ある女性の決断とは

希与実

読切(脚本)

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〇ラブホテルの部屋
陽花里(ヒカリ)「ルームサービスです。お食事をお持ちいたしました」
  ガチャ!
  --(ドアの施錠が解除される音)--
陽花里(ヒカリ)「失礼します」
  陽花里は料理が乗ったサービスワゴンを押して客室の中に姿を消した。それから暫く、その客室から陽花里は出てこなかった

〇広い厨房
杏奈(アンナ)「ねえねえ恵茉。陽花里遅くない?かれこれ小一時間だよ」
恵茉(エマ)「んん。陽花里最近あの部屋に行くと遅いんだよね」
杏奈(アンナ)「それってもしかして?」
恵茉(エマ)「え~?もしかして?」
  呼び鈴が鳴るとデシャップに急ぐ杏奈と恵茉
  サービスワゴンに料理を移す杏奈と恵茉のところへ陽花里が帰ってくる
杏奈(アンナ)「ちょっと陽花里。大丈夫?」
陽花里(ヒカリ)「・・・・」
恵茉(エマ)「陽花里、もしかして・・」
陽花里(ヒカリ)「・・・・」
  おい!早くしないと料理が冷めるぞ!
杏奈(アンナ)「はい、すいません。あとよろしく恵茉」
恵茉(エマ)「おう、了解!」
  杏奈はサービスワゴンを押してその場を後にした

〇事務所
  事務所の中に入る恵茉と陽花里。中には二人以外誰もいない。二人は向かい合うように椅子に着く
恵茉(エマ)「最近どうした?あそこに行くと小一時間も帰ってこないし」
陽花里(ヒカリ)「・・・・」
恵茉(エマ)「もしそうだとしたら、その先の意味、わかってるよね」
陽花里(ヒカリ)「・・・・」
恵茉(エマ)「ったく」
陽花里(ヒカリ)「・・・あのね。私決めたの」
恵茉(エマ)「えっ?何を」
陽花里(ヒカリ)「B4DOに参加する。あの人と」
恵茉(エマ)「え~!?何云ってんの陽花里。それって?ああ~もうそれってなんだよ!」
「そう、やっぱりね」
陽花里(ヒカリ)「・・杏奈」
  杏奈は恵茉と陽花里の傍に着席する
杏奈(アンナ)「陽花里。あなたがそう決めるなら私たちは何も云わない。でもよく考えたの?」
  陽花里は頷いた
恵茉(エマ)「陽花里・・」
杏奈(アンナ)「私たち孤児はココに来て生きる意味を見つけた。誰も傍にいなかった自分にこうして信頼できる仲間ができた」
杏奈(アンナ)「他の皆もそう思ってると思う。でもこれからどうして行くかは自分次第」
杏奈(アンナ)「仲間と生きていくか、それとも他の道を見つけるか」
恵茉(エマ)「でもさ、その人酷くない?陽花里を無理に誘ったんじゃないの?」
陽花里(ヒカリ)「私からお願いした」
  杏奈と恵茉は驚いた表情を見せる
陽花里(ヒカリ)「私は良い機会をもらったって今思う。あの人と出会ってまだ数日だけど、その時間なんて関係ない」
陽花里(ヒカリ)「あの人と会っていると会話じゃなくて通じ合える気がした。あの人がどんな人生を歩んだかなんて、そんなのは関係なくて」
陽花里(ヒカリ)「その先へ一緒に行きたいって思ったの。今までよくよく考えたって良い結果なんてなかったから」
陽花里(ヒカリ)「よくよく考えたせいで失った事が多かったから。だから・・」
  陽花里の目から涙がこぼれる
杏奈(アンナ)「わかった、わかった。わかったから」
  恵茉がハンカチを陽花里に渡す
恵茉(エマ)「でも支配人が許すかな」
杏奈(アンナ)「そう、複雑だなこの状況は」
陽花里(ヒカリ)「これから話に行こうと思う。でも支配人ならきっと分かってくれると思うんだよね」
  杏奈と恵茉は大きく頷く
杏奈(アンナ)「せっかく仲間になれたのに別れるのは寂しいけど」
恵茉(エマ)「そうだね。でも陽花里がそう決めたなら」
陽花里(ヒカリ)「大丈夫でしょ?知ってたから二人の事」
  杏奈と恵茉は驚いた表情で顔を見合わせる
陽花里(ヒカリ)「家族の形なんて決められた枠なんてないでしょ。分かり合える、信じ合える人同士が家族になるのが一番」
陽花里(ヒカリ)「それにその思う気持ちが人をつくるから」
杏奈(アンナ)「そうだね」
恵茉(エマ)「陽花里はいつからそんな大人だったっけ」
  杏奈と恵茉は笑顔で頷いた
陽花里(ヒカリ)「だからお願い。一緒に歩いてほしい。ヴァージンロード」

