「世界を救って」と異世界転移させられそうになるのを断固拒否した俺

東龍ほフク

妖精→羽虫(脚本)

「世界を救って」と異世界転移させられそうになるのを断固拒否した俺

東龍ほフク

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〇本棚のある部屋
連行者・レンコ「──オ前っ! ツベコベ言わズ こっちノ世界に来イっ!」
連行者・レンコ「ソンデ、私の世界救エッっ!!」
皆尾 守「てめぇ!いい加減にしろ! もし、俺をこのまま異世界とやらに ムリヤリ転送しやがったら・・」
「お前らの仲間、全員 天ぷらにして食ってやる!!」

〇教室
堂三手 茂々武(モモ)「・・」
堂三手 茂々武(モモ)「お前さぁ、まだ渋ってるの?」
堂三手 茂々武(モモ)「レンちゃん可哀想だろ? 異世界召喚されてやれよ」
皆尾 守「断る」
「何で赤の他人の俺が知らない世界に行って 危険な魔物を成敗せなあかんのだ」
堂三手 茂々武(モモ)「薄情〜」
堂三手 茂々武(モモ)「レンちゃん、やっぱさぁ! 俺が君の世界を救ってやるよ!」
堂三手 茂々武(モモ)「コイツと違って俺の方が異世界召喚系に 寛容だし詳しいから、話早いぜ?」
連行者・レンコ「私もモモ様の方を連れて 行きたいけどぉ・・」
連行者・レンコ「ウチの予言神が指定したのは こっちのヤル気ない奴だもん・・」
連行者・レンコ「『皆尾 守がこの世界を”救済”に  導くでしょう』」
連行者・レンコ「・・って」
皆尾 守「モモは様々な異世界召喚・転生モノの書物を 嗜んでいるから、ヤル気のない俺より 絶対役に立つぞ?」
皆尾 守「俺はヤル気もないし特技もない、 顔がちょいとイイくらいの凡人だ」
堂三手 茂々武(モモ)「道でチワワ見て、恐れおののいて チビるくらい情けないよな!」
皆尾 守「自慢じゃないが、今はそれが自慢だ」
連行者・レンコ「うっさいなぁ! 予言神が「お前」つってんだよ! 行けばなんとかなるってば!」
クラスメイト「皆、おはよ〜」
クラスメイト「レンちゃんもおはよ〜」
連行者・レンコ「おはよ〜」
  羽虫はクラスの人にも周知されている。
  俺はモモ以外からも「異世界行ってやれよ」
  「救ってやれよ」とせっつかれて
  いじられている。

〇教室の教壇
クラスメイト「窓からデカいハチ入ってきたぁ!!」
堂三手 茂々武(モモ)「おぉ・・レンコちゃん 危ないから、あっち行ってなよ」
連行者・レンコ「いや!モモ様と・・ 一応コイツに何かあったら困るからっ!」
連行者・レンコ「わしゃ、戦うぞぃっ!」
連行者・レンコ「勝ったぞーー!!」
  羽虫はクラスの皆から拍手喝采、
  ありがとうの嵐をくらった。
堂三手 茂々武(モモ)「いやぁ、あんな小さいのにスゲェなぁ レンコちゃん」
皆尾 守「・・・」

〇学校の廊下
連行者・レンコ「チクショオ! 私の世界に来て魔物倒せよぉ!」
皆尾 守「嫌だ」
連行者・レンコ「お礼もたんまりするよぉおお!」
皆尾 守「それが金銀財宝だろうと 何だろうと別にいらねぇ」
連行者・レンコ「なんという無欲な若人よ・・ 情も欲もない、枯れておるぞ・・・」
皆尾 守「・・お前、ずいぶん 日本語が達者になったよな」
連行者・レンコ「は? ここの言語知らないと不便じゃん だから、勉強したんだよぅ」
皆尾 守「・・・」
堂三手 茂々武(モモ)「偉いねぇ〜 日本語覚えちゃったんだぁ」
堂三手 茂々武(モモ)「レンちゃんのヤル気を見習えよ、守」
皆尾 守「・・なぁ、羽虫。お前さぁ・・・」
  開いた窓から飛んできた野球ボールが
  俺に当たりそうになったが、
  羽虫が体を張って守ってくれた。
連行者・レンコ「・・いったぁ〜い!」
連行者・レンコ「大丈夫?勇者様?!」
堂三手 茂々武(モモ)「いやいや、レンちゃんこそ大丈夫?」
皆尾 守「俺はボールくらい当たったって 別に構わなかったっつーのに・・」
皆尾 守「体の大きさを考えろよ、体の大きさを」
連行者・レンコ「気が付いたら 体が動いてたんだよっ!」
皆尾 守「・・・」
皆尾 守「・・なぁ、羽虫 マジでお前・・・」
  ──と、チャイムが鳴ったので
  俺達は教室に戻った。
  俺はまた羽虫への
  モヤモヤを伝えそこねた。

