Happy Halloween

市丸あや

Happy Halloween(脚本)

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市丸あや

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〇街中の道路
棗藤次「あー・・・ 今思い出してもムカムカする!! あンの被告人覚えとけよ!! 次は絶対落としたる!!!」
  ・・・夕暮れ時の京の町。
  一癖二癖ある被告人と一戦交えたせいか、藤次(とうじ)はイライラした形相で、帰宅への道を歩く。
  奇しくも今日はハロウィン。
  街中を仮装した人々が楽しそうに闊歩しているのが余計に彼のイライラに火を注ぐ。
棗藤次「なんやねん! 仮装パーティちゃうねんぞハロウィンは!! ケルト人の神聖な儀式で・・・」
  そんなことをブツブツと宣いながら、藤次は長屋街の奥から3番目の我が家に着く。

〇広い玄関(絵画無し)
棗藤次「とにかく、こーゆー日はさっさと風呂に入って寝るに限るな。 絢音、帰ったでー!!」
「はーい!」
  奥から聞こえてきた愛しい妻の声に、ささくれていた心が僅かに癒されて、張り詰めていたものがとけていく。
  が、
棗藤次「あ、ああ絢音?!!」
棗絢音「お帰りなさい! 藤次さん❤︎」
棗藤次「お、おまっ、なんやその格好!!」
棗絢音「ディスカウントショップで見つけたの! 安かったから買っちゃった!! どう?似合う?」
  そう言って得意げにポーズを取る絢音だが、藤次は直ぐ様、着ていた上着を彼女に着せる。
棗藤次「何が似合うかや! そんなミニ丈の服・・・ まさか思うが、そんな格好で表出てへんよな?」
棗絢音「近所のスーパーにお買い物行ったわよ? ハロウィンじゃない。 みんな可愛いって言ってくれたわよ?」
  ニコニコと笑う絢音だが、藤次の心中は穏やかではなかった。
  こんな可愛い姿、本当なら独り占めしたかった。
  しかし、夫の心妻知らず。彼女はこの姿で街中に出たと言うではないか。
  まさかと思うがとヒヤヒヤしながら、藤次は絢音に問う。

〇広い玄関(絵画無し)
棗藤次「な、なあ・・・まさか思うが、し、写真とか、撮られてへんよ・・・な?」
  その問いに、絢音は頬をわずかに染めて答える。
棗絢音「何人かにお願いされたけど、断っちゃった。 恥ずかしいじゃない?」
棗藤次「ほ、ほうか・・・」
  胸を撫で下ろす藤次。
  この姿を記憶のみならず、記録までしてる輩がいたら、今すぐそいつの家に押しかけ全て抹消してやる衝動は、とりあえず抑えられた

〇広い玄関(絵画無し)
棗絢音「と言うわけで、トリックオアトリートーー!! お菓子をくれなきゃイタズラするぞーー!!」
棗藤次「お、お菓子?!! き、今日はどっこも寄らんかったから・・・」
  そうして、絢音に被せていた上着やポケットを漁ったが、お菓子どころか飴の一つもない。
棗藤次「す、すまん・・・ない」
棗絢音「じゃあ、イタズラ決定!! はい!目を瞑る!!」
棗藤次「は?!えっ?!」
棗絢音「早く!!」
  そう急かされて藤次が瞼を閉じた時だった。
  チュッ・・・
棗藤次「あ、絢音!?」
  不意打ちのキスに戸惑っていると、彼女は可憐な上目遣いで藤次を見る。
棗絢音「イタズラですよ?ご主人様❤︎」
棗藤次「!!!」
  あまりの愛らしさに、藤次の中の理性が切れた。
棗絢音「さ、お夕飯にしましょ?」
  そう言って奥に行こうとした絢音を、藤次は後ろから抱きすくめる。

〇広い玄関(絵画無し)
棗絢音「と、藤次さん?!!」
棗藤次「ワシは?」
棗絢音「へ?」
棗藤次「ワシは絢音に、お菓子もらえんの?」
棗絢音「ああなんだ。  ちゃんとあるわよ〜 初めて作ったけど、マカロン・・・」
  そうして、藤次の腕からすり抜け、ポケットに手を入れ中身を出そうとすると、彼にそれを阻まれる。
棗絢音「と、藤次さん?」
棗藤次「ないんよな?お菓子・・・」
棗絢音「いや、だからあるって・・・・・・んんっ!!!」
  再び抱きしめられ、絢音は藤次にキスされる。
  それは、先程の子供っぽいキスではなく、深く甘い、大人のキス・・・
  暫くした後、ツゥっと唾液の糸を垂らしながら唇を離すと、藤次は赤くなった絢音の耳に囁く。
棗藤次「ないんよな?お菓子」
棗絢音「な、ない・・・です」
  その先のイタズラを望むような絢音の発言に、藤次はニヤリと嗤って、彼女を抱き抱える。
棗藤次「ほんなら、イタズラさせてもらおうかのぅ・・・ 可愛いメイドちゃん❤︎」
棗絢音「ご飯・・・」
棗藤次「あとあと」
棗絢音「じゃ、じゃあシャワー・・・」
棗藤次「後で一緒にあびたらええやん?」
棗絢音「い、一緒に?!! て言うか、下ろして・・・」
棗藤次「あーかーんー このまま一緒に、ベッドまで行こうなぁ〜❤︎」
棗絢音「べ、ベッド・・・」
  顔から火が出る様に赤くなった妻を抱いて、さっきまでの不機嫌はどこへやら。
  仮装ハロウィンも悪くないと思う、藤次なのでした

コメント

  • メイドのコスプレは似合いすぎて反則。この格好のまま近所に買い物に行ったという絢音さんも無邪気というか度胸があるというか。「イタズラ」の意味が違っちゃったけど、藤次さんの仕事のイライラもおさまって結果オーライですね。

  • いつも作者様の作品を見るたびにニヤニヤしてしまいます。
    それほど幸せそうでうらや…憧れてしまいますねぇ!
    永遠と仲良しでいてほしいものです!

  • あらあら、ラブラブなバカップルですね。。当初は近年のハロウィンの盛り上がりを否定していた藤次さんも、すっかりお楽しみのようで。宗教儀式も恋人や家族のイベントに変えて吸収する日本的なスタイルですねw

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