オチは?(脚本)
〇研究機関の会議室
ここは、とある会議室。
少女たちが人知れず、夜な夜な集まり、この物語を名作とするための会議を・・・
紅「あのね。正直なところ、ナレーションなんて入れている暇ないの」
え・・・
いやいや、だって舞台説明とか人物紹介とか・・・
紅「黙りなさい。我々に与えられたのは、たった2000字しかないのよ?」
紅「タップノベルなら、ここが会議室っぽい場所なのは一目瞭然だし、すでに登場人物の名前も出てる」
紅「さて、ナレーションなんて必要かしら?」
・・・・・・・・・
紅「よろしい」
紅「さあ、すでに100文字ほど無駄に消費してしまったわけだけれど、」
紅「この作品を、ここからどうにか名作に持っていく方法は、ないかしら?」
緑「はいはいはいっ!」
紅「元気なのはいいけれど、返事は一回で結構です」
紅「なぜなら文字数の制限は、たった2000字なのだから」
緑「あんな?今回は、応募された立ち絵があるわけやんか?」
緑「その使っていい立ち絵全員に、一言ずつしゃべらせるって、どう?」
黄「み、緑さん。それは誰でも、い、一度は考えるやつで・・・」
紅「はあ・・・」
紅「ため息を吐くことさえ、文字数を消費するっていうのに・・・」
緑「えー、なんでえ?どうしてアカンの?」
紅「あのねえ・・・」
紅「今回、使用していい人物の立ち絵は、350人分あるのよ?」
緑「ええやんか。ごちゃっとしてて」
緑「アレやん。なんか、マーベルのアベンジャーズみたいやん」
紅「緑?あなたが、算数が苦手だってことは理解しました」
紅「でも一度だけ、2000÷350をしてみて?」
紅「スマホを使ってもいいから」
緑「ひどいなっ!割り算くらいできるわっ!」
紅「して、みてちょうだい?」
緑「あー・・・」
緑「スマホの電卓、使うてええ?」
紅「2000文字っ」
緑「こわ・・・」
紅「いいから早く計算しなさいな」
緑「はいはい」
紅「返事は一回っ!」
緑「は、はい。えーっと、5.7いちよ・・・」
紅「お黙りなさい。いま。すぐに!」
紅「小数点第二位以下は、どう考えてもいらないでしょう?」
緑「紅が計算せえって言うたんちゃうの・・・?」
緑「ちょっと割り切れへん数字だっただけやん・・・」
紅「・・・・・・」
紅「逆に聞きましょう」
紅「アイアンマンが、たった5文字6文字で、一体なにを伝えられるというの?」
紅「「アイアムアイアンマン」って、自己紹介すらできないじゃない」
緑「あ、ウチはベネディクト・カンバーバッヂが好き~」
紅「緑っ!ミドリ、みどりぃ!」
紅「あなたは、どうしてそうやって、文字数を無駄に使うの!?」
紅「なんで一番長い名前の俳優を、ここでチョイスできるの!?」
紅「この時点ですでに、1000文字は消費してしまっているのよ?」
紅「もう物語は佳境と言っても過言ではないっていうのにっ!」
緑「えー?ロバート・ダウニー・ジュニアも、じゅーぶん長いと思うんやけど?」
紅「もう、黙りなさいっ」
緑「ヒステリーばばあ」
紅「・・・殺すっ」
緑「やってみろや!」
黄「ま、ま、待って下さいっ」
黄「け、ケンカはダメ、です」
紅「・・・・・・」
紅「そうね。なんたって文字数はあと1000文字もないのだから」
紅「じゃあコウ。この絶望的な状況下で、なにか良い案はある?」
黄「わ、我々の、せ、設定を発表するというのは、どうでしょうか?」
緑「あ、じゃあウチ、宇宙人がいい!」
紅「そうね。宇宙人も関西人も似たようなものですものね」
緑「ああん?近畿地方を敵に回したいんか?」
紅「ああ、怖い。琵琶湖の水を止められて、ぶぶづけを食べさせられそう」
緑「なんやと、この・・・」
黄「ち、違います。我々の人物設定を、ここで発表するんです」
紅「・・・・・・」
紅「コウ。こんな勢いで始まったような私たちの物語に、詳しい設定があると思う?」
紅「2000文字しかない物語のために、詳細なキャラクター設定が付けられてるって、ホントに思ってるの?」
黄「し、資料が手元にあります。た、ためしに、読んでみますね?」
緑「え、なにそれ?ウチも気になるー」
紅「じゃあ、コウ。読んでみて?」
黄「は、はい」
黄「紅。くれない、と読む。年齢は17歳。高飛車」
黄「感情的になりやすく、ヒステリック気味。制限文字数に対して神経質とも思える執着を見せる。・・・以上です」
紅「・・・・・・・・・・」
緑「泣いてもうてるやん・・・」
黄「緑。みどり、と読む。年齢は17歳。関西人。元気印。・・・以上です」
緑「みじかっ!」
黄「黄。こう、と読む。年齢は17歳。おっとりとしているが、博学」
黄「異世界クルア大陸一の魔法使い。ルナ族。こちらの世界では童顔。中学生と間違われたり、お嬢ちゃん、と呼ばれたりする」
黄「ルナ族は神の眷属『天使』とも言われ、普段は隠しているが、純白の翼を持ち、長命で、魔力が多種族よりも桁違いに高い」
黄「中でも彼女は時空間を操ることに特化し、過去視の左手、未来視の右手を持つ」
黄「万物操作の右目。絶対従属の左目を始めとする魔眼を駆使する姿は、クルア大陸では畏怖と尊敬の対しょ・・・」
紅「ちょ、ちょっと待って!」
黄「なんですか?まだ四分の一くらいですよ?」
緑「べ、別の世界の人やん。ていうか、ヒトちゃうやんか。厨二病っぽいし」
黄「そうです」
黄「私も、この盛り盛りの設定を、あと100文字では生かせないことが、残念でなりません」
紅「あとひゃく・・・、み、緑!どうしましょう!?」
緑「そ、そんなんウチに聞かれても・・・」
黄「良い方法があります」
緑「な、なんやコウ!?」
紅「あ、あなた。なんでも良いから、最高のオチを・・・」
黄「爆発オチです」
「え・・・・・・」
なんだかんだ三人の役割分担が完璧でしたね。読ませていただく方は気楽ですが、作者さんは日々文字数と闘っているのだと痛感しました。何か制約がある方が燃えるようなM気質の人にTapNovelは向いているかもしれませんね。
文字数制限は中々難しい壁ですよね。
やり取りもとても面白かったですし、こんなこと話しててどんどん文字数減ってるぞ?!ってこっちが焦りました笑
全員に一言ずつ……まさに私も考えましたですっ(。ノω\。)