえも、私から何か特別な雰囲気を感じるという。一体私の何が特別だというのだろう・・・?
「そりゃお前 太ももだろう!」
篠原 楓「!?」
吉田 幸助「ばーか そりゃ好きな女のタイプじゃなくてお前のフェチだろうが」
西村義和「ははは・・・」
生徒A「声でか・・・ 元気だね〜男子は」
篠原 楓「・・・」
篠原 楓(義和くん・・・)
  彼こそ私の想い人「西村 義和(にしむら よしかず)」くん。
  私が自覚できる自分の中の特別なものは、彼に対する思いくらいだ
篠原 楓(義和くん・・・笑ってる・・・)
吉田 幸助「義和はどうだ? なんか好きな女のタイプとかあるのか?」
西村義和「え!・・・ う〜ん・・・」
吉田 幸助「そんな悩むことか〜?」
西村義和「えーと・・・普通の女の人がいいかな」
吉田 幸助「ふつう〜〜? なんだそりゃ」
西村義和「う〜ん、一緒にいて緊張しないというか・・・ とにかく、特別じゃない人がいいな」
吉田 幸助「特別感がない人〜? 無欲だなお前・・・タマついてんのか?」
篠原 楓「・・・特別感がない人・・・」
生徒A「つまらんやつだね〜 ああいうハンガリーさがない人はモテなさそうだなー」
生徒B「まあ、篠原さんとは合わないよな〜 特別感が苦手なんでしょ〜?」
篠原 楓「合わ・・・ない!?」
生徒A「ど、どうしたの? 篠原ちゃん・・・」
篠原 楓「・・・」
篠原 楓「あっ・・・ な、何でもないよ!」
先生「みんな、おはよう。 号令かけるから席についてください」

〇学校の廊下
吉田 幸助「だから言ってやったんだよ! お前はチタンか!ってな!」
西村義和「・・・」
吉田 幸助「・・・? どうした?調子悪い?」
西村義和「え? ・・・ああ、何でもないよ・・・」
吉田 幸助「そうかい」
篠原 楓「・・・」
篠原 楓(私って結局・・・何が特別だったんだろう)
篠原 楓(顔?頭脳?声? ・・・まあ、いいか)
篠原 楓(また・・・捧げればいいから・・・)

〇黒
  削がなきゃ・・・削がなきゃ・・・削がなキゃ・・・
  捧げなきゃ・・・捧げナきゃ・・・捧げなきゃ・・・

〇学校の廊下
西村義和「・・・」
西村義和(昨日はびっくりしたな・・・ 好きな女のタイプって・・・ おかげでちょっと意識しちゃった・・・)
西村義和(これから会うの気まずいな〜 ──いかんいかん。平常心・・・)
吉田 幸助「よっす!」
西村義和「うおっ!」
吉田 幸助「へへへ そんなに驚くことねーだろ」
西村義和「はは・・・ おはよう 幸助」
西村義和(ああ・・・ちょっと辛いな・・・)
西村義和(きのう・・・ 好きな人は幸助なんだって、言えたらな)
生徒A「・・・でね〜 その時・・・」
生徒B「クスクス・・・ あっ!おはよう!」
生徒K「イェーイ おはよう〜」

コメント

  • 猫原→篠原→K…。自分らしさを削ぎ落として愛へ捧げて自分自身がなくなってしまうという究極の自滅型恋愛に震撼!幸助のマグネタイトとチタンも何へのツッコミなのか気になりました。

  • こんばんは!
    とても面白くて最後の1tapの破壊力には鳥肌立ちました!元気そうな性格の「イエーイ!」という言葉もキャラがシルエットだけだとこんなにもスッと読み飛ばしてしまうものなんだなとも思いました😖実は友達のことが好きだったというのも驚きでした!ひたむきに想い人の好みになろうとする可愛い一面のはずが、見事に削がれていきました😖🙌👍

  • うおお……上手く言い表せませんが、最高です……。構成とか、演出とか、あえて脇役にシルエットを選んだ意味とか……。ずっと心地の良い不穏さを感じながら、最後の1tapで鳥肌立ちました。

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