〇校長室
柿崎朱里(カキザキ・シュリ)「えっ?許したのですか?どうして」
森谷和樹(モリヤ・カズキ)「彼女の意思を尊重したまでです。それにその先へ行く為には選ばれた方しか行けません」
森谷和樹(モリヤ・カズキ)「一緒になる彼には申し訳ありませんが、もしその時に行けなければ彼女はまだその時ではないと云うことになります」
森谷和樹(モリヤ・カズキ)「そうなればまたココで働いていただきますよ」
柿崎朱里(カキザキ・シュリ)「お試しになると。初めてのケースを」
森谷和樹(モリヤ・カズキ)「結果的にはそうなるでしょうか。一緒に見守っていただけますか?」

〇教会の控室
杏奈(アンナ)「キレイ」
恵茉(エマ)「そうね。それしか言葉が出ない」
  杏奈と恵茉の目の前に見事な白いドレスを身にまとった陽花里の姿があった。その表情は何の不安もない、晴れやかな笑顔である
陽花里(ヒカリ)ドレス姿「杏奈、恵茉。二人に出会わなかったらとっくにダメになっていた。それに本当に楽しかった」
杏奈(アンナ)「何云ってんだよ。別れるのが辛くなるだろ」
恵茉(エマ)「そうだよ。なんだよ今さら」
陽花里(ヒカリ)ドレス姿「だから、二人は幸せにね。邪魔な私は消えるから」
杏奈(アンナ)「生、云ってんじゃねえ」
  三人は声を出して笑った
陽花里(ヒカリ)ドレス姿「杏奈、恵茉」
恵茉(エマ)「えっ?いつも杏奈の次?」
陽花里(ヒカリ)ドレス姿「ああ、じゃ恵茉、杏奈」
杏奈(アンナ)「じゃ、ってなんだよ」
陽花里(ヒカリ)ドレス姿「もう、聞け!」
  杏奈と恵茉は背を伸ばし、身を正して陽花里を見た
陽花里(ヒカリ)ドレス姿「二人には感謝しきれないほど感謝してる。今まで本当にありがとう。最後にこれだけは云いたかった」
  陽花里は涙を堪えながら二人に感謝を伝える。恵茉と杏奈は涙を流しながら小さく何度か頷いた
  恵茉は近くの小さなテーブルに置いてある小さなティアラを手にする
恵茉(エマ)「陽花里」
  陽花里は膝をたたんで頭を下にする。
  恵茉は杏奈と二人でティアラを陽花里の頭に
杏奈(アンナ)「キレイ」
恵茉(エマ)「そうね。それしか言葉が出ない」
  デジャブ?
陽花里(ヒカリ)ドレス姿「さあ、その先へ」
  杏奈と恵茉は陽花里の白いドレスの長い裾を持つと、三人は澄み切った晴れ晴れしい笑顔と共にその場を後にした
  B4DO。BEYOND

コメント

  • B4DO=Beyondなんですね。なるほど。「デジャブ?」ということは過去にも同じことがあって記憶がリセットされているということか。アンナとエマがカップルということは恋愛感情も有する存在なんですね。元のストーリーを読んでいないのですが、実験対象である彼女たちが何者なのか興味深いです。

  • どんな時も別れって辛いですよね。
    華やかなお別れだったとしても、今まで一緒だった人と別れるって中々踏ん切り切ってお別れって難しいと自分は思います!

  • ひと昔前の日本で芸者がパトロンに水揚げしてもらうというイメージが重なりました。彼女の場合は自らの決断で、とても強く冷静な印象で、なにかきっと上手くいくよっと言ってあげたくなりました。

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