〇住宅街
連行者・レンコ「・・お願いぃ〜 ウチの世界に来てヨォオ〜」
皆尾 守「あのさぁ、お前・・」
連行者・レンコ「・・」
連行者・レンコ「・・勇者様、次の曲がり角に 犬を連れた人間がいるよ」
皆尾 守「── !!」
皆尾 守「・・ ・・・・」
皆尾 守「お前、どうして曲がり角の先の事が・・?」
連行者・レンコ「足音と匂い、感じなぁい?」
連行者・レンコ「チビるくらい犬嫌いなんしょ? 別の道から帰ろ?」
連行者・レンコ「ほら。あそこの細道を通れば ちょっと遠回りになるけど 犬をかわして行けるぅ」
  羽虫が指さした先には、ここに10数年
  住んでいる俺が知らない横道があった。
皆尾 守「・・俺よりここらの道に詳しいの何で?」
連行者・レンコ「はぁ? 初めて来る土地の地形なんざ、覚えて 当たり前田のクラッカーじゃん」
皆尾 守「この横道が『実はお前んとこの 異世界に通じる道』という騙しとか?」
連行者・レンコ「──そんな卑怯するかっ!」
連行者・レンコ「なんだよっ! 「犬見たらチビる」っつーから親切で 言ってやって・・」
皆尾 守「わぁかった! ありがとうよ!感謝感謝!」
  感謝しつつ、俺はずっと心の中にあった
  モヤモヤが爆発寸前だった。
  横道を歩いていると、後方から
  犬の鳴き声が聞こえた。

〇空き地
連行者・レンコ「私のおかげでチビらずに済んだねぇえ」
皆尾 守「──・・」
皆尾 守「お前が『勇者』やれよ!」
連行者・レンコ「何?急にどした??」
皆尾 守「自分ほどの大きさのハチに 立ち向かっていく勇気!」
皆尾 守「知らない土地の言語を覚える好奇心!」
皆尾 守「瞬間的に身を呈して俺をボールから かばった瞬発力と自己犠牲!」
皆尾 守「察知力!土地勘!」
皆尾 守「お前のスペックは高い!」
連行者・レンコ「お、おぅ ありがとうよ・・ 褒めても何も出ないよォ?」
皆尾 守「事実を述べたまでだ」
皆尾 守「そもそも、何でお前が連行者として こっちの世界に来たんだ?」
連行者・レンコ「「誰が勇者連れてくる?」の会議で 誰も手ぇ挙げなかったから だから「私が行くヨー」って」
皆尾 守「実行力!」
皆尾 守「誰もやりたがらない事を率先して やれる奴は勇者だ・・」
皆尾 守「今まで誰もお前を褒めなかったのか?」
皆尾 守「・・俺は「お前が世界を救うんだろが」と 気付かせる為のギミックだったのでは?」
皆尾 守「ちょっくら、お前が魔物倒しに行ってみろよ」
連行者・レンコ「・・・」
連行者・レンコ「・・正直」
連行者・レンコ「他者に頼るのは私も不本意だった」
連行者・レンコ「ダセェ」
「・・・・・」

〇空
  あの後、羽虫は秒で自分の世界に帰った。

〇空

〇空

〇空
  半年ほど経ってから、
  羽虫から手紙が届いた。
  ちょりっす 元気?
  こっちはねぇ・・・

コメント

  • 「あたり前田のクラッカー」って、昭和のギャグまでマスターしているレンコちゃん。手紙という古風な伝達手段を使うレンコちゃん。一体何歳なんだろうか。ラストのスチルでは作者さんの才能が爆発していて唸りました!

  • 素直に重し悪露かったです。

  • お前が救うのが…😂これは意外な結末!最後のボロボロなのに笑顔のレンが凄くいいですね。

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